人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC推進派 学術会議回答案に反論(事実誤認を複数指摘)

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tanko 2018-11-21 11:10
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現を推進している研究者組織などは、日本学術会議の「ILC計画の見直し案に関する検討委員会」(家泰弘委員長)に、文部科学省への回答案に対する意見・説明書を提出。検討委側の考えに事実上、反論した。20日、推進派の研究者らは都内で、報道関係者に意見・説明書の概要を説明。素粒子物理学者界での合意形成がされていない点や、研究者が現地に常駐する必然性は乏しいなどの見解について「事実誤認」と指摘した。一方で、諸分野や候補地の地元住民への理解促進は、今後も努力を続けるとした。同検討委は21日午前10時から、東京都港区の同会議内で、第11回会合を非公開で行う。

 同検討委は今月14日、第10回会合の中で文部科学省に提出する回答案を公表。ILC計画の科学的意義は認める一方、巨額なコストが掛かる点や諸分野研究者との対話が不足している点、経済誘発効果が限定的であることなど、慎重な見解や各種対応の不十分さを指摘する文言が目立った。
 これに対し、素粒子物理学者らを中心とするILC推進派の研究者や、本県や東北の誘致関係者からは、事実誤認の指摘や情報が正しく理解されていないなどと批判や不満が噴出。委員会側に正確な情報を伝え、回答案修正に生かしてもらうよう、14日以降、関係者間で意見・説明書の作成作業が急ピッチで進められていた。
 意見・説明書は19日、高エネルギー加速器研究機構のILC推進準備室名で電子メールにより送付。合わせて東北ILC準備室も、北上山地周辺地域での受け入れ準備について説明・理解を求める趣旨の文書を提出した。
 研究内容に対する素粒子物理学界の合意形成が得られていないとする回答案の記載について、「徹底した議論の結果だ」と強調。「ネットが普及した時代にあって、データ解析は現地に行く必要はない」などとする見解についても、「高エネルギー物理実験の実情と合わない。研究者は実験現場に集まる」と、検討委側の事実誤認を指摘した。一方で、候補地の地元住民や諸分野への理解促進に関しては、十分ではない面もあり最大限努力する考えも示した。
 会見の席で、東北ILC準備室長の鈴木厚人・岩手県立大学長は「ILCは研究者だけでなく、地域社会や日本にとってかけがえのない施設となる。夢のシンボルと言っても過言ではない。学術会議は提出した意見を正しく理解し、公正な議論をするよう切に希望する」と訴えた。
 岩手県ILC推進協議会の谷村邦久会長は「学術界の人間ではないので、あまりものを言える立場ではないが、(回答案には)ネガティブ表現が散見されたし、これまでの議論を見ても『これが科学者の発言か』と思うような場面もあった」と不満を露呈。「(推進する側の)意見をしっかり聞いて会議を進めてほしい」と注文した。
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