人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】ILC子ども科学相談室・8  自然に悪影響はありませんか?

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tanko 2017-12-15 20:30
 ILCは北上山地の地下に建設する実験施設ですよね? 山の中に大きな実験設備や多くの人たちが仕事をする建物を造ったりすると、岩手の豊かな自然が壊れるのではないか、やはり心配です。

環境影響調査が必ず行われます

 ILCは標高100mの位置に全長約29km、最大拡張時で約50kmという長大なトンネルを掘って本体を設置します。そのトンネルの大きさは、幅約12m、高さ約6mのかまぼこ型です。トンネルの中間には、電子と陽電子の衝突地点があり、検出器という大きな機械を2台設置できる巨大な「実験ホール」が作られます。幅30m、高さ40m、長さ120mという空間です。
 このような設備を地下につくるのですから、地下水脈に対して影響を与える可能性があるかもしれません。
 一方、地上に設置する設備については、ILCの加速管を冷却するための液体ヘリウムのタンクや付属の電源設備、いろいろな装置類の付帯の設備、そして、ILC本体のトンネルに出入りするための「アクセストンネル」の建設などがあります。
 これら諸設備の設置には、一部山を削ったり、樹木を伐採して土地を造成することなどが考えられます。
 ILCに限らず、このような大規模な開発事業を実施するときには、建設前に環境影響調査(環境アセスメント)を行い、周辺の自然環境に与える影響について評価することが義務付けられています。
 「環境影響評価法」の施行前は、公害(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭など)および自然環境の保全(地形、地質、植物、動物、景観および野外レクリエーション地など)について網羅的に行われていましたが、「環境影響評価法」施行後は▽環境の自然的構成要素の良好な状態の保持(従来の公害項目と地形・地質など)▽生物の多様性の確保および自然環境の体系的保全(植物、動物および生態系)▽人と自然との豊かな触れ合い(景観および触れ合い活動の場)▽環境への負荷(廃棄物等、温室効果ガスなど)――の中から対象事業の性質に応じて、適切な要素を選んで手続きするようになりました。
 また政策決定段階や事業の適地選定などの構想段階で行われる環境影響評価は、戦略的環境アセスメント(SEA)と呼ばれ、ILCの場合当然この戦略的環境アセスメントも受けることになっています。
 従って住民が知らないうちに樹木が伐採されたり、大きなトンネルが掘られたりすることはありません。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 私たちが生活を送る上で、自然環境の大切さを意識することは、今や当たり前となっています。
 便利な生活、安全な生活をする上では、どうしても自然に手を加えなければいけないことがあります。そんなとき、「自然を大切にしてほしい」という皆さんの声があるのと、ないのでは印象は違います。
 人間、どうしても気が緩むこと、忘れてしまうことがあります。交通安全運動と同じで、常に注意の声掛けがあることで安全に対する意識を再認識することができ、そのことが悲惨な事故をから身を守ることになります。
 この連載は、小中学校のILC出前授業で寄せられたアンケートを元に内容を構成しています。アンケートで特に目立ったのが、ILCの実現対する期待と、自然を守ってほしいという声でした。小中高生の皆さんの思いを、ILCを推進する大人の皆さんはしっかり受け止めてほしいですね。
(児玉直人)
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