人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2019-6-27 15:30

写真=ILCの概要について説明を聞く玉里小の児童ら

 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)に対する理解を深めてもらう小学生向け出前授業が26日、江刺の市立玉里小学校(及川靖治校長、児童44人)で行われた。説明を受けた児童からは、「建設費はどれくらいかかるの」など、鋭い質問も飛び出した。
 ILC誘致実現に向けた取り組みを展開する市は、2014(平成26)年度から中学2年生、2015年度からは小学高学年を対象に出前授業を実施。ILC誘致が実現すれば、児童、生徒が大人になり地域社会の中核を担うころに運用が始まるとの見通しから、今の段階からILCに理解を深めてもらう狙いがある。
 本年度は市内全中学校9校と、実施希望があった市内9小学校が対象。中学校は、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)に委託し、すでにスタートしている。小学校は市ILC推進室の職員が対応しており、玉里小を皮切りに今年12月まで行われる。
 玉里小では4―6年の26人が授業を受けた。人形劇でILCを紹介する解説動画を見た後、クイズを通じてILCの建設目的や波及効果について学んだ。授業を担当した市ILC国際化推進員のトマス・アンナさんは、「大リーグで活躍する大谷翔平選手や、ブラックホール撮影に関係した国立天文台によって、奥州市はすでに有名だが、ILCができればもっと有名になれる」とアピールした。
 児童からは「建設費はどれくらいかかるのか」「具体的にどの辺に建設されるのか」「がんの治療に役立つ技術もあるらしいが、なぜビームを当てただけで治療できるの」と、鋭い質問が続々寄せられた。建設費について市の担当職員は「日本と外国で負担しようと相談している。すべて日本が負担するわけではない」などと説明した。
 ILC誘致を巡って文部科学省は今年3月、関心を持って国際的な意見交換を継続する姿勢を表明。一方で、日本政府として正式に誘致を認め国際協議を開始するという段階にまでは至っていない。このため、出前授業では「できるかもしれない」「なるかもしれない」など、表現に配慮している部分もあった。また、授業で用いた解説動画は5年前に制作したものであるため、その後の研究成果を受け生じた施設規模の変更などについては、職員が補足説明し対応していた。
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tanko 2019-6-15 19:20
 岩手県は、素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)関連の業務を担当しているILC推進室を「ILC推進局」に格上げする方針だ。関係機関との調整を適切かつ機動的に推進していく狙い。8月1日施行を目指し、19日開会の県議会6月定例会に関連議案を提案する。
 県は2014(平成26)年4月、政策地域部内に「科学ILC推進室」を設置。ILC誘致やその他科学関連業務に対応していたが、今年4月からはILCだけに特化した「ILC推進室」に移行していた。室長と首席ILC推進監(県南広域振興局副局長が兼務)、ILC推進課長、室員で構成され、兼務・兼任を含めた職員数は21人。
 県は、ILC実現に向けた関係省庁、研究機関とのやりとりが増加すると予測。今後「室」から「局」に格上げし、体制を強化する。
 首席ILC推進監は、従来の県南局副局長兼務に加え、県南局駐在の推進監をもう1人配置する。局内の人事や総務的な業務は、政策地域部の職員が兼務。誘致に関わる具体業務はILC推進局内の事業推進課で行う。職員体制は現在の推進室から大幅に増える見通しだ。
 県議会6月定例会での可決を受け人事面の調整などを行い、7月下旬までに関連する人事異動を内示。8月1日から新体制で業務に当たる。
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tanko 2019-6-15 19:20

写真=ILCをテーマに水沢で行われた県政懇談会

 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)をテーマにした県政懇談会は14日、水沢大手町の奥州地区合同庁舎分庁舎大会議室で開かれた。ILC誘致を願う企業や高校生の代表らが達増拓也知事と懇談。関連産業への参入や国際研究都市構築に向けて積極的な行政支援を求める声が出たほか、PR方法への工夫、自然環境に配慮した開発の在り方を訴える意見もあった。
 出席したのは、製造業?WING(北上市)の高橋福巳社長、運輸業白金運輸?(江刺)の海鋒徹哉社長、一関市国際化推進員でオーストラリア出身のアイミ・ジーン・ベルさん、県立花巻農業高校生物科学科3年の佐藤大雅さん、谷川瑛希さんの計5人。県側からは達増知事、佐々木淳ILC推進室長、平野直県南広域振興局長らが対応した。
 高橋社長は、ILCで使用する加速器の金属部品を研磨する装置の開発に取り組んでいることを紹介。製品開発から販売へと進める過程では一定の資金が必要になることから、「国や県も含めた支援制度があれば」と要望した。加えて、施設を建設する際には森林の伐採や地下トンネルの掘削など、何らかの形で自然環境に手が加わる点にも言及。「一企業として、自然環境を考慮するのは使命。私も自然や緑が大好き。うまく共存し繁栄していく方法ができれば」と話した。
 海鋒社長はILC誘致実現を機に、貨物と旅客が別々となっている従来の物流・輸送体系の見直しを進めたいと主張。研究者のみならず、地元住民の生活を守ることにもつながるとアピールした。
 花巻農高の2人は、都内で農産物の販売会を実施した際にILCをPRしたエピソードを交え、「ILCはまだまだ知られていない」と痛感したことを紹介。ベルさんも情報発信、特に外国人向けの対応について触れ「どんなに情報を発信しても、実際のおもてなしが不十分だと良くない」と指摘した。
 達増知事は「ILCを通じて岩手を舞台により良い未来をつくろうという思いを県内外の人たちと共有したい。県として努力を重ねていきたい」と述べた。
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tanko 2019-6-14 19:10
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現を見据え、市は本年度も「中学校ILC出前授業」を展開する。誘致が実現できた際「自分たちは何ができるか」を考える切っ掛けを提供することに重点を置いた授業内容としている。
 同出前授業は、市内の中学2年生全員を対象に2014(平成26)年度から実施。ILC計画が実現の運びとなり、研究が始まる時期とされる2030年ごろ、地域社会の中核を担う世代となる生徒たちに、計画への理解を深めてもらう目的で開催している。NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)に委託しており、昨年度までに5368人が受講した。
 本年度は905人が対象。今月5日、前沢中を皮切りにスタートしたが、次回は9月から12月にかけて残りの8校で行っていく。
 前沢中では、同センターで「イーハトーブサイエンスリーダー」を務める元高校教諭の高梨拓さんらが教壇に立ち、ILCの研究意義などを解説。誘致が実現した社会で自分たちにできることは何か、考えるヒントも与えた。

写真=高梨拓さんの講義に耳を傾ける生徒たち(前沢中学校)
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tanko 2019-6-11 19:10
 岩手県県南広域振興局(平野直局長)と管内8市町に対する2019(令和元)年度当初の地域経営推進費(県・市町村事業)の配分が決定した。県南局が実施する35事業に5849万2000円、管内市町の22事業に3411万6000円、三陸防災復興プロジェクト2019に166万6000円、広域連携事業に1500万円を充て、総額は1億927万4000円。ものづくりと人材育成、観光や食産業、文化、スポーツ振興、農林業など各分野の事業を推進し、課題解決につなげる。
(千葉伸一郎)

 県は、地域特性に応じた行政施策に対し同推進費を設け予算配分。広域振興局が主体となり実施する「県事業」、各振興局管内の市町村が行う「市町村事業」がある。市町村事業のうち、別枠に三陸防災復興プロジェクト2019(6月1日〜8月7日)、広域連携事業を設けている。
 35の県事業は「いわて県民計画(2019〜2028)」地域振興プラン実現に資する事業に重点配分し、新規は17事業。暮らしの分野では「国際リニアコライダー(ILC)受け入れ環境整備事業」378万8000円(医療通訳者養成研修会開催など)、ものづくり・人材育成分野では「県南広域圏産業人材確保・定着・育成等支援事業」489万7000円(学校が行うキャリア教育の支援など)、観光分野では「平泉・南いわて観光交流推進事業」621万6000円(外国人観光客への接客技術向上を目的とする実地研修開催など)といった事業を盛り込んだ。
 管内市町の22事業は、県文化・スポーツ振興戦略推進につなげる事業など、圏域の目指す将来像の実現に結びつく事業に配分。胆江2市町分は883万3000円で、奥州市はカヌー競技推進事業など3事業に639万6000円、金ケ崎町は若者移住・定住促進事業など2事業に243万7000円となった。
 三陸プロジェクトの配分は、遠野市が行うプロジェクト推進や機運醸成のための事業。広域連携事業では、花巻市と遠野市による新たな人の流れを生み出すための事業を昨年度に引き続き採択した。
 県南局配分額は総額1億2815万8000円で、今回決定事業費は1億927万4000円。市町村事業の配分残予算(1888万4000円)について2次募集を実施する。
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tanko 2019-6-11 19:10

写真=盛岡市で開かれた県ILC推進協議会の本年度役員会

 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現を目指す岩手県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)は10日、盛岡市内のホテルで本年度役員会を開き、日本政府が早期に誘致を決めるよう要望活動、国内外の広報、調査・研究の強化を確認した。ILC誘致実現には、来年5月に始まる欧州の「素粒子物理戦略」に、ILCへの協力体制が盛り込まれる必要があるとされている。谷村会長を始め小沢昌記奥州市長を含む誘致関係者らは12日、都内で国会ILC議連の河村建夫会長、自民党の二階俊博幹事長らと面会し、誘致の明確な意思表明を求め要望する。

 役員会で谷村会長は「活動が活発化した今年こそ、最後の最大のヤマ場。政官学民の皆さんとともに全力を尽くしたい」と力を込めた。12日は東北ILC推進協議会、北海道東北知事会、北海道・東北六県議長会の関係者らと共に河村、二階両氏の元を訪れるほか、内閣官房、内閣府、文科省、復興庁などへの要望も調整中という。
 国内外へのPR活動にも力を注ぐ。10月28日から11月1日にかけ、仙台市で開かれる素粒子物理学者らによる国際会議「LCWS2019仙台」では、東北の加速器関連企業やILC建設参入に意欲的な企業40社がブースを出す。
 総会後は、東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授が、ILC計画の最新状況を説明。東京五輪以降の成長戦略などの議論が表面化しているといい、▽ILCサポーターズなどによるイメージ向上▽ILCビジョンの構築と人材確保▽オールジャパンの有識者による現地施設の設計▽文科省以外の省庁にも誘致を望む地域の声を届けること――を進めるとした。
 山下特任教授は「3月の政府、文科省の見解では誘致に至らなかったが、省庁をまたいだ意見の集約は異例の事態。国内外でのILCへの注目と期待が高まった。これを追い風に、地元の活動を強化してほしい」と訴えた。
 同協議会は県内の経済団体を中心に、産学官民で組織。昨年度現在の会員数は619会員(法人など543、個人76)となっている。
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tanko 2019-6-4 16:20

写真=本間希樹所長らが携わる国際プロジェクトが撮影したブラックホールの写真(C)EHT Collaboration

 奥州市内の菓子製造販売事業者らで構成する水沢菓子組合(組合長・千葉亮黄金製パン社長)は、ブラックホールをテーマにしたオリジナル商品を開発する「ブラックホールプロジェクト」を進める。ブラックホール撮影の国際プロジェクトで日本研究者チームの代表を務めた、国立天文台水沢VLBI観測所=水沢星ガ丘町=の本間希樹所長の思いを受けた取り組み。会員7社は、夏に同天文台水沢キャンパスで開かれるイベント「銀河フェスタ」での配布や各店舗での販売などを計画している。(菊池藍)

 関係者らの話によると、同キャンパス敷地内の奥州宇宙遊学館を管理するNPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの幹部と会談していた本間所長が、「ブラックホールにまつわるお菓子が作れたら、地域振興の役にも立つのではないか」との思いを語ったという。
 これを受け、NPO幹部は同組合関係者に打診。実現に向け取り組むこととなり、今月18日に開かれる組合総会以降、本格化する見通しだ。総会には本間所長も出席を予定しており、プロジェクトの成功に向け、盛り上げを図っていく。
 銀河フェスタでは、7社がそれぞれ開発した菓子を詰め合わせにして配布したい考え。イベント配布に加え、各店舗でのオリジナル菓子販売も検討している。
 「本間先生から、地元事業者に手伝ってもらうことで地域への恩返しをしたいとお話をいただいた」と千葉組合長。「ブラックホールが話題になる中で、会員事業所にとっても情報発信のいい機会になると思う」と捉えるとともに、「本間先生の思いを形にすることで応え、イベントの成功へお手伝いができれば」と語る。
 プロジェクトには、菓子製造7社に加え、パッケージデザインなどを手掛ける事業所も参加する。菓子は、それぞれの店舗が特徴や技術を生かしながら開発を進めており、詰め合わせにした時にバラエティー豊かになるよう、形やパッケージデザインなど打ち合わせを重ねながら具体化させていく。
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tanko 2019-6-3 15:50

写真=ブラックホール撮影の舞台裏を紹介する本間希樹所長(左)ら研究スタッフ

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長ら、同観測所の研究者ら5人は2日、人類で初めてブラックホールを撮影した国際研究プロジェクト成果を一般市民に報告した。県内外から450人が集まり、世界中の話題となったプロジェクトの意義やその舞台裏を興味深く聴いた。

 本間所長らが参加したのは、国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」。100年に及ぶブラックホール研究の歴史に、大きな成果を残した。
 本間所長は「観測所の地元のみなさんにまずは報告したい」と、5月25日に天文台のある水沢南地区の住民向けに最初の講演会を開催。今回は市内の児童生徒や一般市民らを対象に市が企画したものだが、情報を聞きつけた市外、県外の在住者も足を運んだ。
 講演会前半は本間所長が研究概要や成果、発表後の社会の反応などをユーモアを交えながら説明。後半は「研究スタッフ勢ぞろい!」と題し、本間所長のほかプロジェクトに参加した秦和弘助教、小山友明特任専門員、田崎文得特任研究員、中国から同観測所に留学している崔玉竹(ツェイ・ユズ)さんがパネルディスカッションを繰り広げた。
 観測に使用した電波望遠鏡がある施設の一つ、チリの天文台は標高5000mに位置。本間所長は高山病になりかけ、「5000mまで行って何の役にも立たなかった。仕事が全くできなかった」と振り返る。一方、小山特任専門員は体調不良には見舞われなかったが、空気が薄い環境が影響しパソコンの記憶装置が思うように作動しなかったと明かした。
 研究チームがデータ解析などを進めていたのは、12月から2月にかけてのクリスマスや正月など楽しいイベントがめじろ押しのシーズン。田崎特任研究員が「本間さんからは『あと2週間頑張ろう』という言葉を2カ月、3カ月聞かされ続けた」と明かすと、会場は笑いに包まれた。
 将来、東アジア諸国の電波望遠鏡観測網による研究で中心的な役割を果たすと期待される崔さんは、「中国の実家の家族が今回の件で取材を受けた。母は知っている人全員に私のことをPRしてくれた」とうれしそうに話した。
 宮城県から訪れた男性は「このような研究成果を水沢の観測所がなぜ発表できたのか」と質問。本間所長は「水沢の観測所はVLBI(超長基線電波干渉計)という技術のエキスパート。長年のノウハウがなければ、このプロジェクトに入ることはできなかっただろう。緯度観測所時代から続く、いろいろな方々の貢献があっての成果だと思う」と強調した。

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