人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-7-2 7:00

写真=VERAアンテナの前で今後の在り方を語り合う、本間希樹所長(左)と山田慎也さん

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)を拠点とするVERA(天文広域精測望遠鏡)観測網の年度内運用予算が確保された。“6月終了”という最悪のシナリオは回避されたが、限られた予算と少ない人員で今後の研究を進めるため、運用開始以来続けてきた「銀河系の地図作り」に区切りをつける。今後はブラックホールなど観測対象を絞った研究や、近隣諸国と連携した観測などに力を注ぐ。
 VERAは、水沢など国内4カ所に同一仕様の電波望遠鏡(パラボラアンテナ)を設置し、天体の位置を精密に調べる観測網。昨年末、プロジェクト終了と観測所予算の大幅削減方針が、天文台執行部から突如告げられた。
 6月30日、執行部は年度内の運用に見合う予算を配分すると同観測所に通知した。年度内運用は担保されたが、本間所長は「年度当初の段階でしっかり予算が付いていれば、スタッフの契約更新や新しい人材の確保もできた。影響は非常に大きい」と悔やむ。
 限られた予算と人員の中で運用継続を図るため「銀河系の地図作り」はひとまず終了させる。これまでの成果は今夏、10本の論文として発表される見通しだ。
 今後は天の川銀河の中心部にあるブラックホール「いて座A*(エースター)」の精密測定など、対象を絞った観測を行うほか、近隣諸国の観測網と連携したプロジェクトも継続させる。タイや中国で新たな電波望遠鏡の整備が進んでおり、本間所長は「この分野に伸びしろがあるという証拠。そんな中で『VERAはやめます』というわけにはいかない。私たちの現状では大きな投資はできないが、継続していけば将来的なサイエンスの発展につながる」と力を込める。
 一連の予算削減を巡る動きを受け、天文学界と天文台執行部との意思疎通を考える第三者委員会的な組織も立ち上がった。元国立天文台長の観山正見氏、インフレーション宇宙論提唱者の佐藤勝彦氏らが名を連ねる。
 旧緯度観測所時代から天文台に親しみを寄せる一般市民や天文ファンも支援。県内外の個人や法人から寄付金も届いているといい、本間所長は「目に見える応援があることは新鮮で驚き。とても恵まれた観測所だとあらためて感じた」と語る。
 天文ファンの仲間と共に「VERAサポーターズクラブ」を立ち上げた水沢天文台通りの自営業、山田慎也さん(50)は「VERAは水沢の象徴であり、銀河を身近に感じさせてくれる存在だ」と強調。地元住民、天文ファンの目線で観測所を支える取り組みを続けたいとしている。
(児玉直人)
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tanko 2020-7-1 7:00
 国立天文台(常田佐久台長)は30日、水沢VLBI観測所(本間希樹所長)からの予算要求に応じ、VERA(天文広域精測望遠鏡)プロジェクトの年度内運用経費などを満額補正した。ただ、来年度以降のプロジェクト継続が確約されたわけではなく、依然予断を許さない状況だ。
 渡部潤一副台長が同日、胆江日日新聞社の電話取材に応じ「観測所の要求通り100%補正した」と答えた。ただ、来年度以降の予算に関しては「新しい研究テーマの有無などを見極めた上での判断。現時点では未定だ」との見解を示した。
 予算大幅カットの動きを巡っては、同観測所の活動を応援する地元の天文愛好家らが文部科学大臣への要望書提出や署名運動を展開。小沢昌記市長も文科省に要望する意向を示している。渡部副台長は「新型コロナウイルスの影響が落ち着くタイミングを見て、常田台長自ら地元説明に伺う予定だ」と話している。
(児玉直人)

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