人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【2015元旦号】“研究所最寄り駅”意識を (ILC誘致団体代表の亀卦川富夫さん)

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tanko 2015-1-1 12:20
今昔の大事業 関連性語る

 水沢江刺駅の実現に携わった、奥州市水沢区大町の亀卦川富夫さん(74)。市議や県議を経て、現在は素粒子物理学の実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致団体代表として奔走する。ILC実現への期待が高まる中で迎える駅開業30周年。二つのビッグプロジェクトの「密接な関係」について語ってもらった。(児玉直人)



 私が所属していた水沢青年会議所(水沢JC)が新幹線駅誘致に取り組み始めたのは昭和46年。閣議決定するも国鉄の財政難やオイルショックの影響があって、結局昭和60年3月14日に開業した。駅開業に至るまでは苦難の歴史。あれから30年になろうとしているが、本当にあっという間だなと感じる。
 私や仲間の皆さんは何度も東京に足を運び陳情や関係者との折衝に臨んだ。当時、われわれの声に耳を傾けてくれた元衆院議員椎名悦三郎さんのメモが、1979年の死去後に見つかった。その中に駅誘致に対する思いが記されていた。
 「胆江両郡(胆沢郡と江刺郡)を一つにまとめて新時代に向かわねばならぬ。新水沢駅(現・水沢江刺駅)構想がその所産だ。江刺平野を取り入れ、胆江一丸として岩手県南の開発を招来することが次の時代の目標だ。(中略)開発は人なり。新幹線を食い物にしてはならぬ。これを最高度に活用するのだ」
 私たちの市民運動に対する理解だけでなく、私利私欲に走ってはいけないという政治家として心構えも示しており、深く感銘した。

 ◇  ◇  ◇

 30周年の節目は、人口減少時代という状況下で迎える。私たちは「孫子の時代に悔いを残すな」を合言葉に駅誘致を進めたが、もう一度この観点から新幹線駅の存在意義をみんなで考えるべきではないかと思う。つまり、ILC計画と新幹線駅との関係についてだ。
 北上山地が事実上のILC建設予定地になった。国の誘致決断を待っている状況にあり、駅開業��周年となる今年が、大きなヤマ場になることは間違いない。
 水沢江刺駅は、ILC中央衝突地点想定ポイントから最も近い場所にある新幹線駅だ。国内候補地の選定結果でも、新幹線駅に近いところにメーンキャンパスを設けるべきだと言っている。それを考えると、水沢江刺駅の立地条件はすごくいい。国内外の研究者やその家族、見学訪問者らを迎え入れる機能を配置するなど、駅周辺はさまざまな用途に活用できる。

 ◇  ◇  ◇

 人口減少は日本で一番の課題。今までは、新幹線で都会へ人が出ていった。しかしILCが実現すれば新幹線で人を呼び込むことになる。国が地域創生を進めようとしている中、ILCを中核とした地域社会づくりは非常に意義があるプロジェクトであり、その中で水沢江刺駅が果たす役割はとても大きい。
 「なぜ、在来線と一緒の場所に駅がないのか」という人もいたが、今度は「よくぞここに新幹線駅があったなあ」と思われるようになるかもしれない。そのためにも早急に都市や地域の将来構想(ビジョン)を作るべきだ。
 国鉄が水沢江刺駅建設を正式決定する前から、駅予定地になるであろう羽田地区では、区画整理事業を先行実施した。それと同じように、地元の熱意を行動で示さなければいけない。
 駅構内には待合室機能を兼ねた観光PR施設「南岩手交流プラザ」がある。ILCや県南、沿岸広域圏の将来ビジョンを紹介する常設展示コーナーに活用できないだろうか。近年、北上山地視察や国際会議のため、国内外の研究者たちが降り立っている。そういったPR機能が駅にあってしかるべきではないか。
 3月14日を機に水沢江刺駅とILC、地域創生とを関連付けた具体的な取り組みをもっと考えないといけない。



 きけがわ・とみお 水沢区出身。立教大卒。椎名悦三郎、素夫両衆院議員の秘書を経て、旧水沢市議を1983(昭和58)年から5期20年、2003(平成15)年から岩手県議を2期8年務めた。理事長も経験した水沢JC会員時代に、新幹線駅の誘致運動に携わった。現在はILC誘致の官民連携組織「いわてILC加速器科学推進会議」の代表幹事、水沢日本外交協会会長、国際経済調査会理事などを務める。74歳。

 
写真=新幹線駅誘致運動のために作成したパンフレットを手に、当時を回想する亀卦川富夫さん


新幹線駅設置決定を知らせていた在来線(東北本線)水沢駅前の広告塔。今はILCの誘致実現をPRしている
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