人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市西部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-9-26 12:32
 いわてILC加速器科学推進会議(亀卦川富夫代表幹事)主催の「国際リニアコライダー(ILC)計画」講演会は、10月9日午後1時半から水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれる。「未来」をキーワードに、高エネルギー加速器研究機構(KEK)名誉教授の吉岡正和氏と、日本創世会議座長で元岩手県知事の増田寛也氏が講演。入場無料だが、会場定員(500人)の都合上、事前申し込みが必要。
 吉岡氏は「ILC〜子どもたちの未来のために〜」と題し、ILC建設の意義について持論を展開。増田氏は「ILCで築く地域の未来」の演題で、学術研究都市形成による地方の展望について語る。両氏とも「未来」をキーワードとし、人材や地域の将来の在り方について話題を提供する。
 聴講希望者は、市役所本庁のILC推進室(電話0197・24・2111、内線412)に申し込む。
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tanko 2013-9-19 5:20
 国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地選定結果をめぐり、九州の脊振山地への誘致運動を繰り広げていた「ILCアジア―九州推進会議」が、選定に関する全資料の公表を求める緊急声明を発表したことが18日までに分かった。

 九州・推進会議の代表を務める九州大学の有川節夫総長、九州経済連合会の松尾新吾会長の連名による声明文は、17日付で発表。「ILC立地評価会議は、8月23日に『北上サイトを最適と評価する』との評価を突然公表した」とし、▽脊振地域は評価の中で国の活断層調査結果が取り上げられているが、北上地域では同じ調査が行われていない▽都市基盤の整備状況をどう評価したかが明らかでない――と指摘している。
 立地評価会議は今月8日、佐賀県庁で地元説明会を開催。19日には、九州大学で1日2回の公開説明会を開く予定になっている。
 九州・推進会議は8日の説明会について「資料の提出や十分な説明がなされず、到底納得できるものではなかった」と批判。評価基準、評価結果を導くに至った明確な根拠資料、具体的な評価プロセスがわかる議事録など、評価時点で用いた全ての資料の説明と公表をするよう強く求めている。
 ILC国内候補地の選定には、立地評価会議に所属する8人の素粒子物理学者らに加え、土木工学や地学の専門家ら16人による技術評価専門委と、交通工学や都市工学の専門家ら12人による社会環境基盤評価専門委が当たった。評価結果公表の前段では、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション」代表のリン・エバンス氏ら、世界中の研究者12人による論評(国際レビュー)も行われ、評価方法やその判断の妥当性について承認が得られている。
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tanko 2013-9-17 9:27
 ILC計画などを推進する国際的な研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」などが主催する「ILC国際シンポジウム『宇宙の謎に迫れるか!』」は、10月15日午後3時半から東京大学伊藤国際学術研究センターで開かれる。定員300人。入場無料だが、事前申し込みが必要。多数の場合は抽選となる。
 前半はLCC副ディレクターの村山斉氏と、経団連副会長の大宮英明氏が基調講演。後半はパネルディスカッションで、▽リン・エバンス氏(LCCディレクター)▽マイク・ハリソン氏(LCCのILC担当ディレクター)▽山崎直子氏(宇宙飛行士)▽内永ゆかこ氏(NPO法人J-Win理事長)――に村山氏が加わった5氏が登壇する。コーディネーターは、ジャーナリストの池上彰氏。
 聴講申し込みは30日正午までに、専用ホームページからか、ファクスで必要事項(氏名、連絡先メールアドレスか日中連絡が取れる電話番号、性別、年齢、所属や職業、同伴者数がある場合は2人まで、意見や質問)を送信する。
 問い合わせは、先端加速器科学技術推進協議会(電話兼ファクス029・879・6241)へ。

申し込み専用ページアドレス https://fs223.formasp.jp/h737/form2/
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tanko 2013-9-17 9:25
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地に北上山地が選ばれたことを受け、岩手県内では受け入れ態勢など今後の取り組みに関する議論が加速しそうだ。岩手県は18日、ILC庁内ワーキンググループ内に分科会を設置。主要テーマ別に国際学術研究都市形成に向けた具体的な検討をスタートさせる。

 ILCの国内候補地は、日本の素粒子研究者らで組織する「ILC立地評価会議」が選定、8月23日に公表された。世界の研究者の間では「ILCの建設地は日本へ」という流れになっており、事実上、世界唯一の建設候補地に選ばれたことになる。
 県は7月に「ILC庁内ワーキンググループ」を設置したが、国内候補地選定を受け、より具体的な検討を進めるため分科会(サブワーキング)を新たに設ける。
 分科会は(1)まちづくり・インフラ整備(2)子弟の教育(3)医療(4)産業振興――から成り、18日はまちづくり・インフラ整備分科会の初会合が開かれる。残る3分科会も順次会議を持ち、検討作業に入る。
 一方、奥州市も年度内にまちづくり専門委のような組織を立ち上げる方針で、今後、同様の対応は徐々に東北全体に広がっていくことが予想される。また同市や一関市など建設候補地の地元では、町内会や振興会、各事業所など、細かな組織単位でILCを意識した取り組みを検討する動きも出てきそうだ。
(児玉直人)
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tanko 2013-9-14 5:20
 旧水沢市職員として水道関係や税務などの仕事をこなしていたが、転機は突然訪れた。1993(平成5)年、県に「科学技術振興室」が設置され、派遣研修職員として白羽の矢が立った。このとき既に、ILCの前身計画「JLC(ジャパン・リニアコライダー)」が水面下で検討され、北上山地の花こう岩岩盤帯に素粒子研究者たちが注目し始めていた。
 一連の情報を知っていたのは、ごく一部の行政職員と首長。完全なる「トップシークレット」だった。「あの時点で表立った活動をしたら、政治力が絡んだ誘致合戦になる。科学的見地からの候補地選定を優先させるための下地づくりに努めた」という。
 県派遣終了後、しばらくは科学技術とは関係のない分野の仕事が続いたが、本年度からILC推進室長に。「県派遣から20年近く経過し、回り回って再びこのプロジェクトに携われた。感慨深い」
 県や国、誘致組織との調整などを統括する一方、市民向けの出前授業による理解普及にも力を注ぐ。
 自身も理解するまで時間がかかった研究内容や効果に、どうすれば関心を示してくれるだろう――。そのヒントは小学校で開いた児童と保護者が同席する出前授業の中にあった。「子どもたちがイメージし、理解しやすい中身、表現というのは、結果的に大人が聞いても分かりやすい」
 ILCがもたらすものはすそ野が広く、「理系だけでなく文系に興味がある人も活躍できる機会がある。子どもたちにとっては、夢を実現する選択肢が増えることになる」。自分の子や孫が地元で活躍してくれる可能性にも期待が膨らむ。出前授業では科学の話だけに終始せず、将来の生活についても触れた。身近な表現を用いることを常に心掛けながら。
 「祝・建設候補地に決定!」のポスターが貼り出された市役所本庁舎。しかし、浮かれ気分に浸っているわけではない。「国や県が次はどう動くか、現時点ではまだ分からないが、ILCを核としたまちづくりの準備に手を掛けたい」。多忙な日々はまだまだ続く。(児玉直人)

 (プロフィル)
 神奈川大学を中退し、1982年旧水沢市職員採用。税務、企画、総務、教育畑などを歩み、今年4月からILC推進室長。プライベートでは、市ソフトテニス協会の理事長を務めるが「ILCの仕事もあり、最近はなかなかラケットを握るチャンスがありません」と苦笑い。水沢区佐倉河在住。
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tanko 2013-9-12 10:20
 小沢昌記市長は11日の定例記者会見で、国際リニアコライダー(ILC)国内候補地に北上山地が選定されたことに関連し、ILCに付随したまちづくりの方向性を専門に検討する新組織を、年度内に立ち上げる考えを示した。

 ILCの日本誘致に関しては「ILCを造ってわれわれの生活がどう変わるのかという具体の話をしなければ、国民世論は盛り上がらない」と強調。「市として世論形成を促すことが、政府として国家プロジェクトに位置付けていただくための正攻法」と話した。
 小沢市長はまた、「市国際リニアコライダー推進連絡協議会を母体に、まちづくり専門委のような組織を、市が事務局を務めるかたちでつくる必要がある。医療、教育、交通インフラを含め、研究者らをおもてなしできる環境をつくり、それが市民にも意義あることだという方向性を示したい」と話した。
 ILC誘致を念頭に置いた職員採用について小沢市長は「採用に当たって外国語の習得への意欲は面接時の判断基準の一つになるべき」と指摘。「英語教材の購入費を補助するなど、民間企業の例も参考に検討したい」とも述べ、希望する職員の語学習得を後押しする考えも示した。
 安倍晋三首相が10月に最終判断する消費税率引き上げについて、小沢市長は「3%の値上げを仮定すると、地方消費税交付金は7億円前後増えるが、市の購入部分も3%増え、市財政の収支にそれほど大きな差はない」と指摘した。
 一方で小沢市長は「中央と違い、地方経済は厳しい状況。土地、住宅の購入などは抑制がかかる。法人税を含む市税収入も落ち込みが考えられる。地方の首長の立場では、状況を見極めながら(増税論議を)進めてほしい」と慎重な対応を求めた。
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tanko 2013-9-11 10:20
 市議会9月定例会は10日、議案審議を行い、2013(平成25)年度の一般会計補正予算、国民健康保険特別会計など各特別会計補正予算案9件を原案通り可決。決算審査特別委員会を設置し、2012年度一般会計や各特別会計決算認定議案14件を付託した。委員長に佐藤修孝氏(政凜会)、副委員長に遠藤敏氏(創政会)を選んだ。
 2013年度一般会計補正予算案は歳入歳出それぞれ18億3966万5000円を追加し、総額585億5405万9000円。歳出はILC(国際リニアコライダー)推進事業経費216万6000円、子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査業務委託料248万2000円、ショッピングセンター修繕負担金189万2000円など。
 市は今年4月、江刺区豊田町地内に所有する商業施設で営業中のイオンリテール(株)(本社千葉市)との賃貸借契約を5年間延長。追加補正したショッピングセンター修繕負担金は、同施設の防災設備や空調設備の修繕に充てられる。
 決算特別委は11日から部門(部局)ごとに集中審査を開始。初日は総務企画、財務の2部門の審査が行われる。
 このほか、前日に市立病院・診療所改革プラン調査特別委(今野裕文委員長)が設置されたことを受け、10日の議案審議の際に渡辺忠議長が「奥州市医療改革プランの策定に当たっての請願」を特別委に付託替えすることを提案、議決された。同特別委は11日に幹事会を開き、特別委の開催日程や協議内容について話し合う。
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tanko 2013-9-7 5:00
 国内候補地を一本化したILC立地評価会議は、北上山地を最適とする評価に付帯し、中央キャンパスの場所について「新幹線沿線の立地」を推奨している。北上山地の最寄り駅は、水沢江刺駅か一ノ関駅だ。
 水沢江刺駅は、古くから鋳物産業で栄えた、こぢんまりとした町の中にある。97(平成9)年、旧水沢市は同駅や現在の「ふれあいの丘公園」周辺に、先端科学研究機関誘致を中心としたまちづくり構想「みずさわシンフォニーランド」を描いている。
 中央キャンパスの場所もさることながら、住環境や短期滞在者向けの宿泊施設、商業施設などの整備が必要となってくる。水沢江刺駅と一ノ関駅の立地環境、また花北地域や沿岸地域も視野に入れながらのまちづくりを描く準備も始めなくてはいけない。
 ただ、国や地方自治体の財力やノウハウだけで対応しきれる話ではない。東北ILC推進協議会の国際学術都市調査研究分科会メンバーなどを務める、元東北大学大学院教授の大村虔一氏は、公的事業に民間のノウハウを取り入れるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=官民連携)や民間資金活用による社会資本整備(PFI)の導入を提唱している。

 「外国人にしてみれば移動の2時間、3時間は『近い』の部類に入る」
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和名誉教授は今月1日、一関市内の講演会でこう語った。
 海外から北上山地へは、成田と羽田の両国際空港から鉄道を1回ないし2回乗り継げば到着できる。ILCに関連した学術機関であるKEKや東京大学、各国の大使館が集まる都心とも新幹線や高速道路網によって容易にアクセスできる。
 課題は空港、在来線、バス路線を含めた既存の公共交通網の機能強化だ。地方の公共交通は、人口減やマイカー普及のあおりで利便性が低下している。
 水沢江刺駅の場合、マイカー利用者にとっては無料駐車場など便利な側面もあるが、他地域から来訪した人の場合、誰かに送迎を頼むか、レンタカーやタクシーを使うしかない。同駅から水沢市街地へと向かう県交通の路線バスは1日数本。新幹線ダイヤを意識した市街地とのシャトル機能を果たしているとは言い難い。市営「Zバス」もあるが、市街地に到達するまでさまざまな場所を経由するため時間が掛かる。
 大村氏は、一ノ関駅から沿岸部を結ぶJR大船渡線の存在に着目。「沿線には摺沢や千厩といった、かつての基礎自治体の姿が残っている。まちづくりの基盤すべきだ」と主張している。
 ただ、現在は1日11往復で運転間隔が2時間以上開くこともある。KEKの吉岡名誉教授も「今住んでいる人には、その良さが認識しにくいだろうが、鉄道が走っているというのは、外国人にとって非常に意味がある。ILCができたら30分に1本ぐらい走らせてもいい」と夢を描く。
 空の便に関しても仙台、花巻の機能が重要視される。花巻は東北新幹線開業を機に羽田便が休止状態。滑走路を2500mに拡張し国際線受け入れにも対応したが、ここ数年、定期便の機種の小型化が進み、拡張整備で得られた機能を十分に発揮しきれていない。

 北上山地の地中に偶然にも存在した強固な岩盤が、ILC計画を呼び込むきっかけとなった。まちづくり一つをとっても、地方における重要な課題。大小さまざまな問題点を産学官、そして住民が一体となって解決していくチャンスとも言えよう。
(おわり)

写真=JR水沢江刺駅の背後には北上山地の山々が迫る。ILC建設想定地までの距離は問題ないが、現状では市街地アクセスなど二次交通に課題が残る
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tanko 2013-9-6 9:30
 県調査統計課は毎月、人口推計を公表している。直近の国勢調査で得られた人口を基に、県内市町村に届け出があった出生、死亡、転入、転出などの人数を加減することで、おおよその人口の増減が把握できる。出生や死亡による人口の増減を「自然動態」、転入や転出によるものを「社会動態」と呼ぶ。
 少子高齢化で人口は減少の一途をたどる。だが、それだけではない。毎年3月、人口が大幅に落ち込む。そのほとんどは社会動態であることから、就職や進学のため岩手を離れる人が多いことが推測できる。
 ILCは数兆円規模の経済効果を生むとされる。しかし、その効果は加速器などの実験装置が生むものではない。研究から派生した技術を活用したり、国際研究都市に関係したサービスを考案したりする「人材」がいなければ生み出されない。そのためには、ILCやそれに関連する職業・分野で活躍する人材を育てなくてはいけない。

 震災被災地などを訪れ、小中高校で科学特別授業を繰り広げている独マインツ大学の斎藤武彦教授。昨年、本県沿岸部を訪れた際に、とある学校の教諭から「昔は故郷を離れる若者が多かったが、今は地元に残って頑張りたいという子が増えている」という話を聞かされた。
 今年6月29日、本県のILC誘致関係者ら380人が集まった集会の席上、講師として招かれた斎藤教授はこう切り出した。
 「岩手大学や岩手県立大学に理学部を創設すべきだ」
 ILCで実験が行われる素粒子物理学を専門的に学べる理学部を有する大学は、最も近くて仙台市の東北大学。斎藤教授は、教育環境が現状のままであれば、最先端の研究施設がありながら地元の人間が活躍できない状況が生まれると懸念する。
 会場には藤井克己岩手大学長、中村慶久県立大学長の姿も。藤井学長は「大学機能の強化を進める上でも重要なこと」と斎藤教授のメッセージを受け止めた。

 教育環境の充実とともに、国際化への対応も重要となる。
 外国人研究者や技術者が北上山地周辺に滞在する。海外には「単身赴任」という概念は存在しないため、家族同伴で中長期にわたり生活することになる。外国人の子どもたちが通うインターナショナルスクールはもちろん、日常のショッピングや行政サービスなどあらゆる面で国際化への対応が求められる。
 市国際交流協会は、外国人市民による「インターナショナルILCサポート委員会」を立ち上げ、地域の国際化に必要な対応を市に提言している。異国に長年住んでいる外国人市民の声は、今後の環境整備や施策を考える上で大きな参考材料となる。
 同協会の佐藤剛会長は「国際化は仮想の話ではなく、現実により近い話になってくる」と強調する。国際化への対応は多岐にわたり、受け入れ側となる地域住民との合意形成、理解構築も不可欠だ。「即戦力となる人材の起用はもちろん、教育によって国際化に対応できる人を育てることも必要だ。若年層を中心に、次の世代を視野に入れた新しい地方都市を皆で目指していきたい」と力を込める。
(つづく)
 
写真=衣川小児童の前で特別授業をする斎藤武彦教授(資料)。県内大学に理学部を設置すべきだと提言している
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tanko 2013-9-5 9:10
 「リニアコライダーは必要ですか?」「これって、本当に大丈夫なの?」
 福岡県を拠点に活動している「せふり山系 森と水のねっこわーく」は、「ILCを日本に誘致(建設)しないことを求める全国署名」を実施している市民団体。その関係者が8月12日、東京・六本木の日本学術会議のILC検討委員会終了後、居合わせた報道関係者に資料を配布して回った。署名には「不要な自然破壊はやめろ」「疑わしきものは誘致せず」「大型開発がしたいだけ。人のためならず、未来のためにもならず」などの自由意見も寄せられており、東北在住者の声も。署名は安倍晋三首相宛に提出するという。
 ILCに対する懐疑的、批判的な意見はもちろん「ゼロ」ではない。特に福島第1原発事故後は、放射能問題や科学技術に対する不安や不信感が高まった。政治や行政へのうっせきした不満、景気の低迷などさまざまな要因も絡み合っているようだ。
 自然の保護と、人の営みの中で生じる開発行為。相反する事象への対応を上手にこなしてきた好事例が、ILC国内候補地の北上山地の近くで繰り広げられてきた。胆沢ダム建設工事に伴う、周辺自然環境の保護対策だ。
 胆沢ダムの堤体は、付近の山の土や岩石を大量に使用。水没エリアの木々も伐採された。しかし、「自然破壊になるから建設反対といった動きは皆無に等しかった」と旧胆沢町助役の佐々木寿雄さん(82)は語る。
 佐々木さんは15年間にわたり、ダム周辺でブナの森づくりを推進する「エコワークいさわ水の郷」の代表を務めてきた。「活動開始当時、ダム工事事務所の所長ら建設を進める側の人たちは、私たちの思いに大変な理解を示してくれた。このことが非常に大きい」と振り返る。
 佐々木さんの団体のほかにも、森林の動植物観察事業などを展開するNPO法人「エコ・スタディいさわ」や「胆沢ダム水資源のブナ原生林を守る会」といった地元住民らの組織がある。いずれも国土交通省胆沢ダム工事事務所など官側と連携。地元と良好な関係を築き、環境対策や関連の学習イベントなどを実施してきた。
 エコ・スタディいさわ副理事長の村上英明さん(78)は「胆沢ダムでも希少種を移植するなど、識者の指導を得ながらやってきた。工事事務所は、しっかりとその辺を受け止め、行動してくれた」と話す。
 県内各地でILCの話題も含めた科学授業を繰り広げてきた独マインツ大学の斎藤武彦教授(42)は、ILCに対する賛否の声を分析しながら、こう訴える。
 「確かにILCは良い点だけではない。今の大人たちが建設的に解決し、良い部分を次世代に残していく連鎖反応がとても大事になる。議論とは自分たちの主張を押し通し、勝つまでやり続ける『戦い』では決してない。戦うことより、知恵を出し合ってほしい」
(つづく)
写真=胆沢ダム工事現場周辺でのブナの植樹作業(資料)。北上山地のすぐ近くには、開発と自然保護をうまく共存させた好事例がある

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