人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

1万分の1「ILC模型」を製作 NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター・大江理事長

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tanko 2013-10-8 5:20
 NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長(72)=国立天文台名誉教授=は、国際リニアコライダー(ILC)で行われる素粒子衝突実験を説明するための模型「ミニチュアILC」を製作した。実物の1万分の1に相当する全長5mの装置。両端から加速された素粒子が、中央の空間で衝突する状態を再現した。11月3日から3日間、水沢区聖天の水沢地区センターで開催される「おらが地区センターまつり」の特別企画展で披露される。

 同地区センターは、ILC実現への機運を盛り上げようと、毎年開催している同まつりの中で、特別企画展「みんな集まれ『ILC応援展』」を実施することに。企画展検討委員会(三浦光章委員長、委員6人)が、大江理事長をはじめ有識者らの助言を得ながら準備を進めている。
 目玉の展示物になる大江理事長の模型装置は、ILCが最大規模に拡張された際の全長(50km)の1万分の1に相当。両側に傾斜のついた2.3mの直線ガイドレールがあり、電子と陽電子に見立てた直径1.7cmの金属球を転がし、中央で衝突させる――という仕組みだ。
 実際のILC加速器は、大がかりな電気装置やマイナス271度の液体ヘリウムなどを使用して電子や陽電子を加速させる。模型では、物質の加速を簡潔に再現するため、身近な部材で傾斜を作り、地球の重力によって電子などに見立てた金属球を加速させている。
 「1.7cmの金属球でさえ、タイミングやガイドレールの位置がちょっと狂えば衝突しない。目には見えない電子、陽電子ともなれば、とてつもなく難しい。そんな高度な技術を要求される実験が、北上山地で行われるという点を実感してもらえたら」と大江理事長。企画展では、背景に北上山地の山並みの写真などを配置し、来場者にイメージを膨らませてもらう。
 これまでのILCの周知活動では、コンピューターグラフィックス(CG)動画や印刷物に頼る部分が多かった。東北ILC推進協議会事務局でも「ILCを説明するような模型装置を自作した例は、東北の誘致関係者の中では少なくとも聞いたことがない」と話す。
 企画展ではこのほか、地質調査で採取した花こう岩のサンプルや関連新聞記事などを展示。科学実験の体験や講演会も予定する。三浦委員長(69)は「大江理事長らの協力で充実した企画展になりそう。市民の多くにILCに対する理解の輪が広がれば」と期待を込める。

写真=大江昌嗣理事長が製作したミニチュアILC。手前と奥の傾斜から金属球を同時に転がすと、衝突点に見立てた中央の空間で金属球がぶつかる
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