人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

問題整理し改善策提言(国立天文台水沢VLBI観測所予算削減で調査検討委)

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tanko 2020-12-9 6:30
 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の本年度当初予算が大幅に削減された問題などを調査・検討をしてきた、「国立天文台コミュニティ間意思疎通推進委員会」(委員長・観山正見広島大学特任教授)はこのほど、中間報告書を取りまとめ公表した。同天文台(常田佐久台長)執行部と観測現場の研究者らとの間では、意思疎通の不十分さからさまざまな問題が生じていた。国の財政難を背景に、競争的環境下での資金配分、トップダウン(上意下達)型の運営などが強く推奨されてきたことが原因とみられる。推進委は、天文台側と現場研究者側双方に改善に向けた提言を行った。
(児玉直人)

 推進委は元天文台長である観山教授と、佐藤勝彦・前自然科学研究機構機構長の提案により、同天文台運営会議の下に設置された。今年5月21日から11月30日まで25回にわたり会合を開いた。観山、佐藤両氏のほか5人の有識者が委員を務めた。
 同観測所に関連する報告には、予算削減に至った経緯が詳細に記されている。
 執行部は2018(平成30)年6月、2019年度から2022年度までの4年をかけ、観測所予算を2018年度の半分に減らすよう要求した。観測所は要求に従い、削減案を検討し計画案を提示。執行部は了承した。
 昨年12月、削減計画に基づいた2020年度予算要求額を執行部に提出。ところが執行部は、「2019年度予算の半分に」という新たな条件を提示。加えて、同観測所が運用するVERA(天文広域精測望遠鏡)を使ったプロジェクトも前倒しで終了するよう伝えてきた。
 観測所が説明を求めても「予算が厳しい」という以外、具体的説明がなかった。今年2月に本間所長ら関係者8人が常田台長に要望書を提出しても、無回答だった。
 3月下旬、予算は大幅減の状態で通達。新年度に入り、常田台長は関連する研究者団体に対し、台長裁量で配分する「リーダーシップ経費」に申請すれば、予算追加の可能性があるとの方針を示した。結果として、本年度分の電波望遠鏡運用が可能な経費は補填された。
 推進委は「予算決定の手続きの不透明性、観測所への説明責任を果たしていないことは、執行部の対応として不適切」と批判。「予算の厳しさは観測所長も理解していた。それを考えると執行部の手続き不備、観測所とのコミュニケーション不足が大きな問題に発展した」と結論付けた。
 このほかに調査対象とした複数の問題でも、執行部と研究者側のコミュケーション不足が直接のきっかけとなるなど、いくつかの共通点が確認できた。執行部からの不快な発言や叱責など、ハラスメント(嫌がらせ、いじめ)と捉えられる可能性の高い行為も複数指摘されたという。
 推進委は、国の財政難に適応した組織運営や、国際プロジェクト「TMT(30m望遠鏡)計画」への対応に労力を注ぐあまり、執行部は天文学全体の発展に関して目が向きにくくなったと指摘。研究者側と意思疎通を図ることなく、トップダウンで進めてきたため、随所で問題が起きたとしている。
 推進委は、天文台側の改善策として▽委員会規則の改訂を含む意思決定システムの改善▽議事録の速やかな公開▽ハラスメント防止体制の改善▽運営評価委員会の新設――を提言。研究者側に対しては、基礎学術を巡る現状などを主体的に理解、天文台の運営に主体的に関わるよう求めた。
 水沢VLBI観測所の本間所長は、胆江日日新聞社の取材に「大先輩である重鎮の方々に客観的に検証していただいた。指摘された問題点が改善されていくことを期待したい」とコメントした。
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