人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

「疑うこと」十分か

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tanko 2020-1-1 5:40
【記者の目】 
 北上山地が有力候補地となっている壮大な大型科学プロジェクトであるILC。「標準理論を越えた物理の探求」を目指す素粒子物理学者らと、衰退する地域の活性化を図りたい東北の自治体や経済界は、お互いの力を利用して効果を得る「ウィン・ウィン」の関係を思い描いているであろう。
 ILC計画の実現性や安全性を「疑う」という雰囲気は当初、候補地周辺地域ではあまり感じられなかった。計画に夢を描いた人は少なくない。
 誘致運動は約10年にわたり継続されている。本県で語られるILC関連情報は、素粒子物理学者によるものが主体。慎重論を唱える他分野の研究者の見解は、学術会議や文科省有識者会議の現場では聞くことができたが、詳細が候補地の住民に届いているとは言いにくかった。
 それゆえ、候補地周辺地域にはどうしても誘致にプラスとなる情報が多く飛び交う。慎重論が少ないことや、特に行政などの誘致関係者は推進派研究者を信用している向きもあり、「疑って見る」という姿勢は感じられない。
 本来、行政側を監視する議会にあっても、共にILC誘致活動に動いている。誘致事業の妥当性を客観的にチェックする機能は、どれだけ働いているのか。疑問はぬぐえない。
 誘致しようとしているプロジェクトのコストは巨額。施設本体は国際分担で賄われる部分もあるが、周辺の道路整備や住宅環境などについては、地元自治体が負担することになる。今回の家泰弘氏や調麻佐志氏のインタビューで共通して語られたように、巨額ゆえ多方面への影響が非常に大きく、慎重に厳格に対応しなければいけない。
 家氏のインタビューを通じ、学術会議で審議された中身の一部分が明らかにされた。本来であれば、より早い段階で審議経過やそれを受けての関係者の見解を聞いたり、意見を交わしたりする公開フォーラムのような場が、候補地の地元でも設けられるべきだった。
 県など関係自治体が誘致推進側に立っている以上、公平な議論の場は形成しにくい。家氏の言うように、学術会議や中立的議論の場として最適な関係学会の協力によって、多様な意見を聞き、良い意味の「疑う」を意識できる環境を形成してほしい。
 ILCの誘致問題に限らず、少数意見を含めて多様な意見を尊重し、集約を図る過程が大切だ。次代を担う子どもたちが専門的な知識をに触れたり、誘致実現へ応援団の役割を求めたりするような出前授業も必要なのだろうが、同時に物事を決める手順や、議論を戦わせることを学ぶのも大切だと感じるのだ。
(児玉直人)
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