人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-8-22 8:50

写真=2013年8月23日、ILCの有力候補地に北上山地が決まったことを知らせるポスターが掲示された市役所本庁玄関

 素粒子物理学の巨大実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致計画を推進する研究者が、有力候補地に北上山地を選定してから23日で丸10年となる。当時は国際的な研究施設の実現に大きな期待が高まったが、他分野研究者らを交えた議論では誘致に慎重な見解が示されており、一部の地元住民は研究者や県の誘致事業に疑問を唱えている。事実上の与野党対決となった知事選(17日告示)だが、ILC計画に関しては2候補が共に誘致実現を公約に掲げる“推進派”だ。政府の動きが判然としない中、誘致関係者は機運を再度高めようと躍起だ。
(児玉直人)

 ILCは地下に建設される大型の実験施設。肉眼では確認できない素粒子の一種「電子」と「陽電子」を光速に近い状態に加速させ、衝突させる実験を行い、物質の成り立ちや起源に関する研究を行う。
 国際プロジェクトとして推進しようと、素粒子物理学の研究者らが中心となって計画。研究者グループは、振動影響などを受けにくい強固な岩盤がある場所として、北上山地と九州北部の脊振山地に絞り込んだ。両地域の地元関係者による理解促進の取り組みは、やがて誘致合戦のような様相を呈しヒートアップ。科学的な検証によって、北上山地に一本化された。
 その後も誘致実現に向けた取り組みが進行。普段は意見が対立する政治の場においても、ILCだけは与野党が超党派的に前向きな姿勢を示し続けている。
 しかし、日本政府は現在までにILC受け入れを正式表明していない。候補地もあくまで推進派研究者が決めたものという位置付けから変わっていない。
 他分野の研究者を交えた日本学術会議や、文部科学省の有識者会議の場では、予算やプロジェクトの進め方に対し慎重な意見が示されている。また、北上山地近郊の地元住民の一部からも、施設の安全性や誘致活動の在り方に対する疑問が出ている。子どもたちを誘致運動に巻き込むような活動に対しては、反対派住民だけでなく有識者会議からも批判の声が上がった。
 他分野研究者からの指摘に、推進派のリーダー的な存在として誘致運動に携わってきた県立大学の鈴木厚人学長は猛反発。今月10日に水沢で行った講演に続き、21日に盛岡市内で開かれた県ILC推進協議会の講演会でも、ここ最近の海外研究者らの日本誘致への期待沈下は、「有識者会議の見解が原因」と明確に非難した。
 「どこに建設するか」という立地問題が、国際費用分担などを巡る議論を硬直化させる要因になっているとして、有識者会議が提言した「技術開発と立地問題の切り離し」についても厳しく批判。「日本に誘致するためにやってきたことなのに、立地問題を切り離すとはとんでもない」と語気を強めた。
 岩手大学の男子学生が「具体的な構想が出ているのに、なぜ遅れているのか」と問うと、鈴木学長は「有識者会議の報告の中身があまりにもひどかったので、急に落とされた感じになった。しかし、(岩手など)地方がこれだけ受け入れる準備をしていると海外研究者に話すと驚かれる。再度盛り上げていかないといけない」と答えた。
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tanko 2023-8-11 8:50

写真=地域一体となったILC誘致活動の展開を訴えた鈴木厚人氏

 東北ILC事業推進センター代表を務める県立大学長の鈴木厚人氏(素粒子物理学)は10日、水沢東町の水沢グランドホテルで、北上山地が有力候補地とされる実験施設ILC(国際リニアコライダー)について講演した。誘致に慎重姿勢がにじみ出た文部科学省ILC有識者会議の報告に対し、「日本への期待が沈下した」と憤りを示した。鈴木氏は「地元はしっかり受け入れに向けた準備を進めているという姿勢を示せば、世界は応援してくれる。地域が一体となった活動を進めていきたい」と力を込めた。
(児玉直人)

 同センターは2020(令和2)年8月に設立。東北ILC推進協議会の内部組織だった「東北ILC準備室」を発展解消し、ILC受け入れ環境整備を具体検討している。胆江2市町を含む岩手県南、宮城県北の17市町や岩手・宮城両県、大学機関など23団体から成る。
 同日はILC計画現状説明会として、構成団体となっている自治体の関係者ら約30人が出席。この中で鈴木氏は、ILCの最新動向について語った。
 鈴木氏はILC誘致運動の経過を振り返りながら、22年2月14日付でまとめられた文科省ILC有識者会議の報告内容を批判。▽ILCプレラボ(準備研究所)段階への移行は時期尚早▽今後の見通しを明確にするような大きな進展は見られない――とした部分に関しては、「現実を無視する判断」と指摘した。
 このほか、建設場所に関わる問題を切り離し、当該分野の技術開発を進めるべきだという助言には、「ILC日本誘致は、国家プロジェクトとして幅広い意義がある。政治や民間、地域、学界が一致協力して20年以上に及ぶ活動を展開してきた」と強調。「ILCの意義やこれまでの国際推進の経緯、実績を無視したものだ」と不満をあらわにした。
 「一緒に日本誘致に期待して進めてきた海外研究者たちも、有識者会議の報告は相当ショックだった。米国の将来計画から『ILC in Japan』の文字がなくなり、米国への建設も検討すべきだとの議論が行われた」と鈴木氏。「再びオールジャパンの体制を構築し、地域から日本の未来を切りひらくつもりで、積極的に推進したい」と強調した。
 説明会では、同センター事務局長の大平尚・県ILC推進局コーディネーターが、同センターの活動状況を紹介。蝪裡圍團侫.轡螢謄ーズの平井貞義氏が、ILCを契機にしたまちづくりに係る共同研究について報告した。

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