人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

客観的調査で応援 瀬川爾郎氏(岩手県人連会長、東大名誉教授)が奥州市に提言

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tanko 2016-6-3 16:00
 岩手県人連合会会長などを務めている東京大学名誉教授の瀬川爾郎氏(79)が2日、奥州市役所本庁に小沢昌記市長を訪ね、北上山地が最有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)について意見を交わした。瀬川氏は「よりよい岩盤があることを客観的に示す上でも、航空機を使って重力変化を調べてみてはどうか」などと提言。これまで素粒子物理学者が実施してきた調査のほか、客観的な立場の情報も交え実現に向けて進む必要があると訴えている。(児玉直人)


 瀬川氏は釜石市出身で、現在は東京都日野市に在住。東京大学理学部物理学科卒業後、1986年から1997年まで同大学教授を務めた。専門は地球物理学。退官後は、東海大学海洋学部専任教授や東京海洋大学客員教授、日本測地学会会長などを歴任している。
 長年交流があるNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター理事長の大江昌嗣氏(75)=水沢区川端=から、ILC誘致実現のため応援してほしいとの誘いを受けていたこともあり、来県する機会に合わせ小沢市長を表敬した。
 北上山地は南北に細長い強固な花こう岩帯があり、振動がない実験環境を得られるとして着目。ILCを推進する国内外の素粒子物理学者らの厳密な評価・審査を経て、事実上、世界唯一の建設候補地に選ばれている。
 瀬川氏や大江氏は、国内候補地一本化の際に行われた地質調査(ボーリング調査)や素粒子物理学者らの立地評価について「否定するものではない」と前置きしながら、より北上山地の地質に対する信頼性を高める上で、航空機による重力変化調査の実施を提言した。
 小沢市長は瀬川氏らの提言に理解を示すとともに、「誘致活動の全体を取りまとめている東北ILC推進協議会のような場所で、今のようなお話をしていくことも大切」と述べ、関係自治体や機関が情報を共有し、足並みをそろえて実現に向かっていくことの重要性にも理解を求めた。
 このほか、ILC実現の上で大きなハードルとなっている、国民理解の醸成を図る必要性についても話題に。小沢市長は「さまざまなメディアに取り上げられるよう努力する必要はある。そんな中、本県出身者に瀬川先生のような権威がいて、さらに県人連の会長も務められていることに心強さを感じる」と敬意を表していた。
 表敬後の取材に対し瀬川氏は「トンネル掘削作業と並行しながら地質を調べることもできる。もし落盤が起きた場合、ルート変更を強いられるぐらい重大なダメージなのか、そのまま進めても支障のない規模のものなのか、判断材料を与えることも可能だ」と説明する。
 大江氏は、ILC計画の検討を中心となり進めてきた素粒子物理学者だけでなく、さまざまな科学分野の力を結集すべきだと主張。「実際に建設作業をして『やってみたら、だめでした』となったら大変。二重、三重にチェックをすることは決して悪いことではなく、むしろさまざまなデータがあることは、設計や実際の作業を支える存在になるはずだ。地元に住む私たちとっても、郷土の自然が持っている特徴をより深く知ることができる」と述べている。

写真=小沢昌記市長(右)と意見を交わす瀬川爾郎氏。左は大江昌嗣氏
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