人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

木村博士 立った床現る(天文台水沢の国登録有形文化財「眼視天頂儀室」)

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tanko 2023-11-21 10:20

写真1=木村栄博士が観測していた当時の床面が現れた眼視天頂儀室内部。中央の台座の上に、眼視天頂儀が据え付けられていた

 国立天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=で20日、国の登録有形文化財「眼視天頂儀室」の修繕工事中、建設当初の木製床が姿を現した。「Z項」を発見した初代所長、木村栄博士(1870〜1943)が、毎晩観測時に立っていた床面で、板の隙間からは天頂儀の台座に振動を与えない特殊な基礎構造も確認できた。新たなかさ上げ床を設置するため、当時の床は再び見られなくなる。(児玉直人)


写真2=眼視天頂儀室の外観。左後方は20m電波望遠鏡

 同天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)は、今月13日から12月中旬までの予定で、眼視天頂儀室と眼視天頂儀目標台覆屋の修繕工事を実施。両施設とも老朽化が著しく、同天文台への寄付金を活用して事業着手した。文化財を良好な状態で残し、安全な形で一般公開できるようにする狙いがある。
 天頂儀室は水沢VLBI観測所の前身である水沢緯度観測所が、臨時緯度観測所として開所した1899(明治32)年に完成。木村博士らは同年12月11日から毎晩、天頂儀室で天体観測に当たった。やがて、時期は不明だが別の木板によって15cmほど床面はかさ上げされた。以降、開所当時の床を見ることは不可能となった。
 かさ上げ床は腐食が進んでおり、工事業者によって撤去されたところ、当時の木製床が姿を見せた。さらに板の隙間からは、眼視天頂儀の台座と建物の基礎部分の間に空間が設けられていることも確認できた。


写真3=眼視天頂儀室の設計図。振動を与えない特殊な基礎構造になっている=水沢VLBI観測所提供

 水沢VLBI観測所の蜂須賀一也・特任専門員(52)によると、わずかでも振動が天頂儀に伝わると正確な観測ができないため、台座と建物基礎は一体化していないという。「台座の基礎部分は2〜3mは掘っており、当時としては大掛かりな土木工事だったのではないか」と推測。「暑い日も寒い日も、木村博士がこの床面に立って観測し続けたことで、Z項発見があったと思うとしっかり残さなければいけない財産だと感じる」と話している。
 同時に修繕している目標台覆屋は、天頂儀室から北へ100mの位置にある。天頂儀室にいる観測者が、正確な北の位置を把握するための施設。修繕では覆屋の外壁や屋根の塗り直しを行う。
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