人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILCと未来 次代に(奥州市内全中学校で出前授業スタート)

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tanko 2014-5-21 11:10
 市立中学全12校の2年生を対象に市が本年度初めて実施するILC(国際リニアコライダー)出前授業が20日、江刺区の田原中学校(川邊秀樹校長、生徒18人)を皮切りに始まった。同校では生徒7人が参加し、国立天文台の現役研究者や元エンジニアが指導した。12月中旬までに各校を一巡し、計35クラス・1147人が授業を受ける予定。市はILCをめぐる理解促進に加え、将来を見据えた人材育成にも期待する。
(若林正人)

 素粒子研究施設ILCの国内候補地が北上山地に一本化されたのを受け、市が出前授業を企画。NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)が講師派遣を請け負っている。
 20日の授業は2時限を充てた。1時限目は国立天文台水沢VLBI観測所研究員の沢田聡子さん(44)が指導。電波望遠鏡で銀河を観測している沢田さんは「光も電波も同じ電磁波だが波の長さが違う」などと話し、ブラックホールの仕組みにも触れた。
 2時限目は同実践センターサイエンススクール講師の小野寺喜美男さん(67)が担当。光ファイバー製造技師として民間企業に長年務めた小野寺さんは、ILCでの研究内容を説明したほか、真空放電管や放射線を目視観察できる装置「霧箱」を使った実験も披露した。
 小野寺さんは「ILC建設後は1万人規模の研究者らが滞在する国際都市ができるので、おもてなしが必要」とし、雇用環境の拡充や教育水準の高まりも期待できると解説。「医療や国際交流、観光、行政などさまざまな分野の知識と技術が欠かせず、ILC計画に参加するのは理科系の人だけではない」と伝えた。
 授業を受けた佐藤美緒さん(13)は「学んだ成果を理科の授業に生かしたい」、梅原恭裕君(13)は「ILC建設で岩手の人口が増えるとうれしい」と述べた。
 沢田さんは次回の若柳中(胆沢区)での出前授業も担当する予定で、「何が興味を引いたかを意識し授業内容を濃くしたい」と意気込む。小野寺さんは「ILCの話は難しい面もあるが、授業内容はある程度理解してもらえた」と手応えを示した。
 大江理事長(73)は「この地域は世界に向けて門戸が開かれる可能性を秘めている。将来を担う子どもたちにますます伸びてほしい」と願っていた。

写真=市のILC出前授業を受ける田原中の生徒たち
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