人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市西部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-11-29 15:00
 2020年の東京五輪・パラリンピックに続き、2025年には大阪で万博(万国博覧会)が開かれる。国際的な一大イベントが立て続きに開かれるのだから、その経済効果を期待している人も多かろう。
 ただ、人手不足や決して余裕があるわけではない財政との兼ね合いはどうなるのか。ある程度、モノも豊かになり価値観も多様化している。「見てみたい、行ってみたい」という気持ちと、「そんなことよりも……」という気持ちが入り交じる。
 「こっちのほうにも力を入れてくれ」という嘆き節が聞こえてきそうなのが、同じく「国際」の名がつくプロジェクト「ILC(国際リニアコライダー)」だろう。五輪、万博に比べれば明らかに知名度が低い。五輪、万博をしのぐ効果があると関係者は自信を持って主張するが、それがなかなか伝わらない。歯がゆいものだ。
(児玉直人)
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tanko 2018-11-29 15:00
奥州市観光物産協会(菊池達哉会長)主催の接遇用外国語セミナーは28日、水沢佐倉河のプラザイン水沢で開かれた。観光やビジネスで県内・市内を訪れる外国人客が今後さらに増えると見込まれる中、受け入れ態勢の充実を図ろうと実施。外国出身者らを講師に、宿泊施設や同協会のスタッフが接客時の英会話などを実践的に学んだ。

  同セミナーは県旅館・ホテル生活衛生同業組合奥州支部、市国際交流協会の共催。2016(平成28)年度に初級・実践編を行い、重要な単語やフレーズを覚え、接遇英会話の基礎を学習した。今回はより少人数で計4回開き、実際に宿泊施設で使用されているメニュー表や、同物産協会が同交流協会の協力を得て2016年度に作成した「多言語指差しガイドマニュアル」などを活用した。
 28日はセミナー最終日。同交流協会スタッフやILC国際化推進員、外国語指導助手(ALT)、高校英語教員が講師を務め、参加者がレストランでのサービス対応などを体験した。
 かるたで和製英語と英語の違いも学習。「シュークリーム」は英語では靴を磨くためのクリームを指すが、食べ物の絵札を選び苦笑いを見せる回答者も。あらためて注意が必要だと感じていた。
 同協会の渡部千春事務局長は、日本の観光地が外国人客に十分対応しきれていない現状を示し「この地域にも中尊寺やえさし藤原の郷、胆沢ダムなど名所がある。アクセスを含めてアピールの仕方を変えれば、もっと多くの人が訪れるようになるのでは。その時に、皆さんの力が必要になってくる」と呼び掛ける。
 水沢佐倉河の薬師堂温泉の八重樫博紀支配人(41)は2年前に比べ、外国人客が格段に増えたと実感。「現場で対応に苦労している面もあり、セミナーに臨むスタッフの真剣味が増してきた。中国や台湾からのお客さまが多いが、英語ができれば対応は可能。話す機会を増やしスタッフ同士でシミュレーションしながら、日々レベルアップを図りたい」と意欲的に取り組んでいた。

写真=英語でコミュニケーションを取る参加者たち
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tanko 2018-11-23 15:00
 岩手県が策定作業を進めている次期総合計画の構成要素の一つ、地域振興プランの中間案が公表された。県央、県南、沿岸、県北の県内四つの広域振興圏ごとに、地域の特色や事情に即した具体施策や推進方策を明らかにした同プラン。胆江を含む8市町を範囲とする県南広域振興圏(県南圏域)は、産業バランスが取れているメリットを生かしつつ、課題として指摘されている地域医療や人材不足などの改善を推進していく考え。県は12月21日まで、中間案への県民意見を募っている。

 県政運営の指針となる県総合計画は、10年ごとに策定している。現計画(いわて県民計画)は本年度までとなっており、2019〜2028年度の次期計画策定に向けた作業が進められている。
 次期計画は10年間の基本方針を示す「長期ビジョン」と、より具体的な推進方策などを盛り込む「アクションプラン(行動計画)」で構成。アクションプランは第1期(2019〜2022年度)、第2期(2023〜2026年度)、第3期(2027〜2028年度)に区切られており、社会や地域の状況変化に対応した計画をその都度策定できるようにしている。
 アクションプランはさらに▽復興推進プラン▽政策推進プラン▽地域振興プラン▽行政経営プラン(いずれも仮称)――から成る。復興推進プランは第1期のみの予定で、2期以降も策定するか否かは、今後の復興状況を見ながらの判断となる。今回公表されたのは第1期アクションプランの中間案だ。
 このうち、地域推進プランにある県南圏域の項目では、目指す将来像を「人とのつながり、県南圏域の産業集積や農林業、多様な地域資源を生かしながら、暮らしと産業が調和し、世界に向け岩手の未来を切り拓く地域」と設定。▽暮らし▽産業▽観光・文化▽農林業――の4本柱で具体的な取り組みを掲げている。
 暮らしに関連する事項でもある地域医療については、胆江地区のように小児科や産科の医療体制が深刻な現状を受け止めつつ、北上や一関の医療機関との連携強化を図る。県南広域振興局の飛鳥川和彦副局長は「医師確保をしたいところだが、すぐに実現するのは難しい。当面われわれができることとして、近隣地域との連携強化を掲げた」と説明する。
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を見据えた取り組みとして、ILC関係者の居住・生活の受け入れ態勢整備も推進する。ILCに限らず国会で審議中の外国人労働者の受け入れ拡大の流れも意識しながら、多文化共生社会の構築に向けた住民理解の醸成も進める。
 観光と地元農業とが連携する取り組みとして、地域食材を生かした魅力的な地域づくりの支援を推進。交流人口の拡大も図る。文化芸術の振興については、伝統芸能だけではなく新しい芸術や文化なども楽しめる場の創出を支援する。
 中間案は県南圏域8市町の首長にも順次、同振興局の細川倫史局長が出向いて説明。県民向けには、県公式ホームページ
http://www.pref.iwate.jp/public_comment/63327/index.html
や奥州地区合同庁舎1階「県民ホール」で案文を閲覧できる。
 飛鳥川副局長は「県南はものづくり産業も集積し、農林業も盛ん。何か一つだけ特化するのではなく、全体的なバランスを取ることで魅力ある強い地域につながる。従来通りの取り組みに似ているが、むしろこれまでの10年で積み上げてきたものを、次の10年でさらに磨きをかけるといったスタンスだ」としている。
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tanko 2018-11-21 11:10
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現を推進している研究者組織などは、日本学術会議の「ILC計画の見直し案に関する検討委員会」(家泰弘委員長)に、文部科学省への回答案に対する意見・説明書を提出。検討委側の考えに事実上、反論した。20日、推進派の研究者らは都内で、報道関係者に意見・説明書の概要を説明。素粒子物理学者界での合意形成がされていない点や、研究者が現地に常駐する必然性は乏しいなどの見解について「事実誤認」と指摘した。一方で、諸分野や候補地の地元住民への理解促進は、今後も努力を続けるとした。同検討委は21日午前10時から、東京都港区の同会議内で、第11回会合を非公開で行う。

 同検討委は今月14日、第10回会合の中で文部科学省に提出する回答案を公表。ILC計画の科学的意義は認める一方、巨額なコストが掛かる点や諸分野研究者との対話が不足している点、経済誘発効果が限定的であることなど、慎重な見解や各種対応の不十分さを指摘する文言が目立った。
 これに対し、素粒子物理学者らを中心とするILC推進派の研究者や、本県や東北の誘致関係者からは、事実誤認の指摘や情報が正しく理解されていないなどと批判や不満が噴出。委員会側に正確な情報を伝え、回答案修正に生かしてもらうよう、14日以降、関係者間で意見・説明書の作成作業が急ピッチで進められていた。
 意見・説明書は19日、高エネルギー加速器研究機構のILC推進準備室名で電子メールにより送付。合わせて東北ILC準備室も、北上山地周辺地域での受け入れ準備について説明・理解を求める趣旨の文書を提出した。
 研究内容に対する素粒子物理学界の合意形成が得られていないとする回答案の記載について、「徹底した議論の結果だ」と強調。「ネットが普及した時代にあって、データ解析は現地に行く必要はない」などとする見解についても、「高エネルギー物理実験の実情と合わない。研究者は実験現場に集まる」と、検討委側の事実誤認を指摘した。一方で、候補地の地元住民や諸分野への理解促進に関しては、十分ではない面もあり最大限努力する考えも示した。
 会見の席で、東北ILC準備室長の鈴木厚人・岩手県立大学長は「ILCは研究者だけでなく、地域社会や日本にとってかけがえのない施設となる。夢のシンボルと言っても過言ではない。学術会議は提出した意見を正しく理解し、公正な議論をするよう切に希望する」と訴えた。
 岩手県ILC推進協議会の谷村邦久会長は「学術界の人間ではないので、あまりものを言える立場ではないが、(回答案には)ネガティブ表現が散見されたし、これまでの議論を見ても『これが科学者の発言か』と思うような場面もあった」と不満を露呈。「(推進する側の)意見をしっかり聞いて会議を進めてほしい」と注文した。
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tanko 2018-11-20 11:00
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画の見直し案に関する日本学術会議の検討委員会(家泰弘委員長)の回答案について、達増拓也知事は19日、定例会見で「巨額の予算だとか他の学問分野への影響というのが学術会議で検討することか。科学の視点から、ILCがやろうとしていること、できることを検討してもらうのが期待されている」と指摘。回答案公表直後の談話で「大変意外な案」と述べた意図を説明した。
 回答案は今月14日、同委員会第10回会合で示された。ILC計画の学術的な意義を認めながら、予算の巨額さや他の学術コミュニティーとの対話不足などを指摘。放射線を含む環境面への影響についても「地域の住民に対して、科学者コミュニティーが正確な情報提供を行い、対話を行うことが肝要だ」と強調している。
 達増知事は「いくつか科学に関する記述について明らかな誤りがあるようだ。そこは専門家が20日に東京で反論の記者発表すると聞いている」と述べた。都内で20日に行われる会見では、東北ILC準備室の鈴木厚人・岩手県立大学長らILCを推進する研究者や本県の誘致団体関係者らが登壇する。
 学術会議の検討委第11回会合は21日に予定されているが、同会議事務局によると、非公開で実施し終了後の報道機関対応も行わないという。
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tanko 2018-11-18 11:00
 「ヒラメの目をタイの目にすることはできない」。水沢三偉人の一人、後藤新平の名言の一つだ。当時の台湾統治の任を命じられた後藤は、生物学の原則に基づき展開したという。現地の実情や人々に根付いた習慣、制度を無理やりに変えるのは逆効果という考えだ。
 ここに来て推進、慎重の議論が熱を帯びている国際リニアコライダー(ILC)計画。その進め方は、諸条件の解決や合意形成を整えた上で実行する日本型の方法ではなく、実行しながら問題点に対処し、困難だったらいつでも止めるというスタイル。諸外国では当たり前の方法なのだと同計画の中枢にいる研究者は語った。
 日本の常識は世界の非常識とも言われる。だが、染みついてしまった感覚をすぐに切り替えるのには、どうしても理解構築のための丁寧なプロセスと時間が必要だ。(児玉直人)
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tanko 2018-11-18 10:50

 素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)誘致に向けた機運を高めようと、奥州市議会ILC議員連盟(渡辺忠会長)は16日、奥州市立東水沢中学校前に同校美術部生徒が手掛けたILCのPR看板を設置した。
 同議連は昨年度から市内の中学生に、ILC計画が実現した将来の地域の姿をイメージした絵を描いてもらい、それを基にした大型の看板を学校付近に設置。同計画の周知と誘致実現に向けた機運向上を図っている。
 東水沢中では校庭東側の市道に面したフェンスに設置。宇宙誕生の謎に迫る施設を連想させる満天の星空、南部鉄器やえさし藤原の郷、国立天文台水沢キャンパスの電波望遠鏡などを描き、伝統と科学が共存するまちの姿を表現した。
 本年度は同校を含む水沢地域の3中学校と、江刺第一中の学区内にそれぞれ設置する計画。前年度分を含む市内全9カ所への設置事業を完了させる。

写真=東水沢中のフェンスに設置されたILCのPR看板
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tanko 2018-11-17 6:40
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)について、建設想定エリアに住む一関市民らは16日、県庁でILC関連装置の開発に携わる研究者らと対談。住民らは放射性物質の処理や事故発生時の対応などについて説明を求めた一方、リスク説明や住民不安を払拭する姿勢が不十分だとして、行政側のこれまでの誘致運動の進め方を批判した。

 研究者と対談したのは、同市大東町の前一関市議菊地善孝さん(64)と農業金野弘記さん(53)、同市千厩町の自営業菅原佐喜雄さん(62)、盛岡市山岸の元高校教諭永田文夫さん(75)ら。菊地さんらは、ILC誘致の在り方に疑問を呈している市民団体「ILC誘致を考える会」のメンバーではあるが、今回は会の活動ではなくILC建設想定エリア近傍の地元住民の立場としての行動という。
 「考える会」では、勝部修一関市長への公開質問状提出や、東北ILC準備室主催のリスク説明会参加などを通じて、住民生活への影響や安全性について向き合ってきた。しかし、質問状の回答内容に納得できない部分や一度の説明会だけでは消化不十分との思いがあり、地元選出県議の高田一郎氏(共産)の紹介で今回の対談に至った。
 県庁8階会議室で行われた対談は約1時間半、非公開で行われた。終了後、会見した菊地さんらによると、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の照沼信浩教授と佐波俊哉教授、東北ILC準備室メンバーの立場で岩手大学の成田晋也教授と、県科学ILC推進室の佐々木淳室長らが対応した。
 ILCでは、ほぼ光速に近いビームにして電子と陽電子を衝突させる。しかし、衝突できなかったビームはそのまま通り過ぎ、「ビームダンプ」と呼ばれる装置に到達する。菊地さんらが懸念しているのは、ビームダンプ内でビームと水が反応して発生する放射性物質「トリチウム(三重水素)」。人体への影響は弱いとする見解もあるが、除去処理が難しいという性質もあり、福島第1原発事故の汚染水処理を困難にさせていることでも知られる。
 対談では、ビームと接する水(約100トン)は閉鎖空間の中で循環利用し、外部に漏れない設計にするなどの説明を受けたという。
 菊地さんは、研究者と直接会話できた点は評価しつつ「これで安心したというわけではなく、間違いなく彼らが対応するのかどうか、しっかり見ていく必要性はある」。さらに「誘致したいと思うあまり、リスクに関してほとんど説明してこなかった。行政の在り方としておかしい」と、これまでの誘致運動の在り方を批判した。
 菅原さんは「さまざまな立場の研究者の声を聞かなければ、全体像がよく分からないと感じた」。金野さんは「説明は理論的で納得できるところもあったが、もっと聞きたいことがある」。永田さんは「地元の疑問に、研究現場で活躍する研究者が真剣に聞いて答えてくれる一歩として今日の場はよかった。ただ、まだまだ私たちに大事なことが知らされていないと思う」と、地元住民への説明と十分な情報公開を訴えていた。
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tanko 2018-11-16 9:50
 「事実を誤認している」「とても妥当な判断」――。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)について、日本学術会議のILC計画見直し案に関する検討委員会(家泰弘委員長)が文科省への回答案を示したことに、候補地周辺では賛否さまざまな反応が出ている。
(児玉直人)

 14日に明らかになった回答案。今後修正が加わるものの、「適正な国際経費分担の見通しなしに日本が誘致の決定に踏み切るのは危険」など厳しい文言も散見された。候補地周辺の住民に対する配慮を求める表現も随所に見られた。
 ILC誘致活動の在り方に疑問を呈している市民団体「ILC誘致を考える会」の共同代表で、一関市の僧侶・千坂げんぽう氏(※)は「我々が危惧していたことにも触れており、(懸案していたことが)妥当なものだったということが分かった」と評価。「大学や既存施設でやる国際共同研究ではなく、自然に手を加えて行う事業。一定の見通しが示されないまま話が進めば、地域住民は不安に思う。全体的に計画が荒っぽいという印象があり、実行するのは時期尚早だ」と指摘した。
 一方、奥州市議会ILC誘致推進議連の渡辺忠会長は「(検討委のメンバーは)ILCを進めたくないのではという印象を受けた。なぜそういう考えになるのか全く理解できない」と批判。「研究者とその周囲がやってきた積極的な動きが伝わっていないのではないか」とし、場合によっては検討委側に面会を求め、議論の経緯の説明を受けることも必要になると示唆した。
 回答案の内容や関係者の声を聴く中で浮かび上がるのは、年内までにとされる日本政府の「前向きな判断」に対する受け止め方の相違だ。一つは、後戻りやストップが極めて難しくなる「最終決断」と同等の重みがあり、回答案に示されたような慎重な対応が求められるとする見解。もう一つは、公式な協議のテーブルを設けようとする「意思表示」の段階であり、「誘致判断というのはまだまだ先の話」というILCを推進する研究者側の見解だ。
 東京大学の山下了特任教授は14日、検討委傍聴後の報道陣との取材応答の中で、ILC計画の進め方について「大学入試」を例に説明した。
 「日本の大学は入るのが大変で出るのが楽。アメリカは逆で、入るのは楽だけど出るまでが大変とよく言われている。日本の従来のプロジェクトの進め方は、条件を全部決めてゴーサインを出す。しかし、ILCでは提案し議論しながら進めていく方法で、海外では当たり前のやり方。今求めているのは、海外との公式な議論につける一歩を踏み出しませんかということ。その先の過程で、海外との費用分担の話も出てくる。そこで『工面できません』となれば、その先には進めない。いつでも止められるやり方だ」
 「とりあえずやってみよう」と「石橋を叩いて渡る」。それぞれの方法に良し悪しがある。「政府判断」という場面のとらえ方の根底には、こうしたそれぞれの国に根付いた事業の進め方に対する考えや習慣、文化の違いも影響しているようにみえる。推進派と慎重派が互いの主張を認め合い、折り合うことはできるのか。それとも、平行線をたどりやがて大きな亀裂を生む方向へと傾くのか。議論の行方が注目される。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」は山へんに諺のつくり。「ぽう」は峰。
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tanko 2018-11-15 9:50
 【東京=児玉直人】日本学術会議(山極寿一会長)の国際リニアコライダー(ILC)計画見直し案に関する検討委員会(家泰弘委員長)は14日、東京都港区内で第10回会合を開き、文部科学省から受けた審議依頼に対する回答案を審議。案文には「他分野研究者との対話が不足している」などと記され、慎重な見解と厳しい指摘がにじみ出た内容となっている。ILCを推進する素粒子物理学者たちは、明示された回答案を早急にチェック。事実が正しく反映されていない点などを確認し、一両日中に同委員会へ案文に対する見解を示し、公式な国際協議に踏み出せる環境構築に全力を注ぐ。

 同委員会は今年8月10日の第1回会議以降、ILCを推進する素粒子物理学者ら関係者を参考人として招き説明を求めてきた。回答案は、これら参考人の説明や委員間での議論、さらには国内外の誘致関係者、地元市民団体などから寄せられた意見文書なども参考にまとめられた。
 回答の核心的な部分となる「所見」は、文科省が学術会議へ審議依頼した学術的意義や素粒子物理学における位置付け、国民・社会に対する意義など4項目に対応する形でまとめた。このうち、学術全体における位置付けについては、「数々の大型研究施設計画と比べても費用が格段に大きく、研究終了まで長期にわたる計画。国民へ提案するには、学術全体の理解や支持が必要だが、諸分野の学術コミュニティーとの対話が不足していることは明らか」と指摘。「さらに丁寧かつ継続的な説明と意見交換が必要」とした。
 また、技術や経済面への波及効果については「ILCによるそれらの誘発効果は限定的と考えられる」とし、地域振興の文脈で語られている事項、放射線を含む環境面への影響について「特に建設候補地と目されている地域の住民に対して、科学者コミュニティーが正確な情報提供を行い、対話を行うことが肝要だ」と強調した。
 家委員長は会議の中で、地域の国際化が進展するとの期待論があることについても言及。「建設期間にはそれなりの人が住むが、ネットが普及した時代にあって、データ解析は現地に行く必要はない。装置運転のための常駐者は必要だろうが、どのくらい現地に外国人の滞在が見込まれるのか、議論の余地がある」と述べた。
 委員会後半は、非公開の形で委員同士が意見を交わした。終了後、報道陣の取材に応じた家委員長は「私的希望では、年内に(委員会の)取りまとめをしたいとは思うが、あくまで学術会議として提出する文書。査読や幹事会で承認を得る必要があるので、いつまでに終わるということは分からない。次回、21日の会議までには、今日出された意見や修正すべき点を踏まえ委員会としての最終版に近いものに仕上げたいと思う」と述べた。
 ILC推進派の間では、公式な国際交渉ができるよう、年内の日本政府側の意思表示が必要という見方が示されている。この点について家委員長は「われわれは回答を返すことが役割で、その先、国や文科省がどう意思決定するかは分からない。ただ、客観的には年内に表明するのは難しいようにも思う」との考えを示した。少なくとも、今月の学術会議幹事会の場で回答案が議論されることは「無理」とした。
 一方、ILC推進の中心的役割を果たしている東京大学の山下了特任教授は、委員会傍聴後に報道陣の取材に応じ「事実が反映されていない点、情報が抜けている点について、一両日中に整理し、委員会側に届けたい」との考えを示した。その上で「よく『誘致』と言われるが、誘致の最終判断はずっと先。今求められているのは、公式な国際交渉をしようという一歩。交渉を進める中で、国際的な費用分担も協議していくが、その過程で合意が図られなければ、実現はできないものと認識している」と話していた。

写真=会議終了後、報道陣の取材に応じる家泰弘委員長


「大変意外な案」達増知事らが談話

 検討委員会が示した回答案について達増拓也・岩手県知事は「多くの関係者と共に長年にわたって取り組んできた岩手県からすると、大変意外な案。関係者の多くから反論が寄せられるのではないか」などとする談話を出した。この中で案の記述を引用し、「『建設候補地と目される地域』としては、『科学者コミュニティー』と多くの情報共有や対話を重ねてきていると考えるが、今後ともそのような姿勢は続けていきたい」と主張。政府の前向きな判断へ、全力を挙げる考えを示した。
 東北ILC推進協議会の高橋宏明代表、県ILC推進協議会の谷村邦久会長は連名でコメントを発表。「科学技術は研究者だけのものではなく、社会と一体となって作り上げていくものと私どもは考える。ILCの持つ国際科学技術プロジェクトへの日本の新しい挑戦という高い志に対し、ネガティブな面を強調する議論が行われているように思われる」と指摘。「科学技術の可能性を狭めてしまっているのではないか」と懸念を表明した。
 その上で、東北の産学官が震災復興や地域振興に寄与するプロジェクトとして誘致に注力してきたこと、5年前に北上山地が建設に最適と学術関係者により判断されたことを踏まえ、「今後予定される最終答申が、研究者と社会が一体となった科学技術立国実現の後押しとなることを切に願う」と主張した。

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