人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

雅号「千山」情報求む(来年3月に木村栄の書集め企画展、科博研究員と本社が主催)

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tanko 2023-12-6 12:10

写真=駒形神社斉館に掲げられている木村栄の書

 国立科学博物館(科博)の馬場幸栄研究員と、胆江日日新聞社(小野寺弘行代表取締役社長)は、特別企画展「書家千山――木村栄の書展」を、来年3月2日から同10日まで水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で開催する。水沢緯度観測所初代所長の木村(1870〜1943)は、「千山」の雅号で数多くの書を残した。各地に散逸した書の情報を集め、同観測所2代目本館である同遊学館で“里帰り”展示する。馬場研究員と同社は、木村の書の所有者に情報提供を呼びかけている。
(児玉直人)

 馬場研究員は、同天文台学芸員などを歴任。2015(平成27)年秋、同天文台水沢VLBI観測所の一室で発見された500枚を超えるガラス乾板写真を復元した。日本学術振興会の科学研究費を活用し、写っていた人物と観測所との関係を地道に調べ、観測所と地域の歴史をひもとく研究を続けている。遊学館で企画展や講演会を定期開催して成果を発表。今年4月からは「緯度観測所と地域の人々」と題し、月1回、本紙に調査成果を連載している。
 ガラス乾板写真には、書をしたためる木村の姿もあった。木村は自身の誕生日になると官舎にこもり、所員や親交のあった市民らに贈る書をひたすら揮毫していた。市立水沢図書館には、4歳と8歳の時の書が保管されている。
 今回の特別企画展は、木村が幼いころからたしなんでいた書に注目。「Z項」など科学分野の成果に注目が集まりがちだが、木村の多彩な才能にスポットを当てる。
 現存する書のうち、水沢の陸中一宮駒形神社(山下明宮司)の斉館にある「敬神護國」の書には、「昭和十四年夏」と記されている。馬場研究員によると、揮毫時期が明記された木村の書は珍しいという。
 このほかにも水沢やその周辺の学校、元所員の子孫宅にも展示・保管されているものもある。だが現存する書がどれくらいあるかは不明。所有者の子孫や後任の施設管理者が、その貴重さや歴史的価値を知らず処分したり、所在不明になったりする可能性もある。千山という雅号が「Z項を発見した木村のものだ」と知っている人も、あまり多くないとみられる。
 馬場研究員と本紙は、今月末をめどに書に関する情報提供を受け付ける。どのような経緯で書かれたか調査し、場合によっては3月の特別企画展に展示する方向で借用協力を求める。企画展期間中の同3日には馬場研究員による講演なども予定している。
 馬場研究員は「木村は地域の誇りとして地元の人々から敬愛されていた。今回の企画展を通して、木村の書の価値を見いだし、大切に保管してくださる方が増えることを願いたい」と話している。
 情報は個人、事業所、公的施設(学校、公民館など)問わず受け付ける。問い合わせは、胆江日日新聞社(電話0197-24-2244)まで。



写真=木村栄の書であることを示す雅号「千山」。木村の姓名と雅号の落款印も手掛かりになる
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