人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2019-3-30 14:20
菊地 和夫(82)=一関市大東町=

 原子力発電は安全だという神話に踊らされて誘致した福島の首長が命をかけて「地域のこし」に取り組んだ番組を涙ながらに拝見した。
 わが一関市大東町では今、国際リニアコライダー(ILC)の放射性物質により、子どもや孫の時代には住めなくなるのではないかと、大問題になっている。
 町内でこのほど、ILC解説セミナーが行われた。「ILCは放射能施設であり、放射能と放射性物質が生成される。しかし、各種の拡散防止対策を講じて厳重に管理するので安心である」との説明があった。初めてのリスクについての話だった。
 わたしは、同セミナーのほか、一関市が発行する広報紙などを精読して感じていることがある。それは?一部の科学者や反対者の会として日本学術会議を非難していること?中国に覇権を奪われると政治上、困ること?日本全体にメリットでも地域住民にとっては、自然破壊や騒音、事故などのリスクデメリットがあること?少数のメリットを守るか、多数のメリットを優先するのかということ――である。
 結局、大東町民は原子力の安全神話と管理対策を信じ、日本の国益よりも大きい世界のプロジェクトのために、想定外の事態が発生してもあきらめろ、ということか。
 こんな前近代的な「大の虫のためには、小の虫の犠牲は仕方がない」という論理のILC誘致は、一刻も早く止めるべきだと思う。
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tanko 2019-3-29 19:10
 岩手県は、国際リニアコライダー(ILC)建設の有力候補地としてILC推進を広くPRする横断幕を作成。29日から県庁のほか、奥州市役所、奥州地区合同庁舎など県内7公共施設にも掲げる。
 横断幕は高さ1m、幅7m。青地に黄色文字で「We're ready for the ILC!」(私たちはILCの受け入れ準備ができています)などと記されている。
 県によると、県庁への掲示は29日だが、他施設はそれぞれの都合に合わせて設置するという。
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tanko 2019-3-29 19:00
 岩手県と県国際リニアコライダー推進協議会(谷村邦久会長)は27日、盛岡市愛宕下の盛岡グランドホテルで、国際リニアコライダー(ILC)計画の推進を図る講演会を開いた。研究者らが国内外の情勢を語ったほか、漫画雑誌「モーニング」で連載中の『会長島耕作』作者の弘兼憲史氏(71)が同作品のILC編について紹介。今月7日に政府がILCに初めて関心を表明したことを受けて、関係者が一丸となり誘致の実現へ意識を高めた。
 講演で弘兼氏は、「会長島耕作」の第1話、2話をスライドショーで見せながら、取材で得た見識で分かりやすく解説した。7日の政府の表明については「本当に、はらはらしながら(発表を)待っていた」という弘兼氏。正式表明とはならなかったが「戦いはこれから。岩手県にプロジェクトを持ってくるように、皆さんと頑張りたい」と力強く述べた。
 講演後、取材に応じた弘兼氏は「漫画の影響は大きいと思っている。私がILCを知ったのは昨年4月だったが、日本の皆さんに知っていただきたいと思った。震災で疲弊していた東北の新しい活力に協力できれば」と思いを語った。
 地元での盛り上がりについては「一ノ関駅に降りるとILCの掲示板などがあり、意気込みがすごいと思った。地元では報道されているが、東京では取り上げられず残念に思う」とし、「(漫画を)読んでいただき、日本がいいチャンスをもらっているということだけでも(全国に)伝われば」と強調した。
 また、7日の政府の関心表明について「国民がもっとILCのことを知って、民衆の力で(ILCに)賛成しようという機運を盛り上げてほしい」とし、今後の動向次第で同シリーズに取り上げることも語った。
 達増拓也知事は「(政府の)関心表明を大いに歓迎する。ILCを通じて岩手、東北が世界の科学と人類の未来に貢献できることは、震災被災地として大きな意義のあることと考える。いま、ILCの実現が近づいている。私たち岩手東北は準備ができている」と強調した。
 講演会は、関係者約400人が出席。弘兼氏の講演のほか、早稲田大の駒宮幸男教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の岡田安弘理事がILCに関わる国内外の情勢を語った。

写真=「会長島耕作」のILC編について講演する弘兼憲史氏
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tanko 2019-3-24 16:50
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致実現を目指す民間団体、いわてILC加速器科学推進会議(海鋒守代表幹事)の総会は23日、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館で開かれた。今月7日に示された文部科学省見解では、誘致表明は得られなかったものの、「関心を持って国際的な意見交換を継続する」との方向性が示されており、海鋒代表は「さらなる誘致促進活動にスピード感をもって取り組み、一刻も早く政府の誘致表明につなげたい」と活動の継続へ力を込めた。
 同推進会議は2012(平成24)年に発足。昨年12月末現在で企業127社、91個人・団体が会員に名を連ねる。ILCへの理解を深めるため、一般公開型の講演会やシンポジウムの開催、副読本の発行、関係諸団体の活動への参加などを行いながら、ILC誘致実現に向けた機運を高めている。
 今月7日に示された政府見解について、海鋒代表はあいさつで「政府がILCに対し初めて関心をもっているとしたこと、立地地域の建設による効果に言及したこと、国際的意見交換の継続意思を示したことは、大きな前進と捉えている」と評価。一刻も早い政府の誘致表明につながるよう、「引き続きご支援ご協力をお願いしたい」と会員らに求めた。
 総会では、2018年度事業報告と決算を承認したほか、新年度事業計画、活動予算について協議。事業計画には例年、講演会やシンポジウムの内容を盛り込んでいるが、誘致に関する政府表明が今月までずれ込んだことから内容や講師の決定ができなかったため、開催に向け4月以降の早い段階で立案することを確認した。
 総会後、県南広域振興局副局長兼首席ILC推進監の飛鳥川和彦氏が「ILCの実現に向けて」と題し、ILCを取り巻く動向や国・県の予算、地域への説明状況について情報提供。地元住民の中に、放射線管理や自然環境への影響など誘致リスクを指摘する声があることに触れ、「危険と思われるものがあればきちんと説明し、住民のみなさんがILCが来てよかったと思えるものにしていかなければならないのが県の立場」と、説明責任を果たしていく姿勢を示した。

写真=新年度も誘致促進活動の継続を確認した、いわてILC加速器科学推進会議の総会
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tanko 2019-3-18 9:50
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関する解説セミナー(東北ILC準備室主催)が17日、奥州市役所江刺総合支所などで開かれた。一般市民を対象としたいわゆる「リスク説明会」で、出席した一部の住民から放射性物質に対する不安や誘致活動そのものへの批判も上がった。対応した高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)ILC研究開発プロジェクトリーダーの道園真一郎教授は、「今後も理解を得られるよう説明し続けていきたい」と話す。

 セミナーは午前中に一関市大東町大原の大原市民センターで、午後に江刺でそれぞれ実施。江刺会場には市民ら44人が足を運んだ。
 有力候補地の地元である胆江地区や両磐地区などでは、ILC誘致に期待を寄せる声がある一方、放射線管理や自然環境への影響、行政側の誘致姿勢に疑問を投げ掛ける住民もいる。東北ILC準備室メンバーの立場で説明に当たった県科学ILC推進室の佐々木淳室長は、誘致を巡る最近の動向を説明しながら「いろいろな意見がたくさんあるのは承知している。こういった場で意見を頂きながら理解を深め、前に進めたいと思っている」と述べた。
 道園教授は、放射線や放射能などに関する基礎知識やILCにおける安全管理について説明。ILCに設置される装置や場所ごとに、発生する放射線の種類や管理方法などについて細かく解説した。
 質疑では、放射性物質の管理や自然環境への影響に関する不安や指摘が集中。KEKの佐波俊哉教授は「事故や地震などによって、放射性物質が漏れないよう検討している。放射能や放射線を加速器施設の外には絶対出したくない」と強調した。
 研究者側の説明に「福島第1原発事故で、この地域の放射能に対するアレルギーはものすごい。半端な説明では納得できない。これ以上、(ILC誘致に)費用をかけるのはやめたほうがいい」と主張する人も。セミナー終了後、胆江日日新聞の取材に応じた道園教授は「トリチウムをはじめとする放射性物質の問題に、とても心配されていることをあらためて痛感した。KEKは加速器開発を主体にやっていて、地元の対応はILCに関わる地域の大学や行政に任せていたスタイルがそのまま現在に至っていたこともあり、KEKとして直接住民の皆さんに説明するという場面がほとんどなかった。何度も説明し、理解を得られる努力をしなければ」と話していた。

写真=住民の質問にKEKの研究者らが答えた解説会(市役所江刺総合支所)


“はしご質問”、不規則発言も(マナーに疑問符)

 17日に江刺で開かれたILC解説セミナーの質疑では、司会者の進行を遮ったり不規則発言をする人が相次ぐなど、マナーが疑問視される場面があった。
 この日は、江刺会場の前に一関市大東町大原でも同じ内容のセミナーが開かれた。入場対象者の制限は特に設けられていなかったが、ILCに批判的な姿勢を示している一部住民が、大原会場で質問し、江刺会場でも発言。「同様の質問は……」と進行役の県職員が制止しようとしたが受け入れず、発言を続けた。大声での不規則発言もあり、終了後「まさかこんな雰囲気のセミナーだとは思わなかった」「もっと前向きな話を聞けると思っていたのに」と、苦々しい表情で会場を後にした住民もいた。
 ILC誘致に慎重な見解を示している市民団体の複数の関係者は、胆江日日新聞の取材に「意見や不安の思いを語るのはいいが、常識的なマナーは守るべきではないか。せっかく訪れた研究者に対しても失礼だ」「開催地の地元の人たちの声を吸い上げる場になるべきで、会場を『はしご』して再度質問するのはいかがなものか。不規則発言もよくない。冷静な議論ができなければ対立構造を生んでしまう」と懸念を示していた。
(児玉直人)
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tanko 2019-3-16 11:30
 わたしは水沢に生まれ、福島の大学に進学し、現在は東京の大学院で研究をしている。ILCの誘致をめぐって行われた科学技術コミュニケーションを題材に、修士論文をまとめることを考えている。
 3年ほど前、帰省したときに喫茶店のオーナーから、ILCの誘致さえ決まれば、奥州市は仙台を超える国際研究都市になるという話を聞かされ、驚かされた。
 最近、幾人かの人が指摘するように、ILCは「そのようなもの」ではない。日本学術会議も指摘しているが、ILC固有の技術応用は、あまり期待できない。
 当たり前のことではあるが、ILCは、ヒッグス粒子の精密測定を目的とする基礎研究のための「実験器具」である。何らかの技術への応用、産業への発展を目的とするものではないのだ。
 何より、懸念していることは「ILCで復興」を目指すはずが、復興を妨げることになりはしないかということである。
 岩手県は、これまで「ILCで復興」というスタンスを打ち出している。推進する側とすれば、通常の科学技術などの枠外で予算措置を講じるべきと主張する。
 しかし、その予算はどこから持ってくるのだろうか。本来、学術関連予算から拠出されるべきILC予算を「復興予算」で賄うということは、分配されるはずだった予算が被災地に措置されないことになりかねない。
 わたしは、ヒッグス粒子の精密測定という学術的意義を軽視するつもりはないが、説明責任を果たした上で遂行されるべきである。
菅原風我(東京都)
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tanko 2019-3-16 11:30
 広大な奥州市の西にそびえる「奥羽山脈の山並み」と、東に望む「北上山地の稜線」は、おらがふるさとのお宝であると捉えています。奥羽の山並みに残る豊かなブナ林を「胆沢ダムと栗駒焼石ほっとライン」に活用し、北上山地の自然を「種山ケ原と宮沢賢治」にスポットを当てて活用したことはさすがだと思います。
 さて昨今、これらのお宝に関わることで気になることが2件あります。1件目は栗駒焼石ほっとライン上で「ライトトラップ採集」が見受けられることで、2件目は北上山地が「核の最終処分場に適地」と言われていることです。
 ライトトラップ採集とは夏場の夜間に、森林などに大々的にライトの光を当ててオオクワガタ、ヒメオオクワガタなどの昆虫を寄せて捕まえることです。これらの昆虫は、一般社会人の月給(手取り)ほどの高値で売買されているらしいのです。
 栗駒焼石ほっとライン周辺の森林は東北森林管理局が設定した「奥羽山脈緑の回廊」の中核になっているもので、「栗駒山・栃ケ森山周辺森林生態系保護地域」に指定されています。生態系バランスを崩すような昆虫など動植物の採集、乱獲はしてはいけない場所です。以前、ライトトラップ採集を確認した森林ボランティア活動員が、そのことを関係機関などに話したところ、「何ら取り締まりの法規がないので何ともならない」という対応だったそうです。
 この話を聞いて問題だと感じました。真に森林生態系指定地域を保全するためには、「生態研究のための調査」以外の採集などはすべきではありません。こうした金銭目的や興味本位の採集への指導、取り締まりが可能となるような対策が必要だと思います。
 2件目の「核のゴミ最終処分場」については、2012(平成24)年に大阪府堺市で開かれた日本地質学会で、専門家が同処分場の適地は▽根釧(北海道)▽阿武隈高原北部(福島県)▽北上山地(岩手県)――の三つを挙げ、特に阿武隈高原北部と北上山地としたことが発端です。同年、北海道は「受け入れ拒否の宣言」をし、道内の該当市町村も条例を制定しました。この後、政府は原発事故発生を踏まえ、阿武隈高原北部を適地対象から除く方針を示しました。岩手県は受け入れ拒否の宣言をしていません。そして昨年7月、政府は同処分場に適した地域を大まかに示しました。もちろん北上山地は入っています。
 この処理場適地問題は、国際リニアコライダー(ILC)誘致を推進する岩手県や奥州市にとって微妙な問題だと思います。「ILCは核廃棄物処理場の下地づくりではないのか」という過激な噂話も耳にしています。ILC推進派の研究者は「核廃棄物処理施設になるというのは誤解です。トンネルを掘るから連想されたのでしょうが、地下100mといっても、標高百数十mのところの地下ですから、核廃棄物処理をするのは原理的に無理です」と述べています。しかし、ILCの周辺やILCのさらに地中深くに設ける可能性については言及されていません。また、長い時間が経過し、その時に生きる人が同処理場の足掛かりにする可能性も「なきにしもあらず」です。そうしたことも想定した対策も考えてもらいたいと思います。誘致賛成、反対のいずれにせよあらゆる可能性と対策についてしっかりと議論をしてもらえることを希望します。
 多くの人が「奥州市に一番住みたい」と思うような地域にするためにも、われわれは今ある自然環境を維持・保全し、後から来る人、後から生まれる人たちのためにその「お宝」を残しておく責務があります。奥州市は広域振興局や岩手南部森林管理署など関係機関と連携を図り、主体的に対策に着手し、条例の制定などへの動きを起こすべきだと思います。

阿部恵彦(胆沢若柳)=奥州自然研究会代表世話人
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tanko 2019-3-16 11:20
 奥州市は15日、2019年度定期人事異動を内示した。組織体制の強化を掲げ、政策課題の解決に着目したセクションの新設・見直し、各総合支所のグループ制導入によるサービス向上を図る。総務企画部参事兼ILC推進室長に菊地厚商業観光課長(57)を起用する。異動規模は前年度より152人多い552人。発令は4月1日付。
 2019年度は小沢昌記市長が市政のかじを取り10年の節目。重点政策課題に対応できる組織体制の強化を進める。職員の能力や資質向上も考慮し、意識と意欲を高め組織運営における好循環につながるよう、適材適所の人員配置にも努めた。
 異動者総数552人のうち、異動・昇任は464人(部長級17人、課長級36人)、新規採用38人(人事交流含む)、退職50人(人事交流と再任用含む)。昇任者(医師除く)は部長(参事)級9人(うち女性1人)、課長(主幹)級13人(同2人)、課長補佐(副主幹)級26人(同13人)、係長(主査)級16人(同3人)。


写真=奥州市ILC推進室長に就任する菊地厚氏

《奥州市ILC推進室に係る異動》
※ILC推進室とともに他部署を兼務している場合、同推進室における肩書のみの記載とさせていただきます。同推進室以外からの転入や転出についてはすべて記載しています。

●ILC推進室へ転入または内部異動、昇任等
菊地厚…ILC推進室長(商工観光部商業観光課長兼ロケ推進室長)
高野聡…ILC推進室主幹(総務企画部政策企画課長兼人口プロジェクト推進室長)
阿部記之…ILC推進室副主幹(協働まちづくり部地域づくり推進課地域支援室副主幹)
千田悟…ILC推進室主査(ILC推進室上席主任)
今野美享…ILC推進室上席主任(総務企画部総務課上席主任兼選挙管理委員会事務局上席主任)
佐々木聖…ILC推進室上席主任(都市整備部下水道課主任)
柴田長志…ILC推進室上席主任(ILC推進室主任)
千葉宏…ILC推進室主査(総務企画部総務課付上席主任〈岩手県知事部局派遣〉)
安部和亜…ILC推進室主任(都市整備部土木課主任)
佐藤智行…ILC推進室主任〈元気戦略室主任兼務追加〉(ILC推進室主任)
西村史樹…ILC推進室主事(健康福祉部長寿社会課主事)

●ILC推進室から転出異動
瀬川達雄…議会事務局長(ILC推進室長)
村上幸男…総務企画部行政経営室主幹兼元気戦略室主幹(ILC推進室副主幹)
小川丈晴…総務企画部総務課付主査〈陸前高田市派遣〉(ILC推進室主査)
阿部瑠美香…財務部財政課主任(ILC推進室主任)
小野寺圭子…健康福祉部子ども・家庭課主任(ILC推進室主任)
伊藤幸弘…都市整備部土木課主任(ILC推進室主任)
渡邉浩太郎…会計課主任(ILC推進室主任)
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tanko 2019-3-16 11:20
 岩手県は15日、2019年度定期人事異動を内示した。胆江2市町などを管轄する県南広域振興局では、退職する細川倫史局長の後任として、県東京事務所長の平野直氏が就任する。素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致実現の取り組みを一層強めるため、関連部署の組織体制を見直し。ILC対応だけに特化した専担組織「ILC推進室」を、県庁の政策地域部内に設置する。同日は医療局などの異動も内示された。発令は4月1日付。
 県人事課によると、知事部局の異動規模は1800人で、前年度より225人多い。
 2019年度は、次期総合計画の実施初年度。同計画に掲げられた重点的な取り組みを意識した異動内容とした。具体的には津波・台風被災地の復興、ILC誘致、ラグビーワールドカップ2019や東京2020五輪・パラリンピックなど大型スポーツイベントの対応が的確に行えるよう、人的資源を重点配置した。
 県南局長に就任する平野氏は、これまで企画部門や岩手競馬関連の業務などを歴任。2014年4月から2年間、県南局副局長を務めた実績もある。
 3人いる副局長ポストも、退職や転出で2人が交代。県議会事務局次長の千田利之氏と、沿岸広域振興局農林部長の高橋昭雄氏を起用した。千田氏は政策地域部ILC推進室の首席ILC推進監を、高橋氏は県南局農政部長をそれぞれ兼務する。
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tanko 2019-3-9 11:10
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)は、誘致表明や公式な国際協議入りといったレベルの政府見解は得られなかったものの、「関心を持って国際的な意見交換を継続する」という方向性は示された。
 同時に文部科学省は「正式な学術プロセス」を踏むこべきだと強調した。具体的には日本学術会議が策定する「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」に掲載され、さらに文科省の大型科学プロジェクト推進に関する基本構想「ロードマップ」にも計画が位置付けられることだ。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の円形加速器施設「Bファクトリー」なども同様の手順を踏んでおり、ILCだけ「特別扱い」とはならないようだ。
 ロードマップで実施優先順位の高い計画になれば、実現の可能性は一気に高まるが、そう容易な話ではない。現行の「マスタープラン2017」では、24分野182計画が掲載されたが、この中から「ロードマップ」に新たに加えられたのはわずか7計画だ。
 学術会議は今月末まで、次期マスタープランの計画を公募。KEKの山内正則機構長は、7日のILC関連国際会議後の記者会見で、KEKが申請者となりILC計画を申し込む考えを明らかにした。誘致を望む人たちは、一刻も早い国の誘致表明を期待している。だが、これらのプロセスに要する時間を考えると、誘致表明のタイミングはまだまだ先の話だ。
 もう一つ認識しておきたいのは、慎重論が根強い他分野研究者のチェックを今後も受ける点だ。学術会議や文科省有識者会議のこれまでの審議を振り返れば、想像に難くない。推進派研究者が、過去に指摘された事項をどれだけ丁寧に説明し、理解を得られるかがポイントになる。
 他分野研究者の理解は、どうすれば得られるのか。誘致を願う候補地周辺の自治体議会や経済団体なども頭を悩ます。省庁や国会関係者への要望活動は数多くこなしているが、学術関係者に対する申し入れ行動は皆無に等しい。学術界では、政治などの権力と一線を画し、科学的な観点で議論をする環境が必要。要望活動を「やらない」のではなく、「できない」という状況に近い。
 奥州市議会ILC議連の渡辺忠会長は、2014(平成26)年6月に学術会議が開催した「ILCフォーラム」に出席。推進派の素粒子物理学者だけでなく、社会学や行政経営、自然環境など多様な分野の専門家による見解に触れた。
 渡辺会長は「門前払いを受けるようなことかもしれないが、どうすれば他分野の方々が理解をしてくれるのか、そして彼らが何を問題視しているのかを知る上でも、何らかの方法が取れないかと考えている。(2014年開催の)フォーラムのような場を候補地の地元で設けるのも、互いの考えを聞き合う一つの方法だとは思うが」。学術界の独立性に配慮しながらも、互いの理解形成につながるような道筋を探っている。
(児玉直人)

写真=2014年6月に日本学術会議が主催したILCフォーラム

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