岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。
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tanko 2017-12-10 10:40
 次期総合計画(2019年度〜)策定の準備を進めている岩手県は9日、奥州市水沢区横町のメイプル地下多目的ホールで、県南に住む外国人市民5人との意見交換会を開催。国際リニアコライダー(ILC)実現などを見据え、多文化共生社会を形成する上での課題を把握した。外国人市民からは、人柄の良さや自然の美しさを感じている一方、交通インフラの弱さや英語以外の言語対応の不足、国際交流事業に関心を持つ人が限定的であるなどと指摘した。


 参加したのは、奥州市の朴宣姫(パク・ソンヒ)さん(58)=韓国、ビル・ルイスさん(49)=アメリカ、吉田濬(けいしゅう)さん(50)=台湾、平泉町の岩渕静華(せいか)さん(56)=中国、一関市の村上アミさん(53)=フィリピン。県側は政策地域部の藤田康幸部長、小野博政策監らが出席した。
 岩手の印象については、5人共通して人柄の良さや自然の美しさを挙げたが、改善してほしい点も少なくない。朴さんは「高い建物がないのはいいが、人口が多い盛岡を中心に発展していて地域間格差が激しい。地元の伝統に触れることはできるが、オペラなどのコンサート、さまざまな文化に接するチャンスが少ない」。吉田さんも「盛岡以外は不便で、魅力ある店が集まる盛岡や仙台に行きたくなる」と語った。
 さらに困っているのが移動手段だ。運転免許取得には一定の時間が必要で、日本語の習得も欠かせない。吉田さんは免許を取るまでの間、夫と外出する時以外は自宅から一歩も出られない状況が続いたという。
 近年増加傾向にある海外からの観光客も含め、マイカー以外で移動するには鉄道やバスなどの公共交通に頼るしかない。しかし本県の公共交通は、過疎化や少子高齢化の影響もあり、充実しているとは言いがたい。出席者からはJR東北本線の普通列車が1時間に1本程度しかなく、最終列車も早い点などに不満が相次いだ。
 言葉に関しては、英語以外の言語対応に不十分さがある。岩渕さんは「英語が分からない中国人や韓国人もいる」と指摘。ルイスさんは「ILCができればヨーロッパからも人が来るので、フランス語やイタリア語、スペイン語も必要になる。子どもたちが“多言語”を学ぶ場が必要だが、県内では不来方高校ぐらい。県南にも多言語を学ぶ環境が必要では」と訴えた。
 ILCに関して朴さんは「地域全体でILCの受け入れを支えなければいけないのに、私たちの生活との関わりなどがまだまだ知れ渡っていない」と、広報・普及の不十分さを指摘。国際交流の在り方についても「外国人との交流が一部の人のものになっている。地域の生涯学習事業をうまく活用するなど、自然な形で交流を創出する工夫が必要ではないか」と述べた。
 藤田部長は「言葉や交通の不便さ、身近なサポート体制を整える必要性などを強く感じた。外国人市民を含め岩手に暮らす人たちがどうすれば幸福になるか、生活しやすくなるかを今日の意見を参考にし、次期総合計画に反映させたい」と話していた。

写真=県の次期総合計画策定に向け開かれた外国人市民との意見交換会
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tanko 2017-12-9 19:50
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)を巡り、奥州市議会のILC誘致推進議員連盟(渡辺忠会長、議員全員で構成)は、ILC誘致実現を国政関係者に訴える要望活動を実施する。今月末または年明けの早い時期に行う方向で調整を進めており、金ケ崎町議会と共に実施したい考えだ。

 8日の市議会定例会一般質問の中で、同議連幹事長の佐藤郁夫氏(市民クラブ)が明らかにした。佐藤氏は、日本政府の判断を巡る動きが来年にもヤマ場を迎えるという研究者サイドの見方を示しながら「もはや政治的な決断をする時期に来ている。県や東北の関係機関との連携も大切だが、時期を見て積極的な活動も必要ではないか。市議会議連でも、金ケ崎町議会と一緒に政界への要望活動をする計画だ」と述べ、市独自の要望の実施を促した。
 小沢昌記市長は、県市長会や東北市長会による国への要望活動が行われ、自らも同席して政界関係者の前向きな反応を確認したことを強調。市独自の要望活動については「これまでの関係機関との連携の足並みを乱さないようにしながら、独自に実施するかどうかは考えなくてはいけない」と述べた。
 このほか佐藤氏は、ILC誘致と農林産業との連携についても取り上げ、「外国人に好まれるような新たな作物の開発などは早急に取り組むべきでは」と提起。小沢市長は「意欲的に取り組めるような仕組みづくりを検討したい」と答弁した。
 この日の一般質問はほかに、千葉悟郎氏(市民クラブ)、今野裕文氏(共産党)、佐藤邦夫氏(市民クラブ)が登壇した。
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tanko 2017-12-7 19:40
 岩手県県南広域振興局(細川倫史局長)主催の本年度国際リニアコライダー(ILC)絵画コンクールで、金ケ崎町立金ケ崎小学校2年の菊池泰楽(たいら)君(8)が描いた「そりゅうしを見つけるぞ!」が、低学年の部最優秀賞に輝いた。パステルで描いた明るい背景に、キャラクター化した素粒子をちりばめた作品。菊池君は受賞を喜び、「自分の体も素粒子でできていると知って驚いた。ILCの実験でどんな素粒子が見つかるのか楽しみ」と笑顔で話した。すでに巡回展が始まっており、県南圏域8市町と宮城県気仙沼市で、入賞作品と各自治体の応募作品が展示される。

 ILCの普及啓発活動を進める一環として、2015(平成27)年度からスタート。胆江2市町を含む同振興局管内の8市町と、8市町教育委員会、気仙沼市と同市教委が共催した。
 3回目の開催となった今コンクールには、県南地域を中心に、仙台市や東京都からも応募があった。応募総数は、前回を馗点上回る358点(低学年の部149点、高学年の部209点)だった。
 審査は、11月8日に美術科教諭や高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報担当、イラストレーターら4人によって行われ、入賞作��点を選出。胆江地区からは、菊池君のほか、低学年の部は佳作1点、審査員特別賞2点、高学年の部は優秀賞3点、佳作5点、審査員特別賞2点が選ばれた。
 花巻市の同市交流会館でこのほど、表彰式と入賞作品の展示が行われた。表彰式で細川局長は「ILCの難しい研究内容を自分なりに理解し描いており、夢と希望を感じた」と児童らの取り組みをたたえ、「ILCができるころ、この地域で活躍するのは今の子どもたちであり、理解を深める取り組みを継続させたい」と述べた。
 菊池君の作品について、審査員を務めたイラストレーターのTAG(たぐ)さんは「審査員の満場一致で選ばれた。絵画としてパステルトーンの色の使い方がすごく素敵に仕上がっていて、きれい。小さな素粒子も低学年らしくかわいく描けている」と講評。応募作品全体に対し「ILCが実現して岩手がどういう風になるのか、将来の自分たちの生活がどう変わっていくのか、世界観を広げた作品が多かった。これからもILCのことを勉強して、未来の岩手や自分たちのことを考えていってほしい」と期待を寄せた。

 最優秀賞以外の胆江地域の入賞者と巡回展の日程は次の通り。
【入賞者・低学年の部】
▽佳作…丸山葉月(常盤小2年)▽審査員特別賞…佐々木和(真城小1年)佐々木七渚(同)
【入賞者・高学年の部】
▽優秀賞…西岡凛(人首小5年)及川美海(黒石小6年)佐々木滉正(水沢南小6年)▽佳作…高橋晴斗(水沢小4年)高橋千裕(衣川小4年)小野寺ウンセン(衣里小4年)佐藤美良(水沢小6年)大平桜(水沢南小6年)▽審査員特別賞…伊藤心和(水沢小6年)高橋新(水沢南小6年)

【巡回展日程】
▽西和賀町…13日まで湯夢プラザ
▽遠野市…15〜21日、遠野市役所とぴあ庁舎
▽北上市…来年1月10〜18日、江釣子ショッピングセンターパル
▽金ケ崎町…1月20〜28日、町中央生涯教育センター
▽平泉町…1月30日〜2月4日、道の駅平泉
▽花巻市…2月6〜12日、イトーヨーカドー花巻店
▽一関市…2月14〜25日、一関市立図書館
▽奥州市…3月5〜18日、市役所江刺総合支所
▽気仙沼市…3月20日〜4月1日、気仙沼市地域交流センター情報プラザ


写真上=ILC絵画コンクール低学年の部最優秀賞を受賞した菊池泰楽君
写真下=表彰式に出席した最優秀賞と優秀賞の受賞者
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tanko 2017-12-6 12:40
 【東京=児玉直人】 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致を検討する有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授、委員14人)は5日、東京都千代田区の文部科学省15階特別会議室で8回目の会合を開き、国際研究者組織が11月に了承した「ステージング」と呼ばれる段階的な建設方針が示されたことを受け意見を交わした。加速器本体を中心に初期コストが約4割削減されるステージングは、これまで有識者会議が議論の前提としてきた諸条件と内容が異なる見直し計画に相当することから、かつて同会議内に設置していた科学的意義やコストに関する作業部会を再設置し、詳細な議論を行うことを確認した。

 有識者会議は、理系分野の専門家を中心に構成。日本政府のILC誘致判断の参考材料となる検討結果をまとめるため、2014(平成26)年5月に設置された。今回は、ILC計画を推進する素粒子物理学分野の国際組織2団体が「ステージング」を了承してから最初の会合で、委員11人が出席した。
 有識者会議では、2013年に示されたILCの技術設計報告書(TDR)などに基づき、予算面を含めステージング発表前の建設計画を基に議論を進めてきた。TDRに示された当初の計画では、全長約30kmの規模で建設し実験を開始する予定だったが、ステージングでは全長20kmの規模から建設を開始し、物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」の詳細研究を進める。一定の研究成果を得た上で、必要に応じ30km、50kmと施設規模を拡張するという考え方だ。
 30kmからの建設だと約1兆円とされていた初期コストは、約4割削減できる見通し。同日の会合でステージングについて説明したリニアコライダー国際推進委員会(LCB)の中田達也議長によると、加速器の設置台数が減ることによるコストダウンが主だという。
 有識者会議は、議論の前提としていた施設規模やコスト面に見直しが生じたことを受け、再度研究の意義やコストに関する詳細検証が必要と判断。2015年に一度役目を終えた「素粒子原子核物理作業部会」と「TDR検証作業部会」を再度設置することにした。両作業部会は、年明けにも会合を開く予定だ。
 同日は中田氏のほか、欧州合同原子核研究機構(CERN)研究計算機部のエクアルド・エルゼン部長が、CERNの最新の研究成果などを説明。ヒッグス粒子の詳細研究や新たな物理の探究を進めるためにも、CERNが運用する大型加速器「LHC」に加え、ILCの存在が必要であると強調。ヨーロッパの次期科学計画が2020年5月に実行される見通しを示しながら、2018年までにはILCに対する日本の姿勢が示される必要があることを訴えた。
 素粒子物理学者やILC誘致団体の間では、日本政府の判断がこのまま示されない状態が続けば、ILC実現に必要不可欠な国際協力体制が構築できず、中国で予定されている大型加速器計画に科学の人材が集中するとの懸念を示している。慎重議論を進めながらも、タイムリミットを意識しなければならない段階に入っている。
 会合後、取材に応じた平野座長は「これまでも皆さんが丁寧に議論を進めてきた。今回も同様に、両作業部会からの報告を受けて今後の会議の進め方も含め考えていく」と述べた。コスト削減につながるステージングに関する見解については「私からはコメントは控えたい」とした。

写真=ILCの新建設方針「ステージング」について意見を交わした有識者会議(文部科学省)
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tanko 2017-11-19 11:20
 第8回全国少年少女チャレンジ創造コンテスト全国大会(25日、東京工業大学)に本県代表として、奥州市少年少女発明クラブのチーム「江刺青龍」が出場する。アイデア満載の発明品で全国の舞台に臨むキャプテンの小野礼司君(12)は「決勝コンテスト出場を目標に頑張りたい」と意気込んでいる。

 創造の楽しさを子どもたちに味わってもらおうと毎年開催されるコンテスト。地区予選を勝ち抜いた全国の小学3年生〜中学生3年生の3人一組60チームが出場する。
 コンテストの課題は「からくりパフォーマンスカー」。動力車と山車を連結させ、環境、宇宙、地元などPRしたいテーマを決めて各チームが工夫を凝らしたパフォーマンスを繰り広げる。
 江刺青龍は、キャプテンの小野君と東海林誉峯(ほだか)君(11)、小野賢悟君(14)の江刺っ子3人で結成。「おらが街 I LOVE 江刺!!」と名付けた作品は、江刺リンゴと国際リニアコライダー(ILC)をモチーフに制作した。
 作品は、リンゴ生産やILCの電子・陽電子衝突の様子などを再現。子どもたちの想像力をふんだんに盛り込み、全国の発明自慢たちとの熱戦に臨む。
 小野君と東海林君は「見た人が笑顔になれる作品を完成させる。良いパフォーマンスをみせたい」と声をそろえ、健闘を誓った。大会当日は江刺甚句の法被を来て出場するという。

写真=全国少年少女チャレンジ創造コンテスト全国大会に挑む江刺青龍
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tanko 2017-11-18 11:10
 ILC誘致を巡る動きについて、ドイツ・マインツ大学の斎藤武彦教授のインタビュー記事が本紙に掲載された。「誘致活動に懸念要素」の見出しが目に留まり、読むとそこに市民への重要なメッセージが込められているように思う。
 斎藤教授は、米国の重力波観測施設「LIGO」にかかわっている3人の物理学者が、ことしのノーベル賞を受賞したことに触れ、それは日本で建設中の重力波研究施設「KAGRA」の敗北であると語った。
 なぜなら、LIGO関係者の受賞は、KAGRAが動きだす前にその目的が果たされたことを意味しているということだった。
 敗北は、ILCでも起きる可能性があるという。当初の計画を10km短縮したILCが、ヨーロッパや中国が考える超巨大加速器との研究争いに勝てる保証はなく、後れを取れば、莫大な費用やエネルギーが無駄になるというわけだ。
 斎藤教授の指摘は、地元住民への関係情報の少なさ、実現さえすればバラ色の未来が訪れるかのように喧伝する誘致関係者や自治体担当者への苦言に思える。
 記事を読み頭をよぎったのは、最終保管場所が定まらない放射性廃棄物の存在である。仮に誘致が成功し、さしたる成果もなく研究期間を終えるならば、世論次第ではその施設への転用だってあり得るのではないか。
 ここ1年が政府判断に向けた正念場と言われる中、杞憂であればいいが、あらゆる事態を想定して臨まないと、子々孫々までの責任が負えなくなる。
 KAGRA敗北の真偽はいずれにしても、「ILC実現を強く願うあまり、冷静な判断や住民目線の対応を見失っては本末転倒」との斎藤教授の言葉の意味は重いのではないか。
菊地 うん一(仮名=64歳、江刺区)
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tanko 2017-11-17 11:00
 放射線以外にもILCでは気を付けなくてはいけないことがあるように思います。岩手の美しい自然環境が壊されるようなことはないのでしょうか。

A:極力、悪影響を与えない対策がとられます。

 前回は放射線に関する安全対策などについて説明しました。ILCでは、ほかにも注意すべき点があります。
 一つ目は「液体ヘリウム」の取り扱いです。ILCでは液体ヘリウムを使い、電子や陽電子を光速近くにまで加速する管(加速管)をマイナス271度にまで冷やします。
 なぜ液体ヘリウムを使って冷やすかというと、ニオブと呼ばれる金属で作る加速管を超伝導状態(電気抵抗がゼロになり、電流がいつまでも流れ続ける状態)にして使用するためです。
 もし液体ヘリウムが装置の外に漏れ、通常の室温まで暖められると気体に変わり、体積が約700倍に膨れ上がるのです。
 気体となり膨れ上がったヘリウムが、加速管などの装置を壊さないよう、安全用のバルブなどが装備されます。万が一、液体ヘリウムが漏れた場合は、安全バルブや排気ダクトを通して外へ出ていくので、「容器が爆発する」というようなことはありません。
 ヘリウムは軽い元素で、お祭りの屋台などで売っているフワフワ浮かぶ風船にも使われています。燃えることもなく、人体に影響はありません。すぐに空へと上昇していき、地上にたまることはありません。
 二つ目は消費電力についてです。ILCの運転には、約16万kWの電力を使うと見込まれています。一見、大きな数字に感じますが、これは東北電力で供給している電力の数パーセントの規模です。ILCを運転したからといって、工場や家庭への電力不足が生じるという事態は考えられません。冷房や暖房などを多く使う夏や冬においても、心配はないと思います。
 ILCのような大型の装置は年に1回、定期点検が義務付けられています。電力需要が増える夏や冬に合わせてILCを停止させ、点検を実施するなどの対策も考えられています。
 最後は、自然への影響についてです。ILC本体装置は、地下に設置されます。トンネルは幅約10m、高さ約5mのかまぼこ型のトンネルです。このほど示された建設計画案では、約20kmの長さに整備して実験を進め、状況を見ながら約30km、最大で約50kmの長さにまで延長することも考えられています。
 大規模な施設とはいえ本体は地下に造られるので、地上には液体ヘリウムの冷却設備や一部の付帯設備、研究棟や事務棟、会議室などの建設が考えられます。これら建設に当たっては、事前に「自然環境への影響調査」を行い、極力悪影響が及ばない対策がとられます。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

“番記者”のつぶやき
 奥州市の西側にある胆沢ダムを建設するときには、近くの山から採取した岩や土を大量に使ってダムの堤体(水をせき止める本体)を造りました。水没する地域の木も伐採しました。同時に工事を進めた国は、地元住民の皆さんと共に周辺の自然環境を保護する取り組みを積極的に行いました。工事を進める人たちと、地元の人たちとの良好な関係が築かれていたことで「反対運動は皆無に等しかった」と、地元関係者の一人は話しています。とてもいい事例として、ILCを建設する際には生かしてほしいものですね。
(児玉直人)

写真=加速管を収納する「クライオモジュール」と呼ばれる装置(試作品)の断面。加速管のほか液体ヘリウムを送り込んだり、回収したりする管なども取り付けられる
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tanko 2017-11-15 12:20
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画を巡り、研究者による国際組織は今月「ステージング」と呼ばれる段階的な建設方針を了承した。新方針に準じて北上山地に建設した場合、一関市東部に施設全体が収まり、奥州市内にILC本体は当面造られないことが予想される。とはいえ、ILC本体のみで国際研究都市が成り立つわけではなく、居住地域や教育設備などさまざまな機能を周辺に配置しなくてはならない。奥州市の誘致関係者は「市域に入るか否かによって、ILCと共に歩む姿勢が変わるものではない」と強調。日本政府の国内誘致判断が来年に迫るとされる中、国際研究施設を迎え入れるにふさわしい都市づくりをより具体的に検討していく必要性を訴える。
(児玉直人)

 「ステージング」は、素粒子の衝突現象を捉える検出器を中心に、両端へ直線10km、全長約20kmによる規模で実験をスタートさせ、段階的に施設規模(全長距離)を拡張していく手法。当初は全長約30kmでの始動を想定し、将来的に約50kmまで伸ばす構想を描いていたが、始動時の規模を一段階短く設定することで、約1兆円とされる初期投資コストの抑制を図る狙いがある。
 ILCの具体的な建設場所や施設の配置場所については正式に公表されていない。日本政府に至っては北上山地を候補地と認めているわけでもないが、本紙はこれまで研究者らが示してきた諸資料などを基に、ステージングで示された全長20kmの施設規模を推測した。
 すると、南端は一関市の室根山付近、北端は阿原山南側の一関市大東町鳥海地区という姿が浮かび上がった。ちなみに全長約30kmに拡張されると、北端部は江刺区伊手の中心部南側、同50kmだと市立人首小学校の北西にまで達する。
 阿原山からほど近い江刺区の伊手地区センター。2013(平成25)年に、ILCに携わる国内外の研究者らが視察に訪れたことがある。地質調査等に伴う地元向けの説明会では、「ぜひ実現を」という住民の期待感が漂った。
 境田洋春センター長は「伊手地区の地下にILCができるという大きな期待がある」と語る。地上からは見えない地下に造る実験施設とはいえ、世界最先端の研究が「わが地元」で行われているという誇りは、ある意味で地域住民の力にもなり得る。
 「ソフト面に気持ちの高まりをシフトして、地域の子どもたちの将来にILCをどう生かせるか、地域として何ができるか、みんなで考えていかなくてはいけない。そのためにも、政府が早く誘致を判断してほしい」と願う。
 来年3月で任期満了を迎える市議会。ILC特別委員会の渡辺忠委員長は、ステージング方針を踏まえ議会としての協議や国への要望活動の実施を検討している。「一番良くないのは『奥州市にILCが届かなかったから、これで終わり』という雰囲気になり、受け入れやまちづくりに対するトーンが下がってしまうこと」と警戒。「研究者の住環境や関連企業の受け入れなど、周辺部が果たすべき役割、市民や地元企業が活躍できる場を形成しなくてはいけない」と訴える。

図=ILCの建設想定エリア
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tanko 2017-11-11 21:30
 奥州市江刺区東部を含む北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)について、世界の主要物理学者らによる二つの組織は日本時間の10日未明、「ステージング」と呼ばれる段階的な建設方針について、正式に支持する声明を発表。日本が主導権を持った国際プロジェクトとして時宜を得て実現することを奨励した。世界の研究者たちから、あらためて日本政府側にILC誘致のゴーサインを求めるボールが投げ掛けられた格好だ。

 声明を発表したのは、世界主要加速器研究所の所長や研究代表者らで組織する「国際将来加速器委員会(ICFA)」と「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」。両組織は、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が提案していたステージングについて協議していた。
 ステージングを支持する声明は、同セミナー最終日の9日午前11時すぎ(日本時間10日午前2時すぎ)に発表された。日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)によると、今セミナーでICFA委員長職を退くヨアキム・ムニック氏(ドイツ電子シンクロトロン研究所)は「世界の主要な素粒子物理学研究者の意見が、このように一致したことは非常に喜ばしい。素粒子物理学はヒッグス粒子の発見のような、世界の注目を集める目覚ましい成果を挙げてきた。次のステップは、より強力な加速器を用いて根源的な謎をより深く解明するためのさらに国際的な取り組みとなる。世界の科学者はこの心躍る未来に向け一致団結して取り組んでいく」と述べたという。
 ステージングの正式支持を受け、文部科学省のILC有識者会議は、声明やステージングの内容を精査した上で、次回以降の協議を進める見通し。東北ILC準備室による地元受け入れ態勢の方針については、年内にも公表できるよう調整を進めるという。


 【解説】 加速器を使った素粒子物理の実験では、加速させる粒子に与えるエネルギーの大きさによって、研究対象が異なってくる。物理の世界では、電子1個が1ボルトの電圧で加速される時のエネルギーの大きさを「1電子ボルト」と呼んでおり、単位は「eV」が用いられている。素粒子実験施設の加速器では、光の速さに近い状態で粒子を加速させるため、エネルギーの数値も膨大となる。
 「ステージング」では、全長20kmの施設規模からILCをスタートさせるが、この規模で得られるエネルギーの大きさは250ギガ電子ボルト(250GeV)。ギガは「10億」の意味なので、250の10億倍のエネルギーが得られる。
 250GeVのエネルギー領域では、物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」の詳細な研究が可能。「暗黒物質(ダークマター)」と呼ばれる未知の素粒子が見つかるかもしれないという。
 加速器の台数を増やし、全長をさらに伸ばせば、エネルギーはさらに大きくなる。当初計画の30kmでは、ヒッグス粒子を二つ同時に生成できる。南端が宮城県気仙沼市まで達する50kmは、人類にとって未知の領域だ。
 空港の滑走路を延伸するような施設拡張は、直線型加速器施設であるILCだからこそ可能なもの。欧州合同原子核研究機構(CERN、スイス)や中国で計画されている大型加速器は、円形のため、同様の拡張をするには、直径を長くした施設を新造するしかない。拡張性が劣る上、ILCでは30km以上の拡張で実現できる高エネルギー領域の研究は不可能という。
 「段階的」「多段化」という意味合いを持つ「ステージング」。研究者らは、規模縮小やILCのレベルを下げることではないと強調する。
 だが、ILC誘致をめぐるこれまでの動向では、約1兆円のコストに対する懸念が出たこともあって、「ステージング」より「コストカット」「ダウンサイジング」という印象がぬぐえない。良かれと思い取り組んだ支出抑制が、「ILCの魅力低下」と映ってしまっては元も子もない。
 「ILCの価値は何ら変わっていない」。今、必死に熱意を見せるのは候補地の地元関係者や子どもたちではない。この分野に関係する日本や世界の研究者であろう。候補地周辺や一部の研究者のみならず、日本社会全体にILCの必要性を語り掛けてほしい。
(児玉直人)
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tanko 2017-11-10 11:00
 ILCでは電子と陽電子という素粒子を光速に近いスピードでぶつけるという話でした。でも、それってとても危ないんじゃないですか? 原発事故みたいなことが起きないのか心配です。
A:原発事故のように内部が溶ける(メルトダウン)ようなことは考えられません

 電子と陽電子はほとんど重さがない素粒子(計算すると約0.00000000000000000000000000000091kg)です。たとえ光の速さに近い速度で衝突しても、発生するエネルギーは、0.3ジュールぐらいしかありません。1立方cm(1奸砲凌紊硫硬戮鬘嬰拆紊欧襪里防要なエネルギーが4.2ジュールですから、非常に小さなエネルギーでしかないことが分かります。従って電子と陽電子の衝突によって発生するエネルギーの大きさに対する心配はありません。
 むしろ衝突しなかった電子や陽電子が持っているエネルギー(熱)を下げる方が課題です。このエネルギーは「ビームダンプ」と呼ばれる水槽によって処理されます。
 放射線の発生と被ばく対策も気がかりだと思います。ILCは放射線発生装置であることには間違いありません。運転中、加速器トンネル内は電子のエネルギーが高いため、電子ビームがパイプや容器の壁に当たったりすると「制動放射線」と呼ばれる一種のX線が放出されます。
 衝突しなかった電子と陽電子は、先ほど紹介した「ビームダンプ」という水槽に導かれ消滅しますが、水槽の水と反応し、わずかですが放射性物質が生成されます。しかし、これらの放射性物質は数時間足らずでなくなります。
 最も特徴的なことは、これら放射線の発生は、加速器の運転停止とともに止まります。原発事故のように、人間の手で止めたくても止められない――というようなトラブルはまず起きないと思います。
 また加速器トンネル内の空気中のチリなどが、放射化して放射線を出す物質になる場合があります。しかし、これら放射性物質が外部に直接放出されることはありません。加速器トンネルやアクセストンネル内の空気は、必ず排気ダクトを経由して放出されることになっています。この排気ダクトにはフィルターや放射線モニターなどが設置されおり、これによって一般大気への汚染空気の排気の監視や除去が行われます。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

“番記者”のつぶやき
 「衝突」「ぶつける」という言葉だけを聞くと、まるで交通事故でも起きたかのような印象を受けますが、電子や陽電子の特長やエネルギーに関する知識が分かれば、特段怖いことではないと感じることができるのではないでしょうか。
 放射線管理に関しては、東京電力福島第1原発事故で私たちが受けたショックが大きいため、特に心配に思う人が多いと思います。原発のような事故がILCで起きることは、システム上、考えにくくても「なぜ大丈夫なのか」「万が一のときはどんな対策を取るのか」ということは、特に科学の専門知識がない一般の人たちに向けて丁寧に説明し、理解してもらう努力を続けてほしいものですね。
(児玉直人)

写真=高エネルギー加速器研究機構にある超伝導リニアック試験施設(STF、Superconducting RF Test Facility)の入り口。停止中は放射線が出ないので中に入れます。中に人がいる時には、装置が動かないようにするなど、厳重な安全対策が取られています(茨城県つくば市)

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