人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致機運に加速度(回顧 国際会議「LCWS2016」)

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tanko 2016-12-13 13:40
 盛岡市を主会場に催され、9日に閉幕した国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」。国際リニアコライダー(ILC)の実現に向け、意見を交わした研究者たちは、さまざまな歓迎セレモニーやイベントを通じ、地元の熱意に触れられることができたという。一方、地元誘致関係者は、会議を機にILC実現に向けた機運が高められたと実感。日本政府の判断が待たれる中、今後はさまざまな産業分野や地域の力を結集して、受け入れ態勢を具体的に構築していくことが求められそうだ。
(児玉直人)

 現地実行委員会議長として奔走した岩手大学理工学部の成田晋也教授は、「今後の研究発展につながる、非常に大きな意義のある会議になった」と喜びをかみしめる。「地域の方々による関連イベントの開催など、これまでにない形で会議を盛り上げていただいた。参加した研究者の評判も非常に良かった」と、地域の協力に感謝した。
 「地元の熱意の大きさが、会議の大成功に結びついた。われわれも頑張らなければ」と語るのは、東北大学大学院の山本均教授。国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の物理・測定器部門代表職を来年から米国の研究者に引き継ぐが、ILC計画には今後も携わっていくという。
 山本教授は「あと2年程度がILC実現への最後の機会」と強調。この状況下、有力候補地の岩手で開催されたことに加え、徐々に加速器の規模を大きくしていく「段階的建設」のアイデアをLCC最高責任者リン・エバンス氏が発表したことは、「ILC実現に向けて大きな一押しとなる」と捉える。
 県ILC推進協議会は、会期中の県民集会「ILCシンポジウム」の開催など、地元熱意を伝える取り組みを展開した。同協議会の猿川毅事務局長は「地元中高生と研究者との交流の場面もあったが、加速器関連の地元と県外の企業とが交流する企画も実施した。産業界の熱意も高まった点は非常に良かった」と評価。「県民集会には会場に入りきれないほどの人が集まった。ILCが身近になってきているのを感じた。今後は、岩手から東北、全国へと誘致の取り組みステージが高くなっていく。状況に合わせた取り組みを展開したい」と話していた。
 同様に熱意の広がりを感じたのは、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター=水沢区=の大江昌嗣理事長。「少し前までは関心が薄かった地域住民の間からも、『子どもの教育の観点からもILCは大切』という声が出るようになってきている。県民集会に参加しても、意識の変化を感じた」という。「今後、具体的に何をしていくかという段階になったときが重要。想定される課題や取り組みに対し、分野や立場を超えてアイデアや力を合わせなければいけない」と提言する。
 奥州市ILC推進室の朝日田倫明室長は「ILCが来るものと意識して、まちづくりを進めないと、いざ決まった時に遅れてしまってはいけない。『東北ILC準備室』と一緒に協力しながら進めていきたい」と話した。

写真=LCWS参加のため岩手に集まった国内外の素粒子物理学研究者たち(今月5日、盛岡市のアイーナ)
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