人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2019-7-31 19:40

写真=寄贈された本を手にする子どもたちと歓談する、本間希樹所長と田崎文得特任研究員

 ブラックホールの撮影に成功した国際研究プロジェクト、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)に参加している国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)在籍の研究者ら5人が30日、市立図書館全5施設にブラックホールや天文学に関係する書籍9種類を寄贈した。5人がポケットマネーを出し合い購入したもので、本間所長は「科学に興味を持ってもらえるきっかけになれば」と希望している。
(児玉直人)

 本を寄贈したのは、本間所長と秦和弘助教、小山友明特任専門員、田崎文得特任研究員、中国から同観測所に留学している崔玉竹(ツェイ・ユズ)さんの5人。ブラックホールや宇宙の謎にまつわる書籍で「子どもたちにも分かりやすい内容」「科学的な考えがしっかり書いている」という視点で、5人が厳選したもの。自費購入した図書のほか、水沢の観測所やブラックホール撮影成功に関する記事が掲載された国立天文台発行の広報誌も合わせて寄贈した。
 寄贈本のうち、本間所長が執筆した「巨大ブラックホールの謎」(講談社ブルーバックス)には、本間所長のサインが入っている。「宇宙は何でできているか 素粒子物理学で解く宇宙の謎」(幻冬舎新書)の著者は、素粒子物理学者の村山斉氏。北上山地が有力候補地となっている実験施設、国際リニアコライダー(ILC)にも触れている。
 今回の書籍寄贈のきっかけは、胆沢図書館(藤田司館長)で開催中のブラックホール企画展。企画展開催を知った田崎特任研究員らが、同館職員とやりとりする中、5人が感銘を受けた「おすすめ本」の紹介やトークイベントを開催する運びに。トークイベントは今月27日、田崎特任研究員を講師に招き同館で開かれた。
 同館で行われた贈呈式には本間所長と田崎特任研究員、小沢昌記市長らが出席。本間所長から小沢市長に書籍と目録が手渡された。小沢市長は「とてもいい時期に貴重な本をいただいた。一人でも多くの人に天文学に興味を持ってもらい、第二の本間所長のような人材がこの地から輩出されれば」と述べた。
 贈呈式後には、来館していた夏休み中の子どもたちがさっそく本を手に取っていた。田崎特任研究員は「子どもたちには、身の回りのものに興味を持ってもらい、いろいろなことに挑戦してほしい」と願っていた。
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tanko 2019-7-31 18:30
 岩手県は30日、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を見据えた地域づくりの基本方向をまとめた「ILCによる地域振興ビジョン」を策定した。ILCに関連した各種ビジョンやマスタープラン(基本計画)は、奥州市や東北の誘致団体レベルでも策定しているが、県独自のビジョン策定は初。国際研究都市の形成支援など五つの柱を掲げ、ILC誘致を契機に未来に向かって発展する本県の進むべき道を明らかにしている。
(児玉直人)

 ILCは加速器と呼ばれる精密機器を利用し、肉眼では確認できない電子と陽電子をほぼ光速に近い状態で衝突させた際の現象を測定する施設で、物質の成り立ちや宇宙誕生の謎に迫る研究が進むと期待される。世界中の素粒子物理学者が中心となって計画。現時点での建設有力候補地が、本県南部の北上山地になっており、奥州市を含む周辺自治体や地元経済団体などは、研究者や国政関係者らと連携した誘致運動を展開している。
 今年3月7日に、文部科学省はILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続すると表明。さらにILCプロジェクトの推進を盛り込んだ「いわて県民計画」が本年度にスタートしたことに合わせ、県レベルのILCビジョンを初めて策定した。
 同ビジョンには、東北ILC推進協議会が東北全体の取り組み方針をまとめた「ILC東北マスタープラン」や、「いわて県民計画」の考えに基づき、具体的な取り組み方針、目指すべき姿が列挙されている。
 ILCプロジェクトを進めるために必要な政策を「五つの柱」として分類。?国際研究都市の形成支援?イノベーションの創出?ILCによるエコ社会の実現?海外研究者の受け入れ環境整備?交流人口拡大と地域の科学技術教育水準の向上――を掲げている。
 このうち「エコ社会の実現」については、実験過程で生じる熱を地域産業や住民生活に有効活用する方針が示された。
 「海外研究者の受け入れ」に関しては、すでに奥州市国際交流協会が実践する「医療通訳」のような外国人の生活をサポートする体制を拡充。外国人研究者の家族と地域住民が融合した新しいまちづくりの姿を追求する。
 ILCが本格運用するまでには、建設前の準備期に4年、建設期に9年の歳月を要するとされ、運用期を含めて滞在する人の数や職種も変動する。ビジョンでは準備期、建設期、運用期ごとに取り組むべき事柄を細分化しており、適切な対応でILCによる地域振興実現を目指す。
 ビジョンの内容は、県公式ホームページ内

https://www.pref.iwate.jp/kensei/seisaku/suishin/ilc/1022387.html

で閲覧できる。
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tanko 2019-7-31 18:30

写真=提言書と要望書を小沢昌記市長に手渡す海鋒守会頭(右)

 奥州商工会議所(海鋒守会頭)は29日、国際リニアコライダー(ILC)を核とした都市づくりの提言書を市に提出した。地域・産業振興と中小企業支援策に関わる6項目の要望書も提出し支援を求めた。
 提言書と要望書は水沢東町の水沢サンパレスホテルで同日、海鋒会頭が小沢昌記市長に手渡した。奥州商議所と市のそれぞれの幹部合わせて20人が出席した。
 毎年実施している要望書の提出で、提言書は初めての試み。提言書ではILCの建設候補地となっている北上山地のすそ野にある市の立地を生かした都市づくりを求めた。「ILCとともに成長する都市づくりへの提言」と題し、重点項目に▽ILC関連事業への地元企業参入の仕組みづくり▽加速器産業集積地への取り組み▽市民生活向上への取り組み――を盛り込んだ。
 このうち地元企業参入については、ILCの?建設工事期間?機器設備等導入期間?施設稼働期間――の各段階に応じた情報提供や環境整備などを求めた。
 加速器産業集積地への取り組みでは、道路網など社会基盤整備や国際都市としての人材育成を提言。市民生活向上については、産婦人科や小児科、脳神経外科などの医療環境整備を盛り込んだ。
 要望書には、地域振興・産業振興のため▽市への誘客促進(奥州湖の交流人口拡大策、訪日外国人観光客の受け入れ強化対策)▽道路整備(国道4号水沢東バイパスの早期完成と4車線化促進、一般県道玉里梁川線の整備促進)▽企業誘致の促進▽奥州ブランドの推進――を列挙。中小企業支援策の▽地元企業の支援強化▽支所事業維持に伴う財政支援――を含め計6項目を明記した。
 海鋒会頭は「市民に元気と希望を与える施策展開を望む」と期待し、小沢市長は「一つでも多く実現するよう力を尽くしていく」と応じた。
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tanko 2019-7-25 6:50

写真=ILC誘致を巡る直近の動向を説明する鈴木厚人学長(左)と山下了教授(仙台市内)

 【仙台市=児玉直人】 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致に向け、高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市、山内正則機構長)が設立した国際ワーキンググループ(WG)は、費用分担や組織運営などに関する報告書を9月中にも文部科学省に提出する。東北ILC推進協議会の内部組織、東北ILC準備室長を務める鈴木厚人・岩手県立大学長が24日、仙台市内で開かれた記者説明会で「政府間協議が始まった際のたたき台になるもの。報告書の完成は、新しいステップの始まりでもある」と強調した。日米間ですでに実施している政府高官レベルでの議論の体制を日欧間にも立ち上げる予定で、ILC実現に向けた環境を整える。

 ILC誘致を巡っては、3月7日に東京大学で開かれた素粒子物理学関係の国際会議の席上、文科省が「ILC計画に関心を持って意見交換を継続する」と、政府見解を表明した。
 これを受けILC関連の技術研究を進めているKEKは、国内外の素粒子研究者らによる国際WGを立ち上げた。技術改良や経費、施設運営、国際分担の原案を作成し、9月をめどに報告書を文科省へ提出する。
 ただし、報告すべき案件は、すでに研究者間などで検討されてきた経過がある。鈴木学長によると、ゼロからの協議ではなく最終案的な形で取りまとめるといい、「政府間協議が始まった際には、報告書を基に費用割合などを議論する。いわばたたき台だ」と説明した。
 日本学術会議では「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」の策定が進む。同プランへのILC計画掲載も誘致実現の条件になるが、他分野の研究者らの納得を得られるかがポイントとなる。
 記者説明に同席した東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授は「(学術会議での議論が)どういう状況まで来ているか直接聞く立場になく、伝えることはできないが、課題とされてきた点について、幅広い学術分野の方々に説明し、理解を得られるよう全力を挙げている」と述べた。
 このほか東北推進協の対応として、仙台市で今秋に開催されるILC関連の国際会議「LCWS2019」での情報発信、地域ビジョンの検討などにも力を注ぐという。

「直接対話が一番」(山下教授、不安解消へ私見)
 国際リニアコライダー(ILC)の誘致活動が進む中、施設の安全性や放射線の影響を懸念する声もある点について、誘致を推進する東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授は24日、個人的見解と前置きした上で「直接話すことが一番重要だ」と強調。ILCに懸念を示す地域住民や団体の関係者との直接対話を望んだ。
 有力候補地である北上山地周辺では、自治体や経済団体などが中心となり誘致運動を展開。早期実現を望む声がある一方で、安全性や誘致活動の在り方に疑問を示す住民もいる。
 東北ILC推進協議会は、同日の記者説明会の中で、ILCの社会周知活動を進めるとともに、放射線などに対する「正しい情報提供」「丁寧な説明」を行い、住民不安を払拭する考えを示した。
 山下教授によると、今年3月に奥州、一関両市で開催されたリスク説明会を今後も定期的に開催するほか、各種講演会で質疑応答の時間を十分に確保するなどの方法が予定されているとした。
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tanko 2019-7-15 20:50
 岩手県は14日までに、8月1日付発令の人事異動を内示した。ILC推進局の設置に伴うもので、県南広域振興局副局長の高橋毅氏が同推進局副局長に就任する。これにより県南局副局長は、3人体制から2人体制になる。
 ILC推進局は、県が素粒子物理学者らと連携し北上山地への誘致を目指している実験施設、ILC(国際リニアコライダー)関連の業務を担当。これまでは政策地域部内のILC推進室が対応していたが、関係機関との調整を適切かつ機動的に推進していくため、「局」に格上げする。
 同推進局長は、理事兼同推進室長の佐々木淳氏が務める。県南局駐在のILC推進監として、同推進室ILC推進課長の植野歩未氏が就任する。
 ILC推進局の設置に伴う県南局関連の異動内容は次の通り。

 ▽ILC推進局副局長兼同推進局事業推進課総括課長兼政策地域部国際室国際監(県南局副局長)高橋毅▽県南局副局長兼ILC推進局首席ILC推進監(県南局副局長兼政策地域部ILC推進室首席ILC推進監)千田利之
 ▽ILC推進局事業推進課特命参事兼ILC推進監・県南局経営企画部駐在(政策地域部ILC推進室ILC推進課長)植野歩未▽県南局経営企画部企画推進課長兼特命課長ふるさと振興支援兼政策地域部三陸防災復興プロジェクト2019推進室プロジェクト推進監・ILC推進局事業推進課兼務(県南局経営企画部企画推進課長)多賀聡
 ▽県南局経営企画部主任主査・ILC推進局事業推進課勤務(県南局経営企画部主任主査・政策地域部ILC推進室勤務)藤原広明
 ▽県南局経営企画部主査・ILC推進局事業推進課兼務(県南局経営企画部主査)竹原久美子▽県南局経営企画部主任・ILC推進局事業推進課勤務(県南局経営企画部主任・政策地域部ILC推進室勤務)舘野善行
 ▽県南局経営企画部主事・ILC推進局事業推進課兼務(県南局経営企画部主事)柿崎梢恵▽県南局経営企画部主事・ILC推進局事業推進課勤務(県南局経営企画部主事・政策地域部ILC推進室勤務)深沢英一郎
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tanko 2019-7-12 18:50

写真=米ローウェル天文台が撮影した銀河(白い点々)の写真に写り込んだ、スターリンクの光跡(国際ダークスカイ協会ホームページより)


写真=水沢VLBI観測所の電波望遠鏡

 人類初のブラックホール撮影成功や「はやぶさ2」の小惑星再着地など、世間の注目を集めている天文学や宇宙科学界だが、今後の観測や研究に支障を来す問題に頭を悩ませている。国際天文学連合(IAU)や日本の国立天文台(常田佐久台長)は、通信衛星が天文観測へ悪影響を及ぼすとする懸念を相次いで表明。米国の民間会社が進める巨大通信衛星ネットワークの構築により、打ち上げられた人工衛星約200基が常時“人工星”となって、夜空に見えてしまうという。地上の人工照明と同様、天文研究や星空観察をする側にとっては厄介な存在。同天文台水沢VLBI観測所の研究者は、「生活の発展と天文研究が共存できる道を探す必要がある」と訴えている。
(児玉直人)

水沢の研究者「生活発展との共存を」
 IAUは6月3日、同天文台は今月9日にそれぞれ懸念を表明した。天体が放つ光や電波を調べ、宇宙の謎を解き明かしてきた天文学界では、以前から人工的な光や電波の存在に悩まされ、さまざまな対策を講じてきた。
 天文学界がこの時期に懸念を示したのは、米国スペースX社の巨大通信衛星ネットワーク事業「スターリンク」が、本格化してきたためだ。
 インターネットの高速化を図るため、2020年代半ばまでに1万2000基もの通信衛星を地球を取り囲むように配置する計画。第1弾として5月24日、60基の衛星を搭載したロケットを打ち上げ、高度550kmの軌道上に投入した。
 衛星本体や太陽電池パネルは、月が光るのと同じ原理で太陽光を反射し星のように輝く。天体観測をする上で、人工の光は邪魔な存在。米国アリゾナ州のローウェル天文台は、銀河の観測中に写り込んだスターリンクの衛星の画像を公表している。
 1万2000基の衛星が予定通り軌道に投入されれば、常時200基の衛星が夜空に見える状態になる。同天文台周波数資源保護室長の大石雅寿特任教授は「肉眼で見える一番暗い星は6等星だが、われわれが観測する天体としては明るすぎる星。スターリンクの衛星は4等から7等の明るさ。計画を中止してくれとまでは言わないが、観測する側からすればものすごく邪魔」と話す。
 天文観測には、星の光(可視光線)を観測する方法のほか、星が放つ電波を観測する方法もある。水沢VLBI観測所で現在行っているのは電波天文観測。直径20mと同10mの電波望遠鏡(パラボラアンテナ)が稼働している。
 大石特任教授は「現時点では衛星本体の反射光が問題だが、通信サービスが始まれば、電波天文観測への影響も心配される。その前に、事業者側と天文学界が共存できるための話し合いをしなければいけない。すでに米国の天文関係者はスペースX社に協議の打診をしているようだ」と話す。電波天文学が専門の亀谷收・同観測所助教も「人工衛星の数が多くなればなっただけ、影響は受ける。他国の衛星となると、いろいろ大変な面もあると思うが、うまく共存できる道を探さなければ」と語る。
 アマチュア天文家にとっても、人ごとではない。大石特任教授は「アマチュアの皆さんが、個々に声を上げるのは難しい。日本を代表する天文研究機関として、きれいな星空を守るため取り組みたい」と話している。
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tanko 2019-7-5 20:50


 奥州日本外交協会(海鋒守会長)の総会はこのほど、水沢東町の水沢サンパレスホテルで開かれ、設立35周年記念の講演会開催や新入会員の勧誘促進などを盛り込んだ事業計画を決めた。第114回講演会も開かれ、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長が、木村栄博士(1870〜1943)が発見したZ項について話題を提供した。
 約40人が出席。海鋒会長はあいさつで「国際リニアコライダー(ILC)誘致実現に向け、支援と協力を」と呼び掛けた。
 木村博士は、金沢市出身で1899(明治32)年に水沢で緯度観測を開始。地軸が地球そのものに対して揺れることを意味する「極運動」の実態を明らかにする研究の過程で、方程式の未知数にZを加える「Z項」を発見した。世界的に称賛され、第1回文化勲章を受章した。
 「木村博士はZ項の発見だけにとどまらず、Z項の意味を追究し続けた」と大江理事長。「木村博士の功績はブラックホール撮影の成功や、スーパーコンピューター『阿弖流為(アテルイ)』にも生かされるなど、継承と新分野の展開につながっている」とまとめた。

写真=木村栄博士の功績について解説する大江昌嗣理事長
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tanko 2019-7-2 10:20
 【仙台市=児玉直人】素粒子物理学の大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致を進めている、東北ILC推進協議会(共同代表=大野英男・東北大学総長、高橋宏明・東北経済連合会名誉会長)は1日、仙台市内のホテルで総会を開き、本年度事業計画などを原案可決した。今年3月、都内で開かれたILC関連の国際会議の席上、文部科学省が初めてILC計画に関心を持っているとの意向を表明。誘致関係者はILC実現に向けた前向きな姿勢と捉えており、日本政府に対し「早期にILC誘致に向けた、より明確な意思表明を」との決議文も採択した。

 総会には岩手、宮城両県の知事や北上山地周辺自治体の首長、素粒子物理学者、経済団体、民間誘致団体の関係者ら190人が出席した。
 議事に先立ち、大野共同代表があいさつ。「ILCは、日本学術会議が策定する『学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン』掲載に向けた検討の俎上にある。6月21日に閣議決定した政府の『骨太の方針』に、ILCなどを示唆する文言が示されたのは大きな一歩。3月7日の文科省による『関心表明』以降、着実に前進している」と述べた。
 議事では、直近の動向について同協議会事務局が説明。ILC実現に向けた国内課題として?日本政府の明確な意思表明?国家的プロジェクトへの位置付けと財源スキーム(計画)の検討?経費負担を見据えた国際協議の本格化?国内科学コミュニティーの理解と国民支持の獲得――の4項目を示した。
 学術会議のマスタープラン策定や欧州素粒子物理戦略の決定が予定される中、同協議会は「誘致決定に向けた国の段階的手続きの重要局面を迎える」と認識。同協議会内に設置していた「東北ILC準備室」と、同協議会本体の予算と事業計画を本年度から一体化し対応を強化する。
 具体的には、同準備室メンバーの協力を受け、広報活動強化による国民理解の醸成、立地候補地の受け入れ態勢整備など3事業を「特別事業」に位置付けて推進。日本学術会議から指摘された課題の解消策を講じ、政府決断を促す流れを構築する。
 総会後は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の山内正則機構長によるビデオメッセージ上映や、「ILC100人委員会」代表世話人を務める、前岩手県知事の増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授)が講演した。
 山内機構長は、日本学術会議における議論の経過や、今後のマスタープラン策定に向けた流れに触れた。「学術的な意義は一定の理解を得たが、ご批判や宿題もいただいた。できるだけ丁寧に、特に資金的な問題が生じない点をしっかり説明し、徐々に理解を得たい。学術会議の結論には予断を許さないが、できる限り理解を求める活動に力を尽くしたい」と決意を示した。
 増田氏は「ILCと地方創生」と題し講演。人口移動のデータを示しながら、東京一極集中の実情を説明した。ILCが「地方の魅力をアップする上で有力なツール」とする一方で、「学術界の中ですら多額の予算のILCにはさまざまな意見があるし、地方創生だけでILCを政府が正当化できるかとなると、力不足だ」と指摘。「国土計画のような高いレベルの計画の中でILCが位置付けられれば、国として進める正当性が得られるのでは」との考えを示した。

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