人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2019-10-18 12:40
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関係する国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2019」が、28日から11月1日まで仙台市の仙台国際センターを主会場に開かれる。会期中、研究者らがILC実現への意思などをまとめた声明を発表する見通し。加速器関連産業や食・観光をPRする展示も行う。一部研究者は会議終了後、台風19号被災地でのボランティア活動を希望しているという。(児玉直人)

 国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が主催し、開催地の地元研究者らによる組織委員会が運営。日本開催は、盛岡市で開かれた2016(平成28)年以来となる。
 組織委メンバーで東北大学大学院理学研究科の山本均教授は17日、仙台市内で報道各社にLCWSの概要を説明した。
 会期中、研究者や産学官の誘致関係者ら300人余りが参加する見通し。初日の28日は、村井嘉浩宮城県知事らも出席し全体会議。夜には歓迎レセプションが行われ、岩手・宮城両県の自治体首長や議会議員らも出席する。奥州市からは及川新太副市長が市長代理で参加する。
 28〜29日は会議会場内に、加速器関連装置への参入を目指す企業の展示コーナーを開設。食や観光のPRブースも設けられ、国立天文台水沢VLBI観測所がある奥州市は、ブラックホールにちなんだ菓子を紹介する。
 30日には、ILC実現に向けた研究者側の声明を公表する予定。その後、岩手県の達増拓也知事らが出席し、夕食会が行われる。
 関連行事として東北推進協は、11月1日午後2時から会議会場で講演会を開く。講師は、高エネルギー加速器研究機構の山内正則機構長と、国際将来加速器委員会のジェフリー・テーラー議長。一般市民への聴講は呼び掛けず、誘致関係団体の関係者らへの案内にとどめるという。
 一部研究者は台風19号被災地でのボランティア活動を希望。山本教授は「LCWSのような国際会議を開催するということは、明るい話題を提供することになると思う。将来的に東北の地にILCができれば、大きな経済効果も期待される。ボランティア活動も、決して(ILC実現のための)パフォーマンスではなく、海外研究者からの真摯な希望によるものだ」と述べた。
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tanko 2019-10-17 12:30

写真=福島県の空席が目立った東北市長会総会

 東北市長会(会長・谷藤裕明盛岡市長)の総会は16日、北上市内のホテルで開かれた。厚生労働省が再編統合の検討を要するとして、奥州市内3施設を含む全国の公立・公的病院名を公表したことを受け、本県市長会は「地域医療体制の確保に関する決議」を提出。全会一致で採択した。甚大な被害をもたらした台風19号に関連し、岩手、宮城、福島の3県市長会が提出した緊急決議も承認された。

 構成77市のうち16市が欠席。災害対応のため急きょ出席を取りやめた市もあり、特に福島県の空席が目立った。冒頭、台風の犠牲者に黙とうをささげ、総会後に予定していた北上市内の視察と懇親会は中止した。
 あいさつで、谷藤市長は「東北の一日も早い復興に向けた取り組みが重要。地方の実態を捉え連携を密にし、東北一丸で迫りくる課題に立ち向かっていきたい」と力を込めた。
 特別決議は▽東日本大震災からの復旧・復興▽東京電力福島第一原発事故への対応▽地域医療体制の確保▽国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現――などに関する事項。台風19号の暴風雨災害に関する緊急決議も加え、7件を承認した。決議は全国市長会の会議に諮られ、採択されれば国へ提出される。東北市長会も各省庁へ要望していく。
 地域医療については、勝部修一関市長が提案理由を説明した。限られた診療実績データを機械的に分析した情報が基になっているとし、「実態を考慮していない。現場に混乱をもたらす」と反発。
 「国の方針をそのまま受け入れる状況にはない。急ぐべきは、医療・介護サービスの適切な提供の再構築」と述べ、?地域医療構想の実現に必要な協議は地域実態を考慮し慎重に対応?国と地方の協議の場で医師不足や医師偏在を解消するための抜本的な改善策の検討――を求めた。
 台風の緊急決議では激甚災害の早期指定、被災者の生活再建と被災自治体への人的支援、道路・河川・公共施設の早期復旧に向けた支援などを強く要望。全国市長会長の立谷秀清相馬市長は「東北市長会の意思として一つにまとめ、全国へ持っていきたい」と話した。
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tanko 2019-10-16 12:30

写真=地方創生に関する連携協定書に署名した小沢昌記市長(中央)、中島健支店長(左)、中村芳樹支店長

 奥州市は15日、あいおいニッセイ同和損害保険、東京海上日動火災保険の損保大手2社と地方創生に関する連携協定を締結した。それぞれの資源を有効活用し、地域の安全安心や産業振興などを協働で推進していくことを約束した。奥州市が民間企業と同様の協定を結ぶのは4、5社目。市役所本庁で小沢昌記市長、あいおいニッセイ同和損保の中島健・岩手支店長、東京海上日動の中村芳樹・盛岡支店長が協定書に署名した。

 連携事項は▽地域・暮らしの安全・安心▽防災・災害対策▽産業振興・中小企業支援▽観光振興▽農業振興▽海外展開・インバウンド対応支援――など。11月に市内で開く奥州・北上・金ケ崎・西和賀の4市町による定住自立圏の合同会議で講師を損保会社から招き、SDGs(持続可能な開発目標)セミナーを予定。インバウンドや交通安全に関した講習会なども計画する。
 奥州市が本年度進める第2期地方版総合戦略(市まち・ひと・しごと創生総合戦略)の策定に向け、民間の立場から具体的なアドバイスや全国の事例紹介を得ることも想定している。小沢市長は「行政では考えつかないところからの助言をもらえれば。末永くご指導を」と願った。
 あいおいニッセイ同和損保は全社的に地方創生プロジェクトに取り組み、県内の自治体と協定を結ぶのは5市目。中島支店長は「微力ながら災害への備えや防災に加え、情報発信力を互いに活用できれば。企業のノウハウを持って、連携していきたい」と述べた。
 東京海上日動は岩手県、宮古市と締結している。中村支店長は「当地にとって大きな意味のあるILC(国際リニアコライダー)誘致に向けても、支援・協力したい。協定はスタート。総合戦略の実現に向け共に考え、歩んでいきたい」と希望した。
 今協定の仲立ちを担った江刺の白金運輸の海鋒徹哉社長が、立会人として同席。同社のグループ会社で両損保代理店・新星興産社長も務める海鋒社長は「地方創生に関わり、市にお返しができないかと提案させてもらった。市民のお役に立てれば」と話した。
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tanko 2019-10-6 10:40

写真=ILCの安全対策について説明するKEKの道園真一郎教授

 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の安全対策を中心に、研究者らが説明する「ILC解説セミナー」は5日、前沢ふれあいセンター2階研修室で開かれた。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の道園真一郎教授は、ILC構成機器の中で最も放射性物質が生成される「ビームダンプ」について、「装置内の水には放射性物質のトリチウム(三重水素)が蓄積するが河川などに排水せず、装置内で密閉循環して使う」と説明。実験終了後でも十分管理できる水の量であることや、トリチウムの放射能影響が及ぶ期間などを踏まえ、保管容器で保持しトリチウムが減るのを待つことになるとした。(児玉直人)

 同セミナー開催は昨年9月と今年3月に続き3回目。東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)とKEKが主催。市内外の住民25人が参加した。説明や質問回答には道園教授のほか、東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授ら、ILC計画を推進している研究者や県担当職員ら7人が当たった。
 道園教授は、住民不安の対象となっている放射線や放射能に重点を置き解説。放射能を持っていなかった物質が放射能を持つようになる「放射化」の定義など、安全対策を理解する上で必要な理学の基礎知識についても触れた。
 ビームダンプは、ほぼ光速に近い状態に加速された電子や陽電子を水に吸収し安全に止める装置だが、ILC構成機器の中で放射性物質が最も生成される場所。電子用と陽電子用の2基が用意され、1基当たり約50tの水(鉄道用石油タンク貨車1両分相当)で内部を満たす。生成される放射性物質は、半減期(放射能が半分になる期間)が12.3年のトリチウム。ILCを、当初計画に示された20年間休まず稼働させた場合、2基合わせて最大100兆ベクレル(0.3g)のトリチウムが蓄積されるという。
 道園教授は「排水可能な濃度まで希釈するには160万t以上の水が必要で現実的ではない。排水せず、管理された装置内で循環使用する。実験終了後も十分管理できる量なので、保管容器で保持してトリチウムが減るのを待つことになる」と説明。国が計画している「研究施設等廃棄物の埋設事業」への引き渡しも視野に入れていると紹介した。
 このほか、地震や停電時の対応についても説明。電力が失われれば、放射化を起こすビーム自体が止まるため「電源喪失で放射能事故になる心配はない」とした。
 質疑応答で住民男性の一人はトリチウム水の安全性に関して、専門家でも意見が分かれているとの話を例示し、「福島の原発事故以降、このような対策や専門家に対する信頼は崩れており、『安全だ』『不安だ』と二つの見解が示されれば、不安のほうにどうしても気持ちが傾いてしまう。安全第一でお願いしたい」と指摘。合わせて県側に「高レベル放射性廃棄物処分場にはしないと言っているが、もう少し踏み込んだ形で受け入れない姿勢を示してほしい」と注文した。
 同日は一関市川崎町でも同じ内容のセミナーが開かれた。
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tanko 2019-10-3 10:30
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に絡み、ILC関連の技術研究拠点となっている高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市、山内正則機構長)は2日、国際分担の在り方などをまとめた提言を公表。厳重な放射線管理が求められる「ビームダンプ」と呼ばれる装置に関しては、運用実績がある欧米の研究機関と連携を図りながら設計し、安全性を確保するとした。KEK広報室によると、提言文書はすでに文部科学省に提出しているという。(児玉直人)

 提言は、KEKが設置した「ILC国際ワーキンググループ(WG)」の報告書を基にまとめた。KEKは、文部科学省が今年3月に「ILC計画に関心を持って意見交換を継続する」と政府見解を示したのを受け、国内外の素粒子研究者らによる国際WGを設置した。
 メンバーは欧・米・亜の研究者7人(うち日本人2人)。所属研究機関などの代表ではなく、個人的立場を前提に参加した。5月の立ち上げ以降、9月まで技術改良や経費、施設運営、国際分担の在り方などについて、5回の会合を開き協議。このほどKEKに報告書を提出した。
 今回公表された内容のほとんどは、ILCを推進する研究者間で検討済みの内容。研究者側の観点でプロジェクト推進の在り方をあらためて整理した意味合いが強く、正式な政府間協議が始まった際には議論のたたき台として活用されるのを見込んでいる。
 提言書には、文科省のILC有識者会議や日本学術会議の検討委員会で出された指摘事項への対応も記載された。
 このうち、実験で生成された電子や陽電子のビームを処理する装置「ビームダンプ」に関して、有識者会議や学術会議からは装置の信頼性、地震発生時の対策、ビームと反応した水の封じ込めなどに懸念が示されていた。ビームと装置内の水が反応すると放射性物質の一種「トリチウム(三重水素)」が発生。人体への影響は弱いとされるが処理が難しいため、内部の水が外部に漏れないようにするなど安全性を高めた設計にしなければいけない。
 提言書でKEKは、欧米の既存施設におけるビームダンプの運用事例を示しながら「彼らは(ILCの)ビームダンプ設計のための重要なパートナーになる可能性がある。KEKはビームダンプ施設のシステム設計を主導し、政府、業界、および科学界の協力を得ながら環境や放射線に関する安全性を確保する」と強調した。
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tanko 2019-10-3 10:20

写真=ブラックホールの姿を分かりやすく解説する本間希樹所長(盛岡タイムス社提供)

 東北経済連合会(海輪誠会長、東経連)は1日、県商工会議所連合会と共催で、「東経連フォーラムin岩手」を盛岡市盛岡駅前北通のホテルメトロポリタン盛岡ニューウイングで開いた。水沢の国立天文台水沢VLBI(超長基線電波干渉計)観測所の本間希樹所長が「人類が初めて目にしたブラックホールの姿」と題して講演し、県内外の企業関係者ら約140人が耳を傾けた。
 電波天文学が専門の本間所長は、主に銀河系構造やブラックホール研究を続けている。世界で初めて巨大ブラックホールとその影の撮影に成功した、国際共同研究プロジェクトのイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)の日本チーム代表として活躍。世界各地の電波望遠鏡を組み合わせた地球規模の仮想的な望遠鏡で、2年の歳月をかけて観測した。
 本間所長は、ブラックホールのイメージ映像などを使いながら「光は通常、直線で見えるが、ブラックホールの周辺ではまっすぐに進まず、光が曲がるため黒い影が見える。画像解析は慎重に行われ、手法が違っても結果が同じになる再現性が求められた」と解説した。
 また、ブラックホールを「いくら飲んでもはくことはない、究極の呑兵衛(のんべえ)」とユーモアあふれる言葉で表現する場面も。奥州市でブラックホールにちなんだ菓子や料理が登場した話題などを紹介し、出席者を飽きさせず宇宙の神秘を伝えた。
 フォーラムではその他、東経連と公益財団法人東北活性化研究センターが活動を紹介した。

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