人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

電波望遠鏡 (コラム「時針(じしん)」より)

投稿者 : 
tanko 2016-11-12 9:50
 世界最大の電波望遠鏡(FAST)が、稼働を始めた。中国の話だ。南西部貴州省にある山中に建設された電波望遠鏡は、巨大な球面型で口径500mの大きさで、面積はサッカー場約30個分に相当するという。構想から20年あまりをかけて完成。これに伴って、周辺住民約1万人が強制的に移転を余儀なくされたらしい。
 電波状態の環境確保、電磁波の影響を考慮し、望遠鏡から半径5km圏内の住民が移転したのだそうだ。日本円で、一人当たり約20万円の補償。望遠鏡設置の総工費は約180億円といい、移転費用とつりあうのだろうか。日本では簡単にいかないだろう。ともあれ、プエルトリコにある直径305mのアレシボ天文台の望遠鏡を超え、世界一になる。
 極めて弱い電波も受信できるため、天体観測のほか、地球外の生命体の探査も期待される。習近平国家主席は、世界の科学技術強国の建設に意欲を示したと伝えられた。そんな中国の動きで憂慮されるのが、国際共同事業である国際リニアコライダー(ILC=直線加速器)だ。
 北上山地への設置が待たれるが、なお計画は凍結中で、進ちょく具合が見えてこない。1兆円を超す建設費が一つの課題であり、経済への波及効果も明確ではない。
 中国では、円形加速器計画がある。すでに設計を終え、2021年から2027年にかけて建設する計画のようだ。1周50kmで始め、次いで70kmとする超巨大円形加速器。壮大な計画には、世界の研究者たちに開放する意向のようでもある。
 ILCは、1990年代に高エネルギー加速器研究機構(KEK)が提案し、構想が生まれた。凍結が長引けば、中国に後れを取る懸念がある。世界の研究者たちは、中国へと目を向けることにならないか。科学分野においては、各国とも友好的のようにも見えるが、逆手に取って利用されることが心配だ。人類の有史以来、覇権をめぐる争いは続くからだ。

(風)
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