ILC子ども科学相談室・33 英語を話せないとだめ?
- 投稿者 :
- tanko 2018-7-20 10:40
国際リニアコライダー(ILC)ができると、海外の人たちが大勢来ます。もともとこの地域に住んでいる私たちも英語をちゃんと勉強して、話さなくてはいけないのでしょうか?
話せるほうがいいです
ILCが来たら「地域住民も英語を話せなくてはいけない」という人もいれば、「ここに住むようになる外国人は必死に日本語を覚えてくる。むしろ私たちは日本語で話してあげたほうがいい」と考えている人もいます。
英語はコミュニケーションを図るための道具です。話せないより話せたほうがいいと思います。
ILCは、49の国と地域にある300以上の大学や研究所の科学者や研究者、エンジニア2400人以上が参加するビッグプロジェクトです。彼らのほとんどは家族同伴で来日することが予想されます。この方々の母国語は英語以外にドイツ語、フランス語、中国語、韓国語など数十カ国以上の言語になると思われますが、研究所や国際会議などで使われる共通語は英語。したがって英語が話せれば、それだけ意思疎通がスムーズにうまくいくことは確かです。
ここに興味深いリポートがあります。2017年8月、欧州原子核研究機構(CERN)やドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)などで働いている科学者や研究者ら24カ国、76人に対し、日本にILCが建設された場合を想像しながら「言葉や生活についてどのように対応しますか」「来日することが決まったら、日本のどのようなところに住みたいですか」「医療やお子さんの教育に心配はないですか」など、日常生活に関することについて、アンケートが行われました。
「ILCに来る前に、日本語を勉強する気がありますか」「あるとすれば、どのようにして日本語を勉強したいですか」という問いもありました。有効回答者67人のうち、日本語に対して「興味がない」と回答した人はわずか7人。90%以上の人が興味を持ち、しかも「日常会話ができる程度にまでなりたい」と回答しています。そしてほとんどの人が、「学校やグループで学びたい」と思っているようです。
少なくとも調査に協力してくれた外国人研究者のほとんどは、日本語に興味があり、日本人との交流を望んでいるようです。子どもの教育のために「インターナショナル・スクールがなければいやだ」という雰囲気ではなく、会話についてもほとんど心配していないようです。
彼らは積極的に日本語を覚えようとしているし、意欲もあるのです。日本文化(異文化)を何でも吸収したい、という意気込みも強い。つまり私たち地元の日本人は、分かりやすい正しい日本語でゆっくり話してあげれば、むしろ相手に喜ばれるかもしれません。
このように「英語でなければ絶対だめ」と極端に考えないことも一方では大切なのかもしれません。コミュニケーションを取る方法はいくらでもあるのです。
重要なのは、いかに真面目に相手と向き合うかです。私たち日本人はもちろんですが、たとえ外国人でも英語を母国語としていない人にとって、英語は外国語なのです。
ただし医療機関や行政機関など、仕事によっては専門用語を含め、英語でコミュニケーションが十分取れるようにしなければいけないでしょうし、すぐに対応できる能力を持った人を複数人配置する必要はあります。また公共施設や交通機関の標識、案内板や地図などは多言語表示が必要です。さらにより精度のよい言語翻訳機の設置やインターネット網の完備が必要と思われます。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)
番記者のつぶやき
中東さんの今回の文中には、英語でのコミュニケーションが必要な仕事の一例として、医療機関や行政機関を挙げていました。が、ILCの取材を進めていく中で私たち新聞記者も、英語でのコミュニケーション能力が必要だなと痛感させられます。
会話はもちろん、資料やインターネット上の関連情報も英語で書かれています。分からない部分は、知人の研究者や奥州市国際交流協会のスタッフの方に聞いて翻訳しましたが、「直接自分の考えや質問したいことを英語で外国人研究者に伝えられたらな」と思うことが何度もありました。英語で楽しそうに会話をしている日本人研究者の姿を見て、うらやましく思いました。
ILCの会議では科学の専門用語が、ばんばん飛び交います。日本語で会話をしているのに、意味が分からないこともしばしば。言語や専門用語がコミュニケーションの障壁にならないような雰囲気づくりも、大切になると思います。
(児玉直人)
写真=接客で使用する英会話を学ぶ金融機関の関係者たち(2014年8月に開かれた企業人英語研修会)
話せるほうがいいです
ILCが来たら「地域住民も英語を話せなくてはいけない」という人もいれば、「ここに住むようになる外国人は必死に日本語を覚えてくる。むしろ私たちは日本語で話してあげたほうがいい」と考えている人もいます。
英語はコミュニケーションを図るための道具です。話せないより話せたほうがいいと思います。
ILCは、49の国と地域にある300以上の大学や研究所の科学者や研究者、エンジニア2400人以上が参加するビッグプロジェクトです。彼らのほとんどは家族同伴で来日することが予想されます。この方々の母国語は英語以外にドイツ語、フランス語、中国語、韓国語など数十カ国以上の言語になると思われますが、研究所や国際会議などで使われる共通語は英語。したがって英語が話せれば、それだけ意思疎通がスムーズにうまくいくことは確かです。
ここに興味深いリポートがあります。2017年8月、欧州原子核研究機構(CERN)やドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)などで働いている科学者や研究者ら24カ国、76人に対し、日本にILCが建設された場合を想像しながら「言葉や生活についてどのように対応しますか」「来日することが決まったら、日本のどのようなところに住みたいですか」「医療やお子さんの教育に心配はないですか」など、日常生活に関することについて、アンケートが行われました。
「ILCに来る前に、日本語を勉強する気がありますか」「あるとすれば、どのようにして日本語を勉強したいですか」という問いもありました。有効回答者67人のうち、日本語に対して「興味がない」と回答した人はわずか7人。90%以上の人が興味を持ち、しかも「日常会話ができる程度にまでなりたい」と回答しています。そしてほとんどの人が、「学校やグループで学びたい」と思っているようです。
少なくとも調査に協力してくれた外国人研究者のほとんどは、日本語に興味があり、日本人との交流を望んでいるようです。子どもの教育のために「インターナショナル・スクールがなければいやだ」という雰囲気ではなく、会話についてもほとんど心配していないようです。
彼らは積極的に日本語を覚えようとしているし、意欲もあるのです。日本文化(異文化)を何でも吸収したい、という意気込みも強い。つまり私たち地元の日本人は、分かりやすい正しい日本語でゆっくり話してあげれば、むしろ相手に喜ばれるかもしれません。
このように「英語でなければ絶対だめ」と極端に考えないことも一方では大切なのかもしれません。コミュニケーションを取る方法はいくらでもあるのです。
重要なのは、いかに真面目に相手と向き合うかです。私たち日本人はもちろんですが、たとえ外国人でも英語を母国語としていない人にとって、英語は外国語なのです。
ただし医療機関や行政機関など、仕事によっては専門用語を含め、英語でコミュニケーションが十分取れるようにしなければいけないでしょうし、すぐに対応できる能力を持った人を複数人配置する必要はあります。また公共施設や交通機関の標識、案内板や地図などは多言語表示が必要です。さらにより精度のよい言語翻訳機の設置やインターネット網の完備が必要と思われます。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)
番記者のつぶやき
中東さんの今回の文中には、英語でのコミュニケーションが必要な仕事の一例として、医療機関や行政機関を挙げていました。が、ILCの取材を進めていく中で私たち新聞記者も、英語でのコミュニケーション能力が必要だなと痛感させられます。
会話はもちろん、資料やインターネット上の関連情報も英語で書かれています。分からない部分は、知人の研究者や奥州市国際交流協会のスタッフの方に聞いて翻訳しましたが、「直接自分の考えや質問したいことを英語で外国人研究者に伝えられたらな」と思うことが何度もありました。英語で楽しそうに会話をしている日本人研究者の姿を見て、うらやましく思いました。
ILCの会議では科学の専門用語が、ばんばん飛び交います。日本語で会話をしているのに、意味が分からないこともしばしば。言語や専門用語がコミュニケーションの障壁にならないような雰囲気づくりも、大切になると思います。
(児玉直人)
写真=接客で使用する英会話を学ぶ金融機関の関係者たち(2014年8月に開かれた企業人英語研修会)