人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ブラックホール自転示す新証拠(国際チーム成果発表)

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tanko 2023-9-28 9:30

画像=巨大BHから噴出しているジェットが、こまのような首振り運動をしているイメージ図。この現象がBHが自転している証拠となった=(C)Cui et al.(2023),Intouchable Lab@Openverse,Zhejiang Lab

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)などの研究者らで構成する国際研究チームは、直接観測不可能な巨大ブラックホール(BH)が自転している極めて強い新証拠をつかんだ。日本時間の28日付で英国の科学雑誌『ネイチャー』に論文が掲載された。本研究には、水沢の電波望遠鏡、スーパーコンピューター、そして人材の“3資源”が大きく貢献した。(児玉直人)

天文台水沢の人材、電波望遠、スパコン “3資源”の貢献大きく
 自転とは天体自身が回転する運動。基本的にどの天体も自転しているが、巨大BHが本当に自転しているのか、直接観測できないため確固たる証拠がなかった。
 国際研究チームは、BHから高速で噴き出すプラズマ粒子「ジェット」に着目。おとめ座の方向にあり、地球から5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れている「M87」銀河中心部の巨大BHのジェットを観測した。
 2000年から23年分の観測データを分析したところ、ジェットの噴出方向が周期的に変化している現象を確認。こまが首を振るのに似た動きで、その周期は11年もの長さに及ぶ。BHが自転していなければ発生しない現象で、「極めて強い自転の証拠」とした。
 観測は日中韓に点在する計13台の電波望遠鏡を連動させて実施。同観測所敷地内に設置している直径20mの電波望遠鏡「VERA」も含まれている。同敷地にあるスーパーコンピューター(スパコン)「アテルイ供廚鮖箸ぁ観測結果の考察も行った。
 同観測所の秦和弘助教は「これまでのBH研究の成果発表では、水沢の研究者が携わってはいたが、VERAは使っていないなど、物足りなさを感じられたかもしれない。今回は参加研究機関それぞれに大きな役割を果たしたが、水沢では電波望遠鏡、スパコン、そして人材の三つで貢献できた」と笑顔。VERAを活用した研究成果が世界的権威のある『ネイチャー』に掲載されるのも、2002年の本格運用開始以来初めてのことだという。
 今後はBHの自転速度の特定、ジェット発生のメカニズムの解明などが期待される。

天文研究に国境なし(水沢観測所で活動した崔さんの論文基に)

写真=会見にオンライン参加した崔玉竹さん(右のモニター内)

 今回の研究は、中国・之江(ジェジャン)実験室所属の崔玉竹(ツェイ・ユズ)さん=湖北省出身=の学位論文が基になっている。2017年から2021年まで、日本の総合研究大学院大学に在学。水沢VLBI観測所で研究活動し博士号を取得した。27日に同観測所で行われた記者会見には、崔さんもオンラインで参加した。
 1、2年分の観測データを分析するだけでも大変な作業だが、本研究では23年分のデータを分析。一時は心が折れ「宇宙の研究を辞めたい」と思うほど落ち込んだが、指導教官の本間所長や秦助教ら周囲の支えもあり、今回の成果に至った。
 会見前日の26日は、水沢緯度観測所初代所長・木村栄博士の没後80年の節目。本間所長は「天文学はグローバルで国境のない世界。木村博士の時代から国際協力の精神が脈々と受け継がれている」と語る。
 短期的成果が求められる科学界にって、長年の地道な取り組みが実った今回の研究。本間所長は「次世代の研究者にいい成果を出してもらうには、継続的な観測を続けデータを積み重ねる必要がある。望遠鏡などのインフラをしっかり運用しなくてはいけない」と気を引き締めていた。
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