人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

木村栄の書 間近に(来月2日から特別展)

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tanko 2024-2-20 17:40

写真=木村栄が揮毫した水沢商業高校の校訓「明浄直」

 水沢緯度観測所初代所長を務め、「Z項」を発見した天文学者・木村栄(きむら・ひさし、1870〜1943)が揮毫した書を一堂に集めた特別企画展「木村栄の書展」は、3月2日から10日まで水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館で開かれる。国立科学博物館(科博)の馬場幸栄研究員と胆江日日新聞社が主催。元観測所員の家族や神社、学校などに展示・保管されている13点を公開する初の試み。書跡を間近に見ながら、木村と地域とのつながりを感じる機会とする。
(児玉直人)

 馬場研究員は緯度観測所の後身、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の一室で500枚を超えるガラス乾板写真を発見。復元によって、観測所の歴史や人物関係をひもといている。本紙は昨年4月から「緯度観測所と地域の人々」と題し、馬場さんの研究成果を連載している。
 所員や地元名士などからの求めに応じ、たくさんの書を残した木村。その一部が元所員宅や神社、学校などに現存している。「一堂に集め展覧会を開催したい」との馬場研究員の希望に、本紙が賛同し共同開催する。
 北陸・金沢に生まれた木村は、幼少期から養父の木村民衛が経営する塾で勉学の日々を過ごした。その証しとも言えるのが4歳と8歳の時の書。原物が市立水沢図書館、複製が宇宙遊学館向かいの木村栄記念館に展示されている。
 馬場研究員によると、木村は研究の傍ら、多彩な才能を発揮し、人材育成や地域の文化振興などにも力を注いだ。書道もその一つ。自分の誕生日になると、所長官舎で何枚もの書を揮毫し、所員らにプレゼントしていたという。
 しかし、所有者の子孫や後任の施設管理者が処分したり、破損や所在不明になったりした書も少なくないとみられる。また「木村栄」ではなく「千山(せんざん)」という雅号で名が記されているため、誰が書いたか分からない人もいるという。
 特別企画展で紹介予定の書は13点。このうち「明浄直(めい・じょう・ちょく)」と書かれた作品は県立水沢商業高校の校訓で、校長室に飾られている。市役所本庁付近に校舎があった時代、玄関に掲げられ朝晩に読み上げられていたという。
 盛岡市の平井美根子さん所有の作品は、母親の飯坂タミ子さんに贈られた「虚心坦懐」。タミ子さんは観測所の計算係を務め、抜きんでた正確さから「計算の神様」と呼ばれていた。
 このほか地域の集会施設、個人宅で保管されていたものなども展示。会場へ持ち込むことが不可能なものは写真で紹介する。
 開催期間中、同3日午前11時半から宇宙遊学館で、馬場研究員による講演会を開く。聴講無料で事前申し込み不要。
 作品鑑賞や講演会の聴講には、宇宙遊学館の入館料(一般300円、児童生徒150円)が必要となる。5日は休館日のため鑑賞できない。
 問い合わせは胆江日日新聞社(電話0197・24・2244)へ。
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