人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

小さくたって夢満載! 超小型人工衛星の専門家が講演(水沢)

投稿者 : 
tanko 2023-7-28 8:10

写真=超小型衛星の話を高校生や一般市民に分かりやすく説明する中須賀真一教授(右奥)

 打ち上げ予定だった人工衛星「Nano―JASMINE(ナノ・ジャスミン)」の展示公開を記念した特別講演会がこのほど、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で開かれた。天文学研究から日常生活を支える各種サービスなどに至るまで、超小型人工衛星の利活用の幅が今後ますます広がりを見せる中、2人の専門家がその意義と今後の展開などについて解説。聴講者の中には高校生たちもおり、熱心に質問していた。
 ナノ・ジャスミンは天の川銀河中心部の構造解明、地球型惑星の探査を目的とした「JASMINEプロジェクト」の技術検証衛星として、打ち上げられる予定だった。しかし、打ち上げに携わる関係国の情勢不安などが影響し、宇宙に飛び立つことはかなわなかった。プロジェクトの周知広報、超小型人工衛星の学習用にと同館に寄贈された。
 講演会では、前半に国立天文台同プロジェクト長の郷田直樹教授が、プロジェクトの概要や位置天文学の基礎知識を解説。「天体の位置を測るという単純なことではあるが、対象の星が遠過ぎるので非常に難しい。天の川銀河中心の天体の距離や位置を正確に測量するのは、水沢から仙台市内にいる人の髪の毛1本よりもさらに細い大きさを見るようなもの」と説明した。
 後半は東京大学大学院の中須賀真一教授が、工学分野の視点で人工衛星の構造などを分かりやすく説明した。中須賀教授は、都内のベンチャー企業が県立花巻北高校を舞台に推進している人工衛星打ち上げプロジェクトに協力。衛星は来年にも打ち上げる予定という。今回の講演会にも同校の生徒が駆け付けた。
 「日本は大型衛星を打ち上げる路線を進んできたが、重いとそれだけコストがかかる。これからは重さ100km以下の超小型衛星の時代だ」と中須賀教授。日本人が作る弁当を例に示し「大きさが決まっている空間に、栄養バランスを考えて、さまざまな性質のある食材を入れ、見た目まで意識するのを得意としている。超小型衛星はまさに弁当箱ようなもので、世界に勝負できる」と語りかけた。
 高校生からは、ナノ・ジャスミンのように、国際情勢が衛星打ち上げに与える影響などに関する鋭い質問も。超小型衛星が持つ可能性に理解を深めていた。
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