人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市西部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致 支持せず(学術会議、文科省に回答書提出)

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tanko 2018-12-20 11:30
 【東京=児玉直人】 日本学術会議(山極寿一会長)は19日、文部科学省から審議依頼されていた国際リニアコライダー(ILC)見直し計画について、科学的意義は認めながら「現状で提示されている計画内容、準備内容から判断して、日本に誘致することを支持するに至らない」とする回答を同省に提出。政府におけるILC誘致の意思表明について、「判断は慎重になされるべきである」とした。ILC推進派の研究者や国会議連、経済関係者らによる諸団体は同日、相次ぎコメントを発表。科学的意義を認めている点を重視し、指摘された課題への対応も進めながら公式な国際協議の開始や国民理解の形成に努めていくとした。

 同会議は今年7月の審議依頼を受け、ILC見直し計画案に対する検討委員会(委員長・家泰弘日本学術振興会理事、委員10人)を設置し、計11回の会合を開き審議してきた。
 提出された回答内容は、11月14日に示された「回答案」と趣旨に大きな変更点はない。科学的意義を認めながらも▽素粒子物理学分野における諸研究プロジェクトへの人材配置や予算の配分にまで踏み込んだ議論の段階には至っていない▽他の諸学問分野の大型研究計画も含めた広い視野でのILCの位置付けについてはさらに広範の議論が必要▽地域振興や土木工事、放射化物生成の環境への影響について、国民、特に建設候補地の地域住民に対し一層充実した対話が求められる――などの問題点、課題を指摘した。
 推進派研究者から「事実誤認」と指摘があった回答案の「当該分野での理解が得られていない」とする趣旨の表記については、「高エネルギー素粒子物理学のコミュニティーにおいて合意が得られている」と改められた。
 総合所見では「国内誘致について現状では支持できず、政府の意思表明に関する判断は、慎重になされるべきだ」と記した。加えて、実験施設の巨大化を前提とする研究スタイルは「いずれ限界に達する」とし、「ビッグサイエンスの将来の在り方は学術界全体で考えなければならない課題」とまとめた。
 19日、東京都港区の学術会議大会議室で開かれた学術会議第273回幹事会で、家委員長が回答書の内容を説明。目立った異論はなく承認された。
 家委員長はそのまま文科省に出向き、磯谷桂介・研究振興局長に回答書を提出。磯谷局長と非公開の懇談を終えた後、報道陣の取材に応じた家委員長は「巨額予算の問題もさることながら、建設開始から実験終了までの間、現状の日本国内の人的資源だけでは足りず、明白な見通しが得られていないという点、(ILC用の)加速器自体も簡単な装置ではなく検討の余地がまだあるという指摘もあり、現時点でゴーサインを出すには至らないという結論になった」と説明した。
 慎重な見解を示した学術会議側の見解に対し、政治側の判断で誘致に向けた動きが前進した場合について問うと、「そのことに関してはコメントする立場にはない」との考えを示した。
 誘致推進の立場にあるILC国会議連の河村建夫会長、東北ILC推進協議会の高橋宏明代表、素粒子物理学者を中心とする研究者グループは同日、学術会議の回答書提出を受けてのコメントを相次いで表明。このうち河村会長は「誘致実現は政治の使命として進めていくべき課題と捉えている」と強調した。

写真=磯谷桂介・研究振興局長(右)に回答書を手渡す家泰弘委員長(文部科学省研究振興局長室)
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