岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。
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tanko 2009-6-25 18:50
 市議会会派の奥州創政会(高橋勝司会長)の所属議員らは24日、江刺区伊手字阿原山の国立天文台水沢VLBI観測所・江刺地球潮汐観測施設を視察した。
 宇宙誕生の解明を目的とした国際研究施設「国際直線衝突加速器(インターナショナル・リニア・コライダー=ILC)」の整備計画の中で、北上高地が有力候補地の一つとされている。
 ILCと同観測施設の研究目的は異なるが、地殻変動を受けにくい地底環境に着目している点では共通。同会派は、既存の地底観測施設の概要を知ることで、ILC計画への理解を深めることにも関係するとの考えから今回視察した。
 同観測施設では、月の引力の影響を受けて起きる地球の伸縮について調査。直接観察が不能な地球内部の状態の研究に役立てている。また、東北大学の地震研究にも観測データが活用されている。
 この日は同観測施設を担当している、田村良昭助教が内部を案内。「私たちは感じることができない変化が毎日起きている。とても小さな素粒子を衝突させるILCも、こうした地球自体の変形による影響を考慮し、実験がなされるものと思われる」と、同観測施設とILCの関連性を解説した。
 高橋会長は「ILCの構想は明るい地域話題。一度は実際にある地底の観測施設を見ておき、理解しておく必要があると思った。観測施設の存在は市民にもお知らせしたい」と話していた。
写真=地球潮汐観測施設内部を視察する市議たち
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tanko 2009-6-7 7:40
 宇宙誕生の解明などを目的にした大規模実験施設「国際直線衝突加速器(ILC=International Linear Collider)」に関する講演会が6日、市文化会館(Zホール)で開かれた。茨城県つくば市にある、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和教授が、ILCの必要性や加速器の成り立ち、計画日程などを説明した。


 講演会は、社団法人国際経済政策調査会(岡崎久彦理事長)の第57回「加速器科学研究会」を一般開放する形で企画した。
 現時点でILCの建設場所は決まっていないが、江刺区などを含む北上高地の地下が有力候補地の一つとされている。素粒子の研究者や一部の行政関係者が10年ほど前から認知していた。しかし、学界の十分な議論や国際協調を必要とするため、今年に入るまで市民に周知される場面は皆無に等しかった。
 このため今回の講演は、有力候補地の地元で一般向けに開かれた最初の関連事業となった。研究が目指す壮大さに加え、建設事業やその後の地域振興に与える効果などに関心が集まり、会場の中ホール(500席)は満席。理数系に興味がある高校生も参加した。
 吉岡教授は加速器の役割や開発の歴史、ILCの概要、日本に建設する実現性などを解説した。2013(平成25)年までに、建設方法や機器の量産方法など詳細設計を固める予定で「ここ数年が大変重要な時期になる」強調。「何とかして日本に建設するためにも、国民や自治体の理解が欠かせない」と訴えた。
 会場からは「研究成果の応用はどんなことが想定されるか」。「なぜ北上高地の花こう岩岩盤が適しているのか」といった質問が寄せられた。北上高地については、「非常に小さなものを衝突させるため、地盤が不安定ではいけない。広く安定した地盤であれば、必ずしも花こう岩でなければいけないわけではないが、日本でそういう場所を探していたら、たまたま北上高地の花こう岩地盤があった」と説明した。
写真=ILC建設計画について市民らに解説する吉岡教授(Zホール中ホール)
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tanko 2009-6-6 9:50
 今年2月から、突如として報道され始めている国際直線衝突加速器、通称「ILC(International Linear Collider)」。一体、何を目的にした設備なのか。北上山地がILCの候補地になっているが、その理由は。素粒子物理学に関連する施設のため、物理学に関する一定の予備知識も必要となる話題。日常生活ではなじみの薄い分野でもあるため、ILCを知る「入り口部分」を解説してみたい。

■どうして宇宙はできたのか?
 「過去のこと」を知る方法はいくつかある。昨日の出来事は、新聞やテレビ。江戸時代のことなら古文書、1000年も前のことなら遺跡発掘などで調査可能だ。
 ……というように私たちは、どのような歴史を歩んできたかを常に探求してきた。やがて「人類、生物、水、地球はどうやって誕生したか」という次元にまでさかのぼる。その行き着く先は「この宇宙はどうやってできたか」というテーマだ。
 ILCは世界の素粒子物理学界で開発協議が進められている、国際的な巨大研究施設。あらゆる物質を構成する最小単位である素粒子の一種「電子」と「陽電子」を超高速で衝突させることで、宇宙やこの世に存在する物質の誕生起源を探る。

■宇宙を見て過去を知る?
 よく、天体までの距離を「1万光年」などと表現する。光の速さで進んでも、1万年かかる距離をいう。
 「光」には進む速度が存在する。光速または光速度といい、真空中では秒速約30万km。一般に「1秒で地球を7周半回る」と表現されている。地球から約1億5000万kmの位置にある太陽の光が、地球に届く時間は約8分。もし太陽が光を放たなくなったら、その事実を私たちが知るのは、それから約8分後のこととなる。
 この考え方を発展させると、地球から遠く離れた星の光は「過去に発生した光」である。天文台が遠くの星を観測することは、宇宙でその昔起きていたことを調査することになる。
 望遠鏡を通してみる世界は「今」ではなく「過去」である。そういう意味では、望遠鏡はタイムマシンなのだ。

■それでも限界がある
 では、もっと高性能の望遠鏡を作れば、宇宙誕生の手掛かりまで調べられるのではないか。だがそれは不可能で、望遠鏡が光を確認するには、光が直進できる環境が整っていなければいけない。その条件には原子の存在が不可欠だ。
 宇宙誕生直後は原子が存在せず、原子を形成している電子、陽子、中性子といったさらに小さな物体に分離していた。これを「プラズマ状態」という。
 原子の姿は、原子核の周りを電子がクルクルと飛び回っている。ところが、プラズマ状態の環境では、電子が勝手に飛び周り光を吸収するので、光は直進できない。よって、望遠鏡での宇宙誕生の探究には限界が生じる。

■地底に作る「お化けデジカメ」
 宇宙誕生時に近い環境は、「素粒子が高いエネルギーを持って飛び交っていた状態」を人工的に作ることで再現可能だ。ここで素粒子物理学の出番となる。原子や原子核を形成する、小さな物質の構造や性質を加速器(コライダー)を使い調べる。加速器に投入した素粒子同士を超電導技術により、光速に限りなく近い状態で衝突させればいい。
 今までは遠い宇宙の世界を調べていた。今度は逆に極小の世界を分析し、宇宙誕生の謎に迫る。
 加速器実験から派生し、日常生活に普及した「加速器の仲間」がある。蛍光灯、電子レンジ、お役ごめんとなりつつあるテレビのブラウン管などだ。がん細胞の早期発見に用いる「PET検査」にも使われる。
 ILCは加速器の最新鋭として開発される。世界各国が協力し、地球上のどこかに1カ所だけ作る。2020年ごろの稼働を目指しており2、3年後ぐらいまでに、技術的な設計を固めていく。
 衝突反応を解析する装置が「デジカメのお化け」の異名を持つILC検出器で、数多くのセンサーが取り付けられる。規模は5階建ての建物に相当する。
 ILCでは、素粒子の速度を最適な状態に維持するため、加速器を直線状に配備する。「直線」を意味する「リニア」の名が付いているゆえんでもある。

■北上山地が有力候補地の理由
 ILC設置場所は決定していないが、有力候補地が何カ所か挙がっている。その一つが江刺区を含む北上山地だ。
 ILC関連の機器は精密な機械で、地殻震動を受けやすい場所は残念ながら適さない。現計画では、標高100mぐらいの山腹に場所に整備する。このほか▽研究者の居住環境▽世界各国からのアクセス▽ILCのような基礎科学研究活動に理解がある――といった要素も勘案すると、候補地は絞られてくる。
 北上山地には、地殻震動を受けにくい花こう岩の岩盤が地底に広がっている。これが、ILCの整備計画で想定している直線最大50kmを確保できるくらいの規模がある。東北最大都市である仙台市からも近い。

■私たちに今できること
 「ILCの有力候補地が北上山地」と知り、この地域にどれだけの経済効果があるかと思った人も少なくないはず。夢は無限の広がりをみせる。
 幸いにして日本は小柴昌俊、南部陽一郎、小林誠、益川敏英の各氏のような、素粒子物理学界におけるノーベル賞受章者を相次いで輩出している。受賞者たちもILC計画に大きな夢を持って携わっている。壮大な研施設の実現に向け、関係する研究者たちは日夜議論を交わしている。
 ILC整備は国際社会との協調なしには進められない。政府間協議により、資金分担や場所選定といった作業が進められる。ILCによる研究は、宗教や人種などを越えた「人類共通の謎」に迫る作業なのだ。
 陳情や請願運動を繰り広げ、がむしゃらに北上山地に誘致する――という段階でもないし、状況でもないのである。今できることは、国際協調の最前線でILC実現に励む研究者たちの存在やその仕事を知り、応援の声を送ることである。

写真=素粒子を光の速度まで導く装置「クライオモジュール」。超電導状態を作るには極低温の環境が必要で、モジュール内部にマイナス271度の液体ヘリウムを満たす。外気との温度差の影響を防ぐため、魔法瓶のような構造になっている((C)Rey.Hori/KEK)
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tanko 2009-6-3 19:50
 【仙台市=報道部・児玉直人】 素粒子物理学研究機関・高エネルギー加速器研究機構(愛称KEK、茨城県つくば市)の吉岡正和教授=理学博士=は2日、仙台市の東北大学で講演し、宇宙創成期の状況を再現する大規模実験施設「国際リニアコライダー(ILC=International Linear Collider)」の日本国内設置について、「わが国に計り知れないメリットがある」と強調。ILCの設置は、国際協議等を経て、まずは「日本設置」を確実なものにする必要があるため、「学界、産業界、政界が一致協力していく必要がある」と呼び掛けた。

 日本国内の設置候補地には、江刺区などを含む北上高地地中にある花こう岩地帯が有力視されており、同日の講演には奥州市や岩手県の関係者も多数詰めかけ、「ILC設置によって何が解明されるのか」など、基礎学研究における日本の取り組み状況について理解を深めた。
 吉岡教授の講演は、先端加速器科学技術推進協議会、東北加速器基礎科学研究会が主催するシンポジウム「宇宙の謎に挑む 日本の貢献」の中で行われた。両団体とも、加速器を使った素粒子物理学研究など、次世代の科学技術開発を推進する産学官連携組織だ。
 ILCは世界の素粒子物理学界で開発協議が進められている、国際的な巨大研究施設。あらゆる物質を構成する最小単位である「電子」と「陽電子」といった素粒子の一種を超高速で衝突させることで、宇宙やこの世に存在する物質の誕生起源を探ることなどを目的にしている。
 素粒子を衝突させる実験装置「加速器」は、世界各地に点在。欧州合同原子核研究所(CERN)は、スイスのジュネーブに世界最大の加速器「大型ハドロンコライダー」を設置し、今年から稼働開始となった。日本では、つくば市のKEK敷地内に「KEKB」と呼ばれる加速器がある。
 しかし、いずれも円形に組まれた加速器で、導き出せる速度には限界がある。ILCは、円形加速器では再現できなかった超高速度による素粒子衝突を実現させる装置。人類が開発する「最も小さい物質を見る顕微鏡」ともいえる。
 吉岡教授は素粒子研究や加速器の開発の歴史を解説した。日本にILCを設置することが有利な理由について、精密機器である加速器本体を製造するのに必要な高品質素材を生み出す技術があることなどを列挙。「日本の加速器分野における実力は常に世界の先端を行っている」と語った。
 日本にILCを設置するポイントとして、吉岡教授は、「大型加速器を今年設置したCERNやジュネーブの姿勢を学ぶべきだ」と強調。「高い能力を持った人たちが、世界中から集まることに、わが国が投資することは極めてよいこと。そのためにもまずは、日本国民の理解を得ることが必要だ。学界、産業界、政界が一致協力していく体制が欠かせない」と訴えた。

写真=ILC計画について解説する吉岡教授(東北大学・片平さくらホール)

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