人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-9-9 17:30
 大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県)の次期機構長候補者に、東京大学大学院の浅井祥仁教授が選ばれた。
 KEKは、北上山地が有力候補地とされる実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関わる活動を展開している。
 浅井教授は東京大・素粒子物理国際研究センター長も兼務。研究者組織「ILCジャパン」の代表も務めており、今年6月には仙台市内でILC計画の意義に関する講演もしている。
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tanko 2023-9-1 15:30

写真=水沢VLBI観測所本館内で保管されている記録用紙原本。左上に「EW Sep 1―2 1923」とあり、1923年9月1日から2日にかけての24時間記録であることを示す


 明治以降の日本では最大の地震被害をもたらした関東大震災(関東大地震)から、1日で100年となる。水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)には、緯度観測所時代に観測された同地震の記録が残されている。資料から推定される同観測所の震度は2〜3。関係する資料の一部が、観測所に併設する木村榮(ひさし)記念館で公開されている。
(児玉直人)

 同地震は1923(大正12)年午前11時58分に発生。死者・行方不明者は推定10万5000人と人的被害は大きく、その教訓を生かすため、毎年9月1日が「防災の日」と定められている。
 地球の極運動解明を目指していた同観測所。地震と極運動との関係を把握するため、「大森式地震計」が開所から間もない、1901年に導入された。関東大震災が発災する22年前のことだ。
 この地震計は、日本の地震学創始者と言われている大森房吉(1868〜1923)が考案。黒いすすを付着させた専用の記録用紙に揺れの波形を描く。天文台OBで奥州宇宙遊学館の花田英夫・企画開発主幹は、「記録用紙を円筒状のドラムに巻き付け、ゼンマイでゆっくり回転させることで、24時間記録ができる。当時としては画期的な装置だった」と語る。
 地震計は、現在の水沢VLBI観測所本館(3代目本館)南側にかつてあった建物の中に設置。南北と東西の動きを把握するため、2台の地震計をL字に置いた。このうち1台が木村榮記念館内に常設展示してあり、もう1台は敷地内倉庫に支柱のみ保管されている。
 関東大震災発生時の波形記録の複製も記念館に展示しているが、原本は3代目本館の一室に、記録ノート(検測簿)と共に保存されている。
 記録ノートによると、緯度観測所で最初の揺れを検知したのは午前11時59分38秒。ところが、次の39秒以降は空白になっている。代わりに「針脱出」「線混雑」「計算不能ナリ」などの文字がある。
 木村栄記念館ではミニ企画展として、記録ノートの一部、津波や地変を現地調査した緯度観測所の池田徹郎技師(のちに同観測所3代目所長)による報告書の複製などを紹介。管理を担当している水沢VLBI観測所の蜂須賀一也・特定技術職員は「眼視天頂儀の観測野帳41年分の展示も始めたので、ぜひ見てほしい」と話している。同記念館は奥州宇宙遊学館同様、火曜休館となっている。


写真=関東大震災の揺れを水沢で感知した、旧緯度観測所の大森式地震計。木村榮記念館に常設展示されている


写真=関東大震災の揺れを記録した検測簿。午前11時59分39秒以降の記載がなく「針脱出」「線混雑」「計算不能ナリ」などと書かれている
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tanko 2023-9-1 15:20
 文部科学省は31日までに、2024(令和6)年度予算の概算要求を公表した。将来加速器の性能向上など、重要要素技術開発費に本年度と同額の7億円が要求されている。
 文科省素粒子・原子核研究推進室によると、技術開発は茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)が今年4月から5年事業で進めている。
 将来加速器の一つとして、本県南部の北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」も関係するため、“ILC関連予算”と呼ばれることもある。同室は「ILCにとどまらず、さまざまな加速器に幅広く活用される技術を開発するもの」と説明。事業名にILCと明記されているわけではなく、文科省ホームページで公表している概算要求資料にも記載されていない。
 KEKでは運営交付金(年間約140億円)の一部をILC関連に投じている。新年度は3億5000万円(本年度比8000万円増)を充当したいとの申し出がKEKからあったという。
 運営交付金は例年、ほぼ同規模で推移。同推進室は「海外研究者との共同研究が始まっているようで、実験装置の稼働時間が増えることも見込んで、交付金全体に占めるILC関係の内訳を増やした形。交付金全体の金額が大幅に増えた――というものではない」と話している。
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tanko 2023-8-22 8:50

写真=2013年8月23日、ILCの有力候補地に北上山地が決まったことを知らせるポスターが掲示された市役所本庁玄関

 素粒子物理学の巨大実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致計画を推進する研究者が、有力候補地に北上山地を選定してから23日で丸10年となる。当時は国際的な研究施設の実現に大きな期待が高まったが、他分野研究者らを交えた議論では誘致に慎重な見解が示されており、一部の地元住民は研究者や県の誘致事業に疑問を唱えている。事実上の与野党対決となった知事選(17日告示)だが、ILC計画に関しては2候補が共に誘致実現を公約に掲げる“推進派”だ。政府の動きが判然としない中、誘致関係者は機運を再度高めようと躍起だ。
(児玉直人)

 ILCは地下に建設される大型の実験施設。肉眼では確認できない素粒子の一種「電子」と「陽電子」を光速に近い状態に加速させ、衝突させる実験を行い、物質の成り立ちや起源に関する研究を行う。
 国際プロジェクトとして推進しようと、素粒子物理学の研究者らが中心となって計画。研究者グループは、振動影響などを受けにくい強固な岩盤がある場所として、北上山地と九州北部の脊振山地に絞り込んだ。両地域の地元関係者による理解促進の取り組みは、やがて誘致合戦のような様相を呈しヒートアップ。科学的な検証によって、北上山地に一本化された。
 その後も誘致実現に向けた取り組みが進行。普段は意見が対立する政治の場においても、ILCだけは与野党が超党派的に前向きな姿勢を示し続けている。
 しかし、日本政府は現在までにILC受け入れを正式表明していない。候補地もあくまで推進派研究者が決めたものという位置付けから変わっていない。
 他分野の研究者を交えた日本学術会議や、文部科学省の有識者会議の場では、予算やプロジェクトの進め方に対し慎重な意見が示されている。また、北上山地近郊の地元住民の一部からも、施設の安全性や誘致活動の在り方に対する疑問が出ている。子どもたちを誘致運動に巻き込むような活動に対しては、反対派住民だけでなく有識者会議からも批判の声が上がった。
 他分野研究者からの指摘に、推進派のリーダー的な存在として誘致運動に携わってきた県立大学の鈴木厚人学長は猛反発。今月10日に水沢で行った講演に続き、21日に盛岡市内で開かれた県ILC推進協議会の講演会でも、ここ最近の海外研究者らの日本誘致への期待沈下は、「有識者会議の見解が原因」と明確に非難した。
 「どこに建設するか」という立地問題が、国際費用分担などを巡る議論を硬直化させる要因になっているとして、有識者会議が提言した「技術開発と立地問題の切り離し」についても厳しく批判。「日本に誘致するためにやってきたことなのに、立地問題を切り離すとはとんでもない」と語気を強めた。
 岩手大学の男子学生が「具体的な構想が出ているのに、なぜ遅れているのか」と問うと、鈴木学長は「有識者会議の報告の中身があまりにもひどかったので、急に落とされた感じになった。しかし、(岩手など)地方がこれだけ受け入れる準備をしていると海外研究者に話すと驚かれる。再度盛り上げていかないといけない」と答えた。
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tanko 2023-8-11 8:50

写真=地域一体となったILC誘致活動の展開を訴えた鈴木厚人氏

 東北ILC事業推進センター代表を務める県立大学長の鈴木厚人氏(素粒子物理学)は10日、水沢東町の水沢グランドホテルで、北上山地が有力候補地とされる実験施設ILC(国際リニアコライダー)について講演した。誘致に慎重姿勢がにじみ出た文部科学省ILC有識者会議の報告に対し、「日本への期待が沈下した」と憤りを示した。鈴木氏は「地元はしっかり受け入れに向けた準備を進めているという姿勢を示せば、世界は応援してくれる。地域が一体となった活動を進めていきたい」と力を込めた。
(児玉直人)

 同センターは2020(令和2)年8月に設立。東北ILC推進協議会の内部組織だった「東北ILC準備室」を発展解消し、ILC受け入れ環境整備を具体検討している。胆江2市町を含む岩手県南、宮城県北の17市町や岩手・宮城両県、大学機関など23団体から成る。
 同日はILC計画現状説明会として、構成団体となっている自治体の関係者ら約30人が出席。この中で鈴木氏は、ILCの最新動向について語った。
 鈴木氏はILC誘致運動の経過を振り返りながら、22年2月14日付でまとめられた文科省ILC有識者会議の報告内容を批判。▽ILCプレラボ(準備研究所)段階への移行は時期尚早▽今後の見通しを明確にするような大きな進展は見られない――とした部分に関しては、「現実を無視する判断」と指摘した。
 このほか、建設場所に関わる問題を切り離し、当該分野の技術開発を進めるべきだという助言には、「ILC日本誘致は、国家プロジェクトとして幅広い意義がある。政治や民間、地域、学界が一致協力して20年以上に及ぶ活動を展開してきた」と強調。「ILCの意義やこれまでの国際推進の経緯、実績を無視したものだ」と不満をあらわにした。
 「一緒に日本誘致に期待して進めてきた海外研究者たちも、有識者会議の報告は相当ショックだった。米国の将来計画から『ILC in Japan』の文字がなくなり、米国への建設も検討すべきだとの議論が行われた」と鈴木氏。「再びオールジャパンの体制を構築し、地域から日本の未来を切りひらくつもりで、積極的に推進したい」と強調した。
 説明会では、同センター事務局長の大平尚・県ILC推進局コーディネーターが、同センターの活動状況を紹介。蝪裡圍團侫.轡螢謄ーズの平井貞義氏が、ILCを契機にしたまちづくりに係る共同研究について報告した。
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tanko 2023-7-30 8:40

本間希樹所長(左)、ジョン・トラペーガン氏(右)

 地球外知的生命体を探査するプロジェクト「SETI(セチ)」が、学術分野の垣根を越えて盛り上がり始めているという。国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(51)も、SETIに興味関心を抱く一人。さらに胆江地区に縁のある文化人類学者で、米国人のジョン・トラペーガン氏(61)も関連論文を複数発表するなど、文系分野からもSETIに注目が集まっている。
(児玉直人)

 SETIは地球外知的生命体探査(Search for Extra Terrestrial Intelligence)の略。人類と同等、またはそれ以上の文明や能力を持った知的生命体がいるという仮定の下、彼らが発している電波を地球上で受信し、その存在の有無を確かめる試み。いわゆる「宇宙人探し」だ。
 本間所長によると、1995年に太陽系外惑星が発見されて以降、盛り上がり始めてきた研究分野。かつては雲をつかむような印象があり、「SETIを研究テーマにしている」と口外したものなら、偏見の目が向けられていたという。しかし、現在では科学的なアプローチ方法によって、真剣に研究が進められている。同観測所が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA(ベラ))でも、通常の天体が発する電波とは異なる強烈な信号の有無を調べている。
 このSETIに関する研究を文化人類学の観点から注目しているのが、テキサス大学東アジア研究所長などを歴任したトラペーガン氏だ。水沢真城地区に滞在して農村社会を研究し、2018年に奥州市勢功労者表彰を受けた米国人文化人類学者、キース・ブラウン氏=ピッツバーグ大学名誉教授=の弟子に当たる。トラペーガン氏自身も民俗学研究のため水沢や金ケ崎町内に滞在経験があり、その縁で同町の女性と知り合い結婚。市国際交流協会の関係者とも親交がある。
 現在はアリゾナ州立大学のフェロー(研究員)として、10年ほど前からSETI関連の研究に従事。異文化研究で得られた見識を、さらにスケールが大きい宇宙の世界でどう生かすことができるのか探っている。「もし、宇宙からのメッセージを受け取ったとき、われわれはどう行動すべきなのか。文化人類学者として非常に興味がある」と語る。
 映画で描かれるようなファンタジックな世界に人々の興味が高まり、夢と期待を膨らませるかもしれない。しかし、注意すべき点も多い。トラペーガン氏は「地球外知的生命体に積極的にメッセージを送る『METI(Messaging to Extra Terrestrial Intelligence)』は非常に問題がある」と指摘する。
 METIについて本間所長は「相手は平和的な考えを持っているのか、人類以上の高等技術を持っているのか全く分からない」と説明。かつてこのような情報発信がされた例があり、人類滅亡に近づく行為だと批判されたこともあったという。
 海外では資産家がSETIの取り組みに対し投資する動きもみられる。「SETIが成功すれば、人類にとって最大の大革命になる。天文学だけでなく、社会学や言語などあらゆる学術分野が一気に増えるだろう。それだけインパクトが大きいし、一大政治案件にもなり得る」と本間所長。「仮に知的生命体が見つからなかったら、地球の存在がそれだけ尊いものであり、人類の在り方を見つめ直すチャンスにもなる」と話している。
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tanko 2023-7-28 8:10

写真=超小型衛星の話を高校生や一般市民に分かりやすく説明する中須賀真一教授(右奥)

 打ち上げ予定だった人工衛星「Nano―JASMINE(ナノ・ジャスミン)」の展示公開を記念した特別講演会がこのほど、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で開かれた。天文学研究から日常生活を支える各種サービスなどに至るまで、超小型人工衛星の利活用の幅が今後ますます広がりを見せる中、2人の専門家がその意義と今後の展開などについて解説。聴講者の中には高校生たちもおり、熱心に質問していた。
 ナノ・ジャスミンは天の川銀河中心部の構造解明、地球型惑星の探査を目的とした「JASMINEプロジェクト」の技術検証衛星として、打ち上げられる予定だった。しかし、打ち上げに携わる関係国の情勢不安などが影響し、宇宙に飛び立つことはかなわなかった。プロジェクトの周知広報、超小型人工衛星の学習用にと同館に寄贈された。
 講演会では、前半に国立天文台同プロジェクト長の郷田直樹教授が、プロジェクトの概要や位置天文学の基礎知識を解説。「天体の位置を測るという単純なことではあるが、対象の星が遠過ぎるので非常に難しい。天の川銀河中心の天体の距離や位置を正確に測量するのは、水沢から仙台市内にいる人の髪の毛1本よりもさらに細い大きさを見るようなもの」と説明した。
 後半は東京大学大学院の中須賀真一教授が、工学分野の視点で人工衛星の構造などを分かりやすく説明した。中須賀教授は、都内のベンチャー企業が県立花巻北高校を舞台に推進している人工衛星打ち上げプロジェクトに協力。衛星は来年にも打ち上げる予定という。今回の講演会にも同校の生徒が駆け付けた。
 「日本は大型衛星を打ち上げる路線を進んできたが、重いとそれだけコストがかかる。これからは重さ100km以下の超小型衛星の時代だ」と中須賀教授。日本人が作る弁当を例に示し「大きさが決まっている空間に、栄養バランスを考えて、さまざまな性質のある食材を入れ、見た目まで意識するのを得意としている。超小型衛星はまさに弁当箱ようなもので、世界に勝負できる」と語りかけた。
 高校生からは、ナノ・ジャスミンのように、国際情勢が衛星打ち上げに与える影響などに関する鋭い質問も。超小型衛星が持つ可能性に理解を深めていた。
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tanko 2023-7-21 19:50

画像=BHから発せられる微弱偏波(緑の波線)のイメージ=(C)国立天文台

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で研究活動している東京大学大学院理学系研究科博士課程3年、高村美恵子さん(27)=水沢在住=ら国際研究チームは、巨大ブラックホール(BH)が急成長する謎に迫る研究成果を発表した。水沢星ガ丘町の同観測所が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)を活用。同観測所の予算削減問題の影響で研究が頓挫する危機にも直面したが、無事に論文を発表できた。高村さんは「VERA存続を求めて運動してくれた地域の皆さんの熱意があったおかげ」と感謝している。
(児玉直人)

 研究チームは高村さんと本間所長、秦和弘・同観測所助教らで構成。水沢、入来(鹿児島県薩摩川内市)、小笠原(東京都小笠原村父島)、石垣(沖縄県石垣市)にあるVERA4局を連動させ、「狭輝線セイファート1」と呼ばれる種類の銀河6カ所を観測した。
 6カ所の銀河は地球から近くて8.2億光年(1光年=約9.5兆km)、遠くて76億光年かなたに位置する。それぞれの銀河には、急成長する巨大BHが存在する。
 BHが成長する上ではガスやチリが必要。高村さんらは、BH付近から出てくる微弱な偏波(振動が一定方向に偏っている電波)を高感度で観測することで、豊富なガスの存在を確認しようとした。
 2019(令和元)年夏ごろにVERAに導入された新たな装置「広帯域・偏波受信システム」を利用。偏波の高感度検出に成功し、豊富なガスがBH周辺に存在することを裏付けるデータが得られた。研究成果は米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載された。
 横浜市出身の高村さんは、3年前から同観測所がある水沢に居住。20年に起きた同観測所の予算削減問題によって、今回の研究が頓挫する危機に直面した。「VERA4局が動いてないとできない研究。予算削減で1局だけ動いても何にもならなかった。地域の皆さんがVERA存続のために動いてくれた熱意があって、今回の論文発表ができた」と語る。
 研究者と一般市民が交流するサイエンスカフェの活動もしており、研究成果や水沢の観測所が果たす役割などを伝えている。「今回の研究手法は、世界的にも先駆的なもの。今後は他国の研究者ともコラボしてBHの構造解明を進めたい」と話している。


写真=BH急成長の謎解明につながる研究成果を発表した高村美恵子さん。後方はVERA観測網を構成する直径20m電波望遠鏡
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tanko 2023-7-17 19:10

写真=宇宙へ行くことがかなわなかった人工衛星「ナノ・ジャスミン」の実機を眺める子どもたち

 ロシアによるクリミア半島侵攻などが影響し、打ち上げを断念した日本初の位置天文観測衛星「Nano―JASMINE(ナノ・ジャスミン)」の実機(フライトモデル)が、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で展示公開されている。同館は、天体の距離や位置を調べる位置天文学の基礎知識、人工衛星に用いられる技術を学べる教材として活用。8月31日まで一般公開するとともに、今月22日には有識者を招いた特別講演会を予定している。
(児玉直人)

 ナノ・ジャスミンは50cm四方の立方体で重さは35kg。超小型人工衛星に分類され、2010(平成22)年に完成した。
 「JASMINE」は位置天文観測計画の愛称で、国立天文台JASMINEプロジェクトが中心となり推進。ガスの影響を受けにくい赤外線を用いて星を観測するのが特徴だ。超小型(ナノ・ジャスミン)、小型(スモール・ジャスミン)、中型(ジャスミン)の3機を順次開発。天の川銀河中心部の構造解明、生命が住める地球型惑星の探査を目指す。
 ナノ・ジャスミンは、技術検証目的で最初に製造。ブラジル政府とウクライナ政府が出資するアルカンタラ・サイクロン・スペース社(ASC)によって、2011年に打ち上げられる予定だった。
 ところが、ブラジル国内で進めていたロケット発射場建設の予算が不足し、打ち上げは延期に。さらに悲運は続き、2014年に始まったロシアのクリミア半島侵攻が影響し、ウクライナで実施していたロケット試験も中止に追い込まれた。2019年にはASC社が倒産。衛星本体の劣化も進み、打ち上げを断念することになった。
 同プロジェクトは、ナノ・ジャスミンで得たノウハウを「スモール・ジャスミン」の開発に反映。国産ロケット「イプシロン」で年度の打ち上げを目指す。
 ジャスミン計画は、同天文台水沢VLBI観測所とも関わりが深い。ナノ・ジャスミンが予定通り打ち上がっていれば、同観測所の口径壇吐繁庄鷆世粘兮データを受信するはずだった。
 同観測所が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)も、位置天文学を支える重要な観測装置。遊学館では、人工衛星の仕組みや位置天文学の基礎知識を来館者に分かりやすく紹介できるよう、説明内容の工夫や充実に努める考えだ。
 今月日午後2時半からは、国立天文台JASMINEプロジェクト長の郷田直輝教授、東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授による特別講演を開催する。聴講には遊学館入館料(大人300円、小中高生150円)が必要。
 問い合わせは同館(電話0197・24・2020、火曜休館)へ。
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tanko 2023-6-7 12:10

写真=東北ILC推進協議会総会に合わせて講演した東京大学の横山広美教授(左)と浅井祥仁教授

 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致実現を目指している研究者組織「ILCジャパン」代表の浅井祥仁・東京大学教授と、文部科学省のILC有識者会議委員を務めた横山広美・同大学教授は6日、仙台市内で講演した。ILC計画の意義をあらためてアピールする一方、決して容易ではない手順を踏んで政府間協議に進む必要がある点や、社会や国民に対する信頼を築く姿勢を持つことが大切だと指摘した。(児玉直人)

 東北ILC推進協議会(共同代表=大野英男・東北大学総長、増子次郎・東北経済連合会会長)総会に合わせて開催。両教授による講演と対談で、ILC計画の最新動向や誘致活動を進める上での留意点などについて理解を深めた。
 浅井教授は「ILCは宇宙誕生の様子を再現するが、よく『何の役に立つのか』と言われる。基礎科学は社会基盤の一部を担っており、知性に対する貢献は極めて大きい」とアピールした。
 さらに「世界が協力して建設するという雰囲気、共通理解をどう形成するかが鍵。それができて初めて政府間協議に入れる。今は『日本の計画だ』と思われており、決して簡単なことではない」と指摘。
 その上で「ILCは一番技術的に安く、環境に優しい実験装置。今まで推進してきた日本にはアドバンテージ(優位性)があり、私も自信を持っている」と述べた。
 昨年も同協議会主催の講演会で登壇した横山教授は、巨大科学プロジェクトの推進には、透明性の確保とコミュニケーションを十分に図ることが大切であると、あらためて訴えた。
 横山教授は「研究者だけでなく、彼らを応援している皆さんにも、社会や国民に対する責任がある」と主張。
 「科学技術に対する期待が過度になると、急激なピークダウンが起き、継続的な活動ができなくなる危険性をはらんでいる。取り組みを推進すべき時期と、じっと待つべき時期があることを認識し、無理のないよう状況を見極めてほしい」と理解を求めた。
 横山教授はまた、「たとえ難しい事柄であっても情報をオープンにし、ひざを突き合わせて対話することで、信頼感は生まれる。隠し事のない議論が重要だ」とも話した。



誘致実現へ決議文採択(東北ILC推進協)

ILC誘致実現に向けた決議文などを採択した出席者たち
 東北ILC推進協議会の総会は6日、仙台市内のホテルで開かれ、岩手県南部の北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・ILC誘致実現に向け、決議文を採択した。
 同協議会は決議文で、日本政府に対し‘米欧政府間の国際協議の本格化⊆存柿置の国際共同開発研究への予算措置――を求めている。
 あいさつで、増子次郎共同代表は「国際的な動きを踏まえながら協議会会員や(国会の)ILC議連、研究者組織、文科省などと連携し、誘致に向けた取り組みを強化していく」とアピールした。

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