岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。
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tanko 2017-3-18 13:30
 奥州市は17日、2017(平成29)年度定期人事異動を内示した。ILC推進室は、総務企画部政策企画課の課内室だったが、同部の部内室に格上げさせ、専任職員を1人増やし3人体制(1人は部長級)とする。室長=総務企画部参事兼務=には千田良和氏(57)が就く。
 新年度は、奥州市の最上位計画である第2次市総合計画によるまちづくり元年。定期人事異動に当たり、同計画に掲げる2戦略プロジェクト(人口、ILC)の中長期的取り組みに加え、新市立病院建設や空き家対策など新たな取り組みに対応するための組織新設や職員体制の強化を図る。
 ILC(国際リニアコライダー)については新年度、国が誘致に関する方針を決定する時期と想定され、即応できる組織にするとともに、関係機関・団体との連携を強めながら市ILCまちづくりビジョンを確実に推進する。
 ILC推進室長に就任した千田良和氏は、東海大学卒で1982年採用。総合政策部政策企画課東京事務所長、農林部農政課長、都市整備部土木課長、国体推進室長=総務企画部参事兼務=などを歴任している。
 現ILC推進室長の朝日田倫明氏は財務部財政課長兼競馬対策室長となる。

写真=奥州市ILC推進室長に就任する千田良和氏
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tanko 2017-3-15 9:50
 宇宙空間にあるブラックホールから、電気を帯びたプラズマ粒子が勢いよく飛び出し続ける「ジェット噴出」と呼ばれる現象が存在する。何でも吸い込むはずのブラックホールに起きている奇妙な現象の解明に結びつく研究に、水沢区星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の秦和弘助教(33)が尽力。研究成果が評価され、本年度日本天文学会の研究奨励賞を授与されることになった。
(児玉直人)

 秦助教が観測したブラックホールは、おとめ座の方向にある「M87銀河」の中心部にあり、地球から約5400万光年の場所に位置する。質量は太陽の約��億倍。強大な重力が発生しているはずだが、それに逆らうようにジェット噴出が起きている。矛盾するような現象が起きる理由について、いくつかの理論が提唱されていたものの、それらを検証する観測成果はこれまでなかった。
 秦助教が観測に使用したのは、アメリカ国立電波天文台が運用している超長基線アレイ(VLBA)。10台の電波望遠鏡を連動させ、高い精度で行った。
 その結果、ジェット噴出がどこから始まっているか精密に測定することができ、同時にブラックホールの位置も把握できた。これまでは、重力が強すぎてプラズマ粒子を観測することができず、噴出の源流部分の詳細が確認できなかった。秦助教は「東京ドームの座席を知りたいのに『東京都文京区にあります』と言われているようなもの。今回の成果は、座席番号までしっかり把握できたのに等しい」と説明する。
 このほか、ジェット噴出の形状を精密に観測することもできた。同天文学会は「長年論争となっていた電波で見えるジェット噴出の構造とブラックホールの位置関係に明確な回答を与えた」「今後の研究に大きな影響を与える」と功績をたたえる。
 島根県出身の秦助教は総合研究大学院大学を卒業後、イタリア国立宇宙物理学研究機構研究員を経て国立天文台に。昨年から水沢で研究生活を送っている。「水沢は自分の故郷と同じような雰囲気で、すごく気に入っている。機会があれば多くの地域の人たちに自分たちの研究を伝えたい」と話している。
 賞の授与と記念講演は、15日から九州大学で開かれる日本天文学会春季年会の中で行われる。

写真=日本天文学会研究奨励賞に輝いた国立天文台水沢の秦和弘助教
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tanko 2017-3-14 10:10
 旧緯度観測所本館を改修した水沢区星ガ丘町の奥州宇宙遊学館。歴史を刻み込む洋館が、鮮やかな緑色にライトアップされ、見る人を幻想的な世界へといざなっている。
 全国29都市39カ所のランドマークを光で照らし、失明の最大原因「緑内障」を広く知ってもらおうと、日本緑内障学会が展開する啓発イベント。
 胆江地区では、奥州宇宙遊学館のほか、隣接する国立天文台水沢VLBI観測所の直径20m電波望遠鏡もライトアップ。闇夜に浮かび上がる雄姿は圧巻だ。18日まで実施され、点灯時間は午後6〜9時。

写真=緑色にライトアップされる奥州宇宙遊学館
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tanko 2017-3-12 16:10
 北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の早期実現のため、ILCを推進する研究者らは今年5月までに、直線20kmの加速器によって実験をスタートさせるコストダウン策をまとめる。東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授が11日、市文化会館(Zホール)で開かれた講演会で明らかにした。約1兆円とも想定されていた初期コストから30%の削減が可能といい、各方面から懸念されている巨額費用の問題解消を目指す。

 講演会は、水沢区を拠点とする民間のILC誘致団体・いわてILC加速器科学推進会議と、東京の一般社団法人国際経済政策調査会が主催。山下特任教授は「早期実現に向けた最終コーナーの状況」と題して講演し、一般市民や県立水沢高校の生徒ら約500人が聴講した。
 ILCを実現する上で大きな課題となっているのが巨額な建設コスト。多額の税金を使うことに国民や海外主要国の理解が得られるか、他の学術分野の研究活動に支障を与えないかという懸念の声が上がっていた。
 コスト問題がILC早期実現の妨げにならないよう、研究者らは昨年12月、盛岡市で開かれたILC関連の国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」の中で、直線20kmの距離で建設する新方針を打ち出した。当初、ILCは直線31kmの加速器建設を想定し、将来的には55kmに伸ばす予定だった。
 山下特任教授は「既存の円形加速器と違い、直線加速器のILCは後で距離を伸ばせるというメリットがある。これに、装置性能を上げるなどの取り組みを反映させれば、30%の削減が見込める」と強調。「5月までに取り組みをまとめる予定で、誘致実現の可能性は格段に上がる」と述べた。
 東日本大震災から6年の節目であることにも触れ、「ILCが震災復興にどれだけ役立てられるのか、将来に向けてできることを考え、進めていきたい」と決意を示した。

写真=ILC誘致の最終局面に向けた動きについて説明する山下了特任教授

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復興のシンボル 実現誓い黙とう

 水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)では、国際リニアコライダー(ILC)に関連する講演会開催中に、聴講者全員が黙とうをささげた。司会から事前に黙とうを行う旨が伝えられ、東京大学の山下了特任教授による講演を中断。参加者約500人が起立し、1分間の黙とうをささげた。ILCは「東北復興の象徴」とも言われており、関係者は被災地復興にも寄与するような壮大な実験施設と国際研究都市の早期実現を願った。
 会場には小沢昌記市長、高橋由一町長の姿もあった。

写真=黙とうをささげる毅味湛岷蕾颪猟姐崋
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tanko 2017-3-10 21:20
縮小版で繰り返すテスト

 奥州市内中学生たちの研修の様子とともに、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)の協力を得て、国際リニアコライダー(ILC)関連装置の開発状況を特別に取材することができた。本連載の最終回に当たり、ILC実現に向けた取り組み状況に触れる。研究者や技術者たちは、世界に例のない巨大実験施設の実現に向け、ILCの縮小版とも言える実験設備でテストを繰り返し「本番」に備えている。

 奥州の中学生たちがせっかくKEKを訪れるのだから、ILCに関する場所も見てほしい――と内心では思っていたが、残念ながら今回の予定には組み込まれていなかった。生徒たちが奥州市出身の小野正明名誉教授の講義を受けている最中、一行から離れ広報担当者の案内で敷地内にある実験施設へ向かった。
 KEKの実験施設の多くは放射線管理区域となっており、施設内に入る際は入場人数や目的などを事前申請する必要がある。放射線管理業務の事務所で、放射線に関する注意事項が記された書類を読み、サインするよう求められた。さらに、胸ポケットに取り付けられる小さな放射線量計を渡され、スイッチを入れるよう指示があった。こうした厳重な管理環境は、ILCが実現した場合も当然導入されるであろう。
 手続きを終え、最初に訪れたのは先端加速器試験施設(ATF、Accelerator Test Facility)。ILCで使用する電子と陽電子のビーム(粒子の塊)をいかに実験に適した形に作り上げるか、実験と研究を進めている。「ミニILC」とも呼ばれおり、施設内の装置をそのまま拡大させれば、ILCの一部ができてしまうという感じだ。
 ILCは電子と陽電子の衝突現象を調べ、宇宙誕生の謎や物質の基本構造解明を目指す。しかし小さな粒子同士をぶつけるのは至難の業。数知イ譴藤何佑向かい合い、パチンコ玉を思いきり投げてぶつけようとしても、よほどコントロールが良く、タイミングが合わなければぶつからない。
 衝突が起きるまで電子、陽電子を生成し加速し続けても、その頻度が低ければ研究に有益なデータを得るまでに時間がかかる。同時に施設稼働のコストもかさむ。そこで効率よく衝突できる質のいい電子、陽電子ビームを作る技術が求められる。
 具体的には、生成時には進行方向がばらばらのビームを列の整った状態に仕上げ、さらに衝突点の直前でビームの密度を極限まで高くする。つまり粒同士がきれいに整列した状態で進み、かつ互いの間隔が狭い状態であれば、衝突する確率が上がるという仕組みだ。
 ATFではまず電子を生成させ、全長70mの線形加速器によって加速させ、電子ビームのエネルギーをアップさせる。電子ビーム一つ塊の中に、約100億個の電子の粒が入っている。やがて、円周状に配管した「ダンピングリング」と呼ばれる部分に到達。ILCで言えば、中心部分に配置される円形のトンネル部分だ。ATFのダンピングリングは1周140mで、ビームはわずか0.3秒の間に60万〜70万周する。周回を終えたビームはダンピングリングを抜け出し、レンズで光を集めるのと同じ要領でビームの大きさをギュッと小さくし、密度を高める。
 ILCでは6nm(1nm=0.000000001m)までビームを絞り込む。ATFの装置規模に換算すれば37nmまで絞り込みができればよい。現在、41nmまで絞り込みができており、これだけでも世界一の精度だという。
 ATF担当の照沼信浩教授は「ほぼゴールに達している。次は『いかにして衝突させるか』がテーマになってくる。わずかな地面の揺れを補正する技術が求められる」と話している。
 次に訪れたのは超伝導リニアック試験施設(STF、Superconducting RF Test Facility)。電子、陽電子のビームを光速に近い状態まで加速させる加速器「クライオモジュール」やその周辺設備を開発している。
 ビームが駆け抜ける加速空洞は、液体ヘリウムによってマイナス271度まで冷やされる。電気抵抗がほとんどない超伝導(超電導)状態となり、消費電力をなるべく抑え、効率よくビームを加速させることができる。
 加速空洞は内部にわずかなホコリがあるだけで、実験に影響が出る。また高価な金属「ニオブ」を使用しているため、そう簡単に新品交換するわけにもいかない。STFではメンテナンス技術の確立や、クリーンな環境を保ったままクライオモジュールを組み立てるための方法などについても、よりよい方法を検討している。
 ILCを実現する上でネックとなっているのがコスト面。しかし、研究者や技術者たちはただ単に良質な研究を求めているだけではなく、効率性と低コストも意識しながら壮大なプロジェクトの実現に挑んでいるとあらためて感じた。

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※一部写真はILC概略図と一緒にご覧ください


ILCの概略図((C)ILC GDE)


ATFの電子ビーム生成装置付近の様子。生成された電子は、写真左手前から奥に向け、全長飫辰猟樟加速器を駆け抜ける(ILCでは概略図の「A」の部分に相当)


円周状に加速器が配置されたダンピングリング。電子ビームは矢印(1)の方向から入り込み、壁の向こう側を回り込んで矢印(2)のように進んで来る(ILCでは概略図の「B」の部分に相当)


電子ビームを極限まで小さくする最終収束システム。八角形の枠の中に見える4個のブロックは電磁石(ILCでは概略図の「C」の部分に相当)


電磁石の台座は、地面の揺れをコンピューター制御で補正できる構造になっている。並んだパイプの間隔を変えることで、逆三角形をした台座の部分が上下する


STF地下のクライオモジュール実験室入り口。放射線が発生する装置稼働中は立ち入ることができないため、厳重なセキュリティーと安全対策が施されている


黄色いボディーが特徴のクライオモジュール。ILCを建設するときには直径1m、全長12mの単体を1000〜2000台の規模で量産する必要がある(ILCでは概略図の「D」の部分に相当)
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tanko 2017-3-9 21:00
 外国人市民に伝わりやすい日本語の使い方について学ぶ奥州市主催の「やさしい日本語講座」はこのほど、江刺区の奥州市役所江刺総合支所1階多目的ホールで開かれた。行政関係者や一般市民ら50人が参加。自治体国際化協会地域国際化推進アドバイザー・松本義弘さんが、やさしい日本語の定義や、災害・緊急時に伝える具体的表現などについて分かりやすく解説し、多文化共生への理解を深めた。
(稲田愛美)

 奥州市在住の外国人が増加し、地域の国際化が進む。素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を見据え、外国人研究者らを受け入れる環境づくりも求められている中、日本語で分かりやすく伝える手法を学び、国際化や多文化共生につなげようと初開催した。
 松本さんは、阪神淡路大震災発生時、外国人市民が日本人より1%多く死亡したことを例に「震災後の避難先で亡くなった人も多く、これは情報が届かなかったことが原因の一つ。必要なことや困っていることを共有し、互いに情報交換することが生き延びることにつながる。一度により多くの人に分かりやすい情報を伝えられる言葉が、やさしい日本語」と語り掛け、特にも自治体が発信する行政用語の難しさを指摘した。
 参加者は、例文をやさしい日本語に変える作業に挑戦。話し言葉、もしくは書き言葉として伝わりやすい表現を思案した。
 「常用薬」については「『いつも飲む薬』でも間違いではないが、『毎日使う薬』の方がより良い。毎日のほうが具体的だし、薬は飲み薬以外にもある」と松本さん。参加者から多種多様な回答が出され、「やさしい日本語に正解はない。伝わればそれで正解」と、テクニックより伝えようとする心の大切さを強調した。

写真上=解説する松本義弘さん
写真下=やさしい日本語の表現の仕方について理解を深める参加者ら
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tanko 2017-3-5 10:20
 空想科学(SF)小説を通じて国際リニアコライダー(ILC)計画を身近に――。ILCを舞台に日本のSF作家3人が書き下ろした小説単行本「ILC/TOHOKU」がこのほど、早川書房=東京都千代田区=から出版された。大型研究施設の姿やそこに息づく人間ドラマをユニークな視点で描き、読む側の想像力をかき立てる。定価1500円(税別)。

 北上山地への誘致が期待される素粒子物理学研究施設ILC。これまでは研究の意義や施設概要を解説する文庫本などが中心だったが、本書ではSF小説の形でILCを取り上げている。野尻抱介作「新しい塔からの眺め」、柴田勝家作「鏡石異譚(きょうせきいたん)」、小川一水作「陸(くが)の奥より申し上げる」の3作を収録している。
 「新しい塔│」は、ILCに憧れ米国から訪れた若手女性研究者が主人公。ILC一般公開日、一人の少年とその母親と知り合った彼女は、少年の自宅近くの記念館に案内され、ある人物の名前を知り影響を受ける。
 「鏡石異譚」は、未来の自分に遭遇する奇妙な体験をした少女が、ILCのベテラン研究者と出会う物語。「陸の奥より│」は、ILC建設中止を要求する謎の老人と対峙する工事現場監督を中心としたストーリー。歴史ミステリーの要素も織り交ぜながら展開していく。
 あくまで登場人物や作中で起きる出来事は「空想」だが、研究施設や周辺地域の雰囲気、物理に関するキーワードが随所にちりばめられており、ILCが実現した際のイメージと重ね合わせながら読み進めることができる。物理の専門用語もたくさん登場するが、欄外に解説が記されている。
 県ILC推進協議会は「県内書店でも取り扱っているので、ぜひお買い求めいただき、ILCへの理解を深め、広げてもらえれば」と呼び掛ける。

写真=SF作家3人の作品を収録した単行本「ILC/TOHOKU」
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tanko 2017-3-5 10:10

写真=自身の肖像画を前にする木村栄博士(前列左から2人目)と画家の橋本八百二氏(同3中央)

 緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)で明治―昭和初期にかけて撮影されたガラス乾板写真の展示会が4日、同観測所=水沢区星ガ丘町=敷地内の奥州宇宙遊学館で始まった。訪れた市民らの中には、写真に写っている人物の家族や知人も。モノクロながらも表情が鮮明に分かる一枚一枚を食い入るように見つめ、思いをはせた。県議会議長などの要職も務めた紫波町出身の画家・橋本八百二(やおじ)氏が、木村栄(ひさし)初代所長らと写っている写真もあり、どのような人物が天文台の関係者と接していたか、垣間見ることができる。展示は5日まで。
(児玉直人)

 同写真展は、国の科学研究費(科研費)事業「国立天文台水沢収蔵資料から読み解く緯度観測所120周年」を推進している国立民族学博物館=大阪府=文化史料研究センターでプロジェクト研究員を務める馬場幸栄さんが中心となり開催。同観測所の一室に保管されていたガラス乾板を復元し、地元住民に公開しながら、当時の観測所の様子を記録する狙いがある。
 昨年3月、同館で初めて写真展を開いたが、今回は観測所を支えた人々にスポットを当て展示。初日は馬場さんによる講演もあり、展示写真に写っている人物について解説した。
 初代所長で「Z項」を発見した木村博士は1930(昭和5)年、還暦祝いとして職員から自身の肖像画を贈られている。復元した写真には、肖像画の作者・橋本氏を中心に木村博士らが写っているものもあった。肖像画は現在、同観測所敷地内の木村栄記念館に展示している。
 数々の集合写真の中で目につくのが、はかま姿の女性たち。計算業務などを担当していたと思われる。当時としては女性の割合が高い職場だった。しかし、管理職でないことや存命の天文台OBに聞いても名前まで覚えている人は少ないといい、詳細な情報は乏しい。
 写真展には、天文台OBや関係者の家族らも駆け付けた。元小中学校長の平京子さん(78)もその一人。当時、技師を務めていた平三郎氏が義父に当たる。
 三郎氏は、緯度観測用装置「眼視天頂儀」の接眼レンズに、天体位置基準線となるクモの糸を張り付ける名人として知られているが、機械関係に詳しいことから、観測所内での写真撮影も手掛けていた。今回復元した写真にも、三郎氏が撮影したと思われるものが多い。
 京子さんによると、亡夫の平芳治さんと一緒に、テニスをよくしていたという。「緯度観測所の仕事とテニスをしている姿が今も記憶に残っている。本などに載っている写真ぐらいしか見たことがなく、このような形で当時の様子を見させていただき、とてもうれしい」と感慨深げに話していた。
 5日は午前10時から午後5時まで開催(入場は午後4時半まで)。入場無料だが、常設展示を見学する場合は別途入館料(大人200円、子ども100円)が必要。問い合わせは同遊学館(電話0197・24・2020)へ。

写真=復元したガラス乾板写真に見入る人たち
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tanko 2017-3-3 20:50

写真=緯度観測所本館(現・奥州宇宙遊学館)前で撮影された集合写真(A…木村栄初代所長、B…川崎俊一2代目所長、C…山崎正光技師、D…池田徹郎3代目所長、E…平三郎技師)

 奥州市水沢区星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で保管されていたガラス乾板写真を復元し、地域住民らに公開する特別写真展「ガラス乾板写真とともに語り継ぐ緯度観測所を支えた人々」は、4日から同観測所に隣接する奥州宇宙遊学館で開かれる。昨年実施した展示会の第2弾。同観測所の前身「緯度観測所」で働いていた人物に注目し、来場した地域住民から情報を得ながら、どのような人たちが観測を支えていたのかを解き明かしていく。5日まで。

 国の科学研究費(科研費)を活用した「国立天文台水沢収蔵史料から読み解く緯度観測所120周年」と銘打った事業。国立民族学博物館=大阪府=の文化史料研究センターでプロジェクト研究員を務める馬場幸栄さんが中心となり、同天文台と同遊学館の協力を得て推進している。
 ガラス乾板は、ガラス板表面に写真乳剤(感光物質)を塗ったもので、フィルム写真やデジタルカメラの登場でほとんど見る機会がなくなった。明治から昭和初期の同観測所では、天体写真のほか、周囲の景色や職員なども一緒に記録していた。
 馬場さんらによって見つけられたガラス乾板は550枚。前回は敷地内の建物や景色も紹介したが、今回は人物写真にスポットを当てる。乾板は劣化が進むため早期に復元保存する必要がある一方、撮影されたのが明治から昭和初期とあって、当時を知る人が存命のうちに聞き取り調査をしなければ記録する意味がないという。
 復元したものの中には、初代所長でZ項発見に貢献した木村栄博士と研究者、技師、着物姿の女性職員の集合写真がある。その中には2代目所長の川崎俊一氏、3代目所長の池田徹郎氏、技師の平三郎氏と山崎正光氏も写っている。平氏は、緯度観測用眼視天頂儀の接眼レンズに天体位置基準線となるクモの糸を張り付ける名人として知られており、高知出身の山崎氏は日本初の彗星発見者として天文学史に名を残している。
 「このほかにも『これはうちのおじいちゃん、おばあちゃんだ』という人もいるかもしれない」と馬場さん。それぞれの人物を解き明かしていくことで、「緯度観測所がどんな立場の人たちによって支えられていたのかを記録してきたい」としている。
 展示会は4日が午後1時から同5時、5日は午前10時から午後5時まで。初日の午後1時から馬場さんによる講演も行う。展示会の観賞は無料だが、館内の常設展示コーナーに入る際は入館料が必要。
 問い合わせは同遊学館(電話0197・24・2020)へ。
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tanko 2017-3-3 20:40
「異」の壁越え 心通わす

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)での研修に加え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター、つくばエキスポセンターを見学し終えた生徒たちは、1月6日に奥州市へと無事戻ってきた。それから2週間余り過ぎた同25日、奥州市役所江刺総合支所多目的ホールで研修報告会が開かれた。保護者や学校関係者、市議会議員らが見守る中、3日間の様子を堂々と発表。緊張の報告を終えた生徒たちの表情からは自然と笑みがこぼれた。
 水沢中の菊池円さん(14)は、KEKの放射光実験施設「フォトンファクトリー」で行われたチョコレートの食味改善が印象に残ったという。「チョコレートと科学が関係あるとは思っていなかったので驚いた。(KEKでは)スケールの大きな話がたくさんあったが、自分たちの生活もどこかで関係しているのが分かった」と振り返る。同じように、それまで非日常的なものと受け止めていた科学研究や実験が、何らかの形で身近に関わっていることを実感した生徒たちは多い。
 科学的な知識に加え、生徒たちが知らず知らずに身に付けたのは、仲間同士が互いに認め合い、協力することの大切さであろう。
 今回訪問した研究機関には、国内外さまざまな所から人材が集まっている。生まれも育ちも、接してきた文化、価値観、宗教観、そして言葉も異なる。研究者や技術者ばかりでなく、事務職や広報業務、警備、食堂・物販などそこで働く人の職種も多種多様だ。
 これと同じような構図が、参加した生徒たちにも当てはまっていたような気がする。それまで異なる地域で育ち、異なる規模の学校で勉強してきた31人。学年と使用言語は同じであっても、やはり「異」に接する時の遠慮、もどかしさみたいなものがあったと察する。思春期のまっただ中であれば、なおさらかもしれない。3回の事前研修を経て本番に臨んだとはいえ、研修初日はどこかよそよそしい雰囲気があった。
 ところが、各研修先で科学研究の現場を目の当たりにする時間を共有すると、そこはやはり同じような志を持って集まった者同士。気が付けば互いに打ち解け合い、帰りのバス車内は初日とは真逆のように会話が弾んだという。
 国際リニアコライダー(ILC)誘致運動の中では「波及効果」に対する関心が高く、プロジェクト実現を呼び寄せるための説得材料としても使われる。この場合、経済効果や地域振興効果を指す割合が大きいが、金額や雇用、交流人口の増減といった数字だけでは捉えきれない効果も存在する。その一例を挙げるとすれば、今回の中学生たちが経験したような精神面に与える好影響かもしれない。
 本連載のタイトルにもなっている「科学する心」について、旧水沢緯度観測所初代所長の木村栄博士(1870〜1943)が、晩年に論じたことがある。木村博士は「星の研究をしなければ『科学する心』じゃないというのは間違っている」と例示し、物事をわきまえる上では「これは何か」と、常に疑問や好奇心を持ち続けることが大切で、それが「科学する心」だと強調した。
 研修参加生徒が、必ずしも物理や宇宙科学の道に進むとは限らないにしても、「科学する心」はどのような場面にあっても必要な視点となるだろう。
 「商売ひとつするにも、難しい施設をつくるにしても、何をするにも必ず『科学する心』を持ってやらなければいけない。それだけです」と、木村博士は語っている。
(つづく)

写真上=報告会を終えほっとした表情を見せる生徒たち=市役所江刺総合支所
写真下=木村栄博士の「科学する心」。1941年に録音された肉声が、国立天文台水沢キャンパス内の木村栄記念館で聞くことができる

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