人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

研究者の地元育成を(宇宙実践センターの大江昌嗣理事長・CERN視察から帰国)

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tanko 2013-4-18 9:20
 今月11日から欧州合同原子核研究機構(CERN)などを視察し帰国した、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター理事長の大江昌嗣さん(73)は17日、胆江日日新聞社の取材に応じ、「行政、商工業など視察者それぞれの立場でいろいろと感じること、学んだことが多かった視察だった」と振り返った。その上で、国際リニアコライダー(ILC)の北上誘致に向けた課題も指摘。「地元の人材がILCで研究者の一員として勤務できるような仕組みがなければ、地域住民とILCとの間に一体感が生まれない」と語り、ILC周辺での理学系教育の充実を求めている。

 大江さんが参加した視察は、県ILC推進協議会(元持勝利会長)が主催。上野善晴副知事や小沢昌記奥州市長夫妻、千葉龍二郎奥州商工会議所会頭ら27人が渡欧した。
 11日未明に羽田空港を出発。ドイツ・フランクフルト経由でスイスのジュネーブ近郊にあるCERNに到着した。「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」のディレクター(最高責任者)を務めている、ロンドン・インペリアルカレッジのリン・エバンス教授や、現地在住の日本人研究者らが出迎えた。
 上野副知事は、エバンス教授らに北上山地の地盤がILCに最適であることをアピール。大江さんは、いわてILC加速器科学推進会議が編集作業を進める中学生向けILC解説読本の試作品をエバンス教授に贈り、市民レベルの理解周知にも力を注いでいることを伝えた。
 大江さんによると、エバンス教授は「CERNはこれまで、さまざまな素粒子研究を進め良い成果を収めてきたが、ILCによってさらに解明を進める必要がある。CERNとILCは競争相手みたいな形になるが、お互いの役割を分担し合う必要がある」と述べたという。
 エバンス教授は2月に行われたLCC発足時の記者会見で、日本がILC建設国にふさわしいとする趣旨の公式見解を示している。視察団一行に対しても「ILCが日本に設置されることを期待したい」とあらためて強調した。
 視察団は素粒子の飛跡などを捉える「アトラス検出器」やCERNの防災業務に当たる消防署の様子なども見学。周辺地域の住環境や市民生活の様子にも触れるなどして、15日に帰国した。
 大江さんはILCを迎え入れる上での課題として、本県における理学系人材の育成環境が十分でないことを指摘する。「現状のままILCができたとしても、そこで働く人たちのほとんどは地元出身者以外、あるいはどこか遠くの大学を卒業した人ばかりということになる。地元で育ち学んだ人がILCに携わる状況を築くことで、研究施設と地域住民との間に一体感が生まれるのではないか」と話している。
 一方、小沢市長も17日、市役所での取材に「ジュネーブの住民の2人に1人が外国人。東北誘致となれば、多国籍文化を許容する下地をつくる必要がある」と強調。ILC建設後に大勢の外国人研究者や家族が訪れることを踏まえ「医療や教育、居住などインフラ面でのサポート体制づくりもしっかり進めたい」と話した。(児玉直人、若林正人)

写真1=大型実験装置「アトラス検出器」を見学する視察団一行(大江昌嗣さん提供)
写真2=CERN視察の様子を語る大江昌嗣さん
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