人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

志、天より高く 探究心息づく「知の拠点」 国立天文台 水沢

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tanko 2013-1-1 18:50
 1800年代後半、岩手・水沢の街はずれの土地に、とある青年と水沢町長(当時)らの一行がやってきた。「使える場所はどこか」と青年が尋ねると、町長はこう答えた。
 「この辺、ベロリでがす(この辺、一帯です)」
 「水沢にもベルリンがあるんですか!」と驚くその青年は、後にZ項を発見する天文学者・木村栄(ひさし)。石川県出身の彼は東北なまりがわからず、「ベロリ」がドイツの首都「ベルリン」と聞こえてしまったそうだ。1899年、その土地に臨時緯度観測所が開設され、木村が初代所長に就任した。
 それから1世紀余りの時を経て、「国立天文台水沢」となった現在も天文学者が国内外から集まり、宇宙や地球、月の謎を解き明かす挑戦に情熱を燃やしている。
 素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致の機運が高まっている。実現すれば、世界中の有能な科学者たちが集う「知の拠点」が形成されるが、その礎とも言える風土は、木村が活躍した時代から奥州・水沢の地に息づいているのだ。
 ※国立天文台水沢(水沢区星ガ丘町)には「水沢VLBI観測所」「RISE月惑星探査検討室」の2プロジェクトが常駐。今春稼動予定のスパコンの運用は、東京の同天文台・三鷹(本部)内の「天文シミュレーションプロジェクト」が担当しています。


 「科学技術のシンボルが水沢に来るわけですよ」。水沢VLBI観測所の川口則幸所長は、熱っぽく語る。2013年春、同天文台のスーパーコンピューター(スパコン)が観測所敷地内の建屋に設置される。
 これまで東京・三鷹の同天文台本部に設置していたスパコン。天体観測の成果や各種理論を反映させ、天体の誕生や消滅、太陽系や銀河系の歴史などを高精度の画像によって再現する。
 操作は三鷹に常駐する「天文シミュレーションプロジェクト」の研究者たちが行う。大容量のデータを送受信するため、超高速のネットワーク回線への接続点整備も進む。「施設一般公開のときには、まさに目玉の設備になるでしょう」と期待を寄せる。

写真=「このような感じの装置がここに来ますよ」と語る川口則幸所長。後方はスパコンが設置される建屋



 「これ、月に置く望遠鏡の試作品です」
 RISE月惑星探査検討室の佐々木晶室長と花田英夫准教授は、観測所本館地下の実験室に置いてある装置を紹介してくれた。
 2007年に打ち上げられた日本の月探査衛星「かぐや」は、月の周囲から観測した。次期探査では実際に月面に装置を置いて観測する。2人が見せてくれた望遠鏡を使い、月面から星を観測。それによって月の回転運動がわかり、そこから内部の構造を解き明かす。
 「どんな地形の所に置いても真上を向くような仕掛けが必要です。岩手大学と共同で開発を進めていますが、地域の大学教育に少しでも貢献できればと思います」(佐々木室長)
 夜空に輝く月を眺めながら、水沢で開発された「月面望遠鏡」に思いをはせる日が来るのは、そう遠くはないかもしれない。

写真=月面望遠鏡の開発などに取り組む佐々木晶室長(右)と花田英夫准教授
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