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ILC子ども科学相談室39 電子と陽電子、なぜ消える?

投稿者 : 
tanko 2018-9-21 19:50
 国際リニアコライダーでは「電子」と、その反物質「陽電子」をぶつける実験をするそうですが、存在している二つの物質をぶつけるのに、なぜ二つとも消滅して違うものが生まれてくるのでしょうか? そもそも普通の物質と反物質は何が違うんですか?

詳細なことはまだ分かりません
 まず物質と反物質について理解を深めてみましょう。
 この世には「反物質」は事実上存在しません。反物質が存在していたのは、約138億年前の宇宙誕生時に起きた大爆発「ビッグバン」の直後のみだと考えられています。ただ、本当にわずかですが宇宙線のような非常に高いエネルギーを持った粒子が地球の大気中で反応した直後や、実験室や一部の医療施設で人工的に生成される例はあります。これらは非常にまれで、しかも極めて寿命が短いのです。
 ビッグバンが起きた時には、粒子(物質)と反粒子(反物質)が対(ペア)で誕生したと考えられています。物質と反物質は「同じ数だけあった」というわけです。
 しかし、現在の宇宙には反物質でつくられたような星(恒星)や銀河、生物などは確認されていません。反物質が消滅したことを意味するのですが、なぜ反物質がなくなったのか、現状では全く分かっていません。なぜ反物質がなくなったのか、この事実や理論を提唱した人は、確実にノーベル賞を受賞できます!
 ビッグバン直後に誕生した電荷がマイナスの物質(電子)と、電荷がプラスの反物質(陽電子)は、衝突すると消滅するという現象を起こします。これを「対消滅」といいます。そして消滅すると同時にエネルギーが発生。エネルギーの大きさは、その粒子と反粒子の重さ(質量)によって異なります。発生したエネルギー(光)の大きさに応じて、新しい物質や反物質が生まれます。この現象は、特殊相対性理論の「E=mc2」という式で表すことができます。Eはエネルギー、mは質量、cは光の速度です。
 原子や分子、素粒子のようなミクロの世界の振る舞いは「量子力学」という学問によって説明されており、現代物理学の基礎をなしています。イギリスのディラックという物理学者は、量子力学とアインシュタインの相対性理論とを合体させる作業を始めました。このようにして出来上がったのが、「ディラックの方程式」という式で、この方程式を解くと、マイナスの電荷をもつ「電子」を表すだけでなく、電子と同じ性質を持ちながら、電荷のみがプラスという粒子(陽電子)の存在を示す解が出てきます。このようにして反物質の存在が理論的に予言され、説明されました。
 ちなみに、0.5グラムの物質と0.5グラムの反物質を衝突させたときに発生するエネルギーは約90兆ジュール。その規模を分かりやすく示すと、約60m四方の水を0度から100度にまで上げられるほどの膨大な熱量が得られます。

番記者のつぶやき
 ILCの話を初めて聞いた時、私自身もでしたが多くの人が「え?」と思うのが、ぶつけた二つの物質が消えてなくなるという点ではないかと思います。消滅するとともに大きなエネルギーが生じ、そのエネルギーの大きさによって、全く違う物質や反物質が生まれるという、なんだか手品でも見せられているような不思議な現象です。
 素粒子実験施設ではこのエネルギーの大きさが非常に大切なポイントです。エネルギーの大きさによって研究できる内容、見ることができる現象が異なるためです。
 衝突させる物質や反物質を加速させる加速器の施設規模によって、エネルギーが最大どれくらい出せるのかが決まってきます。施設が大きければ、いろいろな事象が見られるようですが、当然、お金もかかります。限られた予算の中、いかに有意義な研究成果を出すべきかという判断はとても難しいです。研究者の間でも意見が分かれています。
 ILCの場合、当初は全長約30kmの長さとし、両方から電子、陽電子を加速させ中央部分で衝突させる仕組みを提唱しました。この施設規模で出すことができるエネルギーの大きさは500ギガ電子ボルトという数値と単位で表現されます。研究者は「500GeV」と言っていますが、本紙では分かりやすいように施設の長さで伝えるようにしています。
 現在は、物質に質量を与えるヒッグス粒子の詳細な研究を進めるのに適した全長約20kmの施設規模に見直されています。エネルギーの大きさは250GeVです。
(児玉直人)

図=物質(正物質)と反物質の衝突によって得られるエネルギーのイメージ
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