人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

日中韓連携ばっちり 構築進む東アジア天体観測網(水沢にも研究者ら滞在)

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tanko 2018-5-12 11:10
 約2年半ぶりとなる日中韓サミットが今月9日、東京の迎賓館で開かれ、幅広い分野における3国間の連携、協力の推進などが確認された。日中韓の関係を巡っては、時に領土問題や歴史認識などを背景に緊張感が走り、国民感情にも影響を与えるような場面もしばしば見られたが、天文学の分野においては数年前から3国の研究機関が連携。水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)もその拠点の一つ。韓国、中国それぞれの国から研究者や大学院生が滞在し、日本人研究者たちと信頼関係を築きながら「人類共通の謎」の解明に挑んでいる。(児玉直人)

 国立天文台は2002(平成14)年、「天文広域精測望遠鏡(VERA)」の本格観測を開始した。同観測所を含む国内4カ所に口径20mの電波望遠鏡を設置。複数台が連動し一つの天体を観測することで、分解能の高い結果を得る超長基線電波干渉計(VLBI)という手法を採用している。
 同観測所の見学者向け屋外説明パネルには、国内4基の位置関係のみが記されているが、近年は韓国や中国にある電波望遠鏡と連動した観測も実施。国境を越えた観測体制の一翼を同観測所が担っている。
 東アジアVLBIネットワーク(EAVN)と呼ばれるこの観測網をリードしている研究者の一人が、同観測所の秦(はだ)和弘助教(34)。謎に満ちた天体ブラックホールの詳細な研究などを進める上では、より広範囲に位置する電波望遠鏡を連動させる必要があるという。
 日本のVERA4基による観測だけでも、実際に製造不能な直径2300km
の電波望遠鏡に相当する能力がある。これに韓国や中国の電波望遠鏡を加え総計21基のEAVNの観測網になると、直径約5500km相当の規模になる。
 「望遠鏡の数を増やし、間隔が広がるほど視力が良くなる」と秦助教。今後、タイの電波望遠鏡を加える構想もある。ブラックホールの解明のほか、より精度の銀河系の地図作り、星の誕生に関する詳しい研究も可能になる。
 通信網が発達した時代とはいえ、研究者の人的交流も行い、信頼関係を築いている。現在、韓国ソウル出身の金美京(キム・ミキョン)さん(36)、中国湖北省襄陽(じょうよう)市出身の崔玉竹(ツァイ・イヂュー)さん(27)が水沢VLBI観測所に滞在。秦助教らと研究に励んでいる。
 金さんは「日本や中国の皆さんと仲良く研究する、いい関係が築けている」。日本の総合研究大学院大学の留学生として滞在している崔さんは「秦さんのような研究者になるのが夢」と笑顔で話す。
 同観測所の前身、水沢緯度観測所は同じ緯度上に設置された4カ国、全6地点で観測を行う国際観測事業を実施していた。その伝統は、今も若い研究者たちに受け継がれている。
 秦助教は「異なる国の人間が一緒に協力するのは天文学では当たり前に行われてきたこと。確かに母国で良い成果を上げたいという競争心もあるが、互いに切磋琢磨することで全体の向上になるし、直接会って交流をすることで連携する機運も高まる」と話している。

写真上=日中韓連携の観測に携わる(左から)秦和弘助教、崔玉竹さん、金美京さん

写真下=水沢VLBI観測所の直径20m電波望遠鏡
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