人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-11-29 9:30

写真=県南局の来年度重点取り組みなどについて説明があった、県南広域振興圏地域協働懇談会

 岩手県の県南広域振興局(小島純局長)は2024(令和6)年度、人口の社会減対策とデジタル技術を活用してさまざまな変革を推進する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を重点的取り組みに位置付ける。本年度第2回県南広域振興圏地域協働懇談会が28日、水沢大手町の奥州地区合同庁舎分庁舎で開かれ、各分野の有識者である委員に方針が示された。
(児玉直人)

 県の総合計画「いわて県民計画」の地域計画に当たる「県南圏域地域振興プラン」では、産業集積や農林業、多様な地域資源を生かし、暮らしと産業が調和した地域づくりを目指している。
 都市部への人口流出によって引き起こされる人口の社会減。移住・定住の促進で社会減に歯止めをかけるため、移住希望者向けのセミナー開催や新規就農者の確保などを進める。DXに関しては、各産業におけるデジタル技術の導入支援や普及、DX人材の育成や確保、生産性向上に向けた取り組みなどを実施する。
 懇談会には委員12人のうち7人が出席。重点的取り組みに関連し、観光客誘致や雇用環境、地域の特色を生かした行政施策など、多種多様な質問や意見が出された。
 県社会福祉士会理事の小笠原隆氏=一関市=は、女性の社会進出が進む一方で病児保育や病後児保育の体制が十分でないと指摘。「子どもの具合が悪くなると、学校などから『迎えに来てほしい』とすぐに連絡が来る。しかし、核家族が多い現状では母親が仕事を休んで対応しなければならず、ひいては賃金などに響く」と述べ、実態を調査し対策を講じるよう求めた。
 螢─璽妊襯錺ぅ鸛輒撹長の高見章子氏=花巻市=は「DXの概念がきちんと理解されておらず、言葉だけが独り歩きしている。デジタル機器を導入するだけのことではないはず」と述べ、用語や考え方も含めしっかり周知し、浸透させるべきだと訴えた。
 このほか、螳ど製作所の阿部紀子専務=北上市=は、国立天文台水沢VLBI観測所が他地域にはない大きな魅力だとした一方、若手研究者が不安定な有期雇用状態にさらされる「ポスドク問題」に直面していると懸念。「県は国際リニアコライダー(ILC)のことはよく取り上げているが、天文台に対して何か支援する意向はないのか」と質問した。県南局の担当者は「ILC出前授業の際、一緒に参加して側面的なお手伝いをしてもらっている程度で、直接的なかかわりはない」と現状を伝えた。
 小島局長は「制度的な理由で県南局だけでは解決できない問題もあるが、いただいた意見や提言は本庁とも情報共有していきたい」と述べた。
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tanko 2023-11-21 10:20

写真1=木村栄博士が観測していた当時の床面が現れた眼視天頂儀室内部。中央の台座の上に、眼視天頂儀が据え付けられていた

 国立天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=で20日、国の登録有形文化財「眼視天頂儀室」の修繕工事中、建設当初の木製床が姿を現した。「Z項」を発見した初代所長、木村栄博士(1870〜1943)が、毎晩観測時に立っていた床面で、板の隙間からは天頂儀の台座に振動を与えない特殊な基礎構造も確認できた。新たなかさ上げ床を設置するため、当時の床は再び見られなくなる。(児玉直人)


写真2=眼視天頂儀室の外観。左後方は20m電波望遠鏡

 同天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)は、今月13日から12月中旬までの予定で、眼視天頂儀室と眼視天頂儀目標台覆屋の修繕工事を実施。両施設とも老朽化が著しく、同天文台への寄付金を活用して事業着手した。文化財を良好な状態で残し、安全な形で一般公開できるようにする狙いがある。
 天頂儀室は水沢VLBI観測所の前身である水沢緯度観測所が、臨時緯度観測所として開所した1899(明治32)年に完成。木村博士らは同年12月11日から毎晩、天頂儀室で天体観測に当たった。やがて、時期は不明だが別の木板によって15cmほど床面はかさ上げされた。以降、開所当時の床を見ることは不可能となった。
 かさ上げ床は腐食が進んでおり、工事業者によって撤去されたところ、当時の木製床が姿を見せた。さらに板の隙間からは、眼視天頂儀の台座と建物の基礎部分の間に空間が設けられていることも確認できた。


写真3=眼視天頂儀室の設計図。振動を与えない特殊な基礎構造になっている=水沢VLBI観測所提供

 水沢VLBI観測所の蜂須賀一也・特任専門員(52)によると、わずかでも振動が天頂儀に伝わると正確な観測ができないため、台座と建物基礎は一体化していないという。「台座の基礎部分は2〜3mは掘っており、当時としては大掛かりな土木工事だったのではないか」と推測。「暑い日も寒い日も、木村博士がこの床面に立って観測し続けたことで、Z項発見があったと思うとしっかり残さなければいけない財産だと感じる」と話している。
 同時に修繕している目標台覆屋は、天頂儀室から北へ100mの位置にある。天頂儀室にいる観測者が、正確な北の位置を把握するための施設。修繕では覆屋の外壁や屋根の塗り直しを行う。
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tanko 2023-11-10 6:20
【ILC誘致は、はかない夢に過ぎない】
 一部の研究者は、世界の素粒子研究者たちに向け、北上山地にILC誘致が可能であるかのような言動を繰り返している。経済人や文化人らを寄せ集めた「ILC100人委員会」を結成させるなど、通常の大型科学技術施設を決めるシステム以外の方法で、実現を勝ち取ろうとしている。
 しかしそのやり方は、できもしない「地震予知」をできるかのような振る舞い、毎年100億円以上の関連予算を獲得している地震予知研究者の姿と二重写しに見える。
 東日本大震災など度重なる大地震を受け、地震予知はできないことが明確となっている。以前から地震予知はできないと主張している元東京大学教授のロバート・グラー博士は、著書『日本人は知らない「地震予知」の正体』(2011年8月、双葉社)の中で次のように述べている。
 「残念ながら地震予知はかなわぬ夢だ。地震予知というはかない幻影に、これ以上希望を託すのはやめようではないか。東日本大震災を経験した日本人は、今こそ現実に目を向けなければならない」
 ロバート博士の言う、はかない夢「地震予知」は、はかない夢「ILC誘致」と読みかえることができる。もはやILC誘致は、はかない夢に過ぎないのだ。

【国際科学都市ができるという「はかない夢」を子どもたちに教えるべきでない】
 日本における科学技術予算の貧弱さは、データ科学における人材不足も招いている。そのため海外から人材を求めようとすると、世界的な人材獲得競争に巻き込まれる。医療データ分野で海外の人材を求めようとした東京医科歯科大学の宮野悟特任教授は、月刊誌『選択』の本年8月号で次のように述べていた。
 「この間、海外の女性研究者4人に招聘を打診したが年俸1500万円では、『ワーキングプア(働く貧困者)』だと、けんもほろろに断られた。最近の円安はかなりの痛手だ」
 日本の国力の低下をまざまざと思い知らされる。
 誘致関係者らは、ILCが稼働した当初は20人レベルの研究者で始まるが、本格稼働すれば100人以上の科学者が集まり国際科学都市ができるとアピールする。過疎が進む一関市、奥州市の中山間地の人々に、はかない夢をまき散らしている。同じことを出前授業などで子どもたちにも吹聴しているのは誠に許し難い。
 ILC計画について検討した日本学術会議の所見回答(報告書)でも、オンラインなどを活用するリモート勤務の時代なので、たとえILCができたとしても科学者が施設の近くに住む必要がないと指摘している。国際科学都市ができないことはもちろん、ILC誘致自体が絶望的だと思う。子どもたちに虚偽的ではかない夢を教え込む出前授業は、私は罪深い取り組みだと感じる。
 科学技術に関する人材確保の面では、中国が抜きんでていることを知るべきである。2019年に開催された全国人民代表大会(全人代)の記者会見で、科学技術相は「基礎研究は科学技術革新の源であり、十分に重視する必要がある」と強調した。そのような中国の政策でできた一つが2016年、貴州省に設置された直径500mの世界最大の開口球面電波望遠鏡「天眼」である。
 このように先端科学に挑み費用を惜しまない中国の政策は、海外ハイレベル人材招致計画(通称・千人計画)に示されている。この対象に選ばれたのが、宇宙核物理で世界的な成果を挙げている国立天文台の梶野敏貴特任教授だ。2016年10月、北京航空航天大学に新設の「ビッグバン宇宙論・元素起源国際研究センター」の初代所長に就任し、翌年には北京航空航天大学の特別教授として招かれた。
 梶野氏は日本の教授職と兼務できる中国の研究環境を高く評価している。すぐに人を集められ予算も潤沢。日本より研究がやりやすい。政治体制から受ける印象とは違い、研究者は自由に世界を行き来しており、中国の勢いや可能性を感じるという。毎日新聞の取材に、そのような趣旨の話をしている。
 このような基礎科学への向き合い方を考えるならば、世界的水準の給料を出すことができない日本に100人以上の科学者を招聘するなどというILC計画は、はなかい夢に過ぎないことが分かる。
 いくら素粒子物理学の先端研究に没頭する専門家であっても、研究者を巡る待遇の日本と他国との違いを知らないわけがない。その上で「国際科学都市ができる」と語るというのは、「岩手県民の大部分は、このような事実を知るはずもなく、こちらの話をそのまま信じるだろう」と、高をくくっているようにさえ感じる。
 私たち岩手県人は、いつまでも惑わされ続けてはいけないのではないか。ロバート博士が地震予知で語った「東日本大震災を経験した日本人は、今こそ現実に目を向けなければならない」という言葉そのまま引用するなら、「ILC誘致は実現しないという現実に目を向けなければならない」と言いたい。
 先日、国立天文台水沢VLBI観測所が他国の天文台と協力し合い、ブラックホール研究に関する最新成果を発表した。世界的に注目を集める快挙を打ち出している水沢の観測所でさえ、働く身分が不安定な研究者がいるという問題も存在している。
 人件費も含め、県が行う毎年約3億円以上にものぼるILC誘致の関連予算。その支出をもっと有効な形に活用できるよう努めるべきではないか。

※千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに「諺」のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2023-11-3 14:30
 【科学リテラシーを持とう】
 現在、日本と欧米各国は財政難で、基礎的研究の実験施設であるILCに予算を付ける余裕はない。
 米国では1980年代に計画された素粒子加速器「SSC(超電導超大型加速器)」が、あまりにも経費がかかり過ぎ、建設開始後に中止に追いやられた過去がある。高エネルギー天体物理学などを専門とする戸谷友則氏は著書『宇宙の「果て」になにがあるのか』(2018年8月、講談社)で、SSCを引き合いに出し「あまりにも巨大化した加速器による素粒子研究が、人類の限界に突き当たったと言える」と警告を発している。
 今年6月の東北ILC推進協議会が主催した講演会では、昨年に続き講師を務めた東京大学の横山広美教授(科学技術社会論)が、社会的観点からも巨大プロジェクトの推進は、決して容易ではない旨を話している。日本の科学全体が発展してほしい時に、ILCのような巨大プロジェクト単体に多大な経費をかけるのではなく、多くの分野に配分したほうが良いことは明らかである。
 また、20kmのトンネルで実験を始めようとしている現計画では、巨費を投じる意義と価値は失われている。現計画はヒッグス粒子のクリーンな捕捉を目的にしているというが、すでに欧州原子核機構(CERN)でヒッグス粒子の存在がほぼ確認されている。次に課題になるのは、宇宙の23%を占めるとされる暗黒物質(ダークマター)に関する新粒子の発見である。ところがILCでこの新粒子を発見するには、50km以上のトンネルが必要と考えられる。このことから、ILC誘致によって20kmのトンネルが建設されたとしたら、なし崩し的に50kmまでの延長を言い出すことになるだろう。
 つまり、巨大な経費に見合う新粒子発見が期待できない“20kmILC”は、それを誘致する理由をほとんど失っている。しかしながら、いきなり“50kmILC”の誘致を言い出せば実現が遠のくというジレンマを抱えているのだ。
 宇宙誕生の謎を解明するための研究は現在、加速器による新粒子発見だけではなく、重力波検出など多方面にわたっている。2015年、米国の重力波検出器「LIGO」が、太陽質量の30倍もあるブラックホール二つが合体した際に生じる重力波を検出した。日本でも岐阜県にある「スーパーカミオカンデ」で、重力波を捉えようと計画しているが、この施設の建設費は100億円台だった。
 私は文系の研究者で、物理は高校で学んだだけだが、ILC誘致推進者でもある素粒子物理学者の村山斉氏らの著書を読んで、少しでも科学研究の現在を知ろうと努めてきた。間もなく80歳を迎えようとする高齢者だが、一部の研究者や誘致団体による都合のよい主張をうのみにしない力を持てたと思う。
 誘致関係者の好都合な話と、それを一方的に伝えている一部報道の情報のみを受け止めるのではなく、多くの県民の皆さんには科学リテラシー(読み解く力)を身につけてほしいと願っている。

 【県立大学は素粒子物理学者の雇用の場ではない】
 岩手県は巨大プロジェクト誘致のため、素粒子物理学者らを県立大学の重要ポストに置いている。誘致を推進する研究者にとって、俗にいう「おいしい存在」になってはいないだろうか。
 理工学部がない県立大に彼らを雇い続けるのは、奇妙と言わざるを得ない。私は、もはや巨大プロジェクト誘致は全く見込みがない状況だと思っている。彼らを雇い続けることは、本県の税金を無駄に使っていることにならないか。県は速やかに改めるべきである。
 2004年から始まった大学への運営費交付金減額政策により、大学では講座を維持するために研究機関などに属する研究員を研究所と兼任できる特任教授とし、あるいは定年退職した教授を特任教授として雇い入れている。若手研究者は5年の任期付きとして雇用されるなど、落ち着いて研究ができる環境が大学から失われつつある。
 このように、大学で専任教授職に就くことは大変厳しいのだ。ILC関係者の雇用にとどまらず、10月8日付の河北新報では、県立大理事長に就任した副知事経験者の報酬アップを巡り波紋を呼んでいると報じている。この件も含め、県立大運営に対する県の姿勢が、大きく問われていると感じる。

※千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」

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