科学者と地域貢献(取材ノートから)
- 投稿者 :
- tanko 2019-12-25 15:20
写真=ILC関連の会合で発言する在りし日の千葉順成さん(右から2人目)2018年4月
日本時間の4月10日午後10時、世界一斉にブラックホールの画像が公開された。国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、最初の成果報告講演をしたい場所を水沢と決めていた。
「私たちが研究できるのは地域の皆さんのおかげ」
本間所長は地元との関係の大切さを常に意識していた。そんな思いと気さくな人柄が、ブラックホール菓子や鉄瓶といったグッズの誕生にもつながったのではないかと思う。
緯度観測所初代所長の木村栄博士も観測にいそしむ傍ら、地域にテニスや謡曲などの文化を広めたほか、幼稚園開設や女子学生の雇用などにも力を尽くした。
地域社会にとけこんで暮らしていた科学関係者。あまり知られていないかもしれないが、金ケ崎町三ケ尻の千葉順成さんもその一人だろう。東京理科大教授だった。
千葉教授を知る人の話によると、中学生のころから数学が得意で、先生に代わって同級生に分からないところを教えていたという。まるで「小先生」と呼ばれていた木村博士の少年時代と似ている。
退官後、郷里に戻ってきたときは、地元の会合や祭りにもよく顔を出していたというが、今年9月に亡くなられた。
先日、とある方から「国際物理オリンピック2022」と記されたパンフレットを頂いた。世界の高校生を対象とした国際的な科学のコンテストが2022(令和4)年、日本で開かれる。パンフレットに挟まれた組織委員名簿に「名誉委員 千葉順成」と記されていた。
ノーベル賞受賞者の小林誠さんを委員長に、学術界のそうそうたる顔ぶれが名を連ねる中、生前の千葉さんは委員の一人だったようだ。
国際リニアコライダー(ILC)に関する見解をうかがいに自宅にお邪魔した際には、気さくに話をしてくれた。科学と地域社会、人材育成などさまざまな話をもっと聞けたのにと、今はただ悔やまれてならない。
(児玉直人)