人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市西部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】熱願冷諦――ILC誘致、識者は語る(2)

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tanko 2018-10-19 9:40
リスク論からのアプローチ
避けたい住民間対立の構造
条件明確にし意見変える柔軟さを

小松丈晃氏(東北大学大学院文学研究科・文学部教授)

 ――今年8月、ILC候補地の地元である一関市内の市民団体や市民らの有志が、市長公開質問状や学術会議への意見書送付などの形で、放射線管理や財政負担などに対する不安や疑問の声を上げた。ILCを推進する側はこのような声を上げている人たちに、どのような対応を取るべきか。
 小松氏 市民側の懸念に懇切丁寧に説明する機会をできるだけ数多く設けることが重要で、ILCに限らずどんな事業でも当たり前のこと。しかし、実際にはあまり実践されていない。リスクがあり得るのであれば包み隠さず説明し、対策について理解してもらうよう努める必要がある。
 良い印象づくりだけを推進すると、場合によって「何か隠している」との懸念を助長することにもなりかねず逆効果。知っている情報を隠蔽するのはもちろん論外だ。特に財政的負担に関するメリットとデメリットは、バランスよく市民に誠実に伝えることが大切だと思う。
 一関の市民団体による公開質問状提出のような行動は、市民側の理解や認知度を促す上でも大変意義があるものだと考えられる。



 ――公開質問を出した市民団体の関係者は、疑問点を明らかにしたいという思いがある一方で、ILCを推進したい住民との間に溝を作りたくないとも話している。住民同士の対立構造を生まないようにするため、推進する側、慎重な見解を示す側はどんなことに留意し、行動すべきか。
 小松氏 この点は非常に難しい。ごく基本的なことを言えば、対立にまで行き着かないようにしつつ、両者ともに是々非々の立場を維持するには「自分が意見を変えるための条件を明確にしておく」といった柔軟さが求められると思う。例えば「こういったことが明らかになるのであれば、問題はない」とか「この条件を満たせば推進すべきだ」というような感じだ。ただし、こういう柔軟さをもってもらうには、事業推進側がメリットとデメリットの両面をできるだけ丁寧に説明する機会を作らなくてはいけない。これが大前提となる。
 また「自分は慎重派だ」「あの人は推進派だ」と「規定」を強調しないことも大切だ。
 規定とは自己や他者についての定義。いったん「自分はこういう立場の人間だ」「あの人はこういう考えだ」と規定しまうと、それに拘束されてしまい、後で立場を変えるのがなかなか難しくなる。事情が変わったときにも、過去の自分の規定に拘束されてしまうし、「あなたは以前、こう主張していましたよね」と、他者から与えられた自己像に拘束されてしまう。
(つづく)

写真=一関市内の市民団体が勝部修市長に提出した公開質問状の書面
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