人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載・ILC新たなステージへ:5】 まちづくりに民力不可欠 公共交通充実も課題

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tanko 2013-9-7 5:00
 国内候補地を一本化したILC立地評価会議は、北上山地を最適とする評価に付帯し、中央キャンパスの場所について「新幹線沿線の立地」を推奨している。北上山地の最寄り駅は、水沢江刺駅か一ノ関駅だ。
 水沢江刺駅は、古くから鋳物産業で栄えた、こぢんまりとした町の中にある。97(平成9)年、旧水沢市は同駅や現在の「ふれあいの丘公園」周辺に、先端科学研究機関誘致を中心としたまちづくり構想「みずさわシンフォニーランド」を描いている。
 中央キャンパスの場所もさることながら、住環境や短期滞在者向けの宿泊施設、商業施設などの整備が必要となってくる。水沢江刺駅と一ノ関駅の立地環境、また花北地域や沿岸地域も視野に入れながらのまちづくりを描く準備も始めなくてはいけない。
 ただ、国や地方自治体の財力やノウハウだけで対応しきれる話ではない。東北ILC推進協議会の国際学術都市調査研究分科会メンバーなどを務める、元東北大学大学院教授の大村虔一氏は、公的事業に民間のノウハウを取り入れるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=官民連携)や民間資金活用による社会資本整備(PFI)の導入を提唱している。

 「外国人にしてみれば移動の2時間、3時間は『近い』の部類に入る」
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和名誉教授は今月1日、一関市内の講演会でこう語った。
 海外から北上山地へは、成田と羽田の両国際空港から鉄道を1回ないし2回乗り継げば到着できる。ILCに関連した学術機関であるKEKや東京大学、各国の大使館が集まる都心とも新幹線や高速道路網によって容易にアクセスできる。
 課題は空港、在来線、バス路線を含めた既存の公共交通網の機能強化だ。地方の公共交通は、人口減やマイカー普及のあおりで利便性が低下している。
 水沢江刺駅の場合、マイカー利用者にとっては無料駐車場など便利な側面もあるが、他地域から来訪した人の場合、誰かに送迎を頼むか、レンタカーやタクシーを使うしかない。同駅から水沢市街地へと向かう県交通の路線バスは1日数本。新幹線ダイヤを意識した市街地とのシャトル機能を果たしているとは言い難い。市営「Zバス」もあるが、市街地に到達するまでさまざまな場所を経由するため時間が掛かる。
 大村氏は、一ノ関駅から沿岸部を結ぶJR大船渡線の存在に着目。「沿線には摺沢や千厩といった、かつての基礎自治体の姿が残っている。まちづくりの基盤すべきだ」と主張している。
 ただ、現在は1日11往復で運転間隔が2時間以上開くこともある。KEKの吉岡名誉教授も「今住んでいる人には、その良さが認識しにくいだろうが、鉄道が走っているというのは、外国人にとって非常に意味がある。ILCができたら30分に1本ぐらい走らせてもいい」と夢を描く。
 空の便に関しても仙台、花巻の機能が重要視される。花巻は東北新幹線開業を機に羽田便が休止状態。滑走路を2500mに拡張し国際線受け入れにも対応したが、ここ数年、定期便の機種の小型化が進み、拡張整備で得られた機能を十分に発揮しきれていない。

 北上山地の地中に偶然にも存在した強固な岩盤が、ILC計画を呼び込むきっかけとなった。まちづくり一つをとっても、地方における重要な課題。大小さまざまな問題点を産学官、そして住民が一体となって解決していくチャンスとも言えよう。
(おわり)

写真=JR水沢江刺駅の背後には北上山地の山々が迫る。ILC建設想定地までの距離は問題ないが、現状では市街地アクセスなど二次交通に課題が残る
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