人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-11-3 14:30
 【科学リテラシーを持とう】
 現在、日本と欧米各国は財政難で、基礎的研究の実験施設であるILCに予算を付ける余裕はない。
 米国では1980年代に計画された素粒子加速器「SSC(超電導超大型加速器)」が、あまりにも経費がかかり過ぎ、建設開始後に中止に追いやられた過去がある。高エネルギー天体物理学などを専門とする戸谷友則氏は著書『宇宙の「果て」になにがあるのか』(2018年8月、講談社)で、SSCを引き合いに出し「あまりにも巨大化した加速器による素粒子研究が、人類の限界に突き当たったと言える」と警告を発している。
 今年6月の東北ILC推進協議会が主催した講演会では、昨年に続き講師を務めた東京大学の横山広美教授(科学技術社会論)が、社会的観点からも巨大プロジェクトの推進は、決して容易ではない旨を話している。日本の科学全体が発展してほしい時に、ILCのような巨大プロジェクト単体に多大な経費をかけるのではなく、多くの分野に配分したほうが良いことは明らかである。
 また、20kmのトンネルで実験を始めようとしている現計画では、巨費を投じる意義と価値は失われている。現計画はヒッグス粒子のクリーンな捕捉を目的にしているというが、すでに欧州原子核機構(CERN)でヒッグス粒子の存在がほぼ確認されている。次に課題になるのは、宇宙の23%を占めるとされる暗黒物質(ダークマター)に関する新粒子の発見である。ところがILCでこの新粒子を発見するには、50km以上のトンネルが必要と考えられる。このことから、ILC誘致によって20kmのトンネルが建設されたとしたら、なし崩し的に50kmまでの延長を言い出すことになるだろう。
 つまり、巨大な経費に見合う新粒子発見が期待できない“20kmILC”は、それを誘致する理由をほとんど失っている。しかしながら、いきなり“50kmILC”の誘致を言い出せば実現が遠のくというジレンマを抱えているのだ。
 宇宙誕生の謎を解明するための研究は現在、加速器による新粒子発見だけではなく、重力波検出など多方面にわたっている。2015年、米国の重力波検出器「LIGO」が、太陽質量の30倍もあるブラックホール二つが合体した際に生じる重力波を検出した。日本でも岐阜県にある「スーパーカミオカンデ」で、重力波を捉えようと計画しているが、この施設の建設費は100億円台だった。
 私は文系の研究者で、物理は高校で学んだだけだが、ILC誘致推進者でもある素粒子物理学者の村山斉氏らの著書を読んで、少しでも科学研究の現在を知ろうと努めてきた。間もなく80歳を迎えようとする高齢者だが、一部の研究者や誘致団体による都合のよい主張をうのみにしない力を持てたと思う。
 誘致関係者の好都合な話と、それを一方的に伝えている一部報道の情報のみを受け止めるのではなく、多くの県民の皆さんには科学リテラシー(読み解く力)を身につけてほしいと願っている。

 【県立大学は素粒子物理学者の雇用の場ではない】
 岩手県は巨大プロジェクト誘致のため、素粒子物理学者らを県立大学の重要ポストに置いている。誘致を推進する研究者にとって、俗にいう「おいしい存在」になってはいないだろうか。
 理工学部がない県立大に彼らを雇い続けるのは、奇妙と言わざるを得ない。私は、もはや巨大プロジェクト誘致は全く見込みがない状況だと思っている。彼らを雇い続けることは、本県の税金を無駄に使っていることにならないか。県は速やかに改めるべきである。
 2004年から始まった大学への運営費交付金減額政策により、大学では講座を維持するために研究機関などに属する研究員を研究所と兼任できる特任教授とし、あるいは定年退職した教授を特任教授として雇い入れている。若手研究者は5年の任期付きとして雇用されるなど、落ち着いて研究ができる環境が大学から失われつつある。
 このように、大学で専任教授職に就くことは大変厳しいのだ。ILC関係者の雇用にとどまらず、10月8日付の河北新報では、県立大理事長に就任した副知事経験者の報酬アップを巡り波紋を呼んでいると報じている。この件も含め、県立大運営に対する県の姿勢が、大きく問われていると感じる。

※千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2023-10-27 18:20
 【東北大学を「卓越大学」の候補に認定】
 文部科学省は9月1日、世界最高レベルの研究力の獲得・育成を目指す「国際卓越研究大学」に東北大学を候補とし、認定を目指すと発表した。来年に正式認定されると、政府が設立した10兆円規模の大学ファンド(基金)の運用益から支援を受けられることになる。卒業生の私としては誇らしく、喜びを感じる。
 しかし、喜んでばかりもいられない現状がある。国は財政難から、大学の運営費交付金をこの20年間で1500億円も減らし、すぐに利益が上がる研究に振り向けた。安倍晋三内閣で顕著になった「出口志向」「川下の研究」と言われる、すぐ利益があがる研究への「選択と集中」である。
 この政策を進めるため、国は科学技術予算を内閣府に付けさせる「総合科学技術・イノベーション会議」を2001年に立ち上げた。内閣総理大臣のリーダーシップの下、一段高い立場から科学技術政策の企画立案や総合調整を行うなど、重要政策に関する会議の一つと位置付けている。大型研究開発プロジェクトを立ち上げ、公募して研究を選んだりしたが、ことごく成果を見ないで終わっている。そもそも会議では、経済界の意見を尊重する委員を選定しているのだから、基礎的な研究が選定されることもなかった。
 今回の卓越大学も、国の「選択と集中」政策の延長線上に生まれた構想である。その背景には、優秀と見なされる論文の数が2018―2020年の平均で日本が過去最低の12位と没落したことにある。さすがに国も日本が科学技術面で一流国と言えなくなった現状をまずいと考えたのであろう。
 しかし卓越大学に助成するファンドは、国が作った「科学技術振興機構」の運用利益による仕組みである。今まで国が各分野で行ったファンドによる政策では、国産有機ELパネル製造「JOLEDの経営破綻」をはじめ「クールジャパン」、農業関係、半導体などで赤字を出して解散したなど、失敗も多い。そのうえ今回の卓越大学では、「経済社会に変化をもたらす研究成果の活用」とのうたい文句もあることから、基礎的研究ではなく、どうしても出口志向の研究に重きを置くことになる。
 東北大学では今年、任期付き雇用の研究者や職員数百人の雇止めを行ったことが問題になっている。卓越大学は研究者の育成を目的としているが、今でも任期付き雇用が多い若手研究者の育成のことは、置き去りにされるのではないだろうか。
 「卓越大学」構想は基礎的分野の科学研究を軽視する流れの上にある。岩手県や一関市、奥州市が、素粒子物理学者らと誘致しようとしている国際リニアコライダー(ILC)も無縁ではなく、こうした根本的な流れを変えない限り、そもそも実現などあり得ないのだ。

 【中国に対する危機感を一部の研究者が利用するILC誘致運動】
 基礎的分野の研究に金を出したくない国の政策により、大型科学研究費が付きにくい状況は1960年代から一貫しており、その研究費はせいぜい1件当たり50億円から300億円である。それも数年にわたる支給となる。
 今回、東北大学が「卓越大学」認定候補になったのは、青葉山新キャンパスに設置される次世代放射光施設「ナノテラス」の存在が大きい。この設置が決まるまでには、産業界と仙台市から100億円以上の資金を集めることが要請された。300億円強の研究施設でさえ、国は単独支出を渋るのである。
 これをILCに当てはめると、予想される国の負担のうち、最低でも1割は地元負担とするであろう。ILC本体価格は8000億円と言われているが、国際協力事業なので国際入札での円安の影響と物価高も加味すると、最終的には1兆5000億円という規模も考えられる。その半分の7500億円をホスト国が持つとして、750億円は地元負担とするであろう。
 さらには県道、橋梁、トンネルなどの改良工事も地元負担が要請されるが、岩手県の財力ではできない。まして欧米各国は資金を出さないと明言している。このことからも国がILC誘致に乗り出すことはあり得ない。にもかかわらず、高エネルギー加速器研究機構(KEK)や国内素粒子研究者たちは、いかにも世界的協力体制が整ったかのように語っている。
 2026年に政府間合意、2030年ごろにトンネル工事着手などの“予定”を示している。この“予定”は、10年前にも見たことがある。中国の次世代型巨大円形加速器「CEPC計画」が明らかになった時で、中国に負けるなという危機意識をあおり、誘致実現に結びつける意図も見えた。研究者たちは今回も「中国がCEPC(円形電子・陽電子衝突型加速器)計画を明確にしてくる」かのような話をして、危機意識の醸成を図る可能性がある。
 しかし、CEPC計画に対する危機意識をあおったところで、ILC誘致に国が動くことはないだろう。北朝鮮の弾道ミサイル発射のたびに全国瞬時警報システム(Jアラート)を鳴らし、「敵基地反撃能力を持つミサイルが必要」と突出した防衛予算を付けるのに成功したのとわけが違う。

千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2023-10-17 17:50

写真=半導体基板材料の「シリコンウエハー」を手にする田崎文得さん

 東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ螢轡縫▲好撻轡礇螢好箸如∋堝盧濬擦療頂衒呼世気鵝37)は15日、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で講演した。同社で半導体製造装置の開発研究に携わりつつ、国立天文台の研究員時代から続けているブラックホール(BH)研究にも取り組む“二刀流”で活躍。極小と極大の相反する世界の魅力を熱く語った。

 千葉県出身の田崎さんは、京都大学大学院博士課程を修了後、2014年4月から同天文台水沢VLBI観測所の研究支援員、特任研究員としてBH研究に従事。2020年から同社の嘱託社員となり、現在は正社員として天文学研究で得た経験を半導体製造装置開発に生かす仕事に従事している。一方で、天文学研究も業務の一環として認められており、BH撮影を行った国際研究者チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の一員でもある。
 今回の講演は同館の定例行事「サイエンスカフェ」として開催。16人が聴講した。
 宮沢賢治の『やまなし』を小学校の国語の授業で読んだ際、文中に出てくる正体不明の「クラムボン」が、研究者になるきっかけとなったという田崎さん。「大人たちが研究しても正体が分からないものがあるんだ」と感じ、研究という言葉やその仕事に興味を抱くようになった。
 天文学で研究対象にしているBHは、地球からはるか遠く離れた場所にあり、質量は太陽の数十万から数億倍という、まさに“天文学的数字”を扱う世界。一方、生活に身近な電子機器の中に組み込まれている半導体の表面には、マイクロ叩100万分の1叩傍薜焚爾龍望の規模で、複雑な電子回路が形成される。
 全く真逆の世界の仕事をこなす田崎さんだが、密接な関係も見いだせるという。「半導体はポケットに入れているスマートフォンの内部、そして小惑星探査機やBHを観測するための電波望遠鏡にも使われている。半導体にはさまざまな元素が使われているが、その多くは星の中で作られ、宇宙の進化の過程で誕生した」などと説明した。
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tanko 2023-10-13 17:40

写真=ブラックホール研究や天文台の歴史を解説する本間希樹所長

 水沢地区センターと市が共催する生涯学習講座「立生(りゅうせい)大学」の本年度最終講座が12日、水沢聖天の同地区センター体育館で開かれた。国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長が地域史の話題を交えながら、同観測所が取り組んでいるブラックホール研究について講演。ユーモアも交えた分かりやすい解説に、受講生はうなずきながら聞き入っていた。
 立生大学は60歳以上の市民を対象に実施。論語の一節「本立而道生」の精神を基に、江戸時代の水沢に開設された郷学「立生館」にあやかっている。本年度は70人が受講登録。5月11日に開講し、6回の全体学習と受講生が選択する学部講座に励んだ。
 閉講式に先立ち行われた講演で本間所長は、日本が太陰太陽暦から太陽暦(グレゴリオ暦)に改暦してから今年でちょうど150年に当たると紹介。「改暦を中心になって行った和算家の内田弥太郎(内田五観)は、高野長英の弟子で獄中や逃亡中の長英を支えた人物。現在の暦の作成、主に春分の日や秋分の日、二十四節気を決めているのは私たち国立天文台だ」と、生活に身近なカレンダーが郷土の偉人や天文台に関係していることに触れた。
 旧緯度観測所時代からの成り立ち、現在の施設名称にある「VLBI(超長基線電波干渉計)」の意味も分かりやすく説明した。4年前に発表したブラックホールの撮影については、「誰もが納得する『目で見て分かる証拠』を示せたことが非常に重要」と強調。この快挙を祝い、市内の菓子業者がブラックホールの菓子を発売したが、「ブラックホールの可視化と菓子化に成功した」とジョークを飛ばし、笑いを誘った。
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tanko 2023-9-28 9:30

画像=巨大BHから噴出しているジェットが、こまのような首振り運動をしているイメージ図。この現象がBHが自転している証拠となった=(C)Cui et al.(2023),Intouchable Lab@Openverse,Zhejiang Lab

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)などの研究者らで構成する国際研究チームは、直接観測不可能な巨大ブラックホール(BH)が自転している極めて強い新証拠をつかんだ。日本時間の28日付で英国の科学雑誌『ネイチャー』に論文が掲載された。本研究には、水沢の電波望遠鏡、スーパーコンピューター、そして人材の“3資源”が大きく貢献した。(児玉直人)

天文台水沢の人材、電波望遠、スパコン “3資源”の貢献大きく
 自転とは天体自身が回転する運動。基本的にどの天体も自転しているが、巨大BHが本当に自転しているのか、直接観測できないため確固たる証拠がなかった。
 国際研究チームは、BHから高速で噴き出すプラズマ粒子「ジェット」に着目。おとめ座の方向にあり、地球から5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れている「M87」銀河中心部の巨大BHのジェットを観測した。
 2000年から23年分の観測データを分析したところ、ジェットの噴出方向が周期的に変化している現象を確認。こまが首を振るのに似た動きで、その周期は11年もの長さに及ぶ。BHが自転していなければ発生しない現象で、「極めて強い自転の証拠」とした。
 観測は日中韓に点在する計13台の電波望遠鏡を連動させて実施。同観測所敷地内に設置している直径20mの電波望遠鏡「VERA」も含まれている。同敷地にあるスーパーコンピューター(スパコン)「アテルイ供廚鮖箸ぁ観測結果の考察も行った。
 同観測所の秦和弘助教は「これまでのBH研究の成果発表では、水沢の研究者が携わってはいたが、VERAは使っていないなど、物足りなさを感じられたかもしれない。今回は参加研究機関それぞれに大きな役割を果たしたが、水沢では電波望遠鏡、スパコン、そして人材の三つで貢献できた」と笑顔。VERAを活用した研究成果が世界的権威のある『ネイチャー』に掲載されるのも、2002年の本格運用開始以来初めてのことだという。
 今後はBHの自転速度の特定、ジェット発生のメカニズムの解明などが期待される。

天文研究に国境なし(水沢観測所で活動した崔さんの論文基に)

写真=会見にオンライン参加した崔玉竹さん(右のモニター内)

 今回の研究は、中国・之江(ジェジャン)実験室所属の崔玉竹(ツェイ・ユズ)さん=湖北省出身=の学位論文が基になっている。2017年から2021年まで、日本の総合研究大学院大学に在学。水沢VLBI観測所で研究活動し博士号を取得した。27日に同観測所で行われた記者会見には、崔さんもオンラインで参加した。
 1、2年分の観測データを分析するだけでも大変な作業だが、本研究では23年分のデータを分析。一時は心が折れ「宇宙の研究を辞めたい」と思うほど落ち込んだが、指導教官の本間所長や秦助教ら周囲の支えもあり、今回の成果に至った。
 会見前日の26日は、水沢緯度観測所初代所長・木村栄博士の没後80年の節目。本間所長は「天文学はグローバルで国境のない世界。木村博士の時代から国際協力の精神が脈々と受け継がれている」と語る。
 短期的成果が求められる科学界にって、長年の地道な取り組みが実った今回の研究。本間所長は「次世代の研究者にいい成果を出してもらうには、継続的な観測を続けデータを積み重ねる必要がある。望遠鏡などのインフラをしっかり運用しなくてはいけない」と気を引き締めていた。
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tanko 2023-9-26 9:20

写真=盛岡市内で始まったILCに関する国際会議

 北上山地が有力候補地とされる素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)に関連した国際会議が25日、盛岡市内で始まった。大型加速器プロジェクトにおける環境負荷低減をテーマに岩手大学(小川智学長)が主催。国外からの研究者7人を含む39人が出席し、オンラインでも17人が参加している。27日まで。
 ILC関連の国際会議が盛岡市で開かれるのは、2016(平成28)年12月に国際研究者組織が主催した「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」以来となる。
 初日は盛岡市盛岡駅西通のアイーナで、開会セレモニーと5人の研究者の発表が行われた。小川学長は「ILCの日本誘致活動も含め、新型コロナウイルス禍でここ数年世界の動きが停滞していた。今回のワークショップが、参加者の皆さんにとって実りあるものとなり、日本でのILC実現の新たな契機となることを願っている」とあいさつした。
 同大学は2013年に「ILC推進会議」を設置。地域自治体や推進団体と協力し、ILCの東北誘致を目指している。
 今回の会議は、ILCをはじめとする大型加速器プロジェクトにおける環境負荷低減の取り組みについて、現状や今後の課題を明確にしようと企画された。大型加速器の建設、運用、実験終了後の対応では、環境への影響を最小化し、持続可能な社会を実現するための対策が求められている。
 実行委員長を務めている同大学の成田晋也教授は、「研究していく中で、いかに将来に向け環境に優しいプロジェクトにしていくか。これをきっかけにしてお互い情報交換し、それぞれの研究成果を役立ててもらい、さらに進んだ研究をしていきたい」と期待を込めた。
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tanko 2023-9-9 17:30
 大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県)の次期機構長候補者に、東京大学大学院の浅井祥仁教授が選ばれた。
 KEKは、北上山地が有力候補地とされる実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関わる活動を展開している。
 浅井教授は東京大・素粒子物理国際研究センター長も兼務。研究者組織「ILCジャパン」の代表も務めており、今年6月には仙台市内でILC計画の意義に関する講演もしている。
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tanko 2023-9-1 15:30

写真=水沢VLBI観測所本館内で保管されている記録用紙原本。左上に「EW Sep 1―2 1923」とあり、1923年9月1日から2日にかけての24時間記録であることを示す


 明治以降の日本では最大の地震被害をもたらした関東大震災(関東大地震)から、1日で100年となる。水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)には、緯度観測所時代に観測された同地震の記録が残されている。資料から推定される同観測所の震度は2〜3。関係する資料の一部が、観測所に併設する木村榮(ひさし)記念館で公開されている。
(児玉直人)

 同地震は1923(大正12)年午前11時58分に発生。死者・行方不明者は推定10万5000人と人的被害は大きく、その教訓を生かすため、毎年9月1日が「防災の日」と定められている。
 地球の極運動解明を目指していた同観測所。地震と極運動との関係を把握するため、「大森式地震計」が開所から間もない、1901年に導入された。関東大震災が発災する22年前のことだ。
 この地震計は、日本の地震学創始者と言われている大森房吉(1868〜1923)が考案。黒いすすを付着させた専用の記録用紙に揺れの波形を描く。天文台OBで奥州宇宙遊学館の花田英夫・企画開発主幹は、「記録用紙を円筒状のドラムに巻き付け、ゼンマイでゆっくり回転させることで、24時間記録ができる。当時としては画期的な装置だった」と語る。
 地震計は、現在の水沢VLBI観測所本館(3代目本館)南側にかつてあった建物の中に設置。南北と東西の動きを把握するため、2台の地震計をL字に置いた。このうち1台が木村榮記念館内に常設展示してあり、もう1台は敷地内倉庫に支柱のみ保管されている。
 関東大震災発生時の波形記録の複製も記念館に展示しているが、原本は3代目本館の一室に、記録ノート(検測簿)と共に保存されている。
 記録ノートによると、緯度観測所で最初の揺れを検知したのは午前11時59分38秒。ところが、次の39秒以降は空白になっている。代わりに「針脱出」「線混雑」「計算不能ナリ」などの文字がある。
 木村栄記念館ではミニ企画展として、記録ノートの一部、津波や地変を現地調査した緯度観測所の池田徹郎技師(のちに同観測所3代目所長)による報告書の複製などを紹介。管理を担当している水沢VLBI観測所の蜂須賀一也・特定技術職員は「眼視天頂儀の観測野帳41年分の展示も始めたので、ぜひ見てほしい」と話している。同記念館は奥州宇宙遊学館同様、火曜休館となっている。


写真=関東大震災の揺れを水沢で感知した、旧緯度観測所の大森式地震計。木村榮記念館に常設展示されている


写真=関東大震災の揺れを記録した検測簿。午前11時59分39秒以降の記載がなく「針脱出」「線混雑」「計算不能ナリ」などと書かれている
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tanko 2023-9-1 15:20
 文部科学省は31日までに、2024(令和6)年度予算の概算要求を公表した。将来加速器の性能向上など、重要要素技術開発費に本年度と同額の7億円が要求されている。
 文科省素粒子・原子核研究推進室によると、技術開発は茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)が今年4月から5年事業で進めている。
 将来加速器の一つとして、本県南部の北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」も関係するため、“ILC関連予算”と呼ばれることもある。同室は「ILCにとどまらず、さまざまな加速器に幅広く活用される技術を開発するもの」と説明。事業名にILCと明記されているわけではなく、文科省ホームページで公表している概算要求資料にも記載されていない。
 KEKでは運営交付金(年間約140億円)の一部をILC関連に投じている。新年度は3億5000万円(本年度比8000万円増)を充当したいとの申し出がKEKからあったという。
 運営交付金は例年、ほぼ同規模で推移。同推進室は「海外研究者との共同研究が始まっているようで、実験装置の稼働時間が増えることも見込んで、交付金全体に占めるILC関係の内訳を増やした形。交付金全体の金額が大幅に増えた――というものではない」と話している。
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tanko 2023-8-22 8:50

写真=2013年8月23日、ILCの有力候補地に北上山地が決まったことを知らせるポスターが掲示された市役所本庁玄関

 素粒子物理学の巨大実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致計画を推進する研究者が、有力候補地に北上山地を選定してから23日で丸10年となる。当時は国際的な研究施設の実現に大きな期待が高まったが、他分野研究者らを交えた議論では誘致に慎重な見解が示されており、一部の地元住民は研究者や県の誘致事業に疑問を唱えている。事実上の与野党対決となった知事選(17日告示)だが、ILC計画に関しては2候補が共に誘致実現を公約に掲げる“推進派”だ。政府の動きが判然としない中、誘致関係者は機運を再度高めようと躍起だ。
(児玉直人)

 ILCは地下に建設される大型の実験施設。肉眼では確認できない素粒子の一種「電子」と「陽電子」を光速に近い状態に加速させ、衝突させる実験を行い、物質の成り立ちや起源に関する研究を行う。
 国際プロジェクトとして推進しようと、素粒子物理学の研究者らが中心となって計画。研究者グループは、振動影響などを受けにくい強固な岩盤がある場所として、北上山地と九州北部の脊振山地に絞り込んだ。両地域の地元関係者による理解促進の取り組みは、やがて誘致合戦のような様相を呈しヒートアップ。科学的な検証によって、北上山地に一本化された。
 その後も誘致実現に向けた取り組みが進行。普段は意見が対立する政治の場においても、ILCだけは与野党が超党派的に前向きな姿勢を示し続けている。
 しかし、日本政府は現在までにILC受け入れを正式表明していない。候補地もあくまで推進派研究者が決めたものという位置付けから変わっていない。
 他分野の研究者を交えた日本学術会議や、文部科学省の有識者会議の場では、予算やプロジェクトの進め方に対し慎重な意見が示されている。また、北上山地近郊の地元住民の一部からも、施設の安全性や誘致活動の在り方に対する疑問が出ている。子どもたちを誘致運動に巻き込むような活動に対しては、反対派住民だけでなく有識者会議からも批判の声が上がった。
 他分野研究者からの指摘に、推進派のリーダー的な存在として誘致運動に携わってきた県立大学の鈴木厚人学長は猛反発。今月10日に水沢で行った講演に続き、21日に盛岡市内で開かれた県ILC推進協議会の講演会でも、ここ最近の海外研究者らの日本誘致への期待沈下は、「有識者会議の見解が原因」と明確に非難した。
 「どこに建設するか」という立地問題が、国際費用分担などを巡る議論を硬直化させる要因になっているとして、有識者会議が提言した「技術開発と立地問題の切り離し」についても厳しく批判。「日本に誘致するためにやってきたことなのに、立地問題を切り離すとはとんでもない」と語気を強めた。
 岩手大学の男子学生が「具体的な構想が出ているのに、なぜ遅れているのか」と問うと、鈴木学長は「有識者会議の報告の中身があまりにもひどかったので、急に落とされた感じになった。しかし、(岩手など)地方がこれだけ受け入れる準備をしていると海外研究者に話すと驚かれる。再度盛り上げていかないといけない」と答えた。

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