岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。

【連載】ILC子ども科学相談室・18 地域の農業は関係があるの?

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tanko 2018-2-23 10:40
 ILCが実現したら、施設を造るための建設工事や土木工事の仕事、装置を組み立てる機械製造関係の仕事が忙しくなりそうです。一方で岩手県は昔から農業が盛んで、おいしいお米や野菜がたくさん取れます。地域の農業に何かメリットはあるのでしょうか?

食材の調達は重要事項です
 前回のこのコーナーでも触れましたが、ILCにはさまざまな国や地域から研究者やその家族がやって来ます。ILCは「宇宙誕生の謎の解明」が主目的の施設ですが、そこで働く人や関係者への「食材の調達」も最優先に重要な事項です。
 日本の農作物の産地では、これまでも消費者の皆さんに喜ばれるような食材を提供しようと、さまざまな努力を重ねてきました。それと同じように、世界から訪れる人たちの食生活や宗教上のルールに見合った食材を提供することができれば、農業技術のレベルも上がるでしょうし、新たな地域農業の魅力を創造することが可能だと思います。
 もし寒さが厳しい東北地方の気候に適さない作物の栽培を考えるならば、ILCの排熱を利用する方法が考えられます。すでに先端加速器科学技術推進協議会(AAA)という組織が中心となって、いろいろと対策を考えているようです。このように省エネを考慮しながらILCを運営していくことを関係者は「グリーンILC」と呼んでいます。
 ILCでは、加速して高エネルギー状態にした電子と陽電子の粒すべてが衝突するわけではありません。衝突地点を通り過ぎた電子、陽電子のビームは、直径約2m、高さ約11mの「ビームダンプ」という場所に導かれて冷やされます。冷却のために水を使用しますが、ビームが入り込んだ時の水温は、155度以下になるように設計されています。
 ビームダンプ以外の各装置からの排熱なども合わせると、研究施設全体からの排熱温度はおよそ45度です。この温水の熱をハウス栽培の野菜に活用することが可能です。トマトやパプリカ、イチゴなどの高価格野菜や果物を一年中栽培できます。さらにレタスやセロリ、クレソンなどの西洋野菜、ロマネスコ、ストロベリー・トマト、カステルフランコ、シャドークイーン、アーティチョーク、ビートなど岩手の気候では通常の栽培が難しい野菜類であっても、排熱を使って育てることは夢ではありません。温室栽培することによって栽培速度も速く、収量も安定します。
 野菜や果物だけではありません。フグやウナギなど高温を好む魚類、逆にヤマメやマスなど低温を好む養殖施設への活用も可能です。乳牛や養豚施設などへの熱供給も期待されています。
 新たな農作物や物産の開発だけでなく、今ある岩手が誇る物産を海外にアピールできるチャンスにもなります。地場ワインや地ビールは、海外へのおみやげになるでしょう。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 平昌五輪での日本選手団の活躍が目覚ましいですが、トップアスリートの皆さんを支える仕組みと、ILCを支える環境づくりはどこか似ているところがあると思います。
 例えばサッカーの日本代表が活躍するためには、競技場を管理する人、応援グッズを企画し製造し販売する人たち、選手の健康管理に携わる人たちが必要です。近年は外国人の監督やコーチを招くこともあります。コミュニケーションを円滑にするため、通訳も活躍します。また、サッカーの楽しさを子どもたちに伝え次の選手を育成する環境をつくる人もいます。
 一流のサッカー選手たちをILCの研究者に置き換えてみれば、ILCを取り巻く仕事や必要なサポートは多岐にわたることが想像できると思います。
 「自分の仕事や取り組んでいる勉強は、ILCと関係ない」と思っていても、実は何かの形で携わることが将来あるかもしれません。
(児玉直人)

写真=2014年に水沢で開催されたILC関連の国際会議の夕食会の様子。多くの外国人研究者たちが地元食材を使った料理を味わった
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