人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

国民の期待 五輪並みに必要(文科省設置の有識者会議・観山正見委員が所感)

投稿者 : 
tanko 2014-5-14 5:50
前国立天文台長、奥州にゆかり
「科学者にとっても挑戦」

 北上山地への誘致が期待される素粒子物理研究施設・国際リニアコライダー(ILC)に関する文部科学省の有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授)がこのほど設置された。メンバーには、前国立天文台長を務めた広島大学学長室特任教授の観山正見(みやま・しょうけん)氏も加わる。観山氏は胆江日日新聞社の取材に、東京オリンピックに匹敵する国民的支持の必要性を指摘。その上で「私も含め、日本の科学者にとっても大きなチャレンジになる」との考えを示す。(児玉直人)

 ILCの北上山地建設に期待が高まる中、文科省は日本学術会議が提言した一層の調査・検討を行うため、有識者会議を設置。13人で構成し、今月8日に文科省内で初会合が開かれた。誘致建設経費の全容と関係国との分担、人材確保、他の国家事業や諸学術分野に影響を及ぼさない予算の枠組みの在り方などを2、3年かけ検討する。
 委員の中には、天文学者の観山氏が名を連ねる。
 観山氏は京都大学を経て1889(平成元)年に国立天文台天文学研究系助教授に就任。企画調整主幹、副台長などを経て2006年から2012年まで第4代台長を務めた。
 台長就任時、当初取り壊しが予定されていた同天文台水沢VLBI観測所敷地内の「旧水沢緯度観測所本館」をめぐり、保存活用に向けた協議の真っただ中にあった。奥州市側の保存意向を受け、同天文台は同市への建物無償譲与を決定。観山氏自ら奥州市役所を訪れ、市側に通知した経緯がある。
 旧本館は奥州宇宙遊学館として現在に至っているが、観山氏は2008年4月の開館式典にも出席。記念講演の講師を務めたほか、地方自治体との間では初となる「相互友好協力協定」を奥州市と結んだ。
 今回、再び同市が関係するプロジェクトの検討に携わることになった観山氏。本紙の取材に「会議は始まったばかり。基本的にはそこで示される学術データや組織人員体制、予算規模の詳細を聞いて適切な意見を表明したい」と述べ、「今まで一つも無かった『真の国際的学術機関』が国内にできることは重要であり、日本としても良い経験になる。ILCの学術的価値も大変大きい」との認識を明らかにした。
 その上で、「建設費や運営費が大変高額。1年間の経費で(ハワイ島に同天文台が設置している)すばる望遠鏡ができるほどだ。極めて慎重な検討が必要であり、『国際』と名を打っている以上、半分以上は海外からの貢献が必要だと思われる」と指摘。「何よりも国民の大きな支持が必要。その意味で、東京オリンピックに匹敵するような期待が求められるだろう。私を含め日本の科学者にとって、良い面でも厳しい面でも大きなチャレンジになる」との考えを示した。

写真=観山正見氏
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