向かうは「次の120年」(本間所長ら研究者4人が記念講演)
- 投稿者 :
- tanko 2019-12-16 15:10
写真=国立天文台水沢で行っている研究を披露する小久保英一郎・天文シミュレーションプロジェクト長
国立天文台水沢創立120周年記念の市民向け講演会「120年目の最新宇宙研究」は15日、水沢佐倉河の市文化会館(Zホール)で行われた。人類史上初のブラックホール撮影に成功した本間希樹所長ら水沢の地で最先端の研究を進める4人が登壇し、120年の歩みを振り返りながら地域に支えられて結果につなげてきた研究の最新を披露した。
旧水沢緯度観測所を前身とする国立天文台水沢の創立120周年記念事業の一環として、地域の理解と支援を受けながら研究を進めてこられた感謝を伝えようと開催。市民ら約370人が聴講した。
登壇したのは▽本間希樹・水沢VLBI観測所長▽竝木則行・RISE月惑星探査プロジェクト長▽小久保英一郎・天文シミュレーションプロジェクト長▽馬場幸栄・一橋大学社会科学古典資料センター助教――の4人。家族連れの参加もあり、4人の研究者たちが最先端研究を分かりやすく伝えた。
旧水沢緯度観測所の歴史を振り返りながら、国立天文台水沢で行っている研究を披露した本間所長。同天文台敷地内にある直径20メートルの電波望遠鏡「VERA」は、観測能力を人間の視力に例えると「10万」に相当することや、水沢含め国内4基の望遠鏡を組み合わせて研究を進めている点などを紹介した。
本間所長も参加しブラックホール撮影に成功した国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」では、海外の8基の望遠鏡を連動することで、視力300万に上昇させてブラックホールを捉え、人類史に残る偉業を達成した。「ブラックホールの研究はまだまだ続く。国際協力しながら、次の120年に向かって研究を続けたい」と決意を新たにした。
小久保プロジェクト長は、同天文台が天文学専用に運用しているスーパーコンピューター(スパコン)「アテルイ?」の仕組みを解説。アテルイ?は天文学専用としては世界最速の計算処理能力を誇り、4万200のコアを総動員して宇宙が誕生し現在に至るまでという世界最大規模の計算の一つにも取り組んでいる。
「ブラックホール撮影成功の裏側にはアテルイ?の計算もあった」と明かした小久保プロジェクト長。「望遠鏡では見えない宇宙の謎を解き明かすため、物理の法則を使ってシミュレーションするのがアテルイ?の役割」と解説した。