人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-1-4 18:50
 「ブランディング」なる言葉がある。ブランド化というほどの意味で、都内5カ所の人気エリア、街の個性や魅力などの「パーソナリティー(個性)」の背景を探る目的で広告代理店の東急エージェンシーが、関東4都県の15歳から59歳までを対象に調査した。ブランドの定義は「この街で過ごしたいと生活者に思わせる力」。「街自体」と「街の活用」だ

 過ごしたい意識に影響を与える「安らぎ」「自己成長」「非日常感覚」の体験的価値。影響するのが「コミュニティー」「インフラ・施設」「歴史・文化」「生活基盤」「洗練イメージ」「清潔・安心」「自然環境」の7項目。これらが「街資産」になると分析した

 若々しい自分、刺激的な気分、専門的・個性的なショップ、エンターテインメント施設が充実する「渋谷」。「新宿」は刺激的気分、都会的な雰囲気。「池袋」は日用品の買い物のしやすさや庶民的な味。セレブで、オシャレな気分、大人で国際色豊かな雰囲気を持つのが「六本木」だ

 開業でよみがえった東京駅のある「丸ノ内・東京」は、背筋が伸びる気分、整然とした雰囲気、ビジネスビル街の雰囲気。下町の浅草・押上は、スカイツリーも建造され、懐かしい気分になれる人との触れあいを感じ、歴史的な場所、地域を代表する有名な食べ物、地元の人同士の交流が盛んで、下町・日本的な雰囲気という

 ひるがえって奥州市はどうか。「この街で過ごしたいと生活者に思わせる力」はあるだろうか。人口減少が危惧される。中央のまねをし、全国画一的な没個性の開発で生活しにくい、味気ない街になってはつまらない。幸いなことにILCの誘致に「夢」はつながっている。この機会に次世代とともに、国際化に向けた街づくりの分析や熟慮が必要だろう

 住民が生活しやすく、世界の人が集まり、満足が得られる街づくりの「コア(核心)要素」をいまこそ検討すべきだ。(風)
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tanko 2013-1-1 18:50
 1800年代後半、岩手・水沢の街はずれの土地に、とある青年と水沢町長(当時)らの一行がやってきた。「使える場所はどこか」と青年が尋ねると、町長はこう答えた。
 「この辺、ベロリでがす(この辺、一帯です)」
 「水沢にもベルリンがあるんですか!」と驚くその青年は、後にZ項を発見する天文学者・木村栄(ひさし)。石川県出身の彼は東北なまりがわからず、「ベロリ」がドイツの首都「ベルリン」と聞こえてしまったそうだ。1899年、その土地に臨時緯度観測所が開設され、木村が初代所長に就任した。
 それから1世紀余りの時を経て、「国立天文台水沢」となった現在も天文学者が国内外から集まり、宇宙や地球、月の謎を解き明かす挑戦に情熱を燃やしている。
 素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致の機運が高まっている。実現すれば、世界中の有能な科学者たちが集う「知の拠点」が形成されるが、その礎とも言える風土は、木村が活躍した時代から奥州・水沢の地に息づいているのだ。
 ※国立天文台水沢(水沢区星ガ丘町)には「水沢VLBI観測所」「RISE月惑星探査検討室」の2プロジェクトが常駐。今春稼動予定のスパコンの運用は、東京の同天文台・三鷹(本部)内の「天文シミュレーションプロジェクト」が担当しています。


 「科学技術のシンボルが水沢に来るわけですよ」。水沢VLBI観測所の川口則幸所長は、熱っぽく語る。2013年春、同天文台のスーパーコンピューター(スパコン)が観測所敷地内の建屋に設置される。
 これまで東京・三鷹の同天文台本部に設置していたスパコン。天体観測の成果や各種理論を反映させ、天体の誕生や消滅、太陽系や銀河系の歴史などを高精度の画像によって再現する。
 操作は三鷹に常駐する「天文シミュレーションプロジェクト」の研究者たちが行う。大容量のデータを送受信するため、超高速のネットワーク回線への接続点整備も進む。「施設一般公開のときには、まさに目玉の設備になるでしょう」と期待を寄せる。

写真=「このような感じの装置がここに来ますよ」と語る川口則幸所長。後方はスパコンが設置される建屋



 「これ、月に置く望遠鏡の試作品です」
 RISE月惑星探査検討室の佐々木晶室長と花田英夫准教授は、観測所本館地下の実験室に置いてある装置を紹介してくれた。
 2007年に打ち上げられた日本の月探査衛星「かぐや」は、月の周囲から観測した。次期探査では実際に月面に装置を置いて観測する。2人が見せてくれた望遠鏡を使い、月面から星を観測。それによって月の回転運動がわかり、そこから内部の構造を解き明かす。
 「どんな地形の所に置いても真上を向くような仕掛けが必要です。岩手大学と共同で開発を進めていますが、地域の大学教育に少しでも貢献できればと思います」(佐々木室長)
 夜空に輝く月を眺めながら、水沢で開発された「月面望遠鏡」に思いをはせる日が来るのは、そう遠くはないかもしれない。

写真=月面望遠鏡の開発などに取り組む佐々木晶室長(右)と花田英夫准教授
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tanko 2012-12-31 19:10
 前沢区の束稲山から望む胆沢扇状地、北上川沿いに広がる胆江地方の街並みは雪に包まれている。冷たい北風が吹く方角に目をやれば、南部片富士、巌鷲山(がんじゅさん)の異名を持つ岩手山がどっしりと構える。顔をゆがめた猛暑の夏は、もはや遠い過去のようだ。
 「復興元年」として幕を開けた2012(平成24)年は、きょう1日限り。復興はどれだけ進んだのか――。いまだ先の見えない不安を抱えながら、新年を迎えようとしている人たちが大勢いることを、決して忘れてはならない。
 来年は「巳年」。手足がない“姿態”に加え、種類によっては人をも殺す毒を持ち“嫌われ者”の代表格である蛇。一方、神の使いや幸運・金運を招く生き物として、信仰の対象にもなっている。蛇が描かれた「アスクレピオスのつえ」は、医療・救急の象徴だ。
 復興を含め山積する課題からの脱却を目指した国政のリーダーたちは、果たしてどうであったか。竜から蛇へのバトンタッチを目前にしての総選挙、そして政権交代。新政権の手腕が問われるが、“竜頭蛇尾”の繰り返しはもう避けてほしいと、国民の誰もが思っているに違いない。
 「脱皮しない蛇は滅びる。人間もまったく同じだ」と語ったのは、哲学者のフリードリヒ・ニーチェ。滅びないためには歴史に学びながらも過去に固執せず、新たな考えを取り入れ成長していかなくてはならない。
 来夏、国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地が一本化される。候補地となれば、胆江地域が新たな姿に“脱皮”する大きなチャンスとなろう。
 そして、プロ野球入りを果たした、花巻東高校の大谷翔平投手(水沢南中出身)。一皮も二皮もむけ、さらに頼もしい姿になって地元の期待に応えてほしい。
 「復興元年」は過ぎ行くが、願い切実な「復興願年」は続く。

写真=雪に包まれた年の瀬の胆沢扇状地。奥に岩手山が見えた=29日午前、前沢区の束稲山から
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tanko 2012-12-30 19:20
 胆江日日新聞の読者が選ぶ2012年「胆江10大ニュース」が決まった。「復興元年」として幕開けし、政界図を大きく塗り替えた師走の衆院選が締めくくった今年。牧草の利用自粛やキノコ類の出荷自粛など原発事故に伴う放射能汚染問題が農業に暗い影を落とした一方で、勇気や希望を届ける明るい話題も多かった。

 1位は、水沢南中出身で花巻東高3年大谷翔平投手の日本ハムファイターズ入団。胆江初となるドラフト1位指名で、地元住民をはじめ、胆江球児たちの希望の星となった。

 ILC関係のニュースとして、奥州市国際リニアコライダー推進連絡協議会発足が5位に。
 建設有力候補地に江刺区を含む北上高地(北上山地)が挙げられている、素粒子物理学の大規模研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」。7月、ILC誘致を実現させようと、官民一体組織の市国際リニアコライダー推進連絡協議会が発足した。誘致が実現すれば、経済波及や国際研究都市の形成など、胆江地方の未来を大きく切り開くと期待が高まっている。

各ランクと票数は次の通り。

1位:大谷翔平投手(花巻東高3年・水沢南中出身)がプロ野球・日本ハム入団を表明(12月)99票
2位:石淵ダムが59年の歴史に幕、胆沢ダムに引き継ぎ(10月)93票
3位:水沢区真城に東北最大級のJA岩手ふるさと「産直来夢くん」オープン(10月)67票
4位:政治資金規正法違反控訴審で小沢一郎衆院議員に無罪判決(11月)65票
5位:奥州市国際リニアコライダー推進連絡協議会が発足(7月)52票
5位:猛暑続き胆江地方で熱中症による搬送者相次ぐ(9月)52票
7位:29年ぶりの師走決戦となった第46回衆院選で自民党が大勝(12月)45票
8位:白鳥舘遺跡など5史跡が世界遺産暫定リスト入り正式決定(8月)32票
9位:市内の中学3年男子生徒、殺人未遂容疑で現行犯逮捕(8月)30票
10位:東電への賠償請求、奥州市が県内最高額の1002万円(1月)29票
10位:岩手競馬史上最多の通算4143勝を達成した菅原勲騎手が引退(3月)29票
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tanko 2012-12-28 19:40
 今月15日、都内で開かれた技術設計報告書完成発表会終了後の討論会で、ILC運営委員会委員長のジョナサン・バガー氏が「私たち物理学者には『変わり者』が多いが、日本の皆さんは受け入れてくれるか?」と語り、会場をわかせた。
 この日の発表会、討論会には国内外の素粒子研究者のほか、本県の大平尚・県首席ILC推進監(県南広域振興局副局長)や勝部修一関市長らも出席。インターネットによる動画中継も行われた。
 討論会では、日本創成会議座長の増田寛也氏(元岩手県知事)が、ILCの日本誘致が地方都市の活性化につながることなどを強調。これに対しバガー氏は「建設地には研究者らが家族同伴でやって来る。グローバル化した都市が形成されるだろう」と語った。
 日本人社会では、夫が家族と離れ遠隔地の職場に勤務する「単身赴任」が半ば当たり前のようになっているが、欧米社会はそうではない。スイスのジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN=セルン=)では、昼食時さえ自宅や研究所内のレストランで家族一緒に食事をとっているという。仕事だけではなく、家族と顔を合わせて過ごす時間も大切にする習慣が根付いているようだ。
 「変わり者が多いが……」とのバガー氏の問いかけに、増田氏は「心配ないですよ」と笑顔で回答。「むしろ、建設地に住む人たちにとっても、いい刺激になる。研究成果は医療や薬の開発などにも波及する。そのような話題を提供してもらえれば、皆さんの仕事への理解もより進む。ぜひ来てほしい」とラブコールを送った。
 このやりとりに、同席していた国際共同設計チーム(GDE)ディレクターのバリー・バリッシュ氏も「変わり者だが、面白い人たちがいっぱいいる」と応じた。

写真=討論会で意見を述べ合うジョナサン・バガー氏(左)と増田寛也氏=今月15日、東京・秋葉原UDXシアター
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tanko 2009-12-12 19:50
 政府の行政刷新会議による「事業仕分け」で、国立天文台水沢VLBI観測所(小林秀行所長)などが関係する観測事業の関連経費が縮減対象になっている。これを受け、同天文台(観山正見台長)は11日、予算縮減の方向性に対する国民意見の募集を開始した。観山台長は、「一方的な事業仕分けに基づく経費配分縮減の方向性には大きな懸念を抱く。学術推進に大きなマイナス影響をもたらす」と反発している。

 縮減対象になるのは、同観測所が担当している天文広域精測望遠鏡(VERA)の事業費をはじめ、ハワイ島に設置している「すばる望遠鏡」の運営費など。これらの経費は、国立大学運営費交付金に属する「特別教育研究経費」から配分される。事業仕分けでは、同研究経費に対し「予算要求の縮減」との結論が出た。
 同天文台広報室によると、仕分け作業の場では同経費に関する直接的な議論はなされなかったといい、「委員の採点結果で縮減が決定される事態となった」と説明。縮減規模は不明で、一部には3割減との見解も出ているという。
 経費が削減されると、国際的にも重要がある研究事業が停滞する恐れがある。同観測所にあるVERA観測用の電波望遠鏡(20mアンテナ)は、中国や韓国の観測施設と連動活用することもあり、相手国の研究者に対する大きな責任を背負っているという。
 観山台長は経費削減の危機に関するアピール文で、「内部でも経費節減の努力をしてきた。今回の一方的な仕分けに基づく縮減の方向性には大きな懸念を抱く」と主張。「予算縮減の方向性に対する率直な意見を寄せてほしい」と呼び掛けている。
 同研究費の削減に対しては、北上高地が有力候補地の国際直線衝突加速器(ILC)の国内推進母体である、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などからも強い反発の声が上がっている。KEKも同天文台と同様、国民意見を募る取り組みを実施した。
写真=水沢VLBI観測所内にあるVERA観測用の20mアンテナ。観測事業の関連経費が縮減対象に――
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tanko 2009-11-27 19:50
 政府の「事業仕分け」で科学技術予算の削減が相次いだことで、学界などから異論が出ている。胆江地区の関係者も、こうした議論を注視。背景には、今年に入り素粒子実験施設である「国際直線衝突加速器(ILC=International Linear Collider)」の一候補地に、北上高地の名が浮上したことがある。市民向けのセミナーが開かれ、経済団体が計画実現に向けた啓発事業促進を提唱するなど、ILC構想に関心が高まっている。仕分け作業に一定の理解をしつつ、「将来的に必要な投資はあってしかるべきだ」との声が聞かれる。
 ILCは、あらゆる物質を構成する最小単位「素粒子」の研究をする大規模な地下実験施設。素粒子の一種、電子と陽電子を超高速で衝突させ、宇宙誕生の謎を解明する。市民生活との直接的関連が薄い「基礎科学」を扱う施設で、研究内容も専門性が高い。
 しかしながら、国際研究機関が立地することは、科学の進歩への寄与にとどまらない。施設建設に必要な技術の確立、人材育成、地域振興、企業立地など本県が受ける恩恵も大きい。
 今回の事業仕分けで、ILCについて直接言及した議論はなかったが、類似の科学技術事業の予算が無駄と判断されたことで、学界や経済界からは異論が相次いだ。
 25日夜には東京大学で、日本人ノーベル賞受賞者が緊急声明を発表。「将来に禍根を残す」と指摘した。
 昨年、ノーベル物理学賞を受賞した小林誠氏(素粒子理論)もILC事業に深くかかわりがある。緊急声明の会見で、「個別の事業のネガティブ面(負の面)だけを取り上げ、予算を縮減するという結論は短絡的では」と疑問を呈した。
 国立天文台名誉教授で、奥州宇宙遊学館館長を務める大江昌嗣氏=水沢区川端=は、「科学研究が軽視されれば、物づくりの基礎もなくなり、何もできなくなる。近隣国は逆にこの分野を強めてきている」と話す。
 奥州商工会議所(千葉龍二郎会頭)は、地元経済団体としてILC構想の実現を推進。菅原新治事務局長は、「ILCのような科学技術、研究部門への国の支援は推進すべきだ。たとえ研究がうまくいかなくとも、その過程で得られた成果や技術がきっかけとなり、さまざまな“副産物”をもたらすことも考えられる」と主張する。
 ただ、事業仕分けそのものについては否定的ではない。「実際、科学予算の中身や使途も、われわれに見えない部分が多い。必要なものと、そうでないものを分析するという点では重要な作業だ。仕分けの結果や激しい議論ばかりに関心がいってしまいがちだが、単純に『科学技術は無駄』という判断を下しているわけではないと思う」と話している。
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tanko 2009-11-20 19:50
 奥州市総合計画審議会(佐藤祐宏会長)は19日、市から諮問された国土利用計画奥州市計画案について、基本的に適切であるとし、相原正明市長に答申書を手渡した。
 同計画は、土地利用関係計画の指針になるもので、国土利用計画法に基づき策定。市町村のほか、都道府県も同様の計画を策定することになっている。
 市は17日、計画案を同審議会に諮問。内容については基本的に了承された。付帯意見として、各地域の将来展望に関連し、各地域の地域条件や経済条件などに係る記述の充実を求めた。
 また、市域の東部に位置する北上高地が、素粒子研究施設「国際直線衝突加速器(インターナショナル・リニア・コライダー=ILC)」の候補地の一つに挙がっていることから、公的研究機関・研究施設などの用地確保に関する記述を検討するよう求めた。
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tanko 2009-10-28 19:40
 奥州商工会議所(千葉龍二郎会頭)は27日、継続的な景気・雇用対策の実施などを盛り込んだ、地域振興および産業振興に関する要望書を相原正明奥州市長に提出した。景気、雇用対策は、事業所経営のみならず地域住民の暮らしにも直結する重要課題。同日、水沢区内のホテルで、要望に対する意見交換会が開かれ、相原市長は「新政権の政策にも期待できる部分もある。企業誘致、事業誘致も積極的に進めたい」と述べた。

 商議所による市への要望活動は旧水沢商議所時代に実施していたが、今回は4商工団体合併後初めての要望となる。要望項目も水沢だけでなく合併した商工団体地域にかかわる内容もある。
 旧水沢商議所時代にも提示していない、まったく新しい要望項目は▽景気・雇用対策への取り組み▽商議所への補助金の現状維持▽江刺中核・江刺フロンティアパーク・広表・胆沢東部の各工業団地への企業誘致促進▽東北横断道江刺田瀬インター(仮称)の連絡道路整備促進▽国際リニアコライダー(ILC)計画実現への啓発活動――の5件。継続要望は、国道4号水沢東バイパス整備や小谷木橋架け替えなど5件となっている。
 景気・雇用対策について商議所側は、特にも重要度の高い要望と位置付け。千葉会頭は「依然として厳しい状況。この部分は特に力を入れ、市独自の力強い政策を展開してほしい」と求めた。
 ILC計画について、同商議所の後藤新吉専務は「誘致に当たり、国際間競争に支障を与えない範囲で、地元の熱意を高める組織を行政と立ち上げてもいいのでは」と提言。相原市長は「ILC計画は地域振興の期待の星。ILCの道筋が立つようになると、小谷木橋整備などの問題も一気に解決できると思う」と述べた。海鋒守副会頭は「会議所役員も市幹部も一度、つくば市にある加速器施設を見て、それから議論したほうがいい」と提案した。
 要望書掲載事項とは別に、三田光男副会頭は胆沢ダム建設について、「新政権の方針により、見直しになるのではとの心配もある。90%も出来上がっているダムが中止になることはないと思うが、市側でも完成に至るよう後押ししてほしい」と訴えた。
写真=後藤専務(左)から要望内容の説明を聞く市幹部
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tanko 2009-7-3 18:50
 奥州市の第3回大学誘致検討懇話会は2日、奥州市文化会館(Zホール)理事長室で開かれ、大学誘致の基本方針について協議した。相原正明市長のマニフェストに基づき、高等教育機関の誘致を目指す市だが、出席した有識者らは長期休暇中の短期講習の場として活用していきながら、機運を高めていく手法を提言。「実績をつくらなければ、どんなに頑張っても大学は来ない」と指摘した。市は秋ごろに第4回懇話会を開き、方針をまとめる。

 懇話会には、既存大学の関係者や企業経営者ら有識者6人と相原市長、市担当者が出席した。
 市側は、▽全課程修了が可能な大学本体の誘致▽教養課程など分校機能の誘致▽一部学部の誘致▽大学院大学の誘致――を掲げている。学部分野別にみると社会科学系、農業系、理工学系、社会人対象の再教育(リカレント教育)など多岐にわたる。
 また、方針案には明示していないが、北上高地が有力候補地とされる素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」が仮に実現した際、理工学系の学生が多数集まる可能性があるとし、大学誘致に関連してくると説明した。
 しかし説明を受けた有識者からは、独自性が見いだしにくいとする趣旨の発言や、市の存在を知ってもらう身近な実践策を実施すべきではないかとする意見が相次いだ。
 千葉科学大学の高山啓子教授は、国内唯一だという同大学の危機管理学部を紹介しながら、「ここならではという魅力が必要。地元の人が気付かないすばらしい学習資源があるほか、空洞化した市街地など市の抱える課題もある。これらを題材に夏休み中のセミナーを市内で開催してみてはどうか」と提案した。
 辻・本郷税理士法人の本郷孔洋理事長も、高山教授の考えに同調。「奥州市を知らない人は多い。まずはセミナーをどんどん開催する中で市を宣伝し、その課程で大学誘致への機運を高めていってはどうか」とアドバイスした。
 このほか卒業生の市内定住を図るため、雇用情勢を良好に保つ必要があることに加え、子育て環境のさらなる充実も進めなければ、若者の定住や人口対策の解決につながらないという。雇用対策に関しては卒業生だけでなく、在学中の学生たちの生活資金を得るための、アルバイト先の確保も考えなくてはいけない。
 相原市長は「奥州市に来ていただく動機をつくる上で、セミナー開催などは誘致の第一歩だと思う」と語り、提言に理解を示した。
写真=セミナーの開催など「身近な実績づくりをまず実践すべきだ」との意見が相次いだ大学誘致検討懇話会(Zホール)

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