人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-3-6 11:30
 任期満了に伴う奥州市長選は4日投票が行われ、即日開票の結果、現職の小沢昌記(まさき)氏(59)=無所属=が2万7767票を獲得し3選を飾った。高い知名度を背景に地元水沢をはじめ全域で幅広く集票。新人の佐藤邦夫(くにお)氏(70)=無所属=を破り、佐藤洋(ひろし)氏(63)=同=を振り切った。市議選の投開票も行われ、新人9氏を含む議員28氏が決まった。

 市長選は、現職の市政継続か、いずれかの新人による刷新かが最大の焦点だった。三つどもえの争いとなったのは、2006(平成18)年の奥州市発足による初代市長選以来12年ぶり。投票率は64.25%で、現新一騎打ちの前回選(67.73%)を3.48ポイント下回った。
 3選を果たした小沢氏は、高い知名度を生かし地元水沢や胆沢で広く浸透。江刺や前沢、衣川で苦戦を強いられたものの、一定の浮動層も取り込み票を積み上げた。5区35支部の組織を再構築し支持を拡大。市町村合併による市の体制構築に取り組んだ2期8年の実績と次期の「飛躍」をスローガンに掲げ、協働のまちづくり推進、子育て環境充実などの訴えが実った。
 佐藤邦夫氏は、地元江刺や前沢、衣川で厚い支持を集めたものの、大票田・水沢を切り崩せず一歩及ばなかった。佐藤洋氏は、地元水沢や胆沢を中心に支持を得たが、全域で浸透し切れなかった。
 当選証書付与式は、6日午後1時半から市役所江刺総合支所1階多目的ホールで行われる。
 4日現在の有権者数は10万692人(男4万8212人、女5万2480人)。
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市長選 開票結果
当 27,767票 小沢 昌記(59)無現
   21,098票 佐藤 邦夫(70)無新
   14,785票 佐藤  洋(63)無新
(市選管確定・午後11時35分)
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 小沢昌記氏(おざわ・まさき) 東京経済大卒。1996年度水沢青年会議所理事長。旧水沢市議2期、2006年には奥州市議に当選し議長を務めた。2010年、奥州市長選に初出馬し当選、現在2期目。水沢区字東町23の3。同区出身。59歳。
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「連帯」で結ばれた市を(当選から一夜明け小沢昌記さん)

―― 一夜明けた気持ちと3期目の決意は

 何よりも、支持をいただいた皆さまに心から感謝する。三つどもえの選挙でそれぞれの候補者が訴えた政策が多くの支持を集めたことを真摯に受け止め、政策に取り入れるべき部分について配慮したい。住んで良かったと思っていただける、幸せを実感していただける奥州市となるよう一層努力する。

――自身はどの部分で支持を得たと考えるか
 説明不足を補う訴えができた選挙運動だった。旧5市町村合併は、ルール統一や財政の健全化を全て新市に引き継いだ。これは、五つのものを一つにまとめるという最も重要なポイントだった。合併効果を発揮できる土台づくりのために行財政改革に力を尽くしてきた。発展のための土台がほぼ完成したので継続させていただきたいと訴え、支持につながったと考えている。

――次点候補との得票差をどう考えるか
 今回は全体で約6万5000人に投票をいただき、1位と2位の7000弱の票差は全体の1割を超えており、大きな支持をいただいたと考えてもいいのではないか。ただ、2位と3位の2氏を足せば、私の獲得票数よりはるかに多い。十分な配慮をしながら、市は一つという名の下に、連帯の絆で結ばれた市をつくりたい。

――まず取り組む課題は
 子育て環境の充実に向け、相談窓口やサポート施設など妊産婦の包括的サービス事業を展開する。これは6月議会で予算提案したい。子どもの医療費の助成拡大、まちづくり交付金の増額あるいは支援メニューの拡大を検討していく。

写真=3期目の決意などを語る小沢昌記さん=市役所本庁

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【基本情報】
 ※奥州市(おうしゅうし)……岩手県南部の胆江2市町を形成する市で、旧水沢市、旧江刺市、旧前沢町、旧胆沢町、旧衣川村の5市町村が合併し2006年2月20日に誕生した。周囲は金ケ崎町、一関市、平泉町、北上市、住田町、花巻市、遠野市、西和賀町、秋田県東成瀬村に接する。人口は118,771人(2018年1月31日現在)。
 中央を北上川が流れ、川の西側は胆沢(いさわ)郡、東側は江刺(えさし)郡とされていたことから、双方の頭文字を取り奥州市と金ケ崎町の2市町は「胆江(たんこう)地方」と呼ばれている。
 古くから農畜産業が盛んであるとともに、南部鉄器や岩谷堂箪笥などの伝統工芸も息づく。かつては、県南の商都といわれるほど水沢駅周辺や江刺区岩谷堂の中心市街地は活気を帯びていたが、車社会の到来と郊外への大型店進出などにより衰退の一途をたどる。
 人口減少、高齢化社会を見据えた地域振興策、地域医療の充実、合併前の旧市町村間の一体感情勢などが主な市政課題となっている。
 ILC建設候補地の北上山地は、江刺区東部の中山間地域に位置。東北新幹線・水沢江刺駅から車で15分程度でたどり着く。

 ※奥州市長選・市議選……任期満了に伴い2月25日告示。新人の佐藤洋氏(63)、現職の小沢昌記氏(59)、新人の佐藤邦夫氏(70)の3氏(届け出順)が立候補した。ILC計画に関しては3候補とも誘致に積極的に関わる姿勢を打ち出し、研究者らの受け入れ態勢のみならず、地域産業と絡めた対応策、企業誘致などに取り組む姿勢を示していた。
 市議選は市長選と同日告示、同日投開票。定数28に対し30氏が立候補した。ILCに関しては市長選3候補と同様、選挙戦を通じ誘致実現とまちづくりとの連動を主張する候補者も見受けられた。
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tanko 2018-3-6 11:30
 任期満了に伴う金ケ崎町長選は4日投票が行われ、即日開票の結果、現職の高橋由一氏(71)=無所属=が、新人の高橋寛寿氏(62)=同=に750票差で4選を果たした。財政改革など3期12年の実績を基に、子育て支援や高齢者支援、国道4号周辺開発などを含む新たな産業振興による人口減への対応施策充実を訴えた高橋由一氏。対する高橋寛寿氏も、「金ケ崎の未来のために」と人口増に向けた政策の強化を訴え、現体制への反発勢力を中心に町政へ新風を求める有権者の支持をつかんだものの、現職の固い組織選挙に阻まれ及ばなかった。
 4選を目指す現職と、現職の下で財政課長や参事兼総合政策課長などを務めた元役場職員の新人が、激しい攻防を繰り広げた町長選。投票率は69.28%。昨年末には一騎打ちが確定し、両陣営が支持拡大を目指し積極展開したが、告示3週前に「無風」から一転選挙戦が確定した2014(平成26)年の前回選と比べ、2.03ポイントの上昇にとどまった。
 高橋由一氏は、昨年7月に出馬を正式表明。町内に張り巡らせた後援会組織の機動力に加え、町議9人が街頭でマイクを握るなど支持を打ち出し、地元3土地改良区や町商工会、町建設業協会、自動車関連労組などが支援。手堅く支持を固め、猛追する高橋寛寿氏を退けた。
 町政への初チャレンジとなった高橋寛寿氏は、人口減を想定した現在の第10次町総合発展計画を問題視し、「金ケ崎の未来を決めるのは、今生きている私たち。私たちが諦めたら、金ケ崎の町は発展しない」と人口減少対策への取り組み強化を主張。宮舘寿喜元県副知事や高橋紀雄前金ケ崎町長、高橋篤元町議会議長が支援体制を組み、町議3人らも支持し「新風」を訴えたが、現職の厚い組織の壁を切り崩しきれなかった。
 当選証書付与式は、5日午前10時から町役場で行われる。
 4日現在の有権者数は1万3041人(男性6521人、女性6520人)。
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金ケ崎町長選 開票結果
当 4,863 高橋 由一(71)無現
   4,113 高橋 寛寿(62)無新
(町選管確定・午後8時38分、投票総数9,035票、無効58票)
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 高橋 由一氏(たかはし・よしいち) 鯉渕学園卒。1967年県共済農協連入り。業務部長、全国共済農協連県自動車部長などを経て、2002年5月県副本部長で退職。同6月町助役就任。2006年3月から金ケ崎町長3期12年。金ケ崎町永栄下谷起3の2。同町出身。71歳。
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新産業都市づくりを推進(当選から一夜明け高橋由一さん)



―― 一夜明けた気持ちと4期目の決意は
 長い選挙戦だった。たくさんの方々にご苦労をかけた。政策や公約をしっかり実行していく。積み重ねてきた政策に新しい政策をプラスし、新産業都市のまちづくりを進める。時代が変わることに対してスピード感を持って対応し、常にチャレンジし、自治体の良さを発揮していく。

――750票差をどう受け止めるか
 750票差は、かなり近い状態にあると認識している。諸課題に対し、率直に対応解決しなければならないものもあると思っている。「継続か刷新か」が争点となったが、激戦模様との報道に対し、投票率が2ポイントの上昇にとどまった。町政への関心が低いとするならば、大きな問題。地域づくりや地域協働を進める際の課題につながる。

――公約実現の優先順位は
 最大の課題は人口減少への対応であり、社会減に歯止めをかけ、自然減の減少幅を小さくすること。そのために総合的な政策対応が必要。その中に、企業誘致など具体的な経済政策と、雇用、住宅、子育て支援をセットで進めていく。人口対策が最優先であり、その中にこれらの政策が入ってくる。

――町政の中・長期的ビジョンは
 経営体として持続性の高い金ケ崎をつくるため、経営環境の診断結果に基づき、自治体経営を再構築。縮小時代の住民と行政による協働型行政改革に取り組む。未来課題を見据えた自治体経営の変革と創造の在り方を整理したので、次期計画などに反映させていく。国道4号周辺開発を含む新産業都市計画では、土地利用計画の見直しも含め進める。

写真=当選証書を手にしに、4期目の決意などを語る高橋由一さん

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【基本情報】
 ※金ケ崎町(かねがさきちょう)……岩手県南部の胆江2市町を形成する町で、南は奥州市、北は北上市に接する。人口は15,750人(2018年1月31日現在)。
 町東部に国道4号、東北自動車道、JR東北本線がそれぞれ南北に貫いており、これらの交通網の沿線に町の主要機能や商業施設、住宅団地等が集中し、人口も多い。西部は自然豊かな農業地帯が広がり、酪農も行われている。
 県内屈指の規模を誇る岩手中部工業団地には、トヨタ自動車東日本岩手工場や関連する自動車部品工場が集積しているほか、製薬会社や各種工業部品加工メーカーの工場もある。新興住宅地も多く、同工業団地内の工場だけではなく、奥州市や北上市の企業に勤務している住民も少なくない。こうした特性から、町外出身のいわゆる「新住民」が多い地域でもある。工業団地勤務者も多く、若い世代であってもその多くが男性という特色もある。

 ※金ケ崎町長選……任期満了に伴い2月27日告示。届け出順にいずれも無所属で新人の高橋寛寿(かんじゅ)氏(62)と現職の高橋由一(よしいち)氏(71)立候補した。選挙戦では新人の高橋寛寿氏による町政の刷新か、4選を目指す高橋由一氏による継続性かが投票する上での判断基準の一つになった。両氏とも人口減少問題を重要視し、子育てや定住化、まちづくりの在り方などに絡めて支持を訴えてきた。
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tanko 2018-3-4 11:00
 水沢緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)の初代所長を務めた木村栄(ひさし)博士(1870〜1943)が、男女共同参画や若者の雇用、人材育成に積極的だったことが、一橋大学社会科学古典資料センターの馬場幸栄(ゆきえ)助教の調査で分かった。馬場助教は、観測所に残っていたガラス乾板写真の復元と、そこに写っていた人物の家族らへの聞き取りを実施。水沢区星ガ丘町の奥州宇宙遊学館で復元した写真の展示会を開いており、「教育関係者や企業経営者など、人を育てたり雇ったりしている立場の方々にも写真を見て、何かを感じてもらえたら」と話している。

 馬場助教は、2016(平成28)年度からガラス乾板写真の復元から、緯度観測所の歴史や関係した人物に関する研究調査を展開している。3回目となる今回の写真展は、女性職員の存在に注目。なぜ、これほど多くの女性が天体観測施設に勤務していたのかを調べた。
 1899(明治32)年の開所から、1988(昭和63)に国立天文台へ組織移行するまでの間、勤務した全職員の38.5%が女性だった。最初の女性職員採用は1923(大正12)年のこと。当時、帝国大学への女性の入学例は東北帝大(現・東北大学)などわずか。女性が自然科学分野の専門職に従事するのは難しい時代だった。
 馬場助教によると、木村博士は地元の女学校などにしばしば足を運び講演活動をしたほか、学校長とも親交を深めていたという。
 Z項の発見など、天文学研究の功績に注目が集まりがちな木村博士だが「地域の皆さんとのコミュニケーションの取り方が非常に上手だったようだ」と馬場助教。研究を支える人材を確保するという経営者的な感覚を持つと同時に、向学心のある地方の若者、特に女性にもチャンスを与えたいという教育者的な側面もあったようだ。
 女性の登用に理解を示したのは木村博士だけではない。第3代所長となる池田徹郎博士は、「寿退社」という世の中の風習に従って退職しようとした女性に「これからはそういう時代じゃないから」と告げたという。
 馬場助教は「今の時代、即戦力を求める風潮もあるが、地元に暮らす若者にチャンスを与え、たとえ専門知識がなくても職場で育てるというのが木村博士のやり方だった。男女共同参画や人材育成などの問題を考える上でも、見習うべき点が多い」と強調する。
 女性職員の多くは、観測データを計算する業務に従事。当時使用していた「手回し計算機」と同タイプの機械も展示している。4日は午前11時から正午まで、馬場助教による講演も予定している。
 展示は午後5時までだが、入館は同4時半まで。入場無料(常設展示見学は入館料が必要)。問い合わせは同遊学館(電話0197・24・2020)へ。

写真=ガラス乾板から復元された女性職員が多数写っている写真
写真=多くの女性職員が使用していた手回し計算機。手前はそろばん
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tanko 2018-3-1 10:40
 昨年のノーベル物理学賞受賞者の一人で、米国のカリフォルニア工科大学名誉教授バリー・バリッシュ氏(82)は、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に対し、強い支持を表明した。
 バリッシュ氏は、重力波観測に世界で初めて成功した研究施設「LIGO(ライゴ)」の研究責任者などを歴任。国際的なプロジェクトに育て上げたことなどが認められ、同じプロジェクトに携わった米国人研究者2人とともに、ノーベル物理学賞を手にした。
 LIGOで大きな実績を残したバリッシュ氏だが、ILCの技術設計報告書(TDR)をまとめ上げた国際共同設計チームの最高責任者を務めた経歴もある。2012年1月には江刺区や一関市を訪れ、ILC候補地である北上山地を視察している。
 今回の表明は、インターネット動画サイト「You tube(ユーチューブ)」を通じて行われた。
 バリッシュ氏は、2013年に欧州合同原子核研究機構(CERN)の実験施設・大型ハドロン衝突加速器(LHC)でヒッグス粒子が発見されたことに触れ、「ヒッグス粒子発見はノーベル賞にもつながった。今後は、どのように質量が生み出されるかヒッグス粒子のメカニズムをしっかり理解する必要がある」と指摘。「その謎に手が届く場所まで来ている」と述べ、ILCの重要性を説いた。
 バリッシュ氏は「私たちは(ILCの)設計を本物に変えたい」「(ILCは)私たちの知識を超えた場所に連れて行ってくれる。私は最も強い言葉で、ILCへの支援を表明する」と結んだ。
 バリッシュ氏の動画のアドレスは
https://youtu.be/j5PPW8oBLSw
You tube内の検索欄に「バリッシュ ILC」と入力しても表示される。動画の下に表示されるメニューを操作すると、日本語字幕も表示できる。

写真=動画サイトを通じILCへの支持を表明するバリー・バリッシュ氏 (You tubeより)
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tanko 2018-2-23 10:40
 ILCが実現したら、施設を造るための建設工事や土木工事の仕事、装置を組み立てる機械製造関係の仕事が忙しくなりそうです。一方で岩手県は昔から農業が盛んで、おいしいお米や野菜がたくさん取れます。地域の農業に何かメリットはあるのでしょうか?

食材の調達は重要事項です
 前回のこのコーナーでも触れましたが、ILCにはさまざまな国や地域から研究者やその家族がやって来ます。ILCは「宇宙誕生の謎の解明」が主目的の施設ですが、そこで働く人や関係者への「食材の調達」も最優先に重要な事項です。
 日本の農作物の産地では、これまでも消費者の皆さんに喜ばれるような食材を提供しようと、さまざまな努力を重ねてきました。それと同じように、世界から訪れる人たちの食生活や宗教上のルールに見合った食材を提供することができれば、農業技術のレベルも上がるでしょうし、新たな地域農業の魅力を創造することが可能だと思います。
 もし寒さが厳しい東北地方の気候に適さない作物の栽培を考えるならば、ILCの排熱を利用する方法が考えられます。すでに先端加速器科学技術推進協議会(AAA)という組織が中心となって、いろいろと対策を考えているようです。このように省エネを考慮しながらILCを運営していくことを関係者は「グリーンILC」と呼んでいます。
 ILCでは、加速して高エネルギー状態にした電子と陽電子の粒すべてが衝突するわけではありません。衝突地点を通り過ぎた電子、陽電子のビームは、直径約2m、高さ約11mの「ビームダンプ」という場所に導かれて冷やされます。冷却のために水を使用しますが、ビームが入り込んだ時の水温は、155度以下になるように設計されています。
 ビームダンプ以外の各装置からの排熱なども合わせると、研究施設全体からの排熱温度はおよそ45度です。この温水の熱をハウス栽培の野菜に活用することが可能です。トマトやパプリカ、イチゴなどの高価格野菜や果物を一年中栽培できます。さらにレタスやセロリ、クレソンなどの西洋野菜、ロマネスコ、ストロベリー・トマト、カステルフランコ、シャドークイーン、アーティチョーク、ビートなど岩手の気候では通常の栽培が難しい野菜類であっても、排熱を使って育てることは夢ではありません。温室栽培することによって栽培速度も速く、収量も安定します。
 野菜や果物だけではありません。フグやウナギなど高温を好む魚類、逆にヤマメやマスなど低温を好む養殖施設への活用も可能です。乳牛や養豚施設などへの熱供給も期待されています。
 新たな農作物や物産の開発だけでなく、今ある岩手が誇る物産を海外にアピールできるチャンスにもなります。地場ワインや地ビールは、海外へのおみやげになるでしょう。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 平昌五輪での日本選手団の活躍が目覚ましいですが、トップアスリートの皆さんを支える仕組みと、ILCを支える環境づくりはどこか似ているところがあると思います。
 例えばサッカーの日本代表が活躍するためには、競技場を管理する人、応援グッズを企画し製造し販売する人たち、選手の健康管理に携わる人たちが必要です。近年は外国人の監督やコーチを招くこともあります。コミュニケーションを円滑にするため、通訳も活躍します。また、サッカーの楽しさを子どもたちに伝え次の選手を育成する環境をつくる人もいます。
 一流のサッカー選手たちをILCの研究者に置き換えてみれば、ILCを取り巻く仕事や必要なサポートは多岐にわたることが想像できると思います。
 「自分の仕事や取り組んでいる勉強は、ILCと関係ない」と思っていても、実は何かの形で携わることが将来あるかもしれません。
(児玉直人)

写真=2014年に水沢で開催されたILC関連の国際会議の夕食会の様子。多くの外国人研究者たちが地元食材を使った料理を味わった
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tanko 2018-2-21 10:00
 一関市で20日開幕した国際リニアコライダー(ILC)に関連する国際議会「ILD(アイエルディー) meeting(ミーティング) 2018」。主会場の一関文化センターには、国内外から集まった研究者らをもてなす空間が設けられている。胆江地区からはバンケット(夕食会)への食材提供などの形でサポートが入っている。


 ILC候補地近傍での関連する国際会議の開催は、ILC誘致の熱意を海外の研究者らに伝える機会でもある。会場内には会議の合間の休憩スペースが設けられ、一関市観光協会が名所などの情報を提供。県立花巻農業高校の生徒が作った「ILC」「ILD」の文字が入ったリンゴやクッキーも振る舞われた。県南広域振興局が主催したILC絵画コンクールの優秀作品も展示され、胆江地区を含む児童の力作が並んだ。
 21日に開催するバンケットでは、奥州、一関、大船渡、宮城・気仙沼の4市から提供された、名物食材の料理が振る舞われる。奥州市は前沢牛を用意したといい、当日は及川新太副市長らが出席する。
 このほか奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)は、出席した外国人研究者の急病や体調不良などに対応する医療通訳ボランティアを派遣し協力。ILCが実現した場合でも重要視される取り組みであり、多文化共生社会の構築に向けた地元の対応の一端を示すことにもなりそうだ。
 同会議の現地実行委議長を務める東北大大学院の佐貫智行准教授は、2回目となる候補地近郊での会議開催について「候補地を間近に将来の計画を考えることは、より現実味を持った協議になるのではないか」と話している。

写真上=休憩スペースの一角に展示されている絵画作品。胆江地区の児童の作品も

写真下=「ILC」「ILD」と記されたリンゴを撮影する外国人研究者
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tanko 2018-2-21 9:50
※訂正…2018/2/21 9:50ごろから2018/2/22 15:50ごろまでの間、この記事の内容が誤ったまま配信されていました。ヨーロッパの次期素粒子物理学計画の提出期限の日付が「10月18日」となっていましたが、正しくは「12月18日」です。お詫びして訂正します。 


 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関連する国際会議「ILD(アイエルディー) meeting(ミーティング) 2018」が20日、3日間の日程で一関市の一関文化センターを主会場に始まった。初日の開幕行事では、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)のティズ・ベーンケ教授がヨーロッパの次期素粒子物理学計画に触れ、同計画にILCを盛り込むために必要な諸資料の提出期限が今年12月18日までだと説明。日本はILCのホスト国として期待されているが、日本政府側の方針を示す時期が刻一刻と迫っていることをあらためて浮き彫りにした。

 ILDはILCで用いる大型測定機の一つ。日本とヨーロッパの研究者らが中心となり開発に向けた協議が進められている。
 これまでもILDを担当する研究者らが顔を合わせる場面はあったが、他のILC関連の国際会議に合わせて行っていた。ILD単独での国際会議開催は、2014(平成26)年に奥州市水沢区で開催して以来、4年ぶりという。
 今回は63人が参加し、このうち39人が海外の研究施設所属。ドイツ、フランスを中心に、スペイン、オランダ、セルビア、アメリカから訪れている。
 開幕行事では、一関市の長田仁副市長が歓迎のあいさつ。引き続き、ILD研究者グループの共同代表者でもあるベーンケ教授が、ILC計画やILD開発の流れと今後の動きについて発表した。この中でベーンケ教授は、2020年5月を始期とするヨーロッパの次期素粒子物理学計画について説明した。
 ILCは国際協力体制の下に建設、運営される施設。同計画のような国レベルの上層計画にILCが組み込まれなければ、国際協力体制の構築ができなくなり、計画が頓挫する可能性も出てくる。
 ベーンケ教授は、科学的意義などをまとめた諸資料を、12月18日までに提示する必要があるとし「コスト関係もしっかり調べ確認する必要がある」と強調。日本政府に対しても、ILC計画に対する明確な方針が示されることを期待した。

ILCとILD
 ILCは素粒子物理学の大型実験施設として計画。最新の方針では、全長25kmの直線トンネルを掘り、電子と陽電子を両端からほぼ光速に近い状態にまで加速させ、中心部で衝突させる。衝突時の現象を調べることで、物質に質量を与える「ヒッグス粒子」の詳細研究や、未知の素粒子の探索などを進める。
 肉眼には見えない現象を捉えるために必要なのが測定機(検出器)で、中心衝突地点に設置される。現計画では、測定方式が異なる「ILD(International Large Detector)」と「SiD(Sillicon Detector)」の2台を設置。双方とも高さ10m以上、重さは1万t以上にもなる。ILDは主に日本とヨーロッパ、SiDはアメリカを中心とした研究者らによって開発しようとしている。


写真上=国内外の研究者が集まり始まった「ILD meeting 2018」

写真下=ヨーロッパの次期素粒子物理学計画などを交えながら、今後の方向性について語るティズ・ベーンケ教授
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tanko 2018-2-19 10:20
 金ケ崎町国際交流協会主催の「金ケ崎de(で)世界のTea Party(ティー パーティー)」は18日、町中央生涯教育センター多目的ホールで開かれた。親子連れや協会員ら約80人が集まり、各国の食や伝統衣装、踊りなど文化に触れるとともに、フェアトレードの取り組みを通して、途上国などの就労についても考えた。
 外国出身者や海外在住経験者らと交流しながら、食や文化に触れる恒例イベント。今年は、インドネシア・ジャワ島出身のアユ・イスカンダル・阿部さん(48)=盛岡市在住=をゲストに迎え、インドネシア舞踊や民謡を堪能。イスカンダルさんは「力強くも美しさもセクシーさもあるのがインドネシア舞踊の魅力。間近で楽しんでほしい」と伝統の舞で参加者を魅了した。
 会は、同協会英会話クラス受講生らによる歌とハンドベル演奏で幕開け。冬季五輪開催中の韓国のチマチョゴリや、服として着るだけでなくターバンやバッグ、おんぶひもと多彩な機能を発揮をする東アフリカのカンガなど、彩り豊かな伝統の衣装をファッションショーで身近にした。
 同協会では、途上国などで生産される商品を適正価格で購入することで、就労の機会を提供し自立を支援するフェアトレード活動に理解を深めてもらおうと、さまざまな機会を捉えてPRしている。同日も、フェアトレード商品を使ったカレーやデザートなどを紹介したほか、食品や雑貨を販売し、フェアトレード商品の魅力も伝えた。

写真=色鮮やかな民族衣装のファッションショーなどを通して、国際理解につなげた「金ケ崎de世界のTea Party」
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tanko 2018-2-19 10:10

 奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)の新春交流会は18日、江刺区八日町のホテルニュー江刺新館イーズで開かれた。市内在住の外国人市民や同協会関係者ら約80人が参加。世界各国の料理や出し物を楽しみ、それぞれの文化や習慣などに理解を深めた。
 旧正月に合わせた恒例のイベント。新年を迎えた喜びを関係者で分かち合い、今後のさらなる国際化機運を醸成させようと毎年開催している。
 オープニングアトラクションとして、水沢区のダンス教室「レイアロハ」(矢守春菜代表)の生徒らによるポリネシアンダンスが披露された。南国のリズムに合わせて華やかに踊り、会場内に一足早く夏の雰囲気を呼び込んだ。
 佐藤会長はあいさつで「病院での医療通訳など市内に住む海外出身者の住環境の整備や、国際リニアコライダー(ILC)が完成し海外研究者らを落ち着いて迎えられるよう準備を進められているのは、皆さんのご協力のおかげ」と感謝。「水沢に緯度観測所ができたときに、いち早く旧藩士が英語学校を開いた。斎藤實閣下も英語が堪能で国際情勢に明るかった。こうした良い伝統や心構えを重んじてこれからも活動していきたい」と力を込めた。
 名物の世界の料理は、冬季五輪開催で注目を集めている韓国の炒め物「タッカルビ」、フランスのスープ「ポティロン」など13品が並んだ。参加者は和気あいあいと味わいながら、会話を弾ませていた。このほか会員による各国の歌の披露などもあり、大いに盛り上がった。
 同協会で10年近くボランティアに携わる水沢区上町の徳井貞男さん(74)は「世界のいろいろな国の人たちと知り合い、交流していると本当に勉強になるし、見識が広がる。そうした機会をより多くの人に得てもらうために、ことしも頑張って協力していきたい」と笑顔をみせていた。
 この日は会場に、県国際交流協会の呉慧敏・外国人相談専門員を招き、相談ブースも設置。参加者らが気軽に岩手での生活の相談をしていた。

写真=オープニングアトラクションのポリネシアンダンスは、会場を南国の雰囲気に変えた
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tanko 2018-2-14 19:40
 台湾東部で発生した大地震を受け、奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)と奥州市水沢地域交流館(アスピア、藤原佐和子館長)は、奥州市水沢区吉小路の同館ロビーに、地震被災地支援の募金箱を設置した。現在、市民の善意を募っている。

 地震は7日未明(現地時間6日午後11時50分)に発生した。台湾東部の花蓮沖が震源。地震の規模を示すマグニチュードは6.4で、花蓮市を中心に建物倒壊などの被害が出た。9日午前時点で、死者10人、負傷者276人、行方不明者7人に上っているという。現地では、懸命な救出活動が展開されている。
 同協会では7日に募金箱を設置。同協会事務局の藤波大吾さん(35)は「東日本大震災のときに、台湾からは200億円余りの義援金が送られ大変に助けられたことへの恩返し」とし、「後藤新平以来台湾との交流は深く、当協会の医療通訳ボランティアにも市内在住の台湾出身者3人に参加してもらっている。大切な関係にあるだけに、少しでも力になればと、すぐに設置した」と説明。協力を呼び掛ける。
 同協会は今後、1カ月をめどに募金の送り先を検討し、寄付金を現地に届ける予定。

写真=台湾・花蓮を襲った大地震への援助を呼び掛けて設置された募金箱

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