人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載・ILC新たなステージへ:3】 自然と共に歩む知恵 胆沢ダム建設が好事例

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tanko 2013-9-5 9:10
 「リニアコライダーは必要ですか?」「これって、本当に大丈夫なの?」
 福岡県を拠点に活動している「せふり山系 森と水のねっこわーく」は、「ILCを日本に誘致(建設)しないことを求める全国署名」を実施している市民団体。その関係者が8月12日、東京・六本木の日本学術会議のILC検討委員会終了後、居合わせた報道関係者に資料を配布して回った。署名には「不要な自然破壊はやめろ」「疑わしきものは誘致せず」「大型開発がしたいだけ。人のためならず、未来のためにもならず」などの自由意見も寄せられており、東北在住者の声も。署名は安倍晋三首相宛に提出するという。
 ILCに対する懐疑的、批判的な意見はもちろん「ゼロ」ではない。特に福島第1原発事故後は、放射能問題や科学技術に対する不安や不信感が高まった。政治や行政へのうっせきした不満、景気の低迷などさまざまな要因も絡み合っているようだ。
 自然の保護と、人の営みの中で生じる開発行為。相反する事象への対応を上手にこなしてきた好事例が、ILC国内候補地の北上山地の近くで繰り広げられてきた。胆沢ダム建設工事に伴う、周辺自然環境の保護対策だ。
 胆沢ダムの堤体は、付近の山の土や岩石を大量に使用。水没エリアの木々も伐採された。しかし、「自然破壊になるから建設反対といった動きは皆無に等しかった」と旧胆沢町助役の佐々木寿雄さん(82)は語る。
 佐々木さんは15年間にわたり、ダム周辺でブナの森づくりを推進する「エコワークいさわ水の郷」の代表を務めてきた。「活動開始当時、ダム工事事務所の所長ら建設を進める側の人たちは、私たちの思いに大変な理解を示してくれた。このことが非常に大きい」と振り返る。
 佐々木さんの団体のほかにも、森林の動植物観察事業などを展開するNPO法人「エコ・スタディいさわ」や「胆沢ダム水資源のブナ原生林を守る会」といった地元住民らの組織がある。いずれも国土交通省胆沢ダム工事事務所など官側と連携。地元と良好な関係を築き、環境対策や関連の学習イベントなどを実施してきた。
 エコ・スタディいさわ副理事長の村上英明さん(78)は「胆沢ダムでも希少種を移植するなど、識者の指導を得ながらやってきた。工事事務所は、しっかりとその辺を受け止め、行動してくれた」と話す。
 県内各地でILCの話題も含めた科学授業を繰り広げてきた独マインツ大学の斎藤武彦教授(42)は、ILCに対する賛否の声を分析しながら、こう訴える。
 「確かにILCは良い点だけではない。今の大人たちが建設的に解決し、良い部分を次世代に残していく連鎖反応がとても大事になる。議論とは自分たちの主張を押し通し、勝つまでやり続ける『戦い』では決してない。戦うことより、知恵を出し合ってほしい」
(つづく)
写真=胆沢ダム工事現場周辺でのブナの植樹作業(資料)。北上山地のすぐ近くには、開発と自然保護をうまく共存させた好事例がある
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