岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。
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tanko 2018-10-19 9:50
 国際リニアコライダー(ILC)が実現すると、物理学の進歩だけでなく、施設周辺地域の国際化や経済効果も生まれるそうですが、建設には多くのお金が必要となります。もっと他に税金を使うべきことがあるのに、優先的に使って国際化や経済効果を得る必要性や意味はあるのでしょうか?

一概に善しあしは決められない

 ILCの建設には、本体だけで約8000億円余りの費用が必要です。ILC計画は国際プロジェクトですから、この費用については、研究に参加する国々がそれ相当の額を分担します。日本は建設する国(ホスト国)になる予定です。これまでの国際プロジェクトの流れで見ると、建設費の半分ぐらい、約4000億円を負担しなければいけません。
 「えっ! そんな多くのお金が必要なの」と思うかもしれません。しかしこれは、準備期間約4年、建設期間9年の間に必要な金額の総額です。つまり「いきなり4000億円を払ってください」というわけではありません。
 ちなみに、ILCの周辺道路や関連する施設の整備の費用は、8000億円の中には含まれていません。これらは、地元自治体(岩手県や奥州市、一関市など)と国との相談により造るとされています。完成後、ILCを運転するために必要なお金は、年額約390億円になるのではと見込まれています。
 一方、ILCを実現させたときの経済波及効果は約3兆円。その他の生産誘発効果(ILCに関連する経済波及効果)は、5兆7200億円と見込まれています。
 このようにILCの設置費用と、ILCで得られる経済的効果などについては、ある程度試算できます。しかし、金額や目に見える効果以外のメリットについては、ILCというものをどのように理解し、個人としてどのように考えるかによって異なります。一概にILCは「良い」「悪い」と決められません。
 かけたお金に対して返ってくるプラスの影響のことを「費用対効果」と言います。お金をかけた以上に効果が大きければ「費用対効果が高い」となり、お金をかけた割にはこれといった効果がなければ「費用対効果が低い」となります。会社経営や事業などをするときには、必ず出てくる考え方なので覚えておいてください。
 費用対効果を意識して「ILCの研究はどれくらいの意味があるのか」「費用に対して得られる効果はどうなのか?」という疑問を持つ感覚は、とても大切なことです。
 この世の中にはいろいろな事に興味を持つ人、持たない人がいます。さまざまな考え方や意見を持った人たちが大勢います。いろいろな考えを持っている人たちによって、この世は成り立っています。
 ILC計画に対し、疑問や「何のために?」「もっと他にすることやお金を使うことがあるのでは?」と考えるのは不思議なことでも何でもありません。何に対しても、興味や疑問を持ち続けることで、自分自身の考えを導き、持つことができるのです。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)


番記者のつぶやき
 私が小さいころに遊んだ「いろはかるた」で、「や」の絵札には、安い値段で買った急須を使ったところ、穴が空いていて水が漏れて困り果てた人の姿が描いてありました。「安物買いの銭失い」という有名なことわざです。
 費用対効果を考えるとき「安くていい効果を出したい」と誰もが思います。しかし、安いものが必ずしも「いいもの」とは限りません。ある程度の良い成果を得るには「ちょっと高くても仕方がない」と受け止めなければいけない場合もあります。安いものを買ったけれど、使い物にならなかった、あるいは全然効果がなかったとなれば、「ちょっといい値段でも、最初からしっかりしたものを買っておけばよかった」となります。新たに買い直すことで、最初に使ったお金が無駄になってしまう、つまり「銭(お金)を失う」のです。
 逆に高ければ必ずいい結果が出るとも限りません。物を買うときに迷ってしまうのは、費用対効果を真剣に考えている証拠かもしれません。かといって、あまり時間をかけすぎて費用対効果のことばかり考えていたら、欲しかったものを別の人が買ってしまったり、いい成果を得るためのタイミングを失ったりすることもあります。簡単に判断できる場合と、そうでない場合もあるので悩ましいところです。
(児玉直人)

写真=ILC実現による効果などが記されたパンフレット
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tanko 2018-10-19 9:40
リスク論からのアプローチ
避けたい住民間対立の構造
条件明確にし意見変える柔軟さを

小松丈晃氏(東北大学大学院文学研究科・文学部教授)

 ――今年8月、ILC候補地の地元である一関市内の市民団体や市民らの有志が、市長公開質問状や学術会議への意見書送付などの形で、放射線管理や財政負担などに対する不安や疑問の声を上げた。ILCを推進する側はこのような声を上げている人たちに、どのような対応を取るべきか。
 小松氏 市民側の懸念に懇切丁寧に説明する機会をできるだけ数多く設けることが重要で、ILCに限らずどんな事業でも当たり前のこと。しかし、実際にはあまり実践されていない。リスクがあり得るのであれば包み隠さず説明し、対策について理解してもらうよう努める必要がある。
 良い印象づくりだけを推進すると、場合によって「何か隠している」との懸念を助長することにもなりかねず逆効果。知っている情報を隠蔽するのはもちろん論外だ。特に財政的負担に関するメリットとデメリットは、バランスよく市民に誠実に伝えることが大切だと思う。
 一関の市民団体による公開質問状提出のような行動は、市民側の理解や認知度を促す上でも大変意義があるものだと考えられる。



 ――公開質問を出した市民団体の関係者は、疑問点を明らかにしたいという思いがある一方で、ILCを推進したい住民との間に溝を作りたくないとも話している。住民同士の対立構造を生まないようにするため、推進する側、慎重な見解を示す側はどんなことに留意し、行動すべきか。
 小松氏 この点は非常に難しい。ごく基本的なことを言えば、対立にまで行き着かないようにしつつ、両者ともに是々非々の立場を維持するには「自分が意見を変えるための条件を明確にしておく」といった柔軟さが求められると思う。例えば「こういったことが明らかになるのであれば、問題はない」とか「この条件を満たせば推進すべきだ」というような感じだ。ただし、こういう柔軟さをもってもらうには、事業推進側がメリットとデメリットの両面をできるだけ丁寧に説明する機会を作らなくてはいけない。これが大前提となる。
 また「自分は慎重派だ」「あの人は推進派だ」と「規定」を強調しないことも大切だ。
 規定とは自己や他者についての定義。いったん「自分はこういう立場の人間だ」「あの人はこういう考えだ」と規定しまうと、それに拘束されてしまい、後で立場を変えるのがなかなか難しくなる。事情が変わったときにも、過去の自分の規定に拘束されてしまうし、「あなたは以前、こう主張していましたよね」と、他者から与えられた自己像に拘束されてしまう。
(つづく)

写真=一関市内の市民団体が勝部修市長に提出した公開質問状の書面
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tanko 2018-10-18 6:20
リスク論からのアプローチ
市民生活との関係つかめず
経済効果力説も乏しい実感

小松丈晃氏(東北大学大学院文学研究科・文学部教授)


 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を巡り、日本学術会議の「ILC計画見直し案に関する検討委員会」(家泰弘委員長)は年内にも議論をとりまとめ、政府がILC誘致に対する考えを示す上での参考となる所見を示す見通しだ。研究意義や波及効果の大きさを熱っぽくアピールする誘致関係者に対し、同検討委では厳しい意見が相次いでいるほか、候補地近傍の市民団体や市民有志からはリスク面の不安や誘致運動の在り方に疑問が投げ掛けられている。政府判断のリミットが迫る中、社会学と科学技術政策の専門家2人に、ILCを巡る直近の動向を踏まえて見解を聞いた。7回続き。(児玉直人)


 1人目の専門家は、東北大学大学院文学研究科・文学部教授の小松丈晃氏。災害や科学技術によるリスク問題などを研究テーマに掲げる社会学者で、リスク管理や「無知」が引き起こす科学、政治の問題に関する著書、論文がある。ILCの周知・広報の在り方、慎重な見解を示す市民運動が起った現状などについて聞いた。


 ――文部科学省ILC有識者会議(7月4日で終了)や学術会議では、国民理解や地元理解が不可欠と指摘している。オリンピック以上の経済効果や人材育成面の意義があるとも言われるILCだが、候補地以外の地域では計画の存在すら知らない人が圧倒的。これほど認知度が高まらない理由として何が考えられるか。
 小松氏 発電所や廃棄物処分場、工場などであれば、目的が誰にとっても分かりやすい。
 しかし、ILCの施設目的を理解するには、最低限の科学的な素養が必要。目的が理解できても、それが自分たち市民の生活にどう関わるのかが見えにくいという点がある。「宇宙の謎を解く」という施設が立地したところで、果たして自分たちの生活にどう影響するか。判然としないだろう。
 ILCはあくまで科学者のための施設。なので「市民の側で必要性うんぬんを議論する余地はない」と捉えられている面があるかもしれない。
 経済効果も力説されているようだが、それは国内全体の効果であり、候補地の地元自治体にどれくらいの効果があるかは分からない。地元住民からすれば、県や市町村レベルの試算が欲しいところだろうし、数字だけでなく「町の姿がこう変わる」「雇用創出の点ではどうなのか」というように、市民が実感できるレベルの説明がなければ、認知度や市民間の議論は大きく盛り上がらないだろう。
(つづく)



小松 丈晃氏(こまつ・たけあき) 1968年、宮城県出身。東北大学文学部社会学科卒業後、同大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。同大学助手、日本学術振興会特別研究員、北海道教育大学釧路校・函館校准教授などを経て、東北大学大学院文学研究科・文学部人間科学専攻社会学講座教授。専門は社会システム理論、環境リスク論、地域社会研究。著書に「リスク論のルーマン」(勁草書房)。

※プロフィル写真は東北大学HPより
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tanko 2018-10-2 10:00
 【東京=児玉直人】 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の国内推進母体となっている、大学共同利用法人高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の山内正則機構長は1日、日本学術会議の「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する検討委員会」(家泰弘委員長)に参考人として招かれた。山内機構長は、ILC実現へ「『今年中』とされるのは、ILCに対する日本政府の方向性についての表明。政府の判断はこれで終わりではなく、本準備段階の開始とILC建設の各国政府合意の場面でも求められる」と強調。同委員会委員に対し「準備が全て整ったので最終判断をいただきたいとは申し上げていない。日本政府の方向性決定に資するような見解を示してほしい」と理解を求めた。

 同委員会では、北上山地が有力候補地となっているILCの国内誘致について、8月10日から素粒子物理学以外の分野を専門とする研究者らを交えて議論を深めている。これまで科学的意義や資金・人材調達などについて委員から出された質問、指摘事項について誘致推進側の素粒子物理学者らが参考人として説明に当たっている。
 同日は、山内機構長がKEKとILC計画の関係について応じたほか、東京大学素粒子物理国際センターの浅井祥仁教授が全長約20kmの施設規模に見直したことによる研究意義などについて解説した。
 山内機構長は説明の冒頭、同委員会委員から指摘されている海外貢献や組織・人員計画、KEKの改編などについて「(今年中とされる)日本政府の方向性決定を受けて進めるもの。方向性表明の前にやるべきことはやってきたと考えているので、方向性の決定に資するような見解を示してもらえれば」と訴えた。
 KEKは、原子核物理学など素粒子物理学に近い学術分野の研究者から理解、協力を得るために各種セミナーなどを開催。これに対し、委員の一人は「ILCに興味がある人は行くだろうが、関心がない人や否定的な人は行かないと思う。原子核物理などのコミュニティーに対して、積極的に説明に行こうという印象をあまり感じない」と指摘。山内機構長は、KEK内の原子核物理の研究者へは説明をしているとしながら「今までので十分とは言えない部分もあるので、しっかりやっていきたい」と述べた。
 日本にILCを誘致する意義に関する質問に応じた浅井教授は、「ILCを日本に造らないとなれば、似たような実験施設をCERNに造り、そこで進めることになるだろう」との考えを示した。その上で「日本は技術立国というのであれば、このような研究所で人材を育てていくことが大切だ」と強調した。
 会議後、報道陣の取材に応じた家委員長は「委員会で示した論点について、詳しい説明があったが、まだもやもやしている面もある。8月に委員会をスタートさせたが、個人的には年を越さないようにまとめをしていきたい」と話していた。

写真=日本学術会議で開かれたILC計画見直し案に関する検討委員会第6回会合(東京都港区)
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tanko 2018-10-2 10:00
 一関市議会の議員5人は、市内の市民団体や有志市民らが国際リニアコライダー(ILC)誘致に疑問を唱える趣旨の意見書を日本学術会議(山極寿一会長)や同会議のILC計画見直し案に関する検討委員会(家泰弘委員長)に提出したことを受け、家委員長宛てに「市民の意見や考えを代表したものではない」とする内容の文書を提出していたことが1日分かった。文書は参考資料として、同日開かれた同委員会の資料に添付された。
 文書は千葉信吉、金野盛志、千葉大作、岩渕善朗、千葉幸男の5氏連名。「一部住民から意見書が提出されたことについて」の表題で、9月28日付で家委員長宛てに提出された。
 文書には同市内の僧侶・千坂げんぽう(※)氏ら有志と、同市内の住民団体「ILC誘致を考える会」から、同学術会議に意見書が送付されたとする内容に触れ、「市民と議員との懇談会では、ILCの早期実現を待ち望む市民からの熱い声を多数いただいている。そのような中、ごく一部の市民の方々からの意見書提出は、驚きをもって受け止めている。ILC実現は日本が世界をけん引し得るチャンス。今後においても、リスクを含めた課題の理解増進に努めていく」などと記されている。
 同委員会には、ILC推進派、慎重派双方の関係団体などから意見書や文書が届いている。家委員長は「さまざまな立場からの文書が届いている。各委員も目を通し、議論の参考にしている」と述べていた。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2018-9-26 12:50
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関連した住民の懸念に、研究者や行政の担当者が説明する「ILC解説セミナー」が24日、一関市の一関保健センターで開かれた。約140人が参加。住民との質疑応答は、予定時間をオーバーして行われたものの、放射能関連の質問が相次ぎ、まちづくりや誘致運動と教育の関係などの質問ができなかった人もいた。「メリットより、リスクの方を早く知らせるべきだ」「一関以外でもリスク説明の開催を」などの声もあった。

 東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)が主催。佐々木淳・岩手県理事兼科学ILC推進室長(同準備室地域部門長)と、岩手大学の成田晋也教授(同準備室広報部門長)が講師を務めた。
 今回のセミナーは、8月にILCに関連するさまざまなリスク、誘致活動の在り方を疑問視する声が一関市民を中心に表面化したことを受け企画。これまで一関市や奥州市などで開催されてきた誘致機運醸成を主とする講演会やセミナー、出前授業などとは開催経過や背景が異なる。
 参加者や会場に居合わせた誘致関係者らによると、冒頭の講演や解説は従来のILC講演会とほぼ同様の雰囲気だったが、質疑応答になると放射性物質の管理などリスク面に関する質問が相次いだ。中には「ILC誘致によるメリットより、リスクの説明をするのが先。順番が逆ではないか」と、誘致を推進する研究者や行政の姿勢に不信感をのぞかせる人も。さまざまな疑問や安全性を求める質問に、同調者から拍手が起きる場面もあったという。
 聴講した「ILC誘致を考える会」の原田徹郎(てつお)共同代表は、「多くの参加が在り関心の高さを実感した」と振り返る。「高レベル放射性廃棄物への転用懸念については、構造上あり得ないという説明だったが、県は積極的に造らせない姿勢を見せるべきだ」と指摘。セミナー全体の様子については「質疑時間が少なく、放射能関連の質問が中心になってしまった。まちづくりや誘致運動と教育のあり方に関する質問を用意していた人たちは、残念がっていた。ILCは一関だけが候補地ではないので、今回だけで終わらせず、胆江地域や北上などでも開催してほしい」と希望している。
 佐々木理事は「住民の皆さんと一緒にやっていく上で、どういう方法でどんな説明が必要か、しっかり検証したい。リスク面も含めた事実関係の共有にも努めたい」と話している。

写真=一関市で開かれた東北ILC準備室主催の解説セミナー(同市役所提供)
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tanko 2018-9-23 14:30
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致活動に疑問を呈している一関市の僧侶、千坂げんぽう氏(※)ら僧侶3人は21日、「県は文部科学省ILC有識者会議や日本学術会議で指摘されているILC誘致に伴う問題点を県民や国民に公開し、情報を共有すべきだ」とする趣旨の意見を表明。その上で、東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)が24日に同市内で開くILC解説セミナーについて「全く的外れの対応」と批判した。
 意見表明したのは千坂氏のほか、平泉町の菅野成寛氏と佐々木邦世氏。3人は8月10日、首都大学東京の山下祐介教授らを加えた計6人の連名で、学術会議に「ILCの日本における意見書」を提出している。「リスク検証が不足しているままでの誘致決断は将来に禍根を残す」などの考えを学術会議側に示していた。
 意見書は学術会議宛てのものであったが、報道などで千坂氏らの動きを知った、鈴木学長や大平尚・県企画理事は記者会見を開き、県のILC誘致に対する基本的考え方を明らかにした。さらに、今月14日には同準備室の主催で解説セミナーを一関市内で開くことを告知した。セミナーは、ILCの基本情報や自然、日常生活へのリスクについて、同準備室広報部門長の成田晋也・岩手大学教授らが対応する。
 千坂氏らは「学術会議がILCの問題点を総合的に検討しているとき、その結果を待たずに一関市民に『安全で不安はありません』と説明することが、公正と言えるのか」と批判。これまでの誘致活動が、メリットのPRに重きを置き過ぎている点を問題視していると主張し、「県民、国民に多大な影響を与える巨大公共事業を推進する際の進め方や責任の在り方が極めてあいまい。手法が問われている」と指摘した。
 セミナーは24日午後3時から同4時半まで、一関保健センター多目的ホールで開かれる。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2018-9-21 19:50
 国際リニアコライダーでは「電子」と、その反物質「陽電子」をぶつける実験をするそうですが、存在している二つの物質をぶつけるのに、なぜ二つとも消滅して違うものが生まれてくるのでしょうか? そもそも普通の物質と反物質は何が違うんですか?

詳細なことはまだ分かりません
 まず物質と反物質について理解を深めてみましょう。
 この世には「反物質」は事実上存在しません。反物質が存在していたのは、約138億年前の宇宙誕生時に起きた大爆発「ビッグバン」の直後のみだと考えられています。ただ、本当にわずかですが宇宙線のような非常に高いエネルギーを持った粒子が地球の大気中で反応した直後や、実験室や一部の医療施設で人工的に生成される例はあります。これらは非常にまれで、しかも極めて寿命が短いのです。
 ビッグバンが起きた時には、粒子(物質)と反粒子(反物質)が対(ペア)で誕生したと考えられています。物質と反物質は「同じ数だけあった」というわけです。
 しかし、現在の宇宙には反物質でつくられたような星(恒星)や銀河、生物などは確認されていません。反物質が消滅したことを意味するのですが、なぜ反物質がなくなったのか、現状では全く分かっていません。なぜ反物質がなくなったのか、この事実や理論を提唱した人は、確実にノーベル賞を受賞できます!
 ビッグバン直後に誕生した電荷がマイナスの物質(電子)と、電荷がプラスの反物質(陽電子)は、衝突すると消滅するという現象を起こします。これを「対消滅」といいます。そして消滅すると同時にエネルギーが発生。エネルギーの大きさは、その粒子と反粒子の重さ(質量)によって異なります。発生したエネルギー(光)の大きさに応じて、新しい物質や反物質が生まれます。この現象は、特殊相対性理論の「E=mc2」という式で表すことができます。Eはエネルギー、mは質量、cは光の速度です。
 原子や分子、素粒子のようなミクロの世界の振る舞いは「量子力学」という学問によって説明されており、現代物理学の基礎をなしています。イギリスのディラックという物理学者は、量子力学とアインシュタインの相対性理論とを合体させる作業を始めました。このようにして出来上がったのが、「ディラックの方程式」という式で、この方程式を解くと、マイナスの電荷をもつ「電子」を表すだけでなく、電子と同じ性質を持ちながら、電荷のみがプラスという粒子(陽電子)の存在を示す解が出てきます。このようにして反物質の存在が理論的に予言され、説明されました。
 ちなみに、0.5グラムの物質と0.5グラムの反物質を衝突させたときに発生するエネルギーは約90兆ジュール。その規模を分かりやすく示すと、約60m四方の水を0度から100度にまで上げられるほどの膨大な熱量が得られます。

番記者のつぶやき
 ILCの話を初めて聞いた時、私自身もでしたが多くの人が「え?」と思うのが、ぶつけた二つの物質が消えてなくなるという点ではないかと思います。消滅するとともに大きなエネルギーが生じ、そのエネルギーの大きさによって、全く違う物質や反物質が生まれるという、なんだか手品でも見せられているような不思議な現象です。
 素粒子実験施設ではこのエネルギーの大きさが非常に大切なポイントです。エネルギーの大きさによって研究できる内容、見ることができる現象が異なるためです。
 衝突させる物質や反物質を加速させる加速器の施設規模によって、エネルギーが最大どれくらい出せるのかが決まってきます。施設が大きければ、いろいろな事象が見られるようですが、当然、お金もかかります。限られた予算の中、いかに有意義な研究成果を出すべきかという判断はとても難しいです。研究者の間でも意見が分かれています。
 ILCの場合、当初は全長約30kmの長さとし、両方から電子、陽電子を加速させ中央部分で衝突させる仕組みを提唱しました。この施設規模で出すことができるエネルギーの大きさは500ギガ電子ボルトという数値と単位で表現されます。研究者は「500GeV」と言っていますが、本紙では分かりやすいように施設の長さで伝えるようにしています。
 現在は、物質に質量を与えるヒッグス粒子の詳細な研究を進めるのに適した全長約20kmの施設規模に見直されています。エネルギーの大きさは250GeVです。
(児玉直人)

図=物質(正物質)と反物質の衝突によって得られるエネルギーのイメージ
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tanko 2018-9-21 17:30
 奥州市水沢の羽田地区振興会(菊池誠会長)は20日、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を願う地区住民687人分の署名を市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)に提出した。
 同協議会が展開している「ILC Supporters(サポーターズ)6万人署名運動」に呼応した取り組み。サポーターズは今年4月、ILCの国民理解や周知を図るため、映画監督の押井守氏が発起人となり発足した応援組織。サポーターズの活動趣旨に賛同した同協議会は、市民の過半数となる6万人を目標とした署名運動を独自に展開している。
 JR水沢江刺駅が立地し、ILC建設候補地の北上山地にも近い同地区では、ILC関連の講演会開催や誘致を願う看板の設置などが繰り広げられてきた。地区のコミュニティー計画にもILC実現を見据えた文言が入っており、まちづくりの一つとしてILCを位置付けている。
 同振興会は8月上旬、地域内の班長らの協力を得て1071世帯に署名記入用紙を配布。9月中旬までの間に、地域内人口の約2割に当たる687人分の署名が集まった。人数に含まれていないが、同協議会事務局である市ILC推進室にメールやファクスで提出した住民もいたという。
 菊池会長から署名簿を受け取った小沢市長は、「振興会挙げての署名運動に感謝申し上げたい。日本にとって前例のない国際研究機関の誘致であるがゆえ、有識者の間でも慎重な姿勢にならざるを得ない部分もあるが、市にとってはILCは千載一遇の好機と捉えている。皆さんから寄せられた熱意をばねに前に進む努力をしたい」と話した。
 市ILC推進室によると、現時点で約3万人分の署名が寄せられている。11月ごろをめどに東北ILC推進協を通じて、政府関係機関へ提出するという。

写真=小沢昌記市長(右)に署名簿を提出する羽田地区振興会の菊池誠会長(右から2人目)
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tanko 2018-9-21 17:30
 一関市を拠点とする市民団体「ILC誘致を考える会」(共同代表=千坂げんぽう氏(※)、原田徹郎(てつお)氏)はこのほど、日本学術会議(山極寿一会長)に国際リニアコライダー(ILC)誘致にかかる問題点などをまとめた意見書を提出。同会議に開設中の「ILC計画の見直し案に関する検討委員会」(家(いえ)泰弘委員長)において、ILC候補地住民が抱く不安などに考慮した審議を進めるよう求めた。意見書は18日に開かれた同検討委の第5回会合で、参考資料として委員に配布された。
 考える会は8月、ILCの疑問点や問題点を取り上げた公開質問状を勝部修・一関市長に提出した。1回目の回答内容に不満があるとして再質問する一方、学術会議の山極会長とILC検討委の家会長宛てに問題点などを集約した意見書を今月8日付で送付していた。
 意見書では、科学的意義と経済効果などメリット部分が強調され、文部科学省の依頼で民間研究所がまとめたリスクに対する事柄については、住民にしっかり伝えられていないと主張。「リスク面を知らないまま誘致に同意したことになりかねず、他地域のみならず将来世代に対しても迷惑をかけることになる」などと指摘した。
 学術会議には同市在住の僧侶である千坂氏が、考える会共同代表の立場とは別に、知人の僧侶や社会学系の大学教授ら有志5人と共に8月10日付でILC誘致の問題点を指摘した意見書を提出している。同検討委にはこのほか、ILCを推進する立場としてフェルミ研究所(米国)、ILC国会議連、東北ILC準備室からも意見書が届いている。いずれも参考資料として、検討委の委員に配られている。

※…千坂氏の名前の漢字は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」


 ◇再質問状への回答届く(一関・考える会)
 市民団体「ILC誘致を考える会」が今月5日付で提出していた、ILC誘致に関する勝部修市長宛ての再質問状の回答がこのほど届いた。考える会の原田徹郎共同代表によると、1回目の回答内容と基本的に大きな違いはなかったという。
 ILC誘致に対する懸念の表面化を受け、誘致実現を推進している岩手、宮城両県の産学官関係者で組織する東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)は、24日午後3時から同4時半まで一関市山目字前田の一関保健センターで解説セミナーを開催。候補地の地元住民が抱く疑問などに答える場を設ける。
 原田代表は「出席する考えではいるが、どれだけ多くの市民が参加するのかが気掛かり。開催した実績だけをつくるような場になってほしくはない」と話している。

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