人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

木村栄の書、地域と共に歩んだ証拠(国立科学博物館・馬場幸栄研究員が講演)

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tanko 2024-3-4 7:10

写真=大勢の人たちでにぎわう会場

 国立科学博物館の馬場幸栄研究員は3日、奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で開催中の特別企画展「木村栄の書展」に合わせ講演。展示されている書の概要を紹介しながら、「木村の書は、天文台が地域の支えによって存在し続けてきた証拠。たとえ破れていたり汚損したりしていても、その歴史的価値が衰えることはない。大切に保管し続けてほしい」と呼びかけた。
(児玉直人)



写真=木村栄と謡曲を教わっていた清明女学校(水沢第一高校の前身)の生徒たちの写真を紹介する馬場幸栄研究員。左側に展示されているのが同校が所有する木村の書「温良貞淑」


 同展は2日に開幕。同館休館日を除く10日までの8日間にわたり、馬場研究員と胆江日日新聞社の主催で開催している。開幕2日目に実施した記念講演会には、元所員や書の提供者なども含め市内外から50人余りが足を運んだ。
 馬場研究員は講演冒頭、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の前身である緯度観測所の歴史、木村の略歴などを紹介した。
 「木村はひたすら研究だけをしていたわけではない。芸術やスポーツが好きな多趣味な人。当時の日本で超有名人だったにもかかわらず、自分だけではなく所員や市民と一緒に楽しむのが好きだった」と馬場研究員。中でも小さなころからたしなんでいた書は特技の一つだったと説明。現存している4歳と8歳の書をスライドに示すと、聴講者からは堂々とした筆跡に驚きの声があがった。
 協和学院水沢第一高校(大内誠光校長)が所有する書「温良貞淑(おんりょうていしゅく)」は「心穏やかに素直に、節操を堅く守り、しとやかなこと」という意味。同校は1926(大正15)年創立の清明女学校を前身としており、木村は趣味の謡曲を生徒たちに教えていた関係にあったという。
 馬場研究員は「緯度観測所の歴史があるからこそ、現在の国立天文台の存在やブラックホールの撮像成功といった実績につながっている。その歴史は観測所単独で築き上げたものではなく、地域の一部として市民と共に刺激を受けてきたからだ」と強調。「書が破れていたり、カビがはえていたりしても木村が書いたという歴史的な価値は失われない。世界に一つしかない歴史的資料として、大切に保管し続けてほしい」と訴えた。
 同展の鑑賞には遊学館の入館料(一般300円、児童生徒150円)が必要。5日は休館日。

10日に書家・松本さんの解説会開催
 特別企画展「木村栄の書展」に展示中の「正喜稲荷社」の扁額を修復した書家・松本啓夫巳(ひろふみ)さん(46)=雅号・錦龍=さんによる解説会は、10日午前10時から同展会場の奥州宇宙遊学館2階セミナー室で開かれる。
 松本さんは小学生のころから書道を始め、大学でも専攻した。教員を経験し、現在は書家として水沢佐倉河に松勢工房を開設。寺社からの書の依頼などに対応している。
 正喜稲荷社を管理している陸中一宮駒形神社の山下明宮司からの依頼で扁額を修復。木村の書の息づかいを間近に触れた時の思いや、書の魅力を伝えたいと急きょ解説会を開くことになった。
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