人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-11-26 9:20

画像1=天の川銀河の想像図に重ねた224天体の位置と動きを示す矢印。矢印の長さは速度を表しているが、内側も外側もほぼ同じ長さであることから、場所に関わらず各天体の回転速度がほぼ一定であることが分かる((C)国立天文台)

距離や速度 教科書改訂へ結ぶ成果

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)と鹿児島大学天の川銀河研究センター(半田利弘センター長)を中心とする研究メンバーは26日付で、天の川銀河の精密測量に関する研究成果を発表した。同観測所が運用するVERA(天文広域精測望遠鏡)などを用いた観測で、太陽系から天の川銀河中心部までの距離が、国際天文学連合の推奨値よりも近いことが判明。回転速度も含め、誤差が非常に小さい信頼性の高い結果を示すことができた。天体の距離や速度は、天文学研究を進める上で重要な基本情報。研究者らは「教科書の改訂につながるような成果だ」と強調している。
(児玉直人)

 VERAは水沢など国内4カ所の電波望遠鏡を連動させ、天体の位置をより精密に測ることができる。観測局の一つ、鹿児島県薩摩川内市の「入来局」では、地元の鹿児島大の学生らが望遠鏡の保守や見学者対応に協力。観測や研究にも直接かかわっている。
 今回の成果は日本天文学会欧文研究報告(PASJ)の「VERA特集号」で発表された。VERA4局の観測でこれまでに得られたデータは99天体分。これに世界各地の電波望遠鏡で観測した分を加えた224天体の位置データを使用し解析した。
 その結果、地球がある太陽系から天の川銀河中心までの距離は2万5800光年(1光年=約9.5兆km)であることが判明。1985年に国際天文学連合が定めた推奨値2万7700光年より1900光年近いという。
 各天体の移動速度は平均して秒速227km。銀河中心部に近い場所も、太陽系より外側のエリアもほぼ一定だった。理由として、正体不明の物質「暗黒物質(ダークマター)」の存在が影響していると言われている。
 今回判明した距離や速度の誤差は5%程度で、信頼性の高さを裏付けている。天文学研究では、天体の距離や移動速度は重要な情報。研究の積み重ねが必要ではあるが、今回の成果は天文学関連の教科書改訂に結びつく可能性があるという。
 このほか、星の集団が渦巻きを描く「銀河の腕」の本数が4本であることも判明。天の川銀河の構造がより解き明かされた。



画像2=VERAプロジェクトの最新成果をまとめた論文が掲載されたPASJの表紙。水沢など4カ所の観測局の名称が英字で表記されている


 同観測所は今年、予算削減問題が注目されたが、論文のとりまとめや成果発表はそれとは直接関係なく、もともと予定されていたもの。ただ、25日の記者会見では同問題に絡めた質問も相次いだ。
 本間所長は、市民有志によるVERA存続を求める署名が24日に文部科学省に提出された件に触れながら、「いろいろな方々に支えてもらっているのを感じた。基礎科学研究は地道に成果を積み上げていくもの。そのためにも、安定した研究環境が大切になる」と話している。
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tanko 2020-11-25 9:40

写真=三谷英弘政務官(左から2人目)に署名簿を手渡す、小野優市議(同5人目)ら(VERAサポーターズクラブ提供)

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)について、文部科学省の三谷英弘政務官(自民党、衆院神奈川8区)は24日、当初計画にある2022(令和4)年度までは、着実に運用できる予算を確保していく考えを示した。同日、同観測所の研究を支援する民間団体「VERAサポーターズクラブ」(木村隆代表)が集めた1万6548筆の署名提出を受けて明言。2022年度以降についても、「研究者コミュニティーでしっかり意見集約し、検討するよう促したい」とした。
(児玉直人)

 この日は本県から、署名呼び掛け人として名を連ねている小野優・奥州市議のほか、署名活動に協力した花巻ロータリークラブの橋川秀治副会長、螳ど製作所=北上市=の阿部紀子専務が上京。さらに、VERA観測網の一つ「石垣局」がある沖縄県石垣市の八重山青年会議所の上地誠・直前理事長も合流した。
 署名簿の提出には、藤原崇氏(自民、衆院比例東北)、文科省研究開発局の生川浩史局長らも同席。小野市議らは「ブラックホールの撮影成功を機に、天文台への興味関心が、子どもから大人まで高まっている」「この先まだ年使える装置。有効活用してもらいたい」などと訴えた。
 小野市議によると、三谷政務官は予算確保にしっかり取り組み、少なくとも当初運用計画で示された2022年度まで、予算削減しない方向で進めたい意向を示したという。
 署名は、提出直前の集計段階で1万6344筆だったが、さらに200筆余り加わった。
 VERAは水沢、石垣、鹿児島、小笠原諸島父島の4カ所に同一仕様の電波望遠鏡を設置。連動させて同じ天体を高い精度で観測している。近年は東アジア観測網の一翼も担っており、特に日本のVERAの存在は観測精度の面からも重要度が高い。
 国立天文台執行部は昨年12月、観測所予算の大幅削減方針を観測所側に通達。今春、市民にも知られるところとなり、署名や寄付などの形で支援する動きが広がっていた。
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tanko 2020-11-18 9:30
 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)の運用継続を求める署名が、1万6344筆に達した。目標の1万筆をはるかに上回る成果。知らせを受けた本間所長も驚くほどの数で、多くの人たちが同観測所の研究に期待を寄せていることをうかがわせる。署名活動を展開した「VERAサポーターズクラブ」は、24日に東京の文部科学省を訪れ提出する。
(児玉直人)

 署名運動は、同天文台執行部がVERAの運用終了と、観測所予算を半減する方針を打ち出したのがきっかけで始まった。その後、本年度分の運用予算は確保できたが、研究内容の見直しを余儀なくされた。来年度以降の安定運用の保証はなく、不安が残る状況だ。
 120年余りの歴史があり、近年はブラックホール関連の研究などで大きな実績を上げている同観測所。窮地を何とか救おうと、地元天文ファンによる同クラブが、市民有志らの賛同を得ながら署名を集めていた。
 街頭やインターネットのほか、VERA観測網の一つ「石垣局」がある沖縄県石垣市の高校生たちも現地で署名活動を実施。同観測所と縁がある宮沢賢治(童話作家、花巻市出身)や田中舘愛橘(地球物理学者、二戸市出身)の故郷からも協力があった。
 24日は、署名活動に賛同している小野優・奥州市議らが上京。萩生田光一文科相宛てで署名を提出する。
 同クラブの木村隆代表(49)=金ケ崎町三ケ尻中荒巻=は、「目標を達成できたのが何よりうれしい。水沢だけではなく、石垣にまで賛同の広がりがあった。これを終わりとせず天文台と地域との交流のスタートにしていければ」と話す。
 本間所長は、集まった署名の数に驚きながら「これだけ多くの人たちが、われわれを応援してくれていることを表す数字だ。その大きさに感激しており、署名活動に関わったすべての皆さまにお礼を申し上げたい。皆さんの期待に応えられるよう、これからも研究をさらに頑張っていきたい」と気を引き締めている。
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tanko 2020-11-18 9:30
 岩手県が素粒子物理学者と共に北上山地への誘致を進める地下実験施設、国際リニアコライダー(ILC)について、県ILC推進局ILC推進監の植野歩未氏は17日、市役所本庁3階講堂で講演した。国際推進チーム(IDT)や東北ILC事業推進センターの発足、欧米からの支持などを背景に、実現に向けた準備が着々と進められていることをアピール。有力候補地である同山地周辺自治体などによる受け入れ態勢の協議が行われている点などについて、「日本政府の次の意思表示の後押しにもなる」と強調した。
(児玉直人)

 植野氏は、市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)総会後の講演会で登壇。同協議会会員団体の関係者のほか一般にも公開され、約20人が聴講した。
 ILCの国内推進母体である高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、文部科学省に提出した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」に係る申請を取り下げた点について、植野氏は「申請直後にILCの国際協力体制を巡る動きに進展が見られた」とするKEKの見解を紹介した。その上で「3月に取り下げた事実を9月に公表したのが問題となった。一部研究者が謝罪した」と説明した。
 ロードマップへの掲載など文科省がILC実現のために当初示していた「正式プロセス」は、研究者サイドから提示する「ボトムアップ型」と呼ばれる仕組み。だが植野氏は、文科省の公開資料を基にしながら、「ロードマップで取り扱う事業の予算枠は300億円程度。そもそも8000億円という規模のILCは、この枠組みに最初から入らない」と指摘した。
 一方で、昨年日本が参加を決めた米国主導の有人月探査「アルテミス計画」のように、政府が能動的に決めていく「トップダウン型」という手法もあり、「こちらのやり方で進められていくのではないか」との見解も示した。
 アルテミス計画のほか、国際宇宙ステーションや国際熱核融合実験炉などもトップダウンの例だと植野氏。いずれも他国が主体的に行っているプロジェクトに日本が参加してきたが、「ILCは(実現すれば)省庁横断で取り組み、初めて日本がホストするプロジェクトになり得る」とした。
 ILC実現の可能性を感じさせる動向も列挙。新しい欧州素粒子物理戦略では、ILCへの期待が明記された。米国ではエネルギー省を中心としてきたILCの対応に、国務省も加わった。省庁横断的にILCへの強力な支持が打ち出されている。
 北上山地周辺に目を向ければ、東北ILC事業推進センターの発足により岩手県南、宮城県北の市町を交えながらの受け入れ態勢協議が進む。
 「研究者組織や産業界だけでなく、欧米の政府機関、東北の候補地の動きは、着実に日本政府の後押しになっている」と植野氏。「『ILCが正式決定していないのに、なぜこういう組織ばかり作っているのか』という質問をいただくが、『東北はここまで準備しているんだ』という強い意志を示すのも、誘致実現を進める上での一つの戦略だ」と強調した。
 まとめで植野氏は、「8月にIDTが発足し、1年半で次のステップである『ILC準備研究所』の設立に入る。それまでの間に、日本政府からまた新たな意思表示が出ることを期待したい。奥州市は国際交流協会による医療通訳が積極的に行われるほか、国立天文台の存在によるサイエンスへの理解がある土地柄。ILC計画に対しても早い段階からアプローチしていた。まちづくりビジョンの具体化などをぜひ進めてほしい」と呼び掛けた。
 一般聴講者からは、ILCの安全性についての質問が出た。植野氏は「粒子ビームが最終的に到達する『ビームダンプ』と呼ばれる設備で、放射性物質のトリチウムが発生するため、外部に流出しないよう厳格な対策が講じられる。年明けには、安全対策に関する解説セミナーを予定している」と答えた。

写真=ILCの最近の動向について説明する県ILC推進監の植野歩未氏

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