特集「東北の強みは何か」 その2 (5月30日開催のパネルディスカッションから)
- 投稿者 :
- tanko 2013-6-30 5:10
吉 岡…私が所属する高エネルギー加速器研究機構(KEK)で長年、評議員としてお世話になっており、ビジネスや人材育成の面でものすごい経験をお持ちの内永さんの見解もお聞きしたい。
内 永…ILC誘致を取り巻く中で、非常に大事なる問題の一つが人材だ。
私はIBMで開発製造のトップをしていた。IBMは、世界中の研究所が互いに競争して研究開発の仕事をとってくる。日本にも6000人近くの研究・開発・製造の人間がいる。
ところが、日本と世界のスタッフを比べたとき、いつも残念なことがある。日本のスタッフは技術力は十分。しかし、新たな概念への対応や統率力に欠けていている。周辺のアジア諸国にもその辺の能力が負けてしまい、仕事のメーン部分を他国に持っていかれてしまうことがある。
地球規模で物事が進む世界の中では、高いコミュニケーション能力や提案能力を発揮する必要がある。日本という単一的な環境の中ではない場所で、自分たちをいかに認めてもらえるかが大切だ。
もちろん、単一的環境だからこその強さが日本にはあり、過去には素晴らしい成功を収めてきたこともある。それに、日本のすべての分野がグローバル社会の中で劣っているわけでもない。
特に日本の物理学者は極めて多様性に富んでいて、国際社会でものすごい統率力を発揮している。例えば、CERN(スイスにある欧州合同原子核研究機構)でも、リーダーシップを発揮している。
CERNと同じような状況がILC建設地周辺で起きるなら、人材育成の面でもすごい力が生まれ、子供たちに夢を持たせることになる。ILCは経済的効果だけでなく、人材育成という大きな効果も得られる。
吉 岡…村井知事にもう少し東北の持つ潜在能力を語ってもらいたい。
村 井…宮城のことをPRすると、一つは民営化を進めている仙台空港には3000mの滑走路がある。欧米の外国人が直行便で宮城に来ることも可能だ。
二つ目は東北大学を有している点。特許公開件数が国内大学でトップの状態を続けており、素晴らしい成果を出している。ノーベル賞受賞者も東北大から出ている。
三つ目は、大都市の仙台市を抱えている点。研究者も時には気分転換をしたい。仙台市が持つ素晴らしい地域都市能力が発揮されるだろう。
吉 岡…達増知事はどうか?
達 増…岩手は産学官民による連携の取り組みが盛んだ。こうした既存の産学官ネットワークとILC国際研究所との連携により、波及効果を最大化できる。
交通アクセスも仙台空港が発展するし、東北新幹線も「はやぶさ」で2時間�q分。首都圏とのアクセスも便利になっている。
周囲には温泉やスキー場、ゴルフ場もあり、豊かな自然がある。研究者にとって頭を空っぽにして、体と心をリフレッシュすることは大事である。
吉 岡…それでは最後に内永さんから、ILCを核とした東北の将来像についてまとめてほしい。
内 永…東北大の特許の話題がたまたま出たが、ILCやそれを支える技術の中には当然、特許物件の技術が出てくる。
日本は特許物件の数は世界で2位。1位はアメリカだ。ところが、特許物件を活用して業績アップに結び付けている企業は、アメリカの10分の1しかない。
日本は、素晴らしい技術を山ほど生み出しているのに、何故かビジネスにうまくつながらない。私はこれを「技術とビジネスの間の死の谷」と言っている。この「死の谷」にどう橋をかけるかが大きな挑戦となる。この挑戦ができる環境を日本に築く上でも、ILCは非常に役に立つだろう。
日本の技術力がビジネスと結び付けなければ、何のためにILCを誘致したのか分からなくなる。そういう意味で、日本人にとってILCは新たな挑戦の舞台になる。
日本はいい意味で、誰かがやったのをうまく組み合わせ、より素晴らしいものを生み出すのが得意なお国柄。日本人の自信と実績に結び付いていくことが、ILCの大きなポイントになる。
こういう先進的な技術を生み出す取り組みは、海外の場合、軍事産業を舞台として行われてきた。当然、日本ではそれができない。
そうなると宇宙とか科学的なものでやるしかない。先進的な技術を生みビジネスにもつなげていくことにより、40兆円とも言われる経済効果は決して夢ではない。
写真=聴講する首都圏の企業関係者や東北の誘致推進組織メンバーら
内 永…ILC誘致を取り巻く中で、非常に大事なる問題の一つが人材だ。
私はIBMで開発製造のトップをしていた。IBMは、世界中の研究所が互いに競争して研究開発の仕事をとってくる。日本にも6000人近くの研究・開発・製造の人間がいる。
ところが、日本と世界のスタッフを比べたとき、いつも残念なことがある。日本のスタッフは技術力は十分。しかし、新たな概念への対応や統率力に欠けていている。周辺のアジア諸国にもその辺の能力が負けてしまい、仕事のメーン部分を他国に持っていかれてしまうことがある。
地球規模で物事が進む世界の中では、高いコミュニケーション能力や提案能力を発揮する必要がある。日本という単一的な環境の中ではない場所で、自分たちをいかに認めてもらえるかが大切だ。
もちろん、単一的環境だからこその強さが日本にはあり、過去には素晴らしい成功を収めてきたこともある。それに、日本のすべての分野がグローバル社会の中で劣っているわけでもない。
特に日本の物理学者は極めて多様性に富んでいて、国際社会でものすごい統率力を発揮している。例えば、CERN(スイスにある欧州合同原子核研究機構)でも、リーダーシップを発揮している。
CERNと同じような状況がILC建設地周辺で起きるなら、人材育成の面でもすごい力が生まれ、子供たちに夢を持たせることになる。ILCは経済的効果だけでなく、人材育成という大きな効果も得られる。
吉 岡…村井知事にもう少し東北の持つ潜在能力を語ってもらいたい。
村 井…宮城のことをPRすると、一つは民営化を進めている仙台空港には3000mの滑走路がある。欧米の外国人が直行便で宮城に来ることも可能だ。
二つ目は東北大学を有している点。特許公開件数が国内大学でトップの状態を続けており、素晴らしい成果を出している。ノーベル賞受賞者も東北大から出ている。
三つ目は、大都市の仙台市を抱えている点。研究者も時には気分転換をしたい。仙台市が持つ素晴らしい地域都市能力が発揮されるだろう。
吉 岡…達増知事はどうか?
達 増…岩手は産学官民による連携の取り組みが盛んだ。こうした既存の産学官ネットワークとILC国際研究所との連携により、波及効果を最大化できる。
交通アクセスも仙台空港が発展するし、東北新幹線も「はやぶさ」で2時間�q分。首都圏とのアクセスも便利になっている。
周囲には温泉やスキー場、ゴルフ場もあり、豊かな自然がある。研究者にとって頭を空っぽにして、体と心をリフレッシュすることは大事である。
吉 岡…それでは最後に内永さんから、ILCを核とした東北の将来像についてまとめてほしい。
内 永…東北大の特許の話題がたまたま出たが、ILCやそれを支える技術の中には当然、特許物件の技術が出てくる。
日本は特許物件の数は世界で2位。1位はアメリカだ。ところが、特許物件を活用して業績アップに結び付けている企業は、アメリカの10分の1しかない。
日本は、素晴らしい技術を山ほど生み出しているのに、何故かビジネスにうまくつながらない。私はこれを「技術とビジネスの間の死の谷」と言っている。この「死の谷」にどう橋をかけるかが大きな挑戦となる。この挑戦ができる環境を日本に築く上でも、ILCは非常に役に立つだろう。
日本の技術力がビジネスと結び付けなければ、何のためにILCを誘致したのか分からなくなる。そういう意味で、日本人にとってILCは新たな挑戦の舞台になる。
日本はいい意味で、誰かがやったのをうまく組み合わせ、より素晴らしいものを生み出すのが得意なお国柄。日本人の自信と実績に結び付いていくことが、ILCの大きなポイントになる。
こういう先進的な技術を生み出す取り組みは、海外の場合、軍事産業を舞台として行われてきた。当然、日本ではそれができない。
そうなると宇宙とか科学的なものでやるしかない。先進的な技術を生みビジネスにもつなげていくことにより、40兆円とも言われる経済効果は決して夢ではない。
写真=聴講する首都圏の企業関係者や東北の誘致推進組織メンバーら