【2015元旦号】奥州の玄関口 新時代へ(水沢江刺駅 今春で30周年)
- 投稿者 :
- tanko 2015-1-1 12:10
水沢出身の後藤新平は、初代鉄道院総裁で広軌論(新幹線規格による線路敷設)の提唱者でもあった。ボーイスカウトの少年との立像は2007年秋、駅東側の羽黒山から移設された。乗降客やさっそうと行き交う列車を見守る
「この駅は南いわての新たな発展を願い 住民の熱意と協力により建設されたものである」
奥州市水沢区羽田町の東北新幹線水沢江刺駅。その正面口脇の岩にはめ込まれた銘板の一文には、十数年に及んだ駅誘致運動の苦労と開業の喜び、将来へ向けた希望が込められている。
同駅は今年3月14日で開業30周年を迎える。新幹線駅の誕生はビジネスや観光、そして人々の暮らし、地域社会の姿にさまざまな変化をもたらした。
日本初の請願駅で、建設費は全額地元負担。粘り強い要望活動、署名運動、募金集め……。「おらほの駅」を実現させたいという強い思いが、当時を知る人の話や各種資料などから伝わってくる。
月日が経過し、駅誕生の経過を知らない世代も増えてきている。水や空気のごとく、あって当たり前のような存在となっているが、「新幹線駅誕生」に情熱を注いだ人たちのの努力を今一度見つめ直してみたいものだ。
高速交通網の発達による「ストロー効果」を指摘する見解も少なくない。都市と地方との時間的距離の短縮によって、最新のモノや情報があふれ、華やかさ漂う都会へ行きやすくなった。地方経済にも影響を与えた。若い人材も流出し、地方のマンパワーは著しく低下している。今、地方には都会にない魅力の創出が求められている。
「中央キャンパスは、仙台・東京へのアクセス利便性を有し、研究・生活環境に優れる新幹線沿線の立地を強く推奨する」
素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地を北上山地に選定したILC立地評価会議は、ILC中央キャンパス設置場所について「新幹線沿線」という要件を付した。人口流出、地方衰退という現実に直面する中、国際研究施設の最寄り駅になる可能性が十分にある。
地域住民のための駅でありつつ、国際学術研究都市のターミナルとしての役割も――。新時代到来を願いながら、節目の年を迎える。
最高時速320kmで東京へと向かう「はやぶさ・こまち」号。新幹線路線網は2016年春、津軽海峡を越え北海道・函館に達する(水沢江刺駅と水沢区羽田中心部を望む高台から)
駅開業までの道のりは長く険しかったが、粘り強く住民署名や要望活動などを重ねた
開業当日、関係者は万感の思いを込めてテープカットした
水沢江刺駅に対する思いが記された銘板。駅正面口脇にある