人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2022-6-19 9:10

写真=CF活動を通じ水沢地域の伝統産業、鋳物のPRにも一役買った本間希樹所長(右) 提供:国立天文台水沢VLBI観測所

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が4月20日から続けてきたクラウドファンディング(CF、資金調達活動)が17日深夜終了した。寄付総額は初期目標の1000万円を大幅に上回り、現時点で決済が完了した分だけで3022万7000円。今後、金融機関振り込みで受理した分の金額が加算され、今月下旬には最終金額がまとまる見通し。集まった資金は若手研究者の育成などに活用。記念品付き寄付を選択した人には、金額に応じた特製グッズが贈られる。
 同天文台の観測所施設が公式にCFを行ったのは今回が初めて。1000万円の目標金額を設定し、期日までに達した場合のみ支援金を受けられる「All or Nothing型」で実施した。
 5月12日に目標の1000万円を達成。偶然にもこの日は、天の川銀河(銀河系)の中心部にある巨大ブラックホール(BH)「いて座A*」の撮影成功を発表する記者会見があり、会見が始まる2時間前に目標に達した。
 約3週間で目標に届いたが、BH撮影成功の話題などが追い風となり、その後も寄付を申し出る人が相次いだ。さらに、動画投稿サイト「ユーチューブ」で科学系情報を紹介している複数の動画制作者が、BH撮影成功と本間所長のインタビューを発信。大きな宣伝効果をもたらし、第2目標の2000万円も突破した。CFが終了する17日午後11時の約1時間前には第3目標の3000万円も超えた。
 寄付件数(個人、企業・団体)は延べ1255件。最高額の300万円コースの申し込みはなかったが、100万円コースは5件あった。最多の申し込みは1万円コースで778件だった。
 記念品を希望した寄付者には、寄付額に応じた記念品が贈られる。本間所長はこのほど、鋳物の記念品製造を担当する水沢羽田町の蟲敝戞糞收邂賚瑳卍后砲鯔問し、自ら鋳造作業を体験。CF応募サイトでその様子を紹介し、鉄と天文学との科学的な関係について解説しながら、観測所がある水沢で育まれた伝統産業のPRにも一役買った。
 CFの終了を受け本間所長は、「予想をはるかに超える多くの方々からのご支援により、大成功で終えることができた。驚きとともに感謝の気持ちでいっぱい。皆さまの応援を私たちの力にして、今後の研究をさらに進めていきたいと思います」とコメントしている。
(児玉直人)
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tanko 2022-6-18 6:40

写真=誘致前提のILC計画推進は困難だと指摘する横山広美教授

 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長の横山広美教授(科学技術社会論)は17日、仙台市内で講演した。北上山地が有力候補地とされる素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致活動について、これまでの大型科学プロジェクトよりも規模が大きく、国際費用分担の議論をせず誘致を前提に話を進めるのは難しいと指摘。「研究者側が対応する国際議論の状況を気を付けて見ていくことが今は大事」と主張した。児童生徒への周知活動に関しても「慎重にやるべきだ」と警鐘を鳴らした。
(児玉直人)

 横山教授は素粒子物理分野で博士号を取得。科学と社会のかかわりに関心を抱くようになり、現在は科学技術社会論が専門。科学と政治、社会との関係などをテーマに、研究活動や学生の指導をしている。文部科学省が担当する各種審議会の委員も歴任。ILC有識者会議委員も2期連続で務めている。
 同日は、東北ILC推進協議会(代表・高橋宏明東北経済連合会名誉会長)主催の講演会で登壇。「Big Science(ビッグサイエンス)と社会」と題し、大型科学プロジェクトの歴史に触れながら、ILCを取り巻く状況と課題を語った。
 講演で横山教授は、岩手、東京、大阪、福岡、佐賀の住民を対象に自身が実施したILCに関する調査の結果を紹介。認知度の高さは岩手が突出して高かった。認知度では大差が生じたものの「ILC計画の議論で何が重要か」を尋ねたところ、どの地域も「税金や国際費用分担に関すること」が最多。科学的意義、地域経済への波及効果などが続いた。
 横山教授は「ILCはビッグサイエンスの中でも規模が大きく、従来通りに事が進まないというのが率直な感想。計画が公になって10年以上経過しているが、周辺状況が変わってきている。世界全体で本当に次の加速器が造れるのか――という議論を真剣に行う時期に研究者たちは立たされている。皆さんが素粒子物理学を支援してくださることは非常にありがたいが、国際分担の議論なしに誘致前提で事を進めるのは難しい」と主張した。
 このほか「ビッグサイエンスは社会と一緒に推進し、互いに情報共有していくことが大切になるが、そのやり方には注意が必要。誘致がはっきり決まっていない段階で子どもたちにアピールすることは、慎重に考えなくてはいけない。サイエンスの普及程度ならよいが、来ることを前提に話をしてしまうと、場合によっては期待を裏切ってしまう可能性すらある」と指摘。「期待の高まりが社会を駆動させるという考え方があるが、一方で現実社会との乖離が生じる危険性もある。ハイプ(熱狂)と呼ばれる状況で、結果として議論や予算も続かなくなる」とし、期待を高めすぎず冷静に状況を注視する必要性を訴えた。
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tanko 2022-6-12 10:00

写真=シミュレーションで再現した形成途中の星団 (c)藤井通子、武田隆顕、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

 星団が形成される現場を再現するシミュレーションに、東京大学大学院理学系研究科の藤井通子准教授らの研究チームが成功した。星が生まれる領域の進化に大質量星が重要な役割を果たしていることを確認。研究には水沢星ガ丘町の国立天文台水沢キャンパス内にあるスーパーコンピューター、「アテルイ供廚活用された。研究成果は8日付で、英国の『王立天文学会誌』に掲載された。
 星団とは数十から数百万個の星が集まっている天体。一つ一つの星の重力で互いが束縛された状態になっている。
 藤井准教授らのチームが研究対象にしたのは「オリオン大星雲」。冬の代表星座「オリオン座」の中央に三つ並んだ2等星の下方に位置する。太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星が多数生まれ、星団が形成されている。地球からの距離は1300光年。双眼鏡でも気軽に観察できる。
 天文学者の間では大星雲内の星団形成過程についての研究が進められていたが、従来の手法では正確な解明に限界があった。藤井准教授らのチームは、星の動きを正確に求める計算手法を独自に開発。「アテルイ供廚納孫圓気擦拭
 研究チームは「オリオン大星雲で形成される星団は中規模だが、今回の研究で開発された計算手法を使い、大規模な星団や銀河の形成過程などを明らかにしていきたい」としている。
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tanko 2022-6-10 19:30
 岩手県がまとめた最新の「県施策に対する県民意識調査」によると、新型コロナウイルス感染症の直接的な健康影響に加え、余暇の充実や所得面など間接的な部分への影響も強く感じている人が多いことが分かった。「いわて県民計画」に基づく施策については、雇用や産業、いじめ問題に関するニーズ(必要性)が高く、文化芸術やスポーツ、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致に関連した取り組みは低調。昨年と同様の傾向となった。
(児玉直人)

 調査は今年1月から2月にかけ、県内に住む18歳以上の男女5000人を選挙人名簿の中から無作為に抽出し実施。有効回収率は66.5%(3324人)だった。
 新型コロナに関する質問は、前回調査から取り入れた。「よくない」と感じる影響で最も多かったのが「こころの健康」で43.2%。余暇の充実(43.0%)、必要な収入や所得(37.1%)など間接的な影響を感じた人の割合も高かった。
 現在の生活全般に対しては、満足(やや満足含む)が36.7%(前年比2.1ポイント増)、不満(やや不満含む)は33.0%(同5.2ポイント増)だった。満足と不満の差は3.7ポイントで、前年の6.8ポイント差より縮まっている。胆江2市町を含む県南広域振興局管内8市町では、満足が35.8%(同4.8ポイント増)、不満が34.8%(同3.2ポイント増)だった。
 「いわて県民計画」に掲げられた施策に関する質問では、施策ごとに重要度と満足度を尋ね数値化。重要度と満足度の差が大きい場合は「ニーズが高い」、小さい場合は「ニーズが低い」と判断した。
 ニーズが高かった上位5施策は^堕蠅靴申⊃Υ超農林水産業の担い手確保商店街のにぎわいいい犬瓩簓堙亶擦悗療切な対処ダ験茣霹彑鞍などが進んだ生活環境。上位に入った施策は、重要度が高いと認識されているが、現状に不満や満足度を感じられない人が多く、改善が強く求められている事柄と推察できる。
 ニーズが低かったのは仝ゆかりの芸術家やスポーツ選手の活躍日常的に文化芸術に親しむ機会身近な地域でスポーツを楽しむ機会た歓箸侶鮃に関する相談・指導コ姐饋邑Φ羲堙の受け入れ環境整備や新たな産業振興――だった。
 いずれも満足度と重要度の差が小さい施策だが、「県ゆかりの芸術家やスポーツ選手の活躍」に関しては、本県出身アスリートの活躍で、満足度が全57施策の中で飛び抜けて高く、重要度との差も小さかった。一方で、文化芸術やスポーツを楽しむ機会、ILC誘致を見込んだ外国人研究者受け入れに関しては、重要度が他施策より大幅に低く、満足度も平均以下という結果となった。
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tanko 2022-6-6 12:40

写真=各店自慢のBHスイーツなどが並んだお菓子フェスティバル

 「奥州ブラックホールお菓子フェスティバル」は5日、水沢西町のみずさわ観光物産センター(Zプラザアテルイ)で開かれた。ブラックホール(BH)をイメージしたスイーツなどを販売したほか、BH撮影に携わった研究者らによるトークショーも行われ、多くの市民でにぎわった。
(児玉直人)

 今年5月、天の川銀河(銀河系)中心部にある巨大BH撮影に、国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長らが参加する国際研究チームが成功した。
 この研究チームは3年前に別のBHの撮影を成功させ、人類史上初の快挙として注目を集めた。その際に本間所長の提案を受け、水沢地域の菓子店舗がBHスイーツを製造、販売し続けてきた経過がある。
 2度目の快挙を市民みんなで祝おうと企画された同フェスティバル。県菓子工業組合奥州支部(菊地清支部長)と水沢菓子組合(千葉亮組合長)の会員をはじめ、企画に賛同した市内外13店舗・事業所が出店した。
 晴天に恵まれたこの日、開幕前から多くの人が列を成し、一部店舗の商品は即完売する人気ぶり。2回にわたり、同プラザ2階で開催した本間所長と秦和弘助教によるトークセッションは、立ち見の人が出るほどだった。
 本間所長は、BHの画像化に時間を要した理由などを分かりやすく解説。「天文学は謎だらけで研究も時間がかかる。今日の来場者に『この問題は自分が将来解決してやる』というお子さんがいたらとてもうれしい」と期待を込めた。
 初代観測所長の木村栄氏が発見したZ項にあやかり、市内には「Z」を冠した施設が点在。BHから噴き出すジェットの研究に取り組んでいる秦助教は、「もし自分が大きな成果を打ち出したら、ぜひ『ジェットホール』の建設を」とジョークを飛ばし、来場者の笑いを誘った。
 水沢菓子組合の高橋一隆副組合長は「好天に恵まれ各出店者の皆さんも協力的でありがたかった。今後もBHスイーツを売り込み、さらにすそ野を広げていけたら」と話している。
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tanko 2022-6-5 18:40

写真=半導体製造装置メーカーの正社員に採用された後も、BH研究に携わることになる田崎文得さん

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で巨大ブラックホール(BH)解明に挑んでいる研究者の田崎文得さん(36)が今年4月、江刺に事業所を置く半導体製造装置メーカー、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(株)(本社山梨県韮崎市、佐々木貞夫社長)に正社員として採用された。全国の研究機関などでは、優秀な人材が不安定な雇用形態に置かれ続ける「ポスドク問題」が深刻化。同観測所も頭を悩ませており、若手が安心して活躍できる環境を確保しようと、同社と検討を進めてきた。田崎さんは引き続きBH研究にも携わるといい、「半導体製造装置が安定して稼働し、最高のパフォーマンスを出せるかどうか、BH撮影の画像解析で培ったノウハウを生かして取り組みたい」と意気込んでいる。
(児玉直人)

 2019年、巨大BHの撮影成功を初めて公表した直後、同社関係者が観測所を訪問。本間所長(50)と交流を重ねるうちに、若手研究者の活躍と安定雇用を確保する策の一つとして、同社が田崎さんを採用する方針がまとまった。
 田崎さんは京都大学大学院博士課程修了後、2014年4月から同観測所の研究支援員、特任研究員としてBH研究に従事。いずれもポストドクター(博士研究員、ポスドク)と呼ばれる任期付きの職だった。
 博士課程修了者には就職のほか、ポスドクとして大学や研究機関に所属し、教授職や民間就職へのステップアップを狙う道がある。
 ところが、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査によると、国内のポスドク延べ1万5590人(2018年度現在)のうち、7割超の1万1101人が次年度もポスドクを継続。大学や研究機関の正職員ポストに空きが生まれず、民間企業もポスドク採用に消極的という実態があり、雇用形態的に身分が不安定なポスドクを続けている。NISTEPによると、2020年度にポスドクを採用した企業は、回答した1891社の0.6%にとどまった。
 同観測所では、国内外の研究機関と共同利用している観測装置の維持管理を最優先に予算投入。巨大ブラックホール(BH)撮影の成功で脚光を浴びている同観測所だが、国の基礎研究予算が頭打ち状態にある中では、若手研究者を安定雇用する余裕がない。
 日常的な経費削減のほか、市民から寄付を募るなどあらゆる策を講じている。今回の田崎さんの民間雇用もその一環だ。
 田崎さんは2020年から嘱託社員として月12日は同社に勤務し、それ以外の日を研究などに充てていた。昨年末、同社の長谷部一秀・常務執行役員(52)が中心となり、正社員としての採用を推挙。BH研究も業務の一つとして認めるようにした。同観測所と同社は共同研究契約を年内にも締結する。
 長谷部常務は「大学との共同研究はあるが、天文学という異分野とのコラボレーションは初めての試み。東北事業所の近くに天文台があったというロケーションと、人と人とのつながりがあって実現できたこと」と語る。
 本間所長は「われわれの業界では、企業に就職するということは研究者としての道を諦めるのに等しかった。天文学の知識が社会に役立ち、優秀な研究者が活躍できるといういいモデルケースになれば」と期待を込める。
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tanko 2022-6-1 9:00
 県菓子工業組合奥州支部(菊地清支部長)と水沢菓子組合(千葉亮組合長)は、6月5日午前9時半から水沢西町のみずさわ観光物産センター(Zプラザアテルイ)で「奥州ブラックホールお菓子フェスティバル」を開催する。国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者らが携わった国際研究チームが、2度目の巨大ブラックホール(BH)撮影を成功させた快挙を祝うイベント。市内菓子業者がBHをイメージし考案した菓子を中心に、市内外の業者10店舗余りが自慢の商品を販売する。当日は、本間所長ら研究者によるトークショーも予定されている。
(児玉直人)

 2019年に人類史上初となる巨大BH撮影成功が公表された際、研究チームの日本代表を務めた本間所長が「BHをイメージしたお菓子があれば地域振興にもつながるのでは」と提案。水沢菓子組合は同年、「オウシュウ・ブラックホール・プロジェクト」と銘打ち、加盟7店舗がBH菓子を開発した。共通デザインのパッケージに商品を入れ、現在も各店舗などで販売している。
 商品開発から約3年、今度は地球から最も近い巨大BHの撮影に成功。2度目の快挙を市民と一緒に祝福する場を設けようと、両団体が共催イベントを企画した。
 当日はBH菓子を製造・販売する水沢地域の7店舗のほか、水沢地域外の菓子店の商品、ドリンクや雑貨、カレーパンなども販売する。午前9時半の開場の際には、先着30人にあんぱんのプレゼントもある。
 同観測所の本間所長と秦和弘助教によるトークショーは午前10時半と正午の2回、Zプラザの2階で行われる。
 共催2団体の関係者は5月30日、市役所本庁に倉成淳市長を表敬訪問。これまでの経緯を説明しながら、イベント開催を報告した。
 倉成市長は「新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光客の入り込みが回復しようとしている中、ブラックホールに関連したこのような商品があることをうまくPRしていけたら」と話していた。
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tanko 2022-5-31 9:00

写真=ILC誘致実現に向けた取り組み内容を確認した県推進本部会議(県庁第一応接室)

 岩手県ILC推進本部(本部長・達増拓也知事)の本年度第1回会議が30日、県庁第一応接室で開かれ、素粒子実験施設ILC(国際リニアコライダー)の北上山地誘致実現に向けた取り組み内容などを確認した。当初、ILC準備研究所(プレラボ)の設置が本年度中と見込まれていたが、文部科学省ILC有識者会議が時期尚早と結論。研究者コミュニティーは有識者会議の議論を踏まえ、研究開発と国内での支持拡大に取り組む新たな活動方針を固めており、県は要望活動や受け入れ態勢の検討、地域住民や子どもたちへの理解増進などの取り組みの継続により誘致活動を推進していく。
(児玉直人)

 ILC誘致を巡っては、素粒子物理学者らを中心とする研究者コミュニティーが本年度中にプレラボを設置し、4年程度の準備活動を経て約10年の建設期に入る――とのシナリオを描いていた。県当局や関係市町、地域経済界を主体とした誘致団体などは、研究者コミュニティーと歩調を合わせる形で、受け入れ態勢の検討や住民の理解増進などに努めてきた。
 しかし有識者会議では▽各国政府の具体的な参画や経費負担に対する見通しが依然立っていない▽国民理解等が不十分――などの課題があらためて浮き彫りに。ILC計画の進め方を再検討する時期に来ているとして、日本誘致を前提とするプレラボの設置案も「時期尚早」との考えを提示。素粒子分野の発展を閉ざすことは本意ではないという観点から、立地に関わる問題をいったん切り離し加速器の開発研究などは段階的に展開すべきだとした。
 一連の流れを受け、研究者コミュニティーで組織する「国際将来加速器委員会(ICFA)」は、プレラボ設置の準備作業をしていた国際推進チーム(IDT)の活動を1年延長。必要な開発研究をしながら、日本におけるILC実現に向けた幅広い支持拡大のため活動していく新たな方針を固めた。
 県は研究者コミュニティーの取り組みを引き続き後押しする姿勢を維持。東北ILC推進協議会など誘致関連団体との連携、研究者コミュニティーとの密接な情報交換を図りながら、▽日本政府主導の国際議論の進展▽2023(令和5)年度概算要求における関連研究開発費等の措置――を求めていく。ただ、実際の活動は政府関係者らへの要望、受け入れ態勢の検討など従来と同様の取り組みが目立つ。
 小中高生らに対するILC周知を目的とした出前授業、研究コンテストも継続する。子どもたち向けの機運醸成に関しては、有識者会議の中で「科学への興味関心の促進と、プロジェクトの推進とは切り分ける配慮が必要」との指摘も出ている。
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tanko 2022-5-14 8:40

写真=ブラックホール撮影に携わった日本の研究者ら。前列左が本間希樹所長、同2人目が森山小太郎さん(国立天文台提供)

 天の川銀河(銀河系)の中心部にある巨大ブラックホール(BH)の画像公開から一夜明けた13日、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の地元関係者からもあらためて快挙をたたえる声が上がった。12日深夜に都内で開かれた会見では、同観測所に縁がある若手研究者3人が発表。本間所長(50)は最後に短く謝辞を述べ、将来有望な若手の今後に期待を寄せた。国の研究予算が頭打ち状態で、若手研究者の雇用体制や研究費確保が厳しくなっている中、本間所長は「彼らがさらに活躍できる環境を整えていきたい」と語る。
(児玉直人)

 3年前に別の巨大BHの画像が公表された際、水沢菓子組合(千葉亮組合長)はBHをイメージした菓子を会員店舗ごとに開発。現在も好評を得ている。同組合の高橋一隆副組合長(48)は「まさに吉報。早速会員に『これは再びチャンスになる』と伝えた。近く会議をする予定で、何ができるか考えたい」と話す。
 水沢羽田町の老舗鋳造業、(株)及富(及川一郎社長)は、BHをイメージした鉄瓶を商品化。同観測所が実施しているクラウドファンディングで、30万円以上の寄付者に贈られる南部鉄器製おちょこ(限定品)の製造も手掛けている。同社の菊地章専務(65)は「経済が冷え切っている中、熱い情熱を持って研究している皆さんの思いが、人々の心を温めているように感じる」と快挙をたたえた。
 倉成淳市長は「歴史的な快挙にとても驚き、感動している。地域をさらに明るくし、喜びや勇気を与えてくれるもので、感銘を受けた子どもたちのチャレンジ精神の高まりに期待したい」とコメントした。
 今回の研究成果の意義について本間所長は、「地球から一番近い巨大BHなので、精密にいろいろなことが分かる。相対性理論の検証など、非常に重要な実験場になるのは間違いない。私たちが住んでいる天の川銀河の中心に存在しており、人類誕生の壮大な絵巻物を描く時、非常に重要な役割を担っているかもしれない」と説明する。
 撮影を行った国際プロジェクトチーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」では、多くの若手研究者たちが活躍。12日深夜の会見で成果発表した森山小太郎さん(31)は、数多くの解析画像を最終的にまとめ上げる大役を担った。
 兵庫県出身の森山さんは、ドイツのゲーテ大学フランクフルトに博士研究員として在籍中だが、2018(平成30)年から1年間、同観測所で研究活動をしていた経歴がある。「街の中に大きな電波望遠鏡があり、のどかな雰囲気が漂うが、研究者間のディスカッションは非常に活発で刺激を受けた」と回顧。「自分がまとめ上げた画像をあのような大きな会見で発表した瞬間、まさに感無量だった」と話した。

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研究資金調達、目標金額に達成

 国立天文台水沢VLBI観測所が、若手研究者らの研究資金等を調達するために実施していたクラウドファンディングが12日夜、目標額の1000万円に到達した。現在は次の目標額2000万円を目指しており、引き続き寄付を受け付けいる。6月17日午前11時まで。
 銀河系中心部のブラックホール(BH)撮影に関する記者会見を2時間後に控えていた日の午後8時ごろ、目標金額1000万円に到達。その後も寄付が相次ぎ、日午後5時現在で1114万4000円が寄せられた。当初目標が達成したため、同天文台は最終的な寄付額を全額受け取ることができる。
 寄付額は3000円から最高300万円。金額に応じて返礼品が異なる。インターネットでの申し込みとなり、検索サイトで「国立天文台 レディーフォー」と入力。「国立天文台 水沢VLBI観測所 進むブラックホール研究にご支援を」などと表示されたリンクへ進む。入金はクレジットカードまたは、銀行振り込みで。寄付額にシステム使用料220円と、銀行振り込みの場合は手数料が別途発生する。
 問い合わせは同観測所(電話0197・22・7111)へ。
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tanko 2022-5-13 0:00
天文台水沢、困難な画像解析で貢献


画像=国際研究チームが撮影に成功した地球から最も近い巨大ブラックホール(右下)と、銀河系中心部と太陽系の位置関係図(EHTなど提供)

 天文学分野の国際プロジェクトチーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は日本時間の12日深夜、地球から最も近い巨大ブラックホール(BH)の撮影に成功したと発表した。3年前に別の巨大BHの撮影成功を公表して以来、人類史上2例目の成果。困難な画像解析に時間を要したが、プロジェクトに参加する国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者ら日本のメンバーが、可視化に大きく貢献した。
(児玉直人)

 EHTは日本の国立天文台など世界13の研究機関・大学が出資し運用。300人を超える研究者が参加しており、うち14人が同天文台など日本の研究機関に所属している。
 今回公表された画像は、太陽系が属する天の川銀河(銀河系)の中心部にある巨大BH。地球から見て、いて座の方向にあることから「いて座A*(エー・スター)」と呼ばれている。地球から2万7000光年(1光年=約9.5兆km)離れており、重さは太陽の400万倍に相当する。
 観測自体は2017年に行われた。南北アメリカ大陸とハワイ、ヨーロッパ、南極に点在する8基の電波望遠鏡を連動させ、一つの天体を精密観測する超長基線電波干渉計(VLBI)の技術を用いた。いて座A*のほか、おとめ座の方向にある「M87銀河」の巨大BHなど複数の天体を観測しており、3年前に公表された画像は、M87銀河の中心にある巨大BHだった。
 同時期に観測したBHの画像公表に数年の差が生じたのは、いて座A*の画像解析が非常に困難だったためだ。
 画像で明るく見えるリングは「降着円盤」と呼ばれ、BHに吸い込まれようとしているガスやちりが、高温となりさまざまな電波を発しながら周回している。その動きはBHが大きくなるほど遅く見える。
 いて座A*の約1600倍あるM87銀河のBHは、一晩中観測し続けても降着円盤の動きが静止した状態となる。一方、いて座A*は数分で形が変わるほど降着円盤の動きが激しく、そのままではブレた画像しか得られない。
 EHTの研究者らは、BHの強力な重力で降着円盤のガスなどがどのような影響を受けているのか正確に調べ、ブレの影響を観測データから除去。これらの解析には水沢VLBI観測所の研究者のほか、同観測所に所属していた研究者ら日本人の若手が大きく貢献したという。
 2020年、銀河系の中心に近い天体が非常に強い力の作用を受けている点や、BHが形成される理論を証明したとして、3人の欧米出身者がノーベル物理学賞を受賞した。銀河系の中心に巨大BHが存在していることを間接的に示した成果だったが、今回の撮影画像は間違いなく巨大BHが銀河系の中心にあることを直接的に証明した成果になる。
 EHT所属の研究者らは12日深夜、日本を含む世界7カ所で同時に記者会見を開き、人類史上2例目となるBH画像を一斉公開した。
 都内の会見会場では、水沢VLBI観測所に在籍歴がある森山小太郎さん(ゲーテ大学フランクフルト博士研究員)と小山翔子さん(新潟大学大学院自然科学研究科助教)、本間所長の指導を受けている小藤由太郎さん(東京大学大学院理学系研究科博士課程在学)らが登壇し、研究の意義などを説明。本間所長も会見に同席した。

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