人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

日本語教育どう推進? 研究都市見据え議論(奥州市国際交流協)

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tanko 2013-12-4 9:30
 地域に居住する外国人に対し、日本語教室は何ができるか――。素粒子物理学の大規模研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」が実現した際、多くの外国人研究者とその家族が地域に滞在する。しかし、外国人が地域生活を送る上では、言葉を中心にさまざまな障壁が存在。国際研究都市を形成させる上では解消すべき重要課題の一つだ。外国人市民を対象とした「日本語教室」を開設している奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)は3日、水沢区横町の市まちなか交流館で同教室の日本語教育指導者らの研修会を開催。ILCを迎え入れる上で、同教室の役割などを多文化共生の観点から考えた。

 研修会には、同教室で日本語学習指導者などを務める市民や、市内在住外国人ら約20人が出席。NPO法人多文化共生リソースセンター東海(名古屋市)代表理事の土井佳彦さん、NPO法人多文化共生マネージャー全国協議会(大阪市)事務局長の時光(とき・ひかる)さんを講師に招いた。
 講師の時さんは中国出身で、日本の大学に留学生として来日した際、日本語を猛勉強。日本語検定の1級に合格したものの、実生活では日本語がなかなか理解できず、共通の話題でコミュニケーションが取れないため、友人もできなかった。「毎日が緊張の連続で、自分を守るために自分に壁を作っていた」と当時を振り返る。
 土井さんによると、海外の主要国の中には、その国の公用語を一定期間内に覚えられるように――と法律で定めている例があるという。「学習費用は税金でまかなわれる。移住した外国人が困らないようにとの意味もあるが、言葉が通じない人がいることは自国にとっても困るからという理由もある」と説明する。
 しかし日本にはそのような仕組みが無いため、日本滞在が長いにも関わらず基本的な日本語も使いこなせないケースが生じる。「時さんのように、留学生として来日したのであれば学校で日本語を学ぶチャンスはあるが、それ以外の人は自ら日本語教室を探さなくてはいけない」と実情を解説した。
 ILCが実現した場合、外国人研究者だけでなく家族も一緒に中長期滞在する。土井さんは、多文化共生の概念を説明しながら「研究者自身は施設内で英語を話せるからいいだろうが、家族や子どもはそうはいかない。日本語教室や学習指導者が果たす役割は大きい」と強調した。
 参加者らは「外国人市民が生活上、困ることは何か」などグループ討議しながら、外国人への日本語教育の望ましい姿について考え合った。
(児玉直人)

写真=ILC実現を見据え、日本語教室の役割などについて意見を交わす参加者ら
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